ククイ博士に連れられてグラウンドにあるバトルフィールドに移動する。そこには何人もの生徒が整列して待っていた。
「アローラ皆。今日は僕だけじゃなく、特別にトレーナーの方に来てもらった。これから皆にバトルを教えて貰うためだ」
「「よろしくお願いします!!」」
ククイ博士の言葉に生徒たちが一斉に挨拶する。僕も、
「アローラ、皆さん。レーヴです。今日は宜しく」
挨拶する。
「早速だが、彼に挑戦する者はいないか?」
ククイ博士が生徒たちを見渡すと
「はい、はい!俺が一番最初にやりたい!!」
元気良く手を挙げる生徒がいた。ククイ博士はその子の方を見て
「ゴロウか。じゃあ、最初の勝負は君だ」
「よっしゃー!」
ゴロウと呼ばれた生徒は飛び上がるなり、走ってフィールドの端へ移動する。
「早く早く!!」
ゴロウは待ち切れないとばかりに飛び跳ねながら急かしている。ククイ博士は僕の方に来て
「と言う訳だレーヴ。彼が最初に君に挑戦する」
と説明する。
「良いですけど、僕はこれまでの旅で鍛えたポケモン達しかいませんよ」
今まで旅をしてきた関係で僕のポケモン達は相当鍛えられている。とても、まだ初心者のトレーナーが相手にできるレベルではない。
「な~に。負ける悔しさを知るのも大切な事だ。遠慮しないで戦って構わないよ」
ククイ博士は笑顔で言う。とても・・・残酷だ。
「泣いても知りませんよ」
「時には泣かすのも、教育には必要だよ」
「博士は教師じゃなく、教育者だと思いましたよ」
「こちらにいらしたんですね」
フィールドにリーリエとロトム図鑑がやってくる。
「丁度良いタイミングだ。リーリエ、これからレーヴがポケモンバトルするんだ。見学するかい?」
ククイ博士がリーリエに尋ねると
「はい。私、レーヴさんのポケモンバトルを見るのは初めてです」
『僕がレーヴをサポートするロト。ついでに、データを集めさせてほしいロト』
リーリエが承諾し、ロトム図鑑はサポートを申し出る。
「助かるよ、ロトム。正直、アローラのポケモンはまだ分からないからね」
『えっへんロト。感謝するロト』
「その態度がなければ感謝するよ」
ロトム図鑑は人間でいう腰に手を当てて得意げな顔をしていた。
「遅くなってごめんな」
僕もフィールドの反対側に移動してゴロウに謝る。
「待ちくたびれたよ」
そう言ってゴロウはモンスターボールを構える。
「行け―!、アゴジムシ」
「ジムシ!」
出てきたのはアゴジムシと呼ばれたポケモンだった。
『アゴジムシ、ようちゅうポケモン。大きなアゴを2本持ち、樹木を削って樹液をすする。普段は地面の中に住むポケモンロト』
ロトム図鑑が解説をしてくれる。初めて見るポケモンだから解説はありがたい。
「行くぞ、クロバット」
「フルゥ!」
モンスターボールから出るなり4枚の翼を広げて空中に滞空する。
「クロバット、はがねのつばさ」
僕は先制攻撃を仕掛けに行く。クロバットは低空に降り、地面スレスレを滑空しながら鋼と化した翼をアゴジムシに当てにかかる。
「え?」
しかし、当たる直前にアゴジムシの姿が消える。クロバットもいきなり消えたアゴジムシを探そうと上昇する。
「逃がすな、いとをはく」
ゴロウが指示をすると地面からアゴジムシが顔だけを出して口から糸を吐く。その糸は上空を旋回するクロバットの胴体を捉えた。
「へえ。地面に潜って攻撃を躱したのか。ポケモンの特徴を使った戦い方だな」
僕は感心した。まさか、そこまでポケモンの特徴を生かす戦いをするなんて。
「単純に力で押すだけじゃないって訳ね」
「アゴジムシ、そのまま手繰り寄せろ」
アゴジムシは捉えたクロバットを自身の元へ引っ張り始める。
「クロバット、羽ばたいて引っ張り上げろ」
クロバットはまだ自由な4枚の翼を全力で動かしてアゴジムシに対抗する。流石にクロバットの羽ばたく力の方が上だった。アゴジムシがやがて地面から離れて空中に浮かぶ。
「アゴジムシ、自身で糸を手繰り寄せろ」
アゴジムシは自分の元へクロバットを引き寄せるのを止め、自身が糸を手繰ってクロバットに近づく。
「そのままスパークだ!」
「え?」
スパークの直撃を喰らったクロバットはそのまま地面に叩きつけられた。
「電気技を使えるのか」
僕の言葉に隣にいるロトム図鑑が反応する。
『アゴジムシは進化すると虫・電気タイプの複合になるロト。だから電気技も覚えることができるロト』
ロトム図鑑は得意げに説明した。
「ロ~ト~ム」
僕はロトム図鑑を捕まえて振り回す。
「そういうのは先に言え!!」
『何するロト!ひどいロト!』
「レーヴさん、ロトム図鑑さんと喧嘩していますよ」
リーリエが隣に立つククイ博士に言う。ククイ博士は頭を掻いた。
「レーヴの奴、流石に手を抜きすぎだ」
「え?」
リーリエが疑問の顔でレーヴを見た。
「クロバット、エアカッター」
クロバットが羽ばたいてできた風が鋭い刃物様になってアゴジムシを襲った。堪らずにアゴジムシは再び地中に潜る。そして地中からアゴジムシが飛び出した瞬間
「アゴジムシ、後ろだ!!」
ゴロウの指示も遅く、音も無く忍び寄ったクロバットはアゴジムシを口に咥える。
「そのまま‘きゅうけつ‘」
クロバットの鋭いキバがアゴジムシの外骨格を貫いて体力を吸い尽くす。
「アゴジムシ、スパーク」
体力勝負となったが、減った分をきゅうけつで補えるクロバットが体力勝ちするのは明白だった。アゴジムシはそのまま倒れ、戦闘不能となった。
「お疲れ、クロバット」
クロバットが此方に羽ばたきながら近づいてくる。僕とクロバットは一旦ククイ博士の所に行く。
「レーヴ、少し手を抜きすぎだぞ」
ククイ博士の所に行くなりククイ博士に頭をワシャワシャされながら言われる。流石に博士にはお見通しだった。
「皆、ちょっとペアを組んでバトルの練習をしててくれ」
ククイ博士がそう生徒達に言うと、他の生徒は仲良しでペアを組んでバトルを始める。
「お疲れ様です、レーヴさん」
リーリエが濡れたタオルを差し出してくれる。僕はそれを受け取って顔などを拭く。
「ありがとう、リーリエ」
「どういたしまして。クロバットさんも回復させますね」
そう言ってリーリエはバッグのサイドポケットから薬を取り出してクロバットに吹き付ける。クロバットは嬉しそうに羽を羽ばたかせた。
「それでレーヴ、アローラでの初めてのポケモンバトルはどうだ?」
ククイ博士が近くまで来て聞く。
「驚いた。ってのが感想ですね。まさか、ここまでとは。場数の差が無かったら分かりませんでした」
「そうか。っと言っても、最近なんだぜ。ここまでのレベルになってきたのは」
ククイ博士が僕を見ながら言う。
「アローラはポケモンと共に生きてきた地方だ。多くの人はポケモンと助け合う事を第一とし、あまりポケモン同士を戦わせるというのは少なかったんだ。だから、ここの子たちは正直言って大部分の大人達より強いかもしれない」
「・・・何だかんだ言って手を抜いたことは謝ります」
その時、いきなり僕の頭に重い物がのしかかる。
「あ、クロバットさん!いきなりレーヴさんの頭の上に乗ったら」
僕は後ろに倒れる。リーリエの言葉から理解するに、クロバットが頭の上に乗ったのだろう。
「大丈夫ですか、レーヴさん」
仰向けで倒れる僕にリーリエが覗き込んでくる。
「大丈夫。ズバットの頃からよく頭の上に乗ってたんだが、流石にゴルバットでも厳しかったのにクロバットを支えられるわけないよね」
空を眺めながら心配そうに見ているリーリエに応える。
「随分懐いてらっしゃるんですね、このクロバットさん」
「自分で捕まえた初めてのポケモンだからね。カントー・オツキミ山でズバットの時に」
そう言っていると今度はククイ博士が視界に入る。
「ところでレーヴ、さっき手を抜いてたのを謝ってたよな?じゃあ、もう手を抜かないんだな?」
「そうしますけど、何か?」
僕からそれを聞いたククイ博士の顔はとても・・・・とても悪い笑顔になったように見えた。ククイ博士は生徒たちの方を見ると
「お~い!、レーヴが今から全力でバトルするから、皆で向かって来ていいってよ!!」
その言葉を聞いた瞬間に僕は飛び起きる
「ちょ!、ま!?ククイ博士!?」
しかし、時すでに遅かった。それを聞いた生徒達はペアのバトルを切り上げて一斉に僕の方へと向かってくる。
「手を抜いた罰だ、レーヴ」
ククイ博士は満面の笑みで必死に応戦するレーヴを見て言う。
「ゼェ・・・ゼェ!」
僕は今、肩で息をしているだろう。
「うん、今度は手を抜かなかったみたいだな。きっちり生徒30人分のポケモンを倒してる」
ククイ博士が何事もない感じでこちらに来る。
「当たり前ですよ!。あんな一度に襲い掛かってきたら手を抜く余裕なんてないですよ!!」
「最初から全力でやっていれば良かったんだよ」
リーリエが僕の手持ちを含め、ポケモン達を回復させて回っている。ロトム図鑑は乱戦で個別にデータ収集している余裕がなかったので落ち着いた今、各ポケモンのデータ収集をしているようだった。
「レーヴ、もう一戦やる余裕あるよな?」
「あるわけないです!。今にも倒れそうです!」
「まあそう言うな。そろそろ時間だから来る頃だ」
ククイ博士が時計を見ていると、グラウンドに今まで見なかった少年が入ってくる。
「お、流石時間通りだな。イリマ」
「はい、イリマです。アローラ」
イリマと名乗った少年が入ってくるなり周りの生徒が騒めく。
「レーヴ、紹介するよ。この人はイリマ。ポケモンスクールの卒業生で、君が挑む最後の試練だ」
ククイ博士が紹介する。
「どうも、イリマと申します。ククイ博士から貴方の事は伺ってますよ、レーヴさん」
イリマは僕に挨拶をし、握手を求めてくる。
「初めまして、イリマさん。レーヴと申します」
僕も手を握って握手をしながら自己紹介する。
「ククイ博士から連絡を受けましてね。ポケモンスクールにて君とバトルするように、と」
「さっき聞いて驚きましたが、一体どうしてですか?」
そう言うとイリマは驚いた顔になる
「え?何も聞いてないんですか?」
イリマが不思議そうな顔でこちらに投げかけてくるが、ククイ博士が間に入る。
「おっと、その話はまた後だ。とにかくレーヴ、イリマとポケモンバトルをしてくれ」
僕は「あやしい」っていう目でククイ博士を見るがククイ博士は誤魔化す様に口笛を吹いている。
「バトルしたら訳を話してくださいよ」
そう言って僕はフィールドの端に移動してリーリエが回復してくれた手持ちを用意する。イリマも反対側に立ってモンスターボールを構える。
「イーブイ、宜しくお願いします」
イリマが投げたモンスターボールからイーブイが飛び出す。
「ブイッ!」
イーブイは一回転すると地面に着地して戦闘態勢に入る。僕もポケットからドリームボールを取り出し、中にいるポケモンを出した。