──詩が聞こえました。
きっと、私の未来は明るい。そう思えるような、暖かい春の日差しを彷彿とさせる詩でした。
それに導かれるように、私は目を開けました。白に包まれるその部屋は、Cランクの時によくお世話になった部屋によく似ていました。
……いや、紛れもなくそれと同類の部屋なのでしょう。多少、妖魔ということで豪華な別室にいるだけわたし
「……わたしは、いきているのですか」
一音一音確かめるように、私は音を吐きます。
それは、紛れもなく私の声でした。
どうやら、生きているようです。
それは、とても幸運なことですね。
……なんて、他人事のように考えます。
なぜなら、他人事だとしか思えなかったからです。
私が助かるなんて未来はあり得ない……いえ、あり得てはいけない未来なのですから。
生きながら苦しめという罰なのだろうかと考えながら、身体を起こします。
前世では治療のために包帯などが使われていましたが、この世界……特に魔族は、再生能力があるため薬をつけて放置が多いです。
今回もそうなのか、すこし体がベタベタとしています。
やはり、この部屋は魔王城内にある病棟のようです。
といっても、ネームドモンスター用なのか、Cランクの時に使っていたような大部屋ではなく個室でした。
……いや、私に病棟を使わせるのはおかしくないでしょうか?
どちらかというと、
……意味もなく韻を踏んでいる辺り、私も案外疲れているのかもしれません。
まぁ、死を前に疲れないわけがないですよね……。
「……どうして、生きているのでしょう」
こう、何か処罰されると身構えていたのに、何もされず放置されると……どうしていいのかわからなくなります。
ひとまず、体中に怪我を負っているので回復しましょうか……【
私の魔法は、知属性というものです。
この属性は“この世に存在しない魔術”を模倣することができます。といっても、使用するには大量の魔力が必要なので、最大でも一日十回くらいが限度ですが。
例え、この魔法を一日百回使えたとしても魔王様に敵う気はしません。四天王様が相手なら、一矢報いるくらいはできるかもしれませんが。
私がそんなどうでもいい考え事をしていると、突然病室の扉が開きました。
「ソフィア~!!」
「あ、アリア様!?」
アリア様が抱き着いてきて、驚きで声を上げました。
ま、待ってアリア様そこまだ治りかけで……!
「無事でよかった~!!
死んじゃったかと思ったわ~!」
「あ、アリア様……も、申し訳ありませんが、いったん離していただけるとッッ……!」
「え? あぁ、ごめんなさい~!
まだ治っていないのね~……」
アリア様は慌てた様子で私の上から退いてくれました。
治りかけのところはまだ内側がぐちゃぐちゃ(伏字)なので、あまり触らないでいただけると助かります。
いくら強固な妖魔の肉体といえども、死にかけるレベルの怪我を負ったら治るのに時間が掛かりますので……。
……いや、というより、治るのに時間が掛かる魔術が掛けられているようです。
術式的に一時的なものですので、おそらくオリビア様が私をぐちゃぐちゃ(伏字)にしている時に掛けたものが残っているだけでしょう。
「……アリア様、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「ソフィアは、恥じるようなことをしたの?」
珍しく、語尾が伸びたのほほんとした雰囲気ではなく、真剣な声色をしているアリア様がそこにはいました。
私は魔王軍のトップである魔王様に対して、その手腕を疑問視するような発言をしました。それは、魔王軍にとって許されざる行為です。
本来であれば、恥じなければいけない行為なのかもしれません。
「──私は、私の信念に従って行動しました。
それに対して恥じるような気持ちは、一切ありません」
そう、私は宣言しました。
あの状況を見過ごすことは、私にはとてもできませんでした。
慕っている部下に対して配慮をする余裕もないのなら、私はそれは間違っていると断言します。
「それなら、謝る必要はないわ」
「えっ……?」
想定外の言葉に呆気に取られました。
魔王様への批判は、死刑になるほどの重罪です。
今のアリア様の発言は、そんな重罪を起こしても許すと言っているのと同じ意味です。
いえ、アリア様を私のものに巻き込むわけにはいきません。
これは、私が起こした問題ですから……いや、もしかして!?
「──私のために何を差し出されたのですか!?」
「……うふふ~、ソフィアには何でもお見通しねぇ」
「そんな……どうしてですか!?」
よく考えれば、本来ならば死んでいるはずの私が生きているのに、理由なんて一つしかありません。
つまり、私はアリア様に庇われたのです。
それも、法律上で即死を許可されるほどの重罪ですから、それを庇う対価はとても重いものでしょう。
アリア様の考えが私にはわかりませんでした。私程度に、何か対価を払うだけの価値があるとは思いません。
「私なんかに……ッ!」
「なんか、じゃないわ。
あなただからよ、ソフィア~」
私だから? いったい、どういう意味なのでしょうか。
私程度の魔族なんて、魔王軍のなかじゃそれなりにいます。私は多少書類整理が上手いだけの、普通の魔族です。
「ここに来てから、私はずっとソフィアに助けられたわ~。
それに、最初に言ってくれたでしょう~?
──“手助けをさせてほしい”、って~。
約束を守ってくれるまでは、絶対に離さないわ~」
わた、しは……。
「あなたのことを手放さないってもう決めちゃったの~。
だから、これからも私の妖魔でいてくれるかしら、ソフィア?」
魔王軍には絶対的な上下関係があります。
下の者は、上の者を呼び捨てで呼んではいけません。
下の者は、上の者の名前を間違えてはいけません。
下の者は、上の者の命令に逆らってはいけません。
──しかし、どうやら……上下関係だけじゃなくて、もっと暖かいものもあったみたいです。
「あなたの下に居させてください、アリア様」
その日、私は心の底からアリア様に忠誠を誓いました。
……詩が聞こえました。
まるで、私の未来を暖かい方へ導くように。
Q.評価してくれた方が三人に増えましたよ!
A.ありがとうございます!!!! すっごくビックリしました!! 嬉しかったです!! 三人の読者に評価されるのを一つの目標にしていたので、それを叶えることもできました!!! より一層楽しんでいただける小説を書けるようにこれからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!!!
改めて、評価をしてくださった
むらさき2001#*#*#*#さん
おくたなのにはさん
ろいほろうさん
本当にありがとうございます!!!!