ポケットモンスター レーヴの物語   作:景雲

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第10話 ゼンリョクゼンカイ・鬼のハラ

まだ優勝の興奮冷めやらぬ会場で僕は島キング・ハラの元を訪れた。

 

「何ですかな?レーヴ君」

 

ハラは僕を見つけるなり聞いてくる。最も、目は言われるか分かっている様だった。

 

「僕に大試練を行って頂けませんか?」

 

案の定、といった顔でハラは僕を見てくる。

 

「そうですなあ。ククイ君の話しではイリマ君を倒しているらしいので・・・」

 

ハラは腕を組んで考え込むような仕草をする。

 

「宜しいですぞ。儂も、優勝者の君と戦えるのは楽しいですしな」

 

ハラは立ち上がり、マイクを手に取る。

 

『只今、奉納試合の優勝者であるレーヴ君より儂に‘大試練`の要請がありました』

 

再び会場は沸き上がる。

 

『よってこれより、レーヴ君の大試練を行います。皆さま、再び武舞台の周りにお集まりください』

 

ハラはそう言ってマイクを置き、僕の方を見る。

 

「やるからには、全力ですぞ」

 

「勿論です」

 

僕も応えた。

 

 

 

武舞台周りには既に人が集まっており、武舞台へ上がる階段に向かう僕を皆歓声で迎える。

 

「レーヴさん」

 

僕の後ろをリーリエが駆けてくる。

 

「レーヴさん、ククイ博士から聞きました。優勝おめでとうございます」

 

「ありがとう、リーリエ。これから、島キングに挑んでくるよ」

 

リーリエは帽子を被っている。ピクチャーハット。リーリエに非常に似合う白のピクチャーハット

 

「その帽子、似合っているよ」

 

「はい、あの・・・レーヴさんにも後で帽子を渡しますね」

 

「ありがとう。それじゃあ、また後で」

 

リーリエに見送られて僕は武舞台の階段を上がる。既に武舞台にはハラが待ち構えている。

 

 

 

「ここで戦う以上、この戦いもカプ・コケコに捧げる試合」

 

ハラは黄色い上着を脱ぎ四股を踏む。そして、片膝をついて弟子と思しき人から柄杓を貰い一口水を含んだ。次いで渡された力紙で口元を隠しながら弟子が用意した(タライ)に吐く。力紙で口周りや顔を拭き、それを盥に捨てる。

 

「気にしなくてよいですぞ。これは儂のアローラ相撲としての作法ですので、レーヴ君はそのまま」

 

ハラはこちらに気を使って言ってくれる。僕は完全に所作に見惚れていたが。

 

「では、位置に」

 

ハラはそう言い、自らの立ち位置に入る。僕も対面の立ち位置に移動して、お互いが最初のポケモンの入ったボールを掴んだ。

 

「では、ゼンリョクゼンカイ。鬼のハラで参りますぞ」

 

それを合図に審判位置に居る弟子が

 

「それでは使用ポケモン三体。ポケモンの交代は自由。では、両者見合うて」

 

お互いボールを投げる構えをする。

 

「残った!!」

 

それを合図に僕はネットボールを投げる。

 

「ラージ!!」

 

ラグラージが腕を広げて相手を威嚇するような動作をする。

 

「ほう、ラグラージですか。珍しいポケモンですな」

 

「ホウエンで捕まえたポケモンです」

 

相手はピンクと黒の胴体に黒い手足の顔が可愛らしいポケモンであった。オマケにこちらに両手を振っている。

 

「ハラさん、何だかそちらのポケモンは手を振ってますが」

 

ラグラージも返す様に手を振り始める。

 

「キーー!!」

 

だが突然そのポケモンは奇声を上げるとラグラージに一気に間合いを詰めた。

 

「その行動はキテルグマの威嚇の動作ですぞ。アームハンマー!」

 

上に挙げた手を勢いよく振り下ろしてラグラージに一撃を加える。ラグラージはよろけて後ずさる。

 

「大丈夫か?ラグラージ」

 

ラグラージを頭を振って正気に戻る。

 

「接近するのは危険か。ハイドロポンプ!」

 

ラグラージが口から勢いよく水流を放つ。キテルグマは腕をクロスしてガードの体勢で受ける。

 

「キテルグマ、接近して組み付きなさい」

 

キテルグマが再び奇声を上げて近づいてくる。

 

「もう一度ハイドロポンプ」

 

ラグラージは近づくキテルグマを止めるために再びハイドロポンプを放つが、先程同様に手でガードしながら突進してくる。そして、お互いが組み付く。

 

「ほう、キテルグマの力は一トンにもなる達するのだが、それを互角とは」

 

ラグラージがキテルグマと組み合いに耐えていることにハラは驚く。

 

「こいつも、大型船を曳く力を持っているので」

 

僕の言葉にハラは感心する様に顎に手をやる。

 

「なるほど、単純なパワー勝負では決着が着きそうにありませんな。では、単純じゃない力でいきましょう」

 

キテルグマが組み付きを解き、体勢を低くしてラグラージの右手と胸の部分を持つ。

 

「ばかぢから」

 

そのまま一本背負いの要領で投げられ、ラグラージは武舞台に背中を叩きつけられ、武舞台全体に煙が立ち込めた

 

「決まりましたかな?」

 

ハラが勝利を確信する様に言い、煙が晴れるのを待つ。晴れてきた武舞台では

 

「な、なんですと!?」

 

キテルグマが氷漬けになっていた。ラグラージが起き上がると、両手から冷気が出ているのか白い煙が見える。

 

「組み付いた時にれいとうパンチを出していたんですな。やられましたぞ、レーヴ君」

 

「バレないか心配しました」

 

僕はそう返す。審判が軍配をこちらに向け

 

「キテルグマ戦闘不能」

 

そう宣言する。ハラはボールにキテルグマを戻した。

 

「先に白星を付けたのはレーヴ君ですな。では、次の番です」

 

そう言ってハラは次のボールを取り出す。

 

「いきなさい、ハリテヤマ」

 

「ハリ~テ」

 

ハリテヤマがハラの二体目であった。

 

「ハリテヤマ、はらだいこ」

 

ハリテヤマが両手でお腹の部分を打ち鳴らす。

 

「れいとうパンチ」

 

冷気を纏った状態でラグラージが接近する。

 

「はたきおとす」

 

ラグラージは殴ろうと飛び掛かった所をハリテヤマの巨大な手で叩き落とされる。

 

「続いてつっぱり」

 

ラグラージが起き上がった所をハリテヤマが何度もつっぱりをする。

 

「ラグラージ、まだいけるか?」

 

倒れたラグラージはよろけながらも立ち上がって咆哮で応える。しかし、既に体力の限界なのは目に見えて分かる。

 

(すまない、ラグラージ)

 

瀕死寸前のラグラージにこの技を撃たせるのは気乗りしないが、

 

「ラグラージ、ハイドロカノン」

 

ラグラージの切り札の技を僕は指示する。その指示を聞き、口に水球を作り始める。

 

「ハリテヤマ、つっぱり」

 

ハラが一気に間合いを詰めにくる。ハリテヤマが全力でラグラージに向かって来る。

 

「発射!!」

 

溜まっている水球を勢いよくハリテヤマに向かって撃ちだす。しかし、ハリテヤマはその水球を両手で防ぎ更に突進した。

 

「ラグラージ」

 

撃った後はしばらく動けない。向かって来たハリテヤマはつっぱりをしてラグラージを倒した。

 

 

「ラグラージ、戦闘不能」

 

審判が相手の方に軍配を向けて宣言する。僕はボールを取り出して

 

「ありがとう、ラグラージ。少し休んでくれ」

 

と言って戻した。そして次のボールを取り出し

 

「いけ、クロバット」

 

そう言ってモンスターボールを投げる。

 

「二体目はクロバットですな」

 

「卑怯とは言わないでくださいよ」

 

「なんの。有利なタイプを使うのも戦略ですな。構いませんよ」

 

ハリテヤマがクロバットとの間合いを図るように動く。

 

「クロバット、はがねのつばさ」

 

クロバットが地面を擦る位の低空を鋼と化した翼を持って飛ぶ。そして、ハリテヤマの胴体に直撃する。

 

「はたきおとす」

 

しかし、離れようとした所を捉えられ、地面に叩きつけられた。その衝撃で再び煙が舞い上がる。

 

「二度も同じような状況にはならんのですな。ハリテヤマ、クロバットから離れなさい」

 

ハラの指示にハリテヤマは煙が立ち込めるクロバットの近くに残らず、直ぐに距離を取った。

 

 

 

「クロバットは」

 

煙が晴れてくる所に僕が言う。

 

「その四枚の羽根を巧みに使って」

 

「なんですかな?」

 

ハラが疑問の声を上げる。

 

「音を立てずに相手に近づく」

 

その瞬間、クロバットがハリテヤマの背後に現れる。

 

「何ですと!?」

 

「クロバット、きゅうけつ」

 

クロバットがハリテヤマに噛み付き、体力を吸う。体力を吸いつくされたハリテヤマは倒れた。

 

「ハリテヤマ、戦闘不能」

 

審判がこちらに軍配を向けて宣言する。ハラはボールに戻し、次のボールを取り出した。

 

「レーヴ君、次が儂の最後のポケモンですな」

 

「島キングの力、見せて下さい」

 

「結構。最後は全力全開、本気の力で行きましょう」

 

そう言ってハラはボールを投げる。中からはグローブの様な形状をしたハサミを持つカニ型のポケモンを出す。

 

「ロトム、すまないが教えてくれ」

 

先程のキテルグマの様に不意を突いた攻撃を喰らいたくないのでロトム図鑑を呼ぶ。ロトム図鑑は渋々ながらも隣に来て画面に相手のポケモンを映しだす

 

『マケンカニ、けんとうポケモン。ハサミで弱点をガードしつつ隙を伺いパンチを放つ。天辺を取りたがる性格で、仲間同士でも良く喧嘩をする』

 

「分かりましたかな?マケンカニが儂の最後のポケモンですぞ」

 

ハラが言うと同時にマケンカニは構える様にハサミを前に出す。

 

「けんとうポケモン・・・・拳闘・・。なるほど、ボクシングか」

 

「いきますぞ、マケンカニ。ふるいたてる」

 

マケンカニが両手を開いて雄叫びを上げる。

 

「続いてグロウパンチ」

 

と思ったら猛スピードでダッシュしてクロバットに左のハサミで殴りにかかる。

 

「エアカッターで迎え撃て」

 

クロバットが羽ばたいて空気の刃を飛ばすが、マケンカニはそれを打ち払って近づき、クロバットに左のハサミで殴りつける。

 

「連続でグロウパンチ」

 

右左右左、その後左右のハサミで連続で殴りつけられる。最初は威力が低いが、どんどん威力の増すグロウパンチを何発も浴びてしまった。

 

「では、止めと行きましょうな」

 

ハラが左腕を構える。

 

「レーヴ君は見るのが初めてですかな?。アローラ地方に伝わるZ(ゼット)リングとZ(ゼット)クリスタルを使った全力全開の技、Z(ゼット)ワザですぞ」

 

そう言ってハラは何発もパンチを入れる様に両手を動かし、最後に思いっきり右手を振る。

 

「全力無双、激烈拳!!」

 

その瞬間マケンカニがオーラを纏ったようになり、何発もパンチを繰り出す。ついでに何かが何個も宙を舞った。

 

「クロバット、避けて」

 

クロバットが上昇しようとするが

 

「無駄ですぞ」

 

宙を舞う何かがクロバットに当たって落とされ、そこにマケンカニのパンチを何発も浴びてしまう。

 

「な、何て技だ」

 

クロバットが倒れ、目を回す。審判が軍配を向こうに向けて

 

「クロバット、戦闘不能」

 

宣言した。ボールを向けてクロバットを戻す。

 

「それにしても、クロバットを撃ち落としたのは一体?」

 

宙を舞ってクロバットを撃ち落とした物体を見ると、青いグローブだった。

 

「・・・・はぁ!?」

 

どう見てもマケンカニの手である。それが何個も落ちている。でも、今もマケンカニの手は健在だった。

 

「あの、ハラさん。マケンカニの手が沢山落ちているのですが・・・」

 

「あ~、心配いりませんぞレーヴ君。マケンカニはパンチの打ち過ぎで良く腕が取れますが、直ぐに生えますので。それに、中々それを美味ですので、後で食べましょうぞ」

 

(・・・サメハダーの歯みたいなものか)

 

僕は納得して次のボールを掴もうとすると

 

「そういえばレーヴ君はまだエースを出していないそうですな」

 

話しかけられた。

 

「最後のポケモンはそのエースと戦いたいですな」

 

考えていたボールを掴むのを止め、希望通りのポケモンが入ったボールを掴む。

 

「・・・強いですよ、このポケモン」

 

「楽しみですぞ」

 

僕がそのボール、ダークボールを構える。

 

「いけ、ガブリアス」

 

「ガアァ!!」

 

ボールから出たガブリアスが咆哮して威嚇する。マケンカニも両手も構える。

 

「ガブリアスですか。確かに強敵ですな」

 

ハラもマケンカニ同様に構えて言う。

 

 

「ガブリアス、つるぎのまい」

 

「グロウパンチ」

 

マケンカニが拳で殴ろうと接近する。

 

「アイアンテールで迎え撃て」

 

ガブリアスが身を翻して鋼の化した尻尾でマケンカニの拳を止める。

 

「そのままドラゴンクロー」

 

両腕の皮膜を伸ばして切り付ける様に振り下ろし、マケンカニを吹き飛ばす。

 

「マケンカニ、もう一度ふるいたてる」

 

「こっちもつるぎのまい」

 

お互いが咆哮して威嚇しあう。

 

「グロウパンチ」

 

「アイアンテール」

 

お互いが一撃目と同じ状況になる。マケンカニが殴りに行ったのをガブリアスが鋼と化した尻尾で受け止める。

 

「流石ドラゴンタイプ。何度もグロウパンチやふるいたてるで能力を上げていますのに、それを耐えるだけの能力が高いですな」

 

「ドラゴンタイプは育てるのが難しいですが、確りと育てれば心強いポケモンです」

 

ハラの言葉に僕が応える。ハラが再び構えのポーズをとる

 

「ですが、これはどうですかな?ばくれつパンチ!!」

 

今まで連打以外では打って来なかった右手でマケンカニが正確に頭部を狙って殴りに来る。ガブリアスは頭を動かして直撃は免れるが、突起に掠っただけで吹っ飛ばされてしまう。

 

「そこまで攻撃が上がっているのか」

 

吹っ飛ばされたガブリアスを見ると、ガブリアスが何とか立ち上がっている所だった。

 

「ガブリアス、空を飛べ」

 

ガブリアスが上半身を折り畳み、助走をつけて空へと飛び立った。

 

「逃がしませんぞ。バブルこうせん」

 

マケンカニが左手からガブリアスを狙って泡を発射する。

 

「掠っただけですから混乱している様子は見られませんな」

 

ハラはガブリアスが正確にバブルこうせんを避けているのを見て言う。

 

「落下の勢いを利用しろ。ドラゴンクロー」

 

ガブリアスが向きを変えてマケンカニに向かって急降下する。両手の皮膜を鋭い刃に変えてマケンカニを捉える。

 

「これで決めますぞ、ばくれつパンチ」

 

ハラが拳を突き出すようなポーズをして言う。マケンカニも右手を少し引いてガブリアスがリーチ内に入るのを待つ。

 

「ガブリアス、回転して交錯」

 

ガブリアスが指示通り体を回転させてマケンカニに向かって降下していく。そして、お互いが交錯した。

 

 

 

お互いが体を反転させて見合う。

 

「駄目だったか」

 

僕は再びガブリアスに指示をしようとした時

 

「いや、儂の負けですな」

 

そのハラの言葉通り、マケンカニは倒れた。

 

「勝負あり!。マケンカニ、戦闘不能。よってこの勝負、レーヴの勝ち!」

 

審判が軍配をこちらに向けて宣言した。その瞬間、会場が再び沸いた。




「なあロトム、何で君は僕に懐かないの?」

僕は前から思う疑問をロトム図鑑に言う。

『僕はリーリエにゲットされたロト。』

「それなんだけどさあ、あのモンスターボールは僕がリーリエに渡したのだよ」

それを聞いたロトム図鑑は『ガーン』と言いたげな顔になる

『そんな、僕はレーヴにゲットされたってことロト』

「そういうことだよ、ロトム。これからも宜しくね」

それを聞いたロトム図鑑がこちらを見て

『って、そんな訳ないロト。ならあのロコンはレーヴのポケモンになるロト』

「やっぱバレたか」

ロトム図鑑のツッコミに僕は舌を出して誤魔化した。
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