少し先にあるポケモンセンターでラグラージやハウのポケモン達を回復させて外に出た。
「いや~、グラジオのポケモンは強かったけど、それを退けるレーヴはやっぱり強いな~」
ハウが頭の後ろに腕を組み、僕の方を見て言う。
「ヌルに関してはハウがダメージを与えていたってのもあるけどね」
「いや~。・・・でも、そのヌルってポケモンは初めて見た。レーヴも見た事無いんだよね?」
「うん。ロトムが最初分からないと言うから他の地方のポケモンだとも思うんだが・・・あの姿が気になる」
僕は考え込むように顎に手を当てる。
「あの継ぎ接ぎ姿・・・あの場でも言ったけど、人の手で作られた人工ポケモンなんじゃないかと思う」
今までも何匹かの人工ポケモンは確認されている。特に有名なのがポリゴンだった。
「何でそんなのを持ってるんだろ?」
「分からない」
僕は考えるのを止めて進もうと思っている方を見る。
「ここから先が、『せせらぎの丘』・・・。ククイ博士が言う最初の試練の地」
「港で会ったレーヴ君、無事にアンタの試練まで来れるのかな?」
コニコシティにある食堂にアーカラ島の島クイーン・ライチが居た。
「どうでしょうね?。あたしの見立てでは実力上は来れると思っていますけど」
ライチの座るテーブルに食事を運んできたマオが食器を並べながら言う。
「う~ん、やっぱりマオの作るZ定食スペシャルは最高ね。アローラの特産品をふんだん使ってて、家庭的で心にしみこむような味よ」
「ありがとうございます。料理人として、これ以上ない褒め言葉です」
マオはお辞儀をして言う。ライチは出された定食を数分で平らげてしまった。
「でも、最初の試練から一癖も二癖もある相手ですから。苦労するかもしれませんね」
マオが平らげられた食器を一つずつお盆に載せて厨房に運びながら言う。ライチはそんな彼女の後姿を見ながら
「レーヴ君は島巡りを脱落すると思う?」
「いえ、間違いなくあたしの所まで来ると思いますよ。スイレンの試練には、苦労するでしょうけど・・・」
「私、スイレンと申します」
せせらぎの丘に入った僕とハウの前に浮き橋に立つスイレンと名乗る少女と対面した。ノースリーブのセーラー服に波柄ズボン、恐らく滑り止め加工の施されたサンダルを履いた少女は僕とハウを交互に見てから
「こちらのせせらぎの丘にてキャプテンを務めさせて頂いています。腕の立つトレーナーさん、宜しければ助けて頂けませんか?」
キャプテンを名乗ったかと思えば、いきなり助けを求められたことに僕は困惑するが、
「レーヴです、宜しくお願いします。助けと言うのは?」
相手が名乗った以上、こちらも名乗っておいた方がよさそうだ。その後、スイレンの言う助ける内容を聞こうとする。
「レーヴさんですね。こちらへどうぞ。私に付いて来て下さい」
そう言うなりスイレンは振り返り、揺れる不安定な筈の浮き橋の上を何の苦も無く歩いて行く。僕とハウもそれに付いて行こうとするが、浮き橋に乗った途端揺れに襲われて二人で恐る恐る橋を渡った。
「ほら、あそこです。あれが分かりますか?」
浮き橋を渡ってしばらく行ったところにある別の湖の畔に立つスイレンは僕とハウが来るなり指を指して見せる。僕とハウもそちらを見やると、湖の一か所に勢いよく出る水しぶきが見えた。
「あの水しぶきが?」
「凄い勢いだね~」
僕とハウがそう言うと、スイレンはこちらを向き
「ダイナミックな水しぶきでしょ?あの水しぶきに驚いてポケモンが隠れてしまい、ポケモンが釣れないと釣り人から苦情が出ているんですよ」
僕とハウがスイレンの見ると、スイレンは泣き顔になっていた。
「私、キャプテンを務めているんですけど、手持ちのポケモンがそんなに強くなくて・・・・。あの水しぶきにも対処できなくて・・・・」
「お、落ち着いてスイレンさん。あの水しぶきを何とかすればいいんだよね?」
僕はスイレンを宥める様に言う。
「はい・・・。勿論泳いでとは言いません。この子をお貸しします」
そう言うなり、スイレンは腰につけているネットボールの一つを外して中のポケモンを出す。
「クゥ~」
中から現れたのはラプラスだった。
「この子をお貸ししますので、水しぶきを調べて下さい。宜しくお願いします」
ラプラスが地面を滑るように移動して湖に入ると、僕に乗るように促してくる。
「ラプラスは人やポケモンを乗せて泳ぐのが好きと言うし・・・失礼して」
僕はラプラスの背中に乗る。するとラプラスはゆっくりとだが、水しぶきの方に向かい始めた。
「止まってくれ、ラプラス」
僕がそう言うとラプラスは水しぶきの直前で停止する。僕はゆっくりと湖面に顔を近づけると、何やら巨大な影が見えたが、見えたと思いきや直ぐに見えなくなる。
「今のは何だったんだ?」
水しぶきは嘘のように治まっていった。すると、今度は崖下から再び水しぶきが上がるような音がする。
「レーヴさん!!。今度は下の方で水しぶきが発生したみたいです!!。一度戻ってください!!」
スイレンが大きな声で呼んでくる。ラプラスはスイレンとハウが待つ所まで泳いでいった。
「レーヴ、どうだった?こっちからはレーヴが近づいた途端水しぶきが治まったように見えたけど」
岸についてラプラスから降りると、ハウが質問してくる。
「分からないな。巨大な影が見えた気がしたんだが、直ぐに見えなくなった」
「巨大な影・・・もしかして噂に聞くカイオーガ!?」
スイレンの言葉に僕はびっくりする。
「カイオーガって、昔ホウエン地方に現れたっていう伝説の?」
ハウがそう言うと、スイレンがハウの方を見る。
「そうです。ここせせらぎの丘はその昔、カイオーガが休憩場所として使っていたと言われています」
「あはは、そんな伝説相手に僕のポケモン達が戦えるかな・・・・」
僕は不安になりながらポケットに入れてあるボールを触る。
「だ、大丈夫だよ。じいちゃんに勝ったレーヴならカイオーガにも勝てるよ!!」
ハウが励ます様に言ってくれる。
「ありがとう、ハウ」
僕はハウに礼を言う。ポケットに入ったボールから手を離した。
「とりあえず、下に行きましょう」
スイレンはそう言うなり、一旦ラプラスをボールに戻した。その後、スイレンの後に続いて坂を下って行った。
「ほら、あの水しぶきです」
下った先にある湖に先ほどと同じように一本の水しぶきが上がっている。スイレンは再びラプラスを出し、僕が背中に乗った。
「もう一度お願い、ラプラス」
ラプラスは水しぶきに近づいていく。しかし、今度は近くに行っただけでその巨大な影は再び移動した。みるみる水しぶきは治まり、辺りが静かになる。しかし、空は黒く厚い雲に覆われた。
「レーヴさん、こっちです!!」
いつの間にかハウとスイレンが移動していた。
「こっちから大きな水しぶきが上がる音がします」
僕が近くの岸に上がり、一緒に水しぶきが上がる湖に移動する。
「レーヴさん・・・」
立ち止まったスイレンは低い声で言う。
「そこに、キー。アローラではティキと言うらしいですが、木彫りの像がありますよね」
僕が振り返ると、確かに木彫りの像が二つ並んでいる。
「あるけど、それが・・」
スイレンがこちらを笑顔で見ながら
「その像を越えたという事は、今から試練開始です」
言った。
「今後もその像はキャプテンゲートと覚えておいてくださいね。その像を越えた所から試練開始です」
スイレンがそう言った直後、いきなり雷雨が襲う。
「もしかして、その試練ってのがカイオーガと戦う事?」
僕が恐る恐るスイレンに聞くと、
「さあ?どうでしょうかね?」
笑顔で答えた。
「ほんと、泣いたり笑ったり底が知れないよ」
表情がコロコロと変わるスイレンに少し翻弄され気味だが、試練である以上挑まないわけにもいかない。スイレンに再びラプラスを出してもらい、それに乗って水しぶきに近づく。
「頼む、カイオーガでない事を願う」
雷が鳴り、痛いほど激しい雨が降り注ぐ中水しぶきの所に到着した僕は湖面を再び観察する。
「なにか、今度は数匹の魚影が盛んに移動している」
そう言った瞬間、巨大な水しぶきが目の前で上がる。そして、湖面と水しぶきをかき分けて巨大なポケモンが現れた。
「カイオーガじゃないけど、デカすぎだろ」
現れたポケモンはホエルオーには劣るもカイオーガには負けない巨大な姿をした魚状のポケモンだった。
『レーヴ、レーヴ』
ロトム図鑑が金具を外して僕の横に来る。レーヴはロトム図鑑の方を見ると
『あれはヨワシというポケモンロト。それがむれたすがたをしているロト。でも、通常のヨワシよりもはるかに巨大ロト』
「あれは、群れで形成されているのか」
よく見ると輪郭が動いている。生物ではなく、その姿が集合体を示しているのだ。
『ヨワシ、こざかなポケモン。単独ではとても弱いが、集団となるととても強く、ギャラドスでも退けてしまう』
ロトム図鑑が説明をしてくれる。
「ギャラドスどころか、カイオーガも退けそうだ」
ロトム図鑑の説明を聞いて僕はロトムに言う。
「でも、戦わないとね」
「ギョエエエエエ!!」
巨大なむれた姿のヨワシが吠えるが、僕は怯まずにポケットからボールを取り出し、投げた。
「せせらぎの丘の上空に黒く厚い雲。レーヴ君はスイレンの試練に挑んでいるみたいね」
食堂の外に出たライチはマオと共にせせらぎの丘上空に現れた雲を見て言う。
「スイレンの口車に乗せられて、いきなり試練に挑まされてなきゃいいけど。あれ、結構挑戦者から苦情来るのよね。『騙された―!』や『前触れ無く試練始まって主にボコボコにされた!!』とか」
「スイレンの試練で脱落する挑戦者は多いですからね」
ライチの言葉にマオが苦笑いを浮かべて言う。
「まあでも、単純に主の実力だけで測ったらスイレンのはアーカラで一番だけどね」
「そうですね。スイレンが丹精込めて育て上げた一匹ですし」
「でも、アーカラ島の主で一番えげつないのはアンタの育てた主だけどね」
「アハハ、それ言っちゃいます?」
その時、食堂奥の暗がりから大きな影がマオの後ろに歩み寄る。
「この子はあたしが丹精込めて育て上げたポケモンですもの。挑戦者の実力を確りと見極めて、達していないなら容赦なく脱落させる実力を持ってますもの」
そのポケモンの陰に一瞬光が当たり、黄緑色の鎌が見えた。