ポケットモンスター レーヴの物語   作:景雲

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第21話 カキの試練

マラサダショップを出て、ロイヤルドームの前の道を右に向かって巨大なスーパーマーケットが見えた。

 

「うわー、スーパー・メガやすがあるよ。レーヴ、寄ってこうよ」

 

ハウがはしゃぎながら僕の腕を引っ張る。

 

「待って、ハウ。スーパー・メガやすって何?」

 

僕が引っ張るハウを止めると、ハウはそのスーパー・メガやすと呼ばれる建物を指さす。

 

「じいちゃんが、言ってたんだ。スーパー・メガやすは安くトレーナーに必要な物を買い揃える事ができるって。まあ、安く大量に売る手法でアローラ各地に出店しようとしてある事件を起こしちゃったみたいだけどね」

 

「まあ、今はそれはいいから。俺、一度スーパー・メガやすに行ってみたかったんだよ」

 

「メレメレ島にはないの?」

 

「出店計画はあったみたいだけど、その事件以降は規模を縮小して営業しているみたい」

 

そう言ってハウは店内に入ろうとするので、僕も後について店内に入った。

 

 

 

自動ドアを潜ると、中は広いが所狭しと棚が置かれていて広さをあまり感じられない。棚には多くの旅に必要な品が並べられている。

 

「どれも定価の半額で売られているね。確かに初心者トレーナーでも安く旅に必要な物をそろえられると思うよ」

 

モンスターボールも定価二百円が百円で売られているように、全ての商品が定価を二重線で消されて半額の値段で陳列されている。

 

「だから一杯買えちゃうんだ。これも、これも。あ、これも欲しいね」

 

ハウは次々と手に取ってカゴに入れている。

 

(なるほど、半額を謡ってトレーナーの購買意欲を刺激して沢山買わせる手法か。これなら一つの利益が低くても個数でカバーできる)

 

僕は感心しながら棚を見ていくと

 

「ハウ、いいキズぐすりとかが無いけど」

 

店内のどこを探してもキズぐすりはあれど上位のいいキズぐすりやすごいキズぐすりなどが売られていない。

 

「申し訳ございません、お客様。当店ではいいキズぐすりの取扱がございません」

 

すると聞こえていたのか、店員さんが言ってくる。

 

「そうですか、分かりました」

 

僕は諦めて他の物を探す。幸い、各種状態異常なおしが売っていたのでそれらと『ポケモンとたべるケーキ』を購入した。

 

 

僕は購入したポケモンとたべるケーキを切り分けていく。隣ではハウも同様に切り分けている。

 

「レーヴのポケモンって色んな地方のポケモンを連れているけど、どうやって友達になったの?」

 

「うーん、皆いろんな出会いをしたポケモン達だからね。特にガブリアスとはね」

 

僕はダークボールからガブリアスを出す。

 

「当時はフカマルだったけど、この子は洞窟で他のポケモン達に襲われているのを雌のガブリアスが守っていたんだよ。流石に、シンオウで一番強いポケモンとはいっても大勢に襲われたらどうしようもないからね」

 

ガブリアスはこちらに近づいてきて僕の横に座り、切り分けているケーキを眺める。

 

「助けたはいいが、ガブリアスは手遅れだったよ。この子も傷ついていたから急いでポケモンセンターに連れて行った。幸いこの子はそこまで重症じゃなかったから回復したけど、急いで戻ったらもうガブリアスの姿は無かった」

 

「ポケモンは死期を悟ると、姿を消すってやつ?」

 

ハウがガブリアスを見ながら言う。

 

「多分。僕が戻ってくると分かって、姿を消したんだと思う。回復後にフカマルを連れて行ったら、泣き出してしまって、大変だったよ」

 

ガブリアスは頬を掻く仕草をする。あの時の事を覚えているようだった。

 

「その後は僕とシンオウ地方を旅したんだよ。この子、寒いのが苦手で、キッサキシティっていう雪の降り積もる奥地にある街に連れて行くのは苦労したな」

 

ガブリアスが腕を組んで凍える仕草をする。

 

「・・・・まあ、他にも色々と過去を抱えたポケモンも居るけど、今は皆仲良く旅してきたメンバーだよ」

 

僕は一瞬間を開けて言い、残りのポケモン達を出す。クロバットにラランテス、ラグラージとクレベースにランターン。紙皿に切り分けたケーキをのせてそれぞれの前に置く。ポケモン達は喜んで切り分けられたケーキを食べる。

 

「他の出会いも、今度聞かせてよ」

 

ハウがそう言うので、僕はハウの方を向いて

 

「いつか・・・ね」

 

そう答えた。ハウも自分の手持ちを出して一緒にケーキを食べる。

 

(そういえば、このケーキはポケモンと一緒に食べるケーキだった。自分の分を切り分けていなかった)

 

僕はうっかりして自分の分のケーキを切り分けるのを忘れていた。見かねたポケモン達が自分の残りを分けようとしてくれる・・・・君たち、最高ですよ。

 

 

 

「流石に山頂の火口に近づいてくると暑いな」

 

僕とハウは噴出す汗を拭きながらヴェラ火山の山道を登って行く。照り付ける太陽とマグマの熱さが相まって灼熱といっていい状態だった。

 

「レーヴ、流石に限界だよ」

 

ハウがフラフラと倒れそうに歩く。

 

「とりあえず、そこのトンネルに入ろう」

 

僕は見えているトンネルを指差して言う。トンネル内なら少なくとも日光は遮られて多少はマシな筈だ。

 

「さんせ~い」

 

僕とハウはトンネルに入った。

 

「溶岩洞だね。足元とか崩れやすいから気を付けて。あと、天井とかも注意してね。溶岩が噴出してくるかもしれないから」

 

「レーヴは物知りだね」

 

ハウは感心する様に言う。事実、溶岩洞は脆い。下に空洞があれば人が乗っただけで一瞬で崩れる。しかも、質の悪いことにまだ周辺を溶岩が胎動していることもある。

 

「そうでもないよ。さあ、気を付けて進もう」

 

注意をしつつトンネルを抜けると、右手にはスイレンの試練の際にみた木彫りの像が置かれている。

 

「ここが、試練の場。もう暑くてヘトヘトだよ、レーヴ」

 

火口に近づいたのでより暑さが増した。ハウは座り込んでしまう。

 

「日陰の岩に手を触れて、触れる位の熱さならそこに背中を預けて休んでて」

 

僕はそう言うと、試練の門をくぐって奥に進む。

 

 

 

試練の門を潜り、奥に歩いていく僕は祭壇のように岩を丸く切り出して一段高くした場所に到着する。その祭壇の上には、一人の少年が佇んでいた。

 

「俺の名前はカキです。このアローラ地方に古くから伝わるファイアーダンスをガラガラと共に学んでいます」

 

まるで燃えているような髪型をした上半身裸の短パン、サンダルの出で立ちであるその少年はカキと名乗り、背後から骨を取り出した。

 

「マオから連絡を受けています。貴方がレーヴさんですね」

 

「そうです」

 

知っているなら話は早い。カキは取り出した骨を回し始めると、いつの間にか骨の両端が青緑色の炎が灯っているようで、ゆらゆらとした輪郭を描く青緑色のリングが出来ている。

 

「俺の試練は観察力と記憶力を試します。一度目と二度目の踊りの違いを指摘してもらいます」

 

そう言うと、何処からともなく三匹のガラガラが現れる。だが、そのガラガラは僕の知るガラガラとは違っていた。

 

「そのガラガラ、もしかくしてリージョンフォーム?」

 

カキは一瞬驚いた表情になるが、思い出したように直ぐに冷静な顔になる。

 

「そういえば、マオから今回の挑戦者は地方外の人間と聞いてました。俺にとってのガラガラはこの姿ですが、別の地方には違うガラガラが居るという話を聞いたことがあります」

 

通常のガラガラと違って体は黒っぽく、瘦せた印象を受ける体躯だった。

 

「へ~、こっちのガラガラは骨に火を付けれるんだ」

 

三匹とも頭に被る骨に手に持った骨を擦り付けると、青緑色の炎をあげ始める。そして、三匹とも両端を着火させた骨を持って横一列に整列する。

 

「では、気を取り直して。・・・・始め!!」

 

カキがそう合図をすると、三匹のガラガラが骨をクルクルと回しながら思い思いに歩き始める。暫く僕が見ていると、最後に三匹がポーズを決めてフィニッシュする。僕はそれに拍手を送ると

 

「拍手はありがたいが、今は覚えることに集中しなくて良いんですか?」

 

「こんな素晴らしいダンス、タダで見して貰うならせめて拍手はしないとね。記憶してますから大丈夫ですよ」

 

僕がそう言うと再びガラガラは横一列に整列する。

 

「では、先ほどと何が違うのかよく見てて下さい。・・・・始め!!」

 

カキの合図に、再びガラガラが骨を回しながら先程と同じルートを歩く。今の所、全く同じである。

 

「まさか、骨の回すタイミングが違うとかではないですよね?」

 

僕はガラガラ達のファイアーダンスを見ながらカキに質問する。

 

「そんな細かい所を指摘するようになったら有りすぎて困ります」

 

そうカキが答えた。ダンスも終盤に差し掛かった頃、カキが(おもむろ)にカメラを取り出すと、一枚撮影する。

 

「これと先程のダンスとを比べてください」

 

インスタントカメラだったのか直ぐに現像された写真を渡される。それを見て、僕はひっくり返りそうになる。

 

「さっき居なかった人がダンスに参加しているんだけど、僕の目にはこんな人居なかった気がするんですが・・・・」

 

写真の隅にニット帽と大きなバッグを背負った男性が映し出されている。

 

「この山男のダイチさんは『こうそくいどう』が使えますので、こうやって写真を撮らないと挑戦者が見逃してしまうんです」

 

「こうそくいどうって・・・・マジ?」

 

ポケモンの技を人間が使えるなんて・・・

 

「正解なので次を・・・」

 

「待って。こんな調子のが続くの!?」

 

こんな調子の問題が続いたら僕は耐えれず笑ってしまう。

 

「二問なので、次で終わりですよ」

 

「助かった」

 

「?・・・・では、次のダンスをしますね」

 

ガラガラ達が横一列に整列し、骨を回し始める。今度は先程の単純な動きではなく動きが交差したりする。そして、最後にお約束のポーズを決めた。そのポーズが、一匹がカメラを構えているようなポーズで、他の二匹はハイテンションな観光客みたいに万歳のポーズをしている。・・・なにより

 

「なんで山男がいるんだよ!?」

 

一番気になったのはガラガラではなく先程の写真に写りこんでいた山男が今度はポーズを決めていた。

 

「もう無理、腹が捩れそう」

 

「救急車呼びますか?」

 

「誰のせいだ、誰の!!」

 

僕が必死に笑いを堪えているとカキがもうワザと言ってるとしか思えない言葉をかけてくる。

 

「すみません。前の挑戦者もこの暑さにやられたのか、最後のダンスで蹲ってしまって。結局リタイアしてしまいました」

 

「それは絶対に暑さのせいではないと思う。賭けてもいい」

 

そんなやり取りをしているとガラガラが再び横一列に並ぶ。

 

「では、先程と何が違うのか見比べていただきます」

 

そうカキが言うと、ガラガラは骨を回し始めて再びポーズを決める。先程と全く同じポーズだ。乱入した山男を含めて。しかし、

 

「なんか大きいポケモンがいる!!」

 

山男の後ろに立ち上がるようにして乱入した黒いポケモンがいた。

 

「正解です。では、おいでませ~ぬしポケモン!!」

 

「どくどく~!!」

 

そのポケモンはヤトウモリが大きくなった見た目だが、後ろ足で立てるくらいの筋力があるのか、後ろ足の付け根部分が太くなっている。腹部には赤い模様も確認できる

 

「ヤトウモリの進化系かな。なら、どく・ほのおの複合タイプ」

 

僕が手持ちポケモンのボールを投げた。

 

 

 

 

「よいしょっと」

 

マオは深い森の中に転がしてきた台車から鍋を降ろして設置する。

 

「ふー。ここまでの労力を使わせたんだからレーヴがリタイアしたら許さないから」

 

マオはそう言って薪を集め始める。付いてきた黒い影は周囲を見渡すように視線を動かす。

 

「貴方も、皆に会って来たら。ここの皆を守ってきたんだから、皆帰りを待ちわびているわよ」

 

マオが黒い影の方に向かって言う。黒い影は暫し思案するように立ち止まったが、頷いて茂みの奥に入っていく。

 

「あの子も素直じゃないんだから」

 

マオは薪拾いを再開しつつ言った。

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