「ハハハ、負けましたな」
武舞台の上で僕はハラと握手を交わす。
「では、Zクリスタルを渡しますぞ」
そう言ってハラはポケットからオレンジ色の中央に拳が描かれたクリスタルを取り出す。
「これがあれば、儂が試合中に使った全力無双激烈拳を使えますぞ」
僕にクリスタルを渡しながら言う。
「そうだ、これも完成していたのですぞ。レーヴ君が持っていたかがやくいしを加工して作ったZリング」
そう言ってハラは黒いZリングを渡してくる。
「これで君もZワザを出せる様になりましたな」
僕が左腕に填めたのを見てハラは言う。
「他にも各タイプに対応したZクリスタルがありますので、探してみると良いですぞ。遅くなりましたが、大試練達成おめでとう」
「ありがとうございます、ハラさん」
「これから君の島巡りが本格的に始まるのですな。頑張って行くのですぞ」
そう言ってハラはステージを降りてテントの中に戻る。僕もステージを降りたところにハウがやってきた。
「すげー、じいちゃんに勝つなんて」
「次はハウの番」
そう言うとハウは頭の後ろに手を組んだ。
「いやー、流石に今の実力じゃあじいちゃんに勝てそうもないし、今回は見送るよ。でも、いつかはじいちゃんに挑戦して島巡りを達成する」
ハウはそう言って笑顔を作る。
「それもまた、一つの手だから良いと思う」
「でもレーヴ。俺、レーヴと一緒にアローラを周りたい。昔住んでいたけど、俺はメレメレ島しか知らないんだ。だから俺もレーヴの島巡りに付いて色んな島を巡りたいし、そこで自分を強くしたいんだ」
「僕も久しぶりに共に旅できる人が居て嬉しいよ」
「久しぶり?・・・レーヴは前は他の人と旅をしてたんだな」
僕は上着のポケットに手を入れて顔を俯ける。
「うん、旅で出会った大事な友達がね」
そこに入っているボールを触りながら言った。
「レーヴさん、勝利おめでとうございます」
その後にリーリエがやって来て言う。
「ありがとう、リーリエ」
僕が応えるとリーリエは提げている紙袋の中から箱を取り出す。
「これ、レーヴさんに似合うと思って買ってきました。被ってみて下さい」
僕は渡された箱を開けると三角帽子が入っていた。
「トリコーンとは、中々」
僕はそれを被る。
「似合います、レーヴさん」
「カッコいいぞ、レーヴ」
リーリエとハウが褒めてくれた。そこにククイ博士がやってくる
「お、レーヴは中々渋いのを被っているじゃないか」
そう言ってククイ博士はレーヴの頭を撫ぜる。
「大試練突破おめでとう。どうする?。もう明日には出発するのか?」
「そうしたいですが、効果機が修理中ですので」
アローラに来た時に無理をさせすぎて故障した効果機が直らなくては海を渡れない。
「島巡りを誘ったのは僕だから、付き合うよ。船も僕が持っているしな」
「博士、その船にハウも乗せていいですか?」
「勿論だ。旅は賑やかな方がいい」
「やったー、ありがとうレーヴ。博士」
「ククイだ。宜しくな」
「私はリーリエです。ハウさん、よろしくおねがいします」
二人が軽く自己紹介をハウにした。
色々あったが、無事に奉納試合を終えて僕達は明日の出発の為の準備をする為に自宅に戻る。
そうそう、マケンカニの腕は確かに美味だった。
「荷物はこれで良し」
明日に備えて荷物をバッグの中に詰めていると母さんから『ごはんよぉ』という声が聞こえる。僕は自室から出て机に座り食事をとり始めた。
「何を考えているの?」
食事をしていると対面に座る母さんが聞いてくる。
「明日、アローラ地方を巡る旅に出発する」
「家にはじっとしていないのね。10歳になっていきなり旅を始めて今まで家に長く居ないのね」
母さんも食事をしながら言う。
「ごめん」
「まあ良いわ。可愛い子には旅をさせよ。っと言うしね。リーリエちゃんも一緒?」
机に肘を付いて言ってくる。僕は思いっきり咽る
「ちょっと、大丈夫?」
「なんでリーリエの名前が出てくるの?」
僕は咽るのが静まってから聞く。
「だってあの子可愛いじゃない。レーヴがアローラに来るなりいきなり連れて来た女の子ですもの」
「母さん、前に事情を話したと思うけど」
母さんがいきなり鋭い目になって僕を見る
「それにあの子、何かを抱えているわね。・・・ちゃんとあの子を守ってあげるのよ」
「・・・・分かっているよ」
テレビが付けっ放しで色々なニュースなどをやっていたが、CMに入ったのを見る
『エ~テル、エ~テル、エ~テルざ~いだ~ん』
テレビには海上に浮かぶ巨大な建物が映っている。そして場面がポケモンが治療されている様子や保護区域と思われる場所を走るポケモン達に切り替わる
『エーテル財団はアローラ地方を中心に各地で傷ついたポケモンの保護・治療・育成に取り組んでいます』
先程より少し引いた場面であるが再び建物の映像に切り替わりテロップが表示されながら
『ポケモンとの暮らしでお困りでしたら遠慮なく連絡なさってください。また、傷ついたポケモンを発見された場合もご連絡いただければ直ぐに職員が保護に向かいます』
再びテロップが切り替わった
『貴方とポケモンの愛ある暮らしを応援しております。エーテル財団』
続いてエーテル財団の代表とされる女性がインタビューに答えている様子が映し出されている
「アローラは気候が温暖で住民も皆優しい。それに充実したポケモンの保護施設があるから、引っ越しをするって伝えたご近所さんは羨ましがっていたわ」
母さんがテレビを見ながら言う。僕は食事を終えて自室に戻った。
「友との約束・・・かあ」
置かれている6つのボールとは少し離れた所に置かれたアルファベットと数字が書かれた紫のボールを手に取る。
「お前も早く通常に戻りたいよな」
レーヴはベッドに寝転んで昔を回想する。
「頼む、レーヴ。共に事件解決に貢献してくれた君に最後のお願いだ」
ベッドに衰弱しきった様子で呼吸器や心電図を取っていると思しき電極を付けて寝転ぶ少年の傍らに僕が居た。反対側には白衣を着た女性と小さな女の子がいる。
「この子は人によって奪われた。なら、同じく人によって取り戻す事が可能な筈だ」
アルファベットと数字が書かれたボールを取り出してその少年は言う。
「俺の両親は奪われたポケモンに関わりすぎて体を蝕まれて亡くなった。俺も、関わりすぎた」
少年は少し呼吸器をずらした。
「でも、もう奪われるポケモンはいない。組織も俺とレーヴで壊滅させた。あとは取り戻していないのはこの子だけ」
少年はボールを僕の近くに置く。
「頼むレーヴ。この子のを取り戻してくれ。人のエゴで生み出されたこの子があまりにも可哀そうだ」
その瞬間、少年は思いっきり咳き込んでそれが止まらない。
「お兄ちゃん!!」
反対側に居た女の子がベッドに寝転ぶ少年に抱き着く。白衣を着た女性は『先生を呼んでくる』と言って出て行く。
「ゴボッ、ゴボッ。ハー、血の繋がりはないが、兄のように慕ってくれる妹や本当の両親のように育ててくれた父さんと母さんがいるんだ。最後まで幸せだ。こういう幸せな気持ちをこの子にも知って貰いたい」
僕はそれを聞き、託されたボールを持って病室を出る。入れ違いで先ほど出て行った女性に連れられて医者や看護師が中に入っていく。僕は病室の扉を閉めた。その横にある入院患者のネームタグには『RYUTO』と記されていた。
「それから暫くして妹から友の死を知らせる手紙が届いた」
ベッドから起き上がってボールを元の所に置く。
「各地を旅しながら出会った人たちの話を聞くと、アローラにそういう事ができる施設があることを教えてくれた」
机の中からアローラ地方を特集した旅雑誌を取り出す。
「エーテル財団。島巡りをしていたら、行くこともできるだろう」
僕は明かりを消し、布団に入って眠りについた。
『レーヴは色んな地方を旅してたんだロト?』
「そうだよロトム」
木陰で昼寝をしている僕の所にロトム図鑑が来て言う。
『色んな地方のポケモンを持っているロト。ゲットしたのは手持ちのポケモンだけロト?』
「違うよ。それぞれの地方の博士の所に研究の手伝いに置いている」
『それは朗報ロト。じゃあ、いつかは写真を撮りたいロト』
ロトム図鑑が嬉しそうに周りを飛ぶ。
『今のメンバーはレーヴのベストメンバーロト?』
「そう思っているけど、手持ちの子は皆僕と共に旅をしたいと願った子たちだ」
『そうロトか。ポケモン達もレーヴに懐いてるようだし、納得ロト』
「ところでロトム」
『ロト?』
僕は起き上がってロトム図鑑を掴む。
「あまり人の昼寝を邪魔しないでくれ。君も横で寝てみたら、気持ち良さを奪ったのを申し訳なく思うぞ」
そう言って僕は無理やりロトム図鑑を横に寝かせる。
『あ、ほんとロト。確かに気持ちよく寝れる気候ロト』
「アローラは温暖だから、木陰での昼寝は気持ちいいんだ」
2時間後、レーヴを探しに来たリーリエは木陰にて寝るレーヴとロトム図鑑を見つける。
「あら、やっぱり二人は仲が良いんですね」
リーリエはレーヴとロトム図鑑が背中合わせに寝る姿を見て微笑ましく思った。