五番道路を抜けてオハナ牧場に戻った僕とハウは目の前に立ち塞がるウソッキーの目の前に立つ。
「そうそう、ウソッキーがこんな風に立ち塞がってて、先にあるロイヤルアベニューに行けなかったんだよね」
ハウが腕を頭の後ろに組んで言う。
「僕は君を追いかけてたけど、ちょっとここら辺はトラブルがあってそれどころじゃなかった」
僕は周囲を警戒して言う。またツツケラ・・・・カヒリ曰くドデカバシ一家に見つからないかを。
「ごめんごめん。俺、マラサダの事になると、それで頭一杯になるからさあ」
「知ってるよ、ハウ。ここに来るまでに他の人からも君は『マラサダと叫ぶ少年』って事で凄く印象残ってたみたいだから」
「ウゲェ!。それはそれでやだなあ」
僕はネットボールを取り出し、ラグラージを出す。ラグラージはボールから出るなり僕の所に来て頬ずりする。
「よしよし、先の主戦でランターンを上手く援護してくれてご苦労様」
僕は頭を撫ぜつつ、もう片方の手でバッグに入っているスイレンから貰ったミズZを取り出す。
「レーヴ、なんかウソッキー達が震えだしたんだが」
ハウの言葉に僕がウソッキー達を見ると、確かに怯える様に震えている。
「ラグラージ、脅かすだけで大丈夫だからね」
そう僕が小声で言うと、ラグラージは頷く仕草をする。僕はラグラージから離れてZクリスタルをリングに填めた。
「まさか、初めてのZ技の使用がバトルじゃなくこんな事とはね」
腕を顔の前でクロスさせる。すると、Zクリスタルが青色に輝きを放って全身に力が漲る感じがする。
「これが、Zパワーか」
ラグラージも同様のポーズをし、僕の動作に合わせて動く。青色のオーラを纏ったようにラグラージ自身も力を感じてるようだった。
「ラグラージ、行くぞ!」
僕がポーズの最後を決める直前、頭の中に言葉が浮かんだ。最後に腕を右側に持ってきたときに
「スーパーアクアトルネード!!」
頭に浮かんだ言葉を言った。ラグラージがそれに反応して口から水を出しながら回転して突進する。そしてウソッキーの手前で停止して見せた。
「ウソッキーーー!!」
驚いたウソッキー達は全員一目散に振り返って逃げていく。
「スイレンからお仕置されてトラウマだったのかな?」
ハウが僕の所に来て言う。
「そうだと思うよ。ウソッキーは見た目からくさタイプと勘違いされやすいけど、実際はいわタイプだからね。みずタイプの技は苦手だから、そこに強力な技をされたらトラウマになるよ」
僕はそう言って逃げ出しているウソッキーを見送る。
「さて、行こうか。ロイヤルアベニューに」
六番道路の途中の道を曲がった先にある町、ロイヤルアベニュー。花壇を囲むようにロータリー式の歩道が設置された公園が目の前にある。
「ここが、ロイヤルアベニューか」
僕とハウはその公園に足を踏み入れた。
「ん?このニオイは・・・」
すると、ハウが何やらニオイを嗅ぐ仕草をし、ニオイがしているであろう方向を見ると
「マラサダショップだ!!」
そう言うなり全速力でダッシュしていく。僕は目が点になりながらも後をゆっくりと付いて行く。
「マラサダ♡」
ハウはそう言って公園のベンチに腰掛けてマラサダを頬張っている。脇にはマラサダがどっさりと入った大きな袋が置いてある。
「やっと買えたよ。長かったよ。遠回りもしたけど、ようやく食べられる」
僕の横に腰掛けるハウが幸せそうな顔で食べていると、見たこともない鳥ポケモンが寄ってくる。
「鳥ポケモン!?」
あのツツケラやケララッパが少しトラウマになっている僕は驚いて椅子から落ちそうになった。
「アハハ、大丈夫だよレーヴ」
ピンク色をしたフラダンサーを思わせる鳥ポケモンはハウの近くに寄ると、マラサダの入った袋の淵に掴まろうとジャンプしたが、袋自体に強度が無いので掴んでもそのまま倒れた。
「マラサダが食べたいの?。ならあげるよ」
そう言ってハウはその鳥ポケモンに袋から一つマラサダを取り出して目の前においてあげる。それを見て立ち上がった鳥ポケモンはマラサダに寄っていき、啄んだ。
「ハウ、そのポケモンは?」
僕は恐る恐る近づいてその鳥ポケモンを観察しつつ、ハウに尋ねる。
「ああ、このポケモンは『ちょっと待つロト!!』」
ハウが言おうとした矢先、ロトム図鑑が割って入る。金具を広げて出てきたロトム図鑑がその鳥ポケモンをスキャンして画面に表示させる。
『オドリドリ、ダンスポケモン。これはふらふらスタイルだロト。揺ら揺らと揺れたダンスを披露し、敵の身も心も穏やかにする』
ロトム図鑑が説明を終えると別の画面に切り替わり、目の前のオドリドリ以外の三種類が映し出される。
『オドリドリはこの姿以外にも三種類確認されていてそれぞれにめらめらスタイル、まいまいスタイル、ぱちぱちスタイルと言うロト』
「へえ、四種類の姿があるんだ」
オドリドリは満足したのか飛び立ち、中央の花壇の所まで飛ぶとダンスをし始める。
「これがロトムの言うダンスかあ。敵対心は無いけど、穏やかになるよ」
そう言って僕はバッグからカメラを取り出し、オドリドリの正面に移動してシャッターを切った。
「あれ?ハウ、そういえばあの建物は?」
背後にある巨大なドーム状の建物を指差してハウに聞くと
「忘れてた!!ククイ博士にマラサダショップの場所を聞きに行ったとき、ショップのある町に行ったらロイヤルドームに行くよう言われてたんだ!!」
ハウが立ち上がるとこちらに駆けてくる。
「あれが多分ロイヤルドームだよね。すぐに行こう」
ハウは僕の腕を引いてそのままロイヤルドームへと駆けて行く。
中に入るとそこには
「レーヴか」
グラジオがいた。
「グラジオ・・・どうしてここに?」
僕がグラジオに相対する。グラジオは僕の方を見て中二病のようなポーズを決め
「フッ、強くなるためにここにはよく訪れている。孤独を埋めるには最適だからな」
「アハハ、グラジオは相変わらずだね」
ハウは手を後ろに組みながら言う。
「お前たちは何をしにここへ?」
グラジオが僕とハウを交互に見て言う。
「いや~、博士がここに行くようにって・・・」
「よくぞ来た、君たち!!」
いきなり二階から大声で言ってくる人物がいた。僕達だけでなく、ドーム内にいる人間全員がその人物に注目する。
「我こそはポケモンバトル。そして、ここロイヤルドームで行われるバトルロイヤルの伝道師!!。人は私を、ロイヤルマスクと呼ぶ」
階段を下りてくるなり、僕たちの方に向くロイヤルマスクと名乗った男性。周囲の人間は知っているのか、声援を挙げている。覆面をしていて素顔は分からないが、鍛え上げられた腹筋を露出させる上半身裸に下半身をロングタイツの出で立ち。
「まさか、ポケモンと一緒に自分も戦わないですよね?」
僕はその恰好を見て真っ先に思い浮かんだ疑問をぶつける。
「戦わん!!」
っと、きっぱり否定してくるロイヤルマスク。
「アローラに古くから伝わるポケモンバトルの形式を教えるぞ。バトルロイヤルとは!。四人の!!。ポケモントレーナーがそれぞれ三匹ずつ持ち!!。誰かのトレーナーの手持ちが全滅したときに一番多くのポケモンを戦闘不能にしていたトレーナーが勝利となる!!」
場が静まり返った雰囲気となる。
「まずはお試しだ。丁度三人居るし、私も入れて一匹ずつで試合をしよう」
そう言ってロイヤルマスクは奥へと入っていく。
「俺は強くなるために来たんだ。戦えるなら、誰でも構わない」
グラジオも奥に入っていった。
「レーヴ、どうする?俺は、ちょっと戦ってみたい」
「なら、行こうかハウ。強そうなトレーナーだったし、腕試しさせてもらおう」
僕とハウも先に入って行った二人を追うように入って行く。
『ここはロイヤルドーム、バトルロイヤル会場です』
奥の闘技場には既に観戦する人たちが一杯に入っており、熱気に溢れていた。そんな中、アナウンスが続く。
『今日はお試しの試合ということで使用ポケモンは各一体。では、選手の入場です』
僕のいる入り口の扉の上にある合図の光が赤から青に変わる。それを確認して会場へと出ていく。
『まずは緑コーナー!。各地方を旅してきたトレーナー、レーヴ!!。アローラでは現在、島巡りに挑戦中とのこと。多くの経験を積んできた実力は如何に!?』
歓声が挙がる中、僕はトレーナーが立つ円の中心へと移動する。続いて、黄色コーナーからハウが出てきた。
『黄色コーナー!!。メレメレ島の島キングを祖父に持つトレーナー、ハウ!!。島巡りに挑戦するための実力を身に付けるべく、現在は修行中とのこと。果たして、祖父譲りの実力を兼ね備えているか如何に!?』
ハウは笑顔で手を振りながら円の中心まで移動する。青コーナーからグラジオが現れた。
『青コーナー!!。経歴不明なれど、実力は確か。当施設で複数回の出場経験があり、いずれも好成績を収めているトレーナー、グラジオ!!。今回もその実力を発揮できるか如何に!?』
グラジオが静かに移動し、位置に付く。最後に赤コーナーからロイヤルマスクが出てくると、会場がより一層歓声が挙がる
『最後に赤コーナー!!。バトルロイヤルの伝道師であり、当施設無敗のチャンピオン、ロイヤルマスク!!。当施設設立時より無敗の記録を更新し続けており、今日も熱いバトルを見せてくれるか!!』
ロイヤルマスクが歓声に答えるように片手をあげながら歩く。会場の熱気は最高潮に達したように歓声も凄まじいものがある。
『では、各自ボールを用意して』
アナウンスの言葉に僕はボールを出す。他のメンバーも同じくボールを出した。
『それでは、レディ・ファイ!!』
アナウンスの開始の合図と同時にコングが鳴り、全員が同時にボールを投げた。
「どうしたのスイレン?。・・・・・そう。・・・・うん、分かった。もう一本電話が入ったら、そっちにも連絡する。その時はいつものやつを準備してシェードジャングルに向かって」
電話の相手とそんな会話をするマオはお客の居ない食堂にあるテーブルを一つ一つ丁寧に拭いていく。
「私もビックリだよ。実力は港で会って大体は把握したけど、特別有利と言う訳でもないタイプでスイレンの試練を突破するなんて。・・・・そう。みずポケモン好きのスイレンには良かったじゃないの。それじゃあ、またあとでね」
電話を切ったマオは厨房に戻る。
「スイレンの試練、無事に突破したんだって」
厨房奥の暗がりに居る影に向かって話しかける。その影はゆっくりと立ち上がった。
「もう一つの試練を突破したら、貴方との試練ね。久しぶりの強敵に、貴方も待ち切れないんじゃなくて?」
その影は両手を広げるようなポーズを取って咆哮する。
「それじゃあ準備もあるし、移動しようか。・・・大丈夫よ。レーヴ君の実力なら無駄足に終わらないと思うから」
そう言ってマオは大きな鍋と数個のコンクリートブロックを台車に乗せ、厨房から出て行く。その影もマオの後ろを付いて行った。