私は街はずれの山の中にある、日々山菜を取るか狩猟するかの二択しかないような辺鄙な村に生まれた、多少頭が回るだけの平凡な魔族でした。
異世界で生きてきた前世の記憶を持ってはいますが、“異世界の”という枕言葉が珍しいだけで、この世界では生まれ変わりや不死はそれほど珍しくありません。
そんななか、大きな弱点を持たない代わりに大きな長所も持たない私の種族は、普通という言葉以上に当てはまる表現は持たないでしょう。
しかし、子供というのは世間や常識を知りません。
前世の知識から、「もしかしたら、私にも
たしかに、多少は普通の子供よりも強かったのかもしれません。
なぜなら、魔族で一番下とされるFランクや、その一つ上のEランクの魔族を相手に勝利を収めたからです。
しかし、私の傲慢な自信は、Dランクの魔族に敗れたことでなくなりました。
まだ、善戦して負けたとかなら言い訳の一つもできたのですが……その時の私はゲロを撒き散らしながら、地面を転げ回って敗北したのです。
羞恥心とかプライドとか、そんなものはその時に消え去りました。
そうして、そのDランクの魔族から魔王軍に勧誘されました。
何も考えずに街へ出てきたため、家なし職なし金なしだった私には頷く以外の選択肢がありませんでした。
それから数十年が経った頃、私のランクはようやくCランクになり、魔王城での勤務が許されるくらいの立場になりました。
そのため、私は魔王城があるこの都市へ上京しました。
その頃の私は、はっきり言って調子に乗っていました。
数十年でCランクになるというのは、地方では武勇伝になるくらいすごいことです。そのため周りからチヤホヤされたり、媚びを売られたりして過ごしていました。
そんな伸びた鼻は、魔王城へ来た瞬間にへし折られました。
Cランクなんて魔王城じゃ下っ端の下っ端です。もはや、同じ場所で働いていながら「君いたの?」と言われるレベルの下っ端です。
しかも、定例的にある式で初めて魔王様を直視した時は、全身から力が抜けて立つことさえできませんでした。私と同じ新人のなかには気絶する方もいました。
それくらい規格外な魔王様ですが、当時下っ端だった私にとっては四天王様や妖魔様もそれと変わらないくらい恐ろしい存在でした。
ある時、風の噂でCランクの魔物がネームドモンスターに粗相をして、文字通り“この世から塵すら残さず消された”なんてことを聞いた日には、震えながら布団に籠ったものです。
そんな私も数百年が経ってBランクになり、気づけばAランクの悪魔になっていました。
それでも、Sランクの妖魔様やSSランクの四天王様に怯える生活は変わりませんでしたが。
魔王様?
変わらず恐怖の対象でしたが? というか、今もそうですが??
そして、気づけば悪魔になってから千年に近い時が過ぎていました。
人間に比べて、魔族というのはとても長寿な生き物です。
といっても、私の場合は魔法を使って調整しているのもあるのですが。
そんな私も、悪魔から妖魔になりました。
アリア様、ティナさん、オーロラさん、リブさん……前世の言葉で言うなら、最高のパーティーで活動することができていました。
魔王軍がより良い組織になってほしいと思うようになったのは、きっとアリア様が原因でしょう。
この人が所属する場所が、少しでも良くなってほしいなんて、そういう忠誠心です。
なので、後悔はしていません。
あー、いや、どうでしょう。
きっと私がいなくなれば、アリア様たちは仕事の処理が追い付かないかもしれません。
ティナさんも要領は良いですが、書類の処理はまだ慣れていないですし、オーロラさんやリブさんは悪魔ですから。
……考えていると後悔ばかり出てきそうですね。
案外、未練たらたらみたいです。
やり残したことも、やりたいことも、たくさんありました。生きていれば、きっとこれからも増えていったのでしょう。
ですが、それを考えられるのは生きている者だけの特権です。
“とても、いい人生だった。”
そう思って死ねるのなら、きっと悪い人生ではなかったはずです。
ただ、最後に一つだけ、本音を漏らしてもいいのなら……。
──死にたく、ないなぁ……。
詩が。
Q.最後の怒涛の太字は何ですか?
A.主人公がオリビア様の魔法で廃人寸前にまで追い込まれている描写です。ブラック企業も真っ青な実力至上主義社会、魔王軍。主人公は大丈夫なのでしょうか?(すっとぼけ)
Q.評価してくれた方がいますよ!!
A.ありがとうございます!! 評価0件で割と落ち込んでいたので、すごく嬉しかったです!!! より一層楽しんでいただける小説が書けるように、これからも頑張っていきます!!