ドリームボールから出されたポケモンは
「グオオォォォ!!」
クレベースだった。
「クレベース、あられ」
先手で天候をあられにする。氷の粒がフィールドに降り始めた。
「イーブイ、アイアンテール」
イーブイが動いた。イーブイは素早さを生かしてクレベースに近づき、アイアンテールを直撃させる。
「続いてスピードスター」
クレベースに肉薄してアイアンテールを直撃させたイーブイはそのまま距離を放しつつスピードスターを放つ。その技も素早く動けないクレベースは避けられずに命中する。
「クレベースは動きが遅いので、速さを生かせばダメージを与えられます」
イリマの言葉にイーブイは得意げに鳴き声を挙げる。スピードスターを喰らったクレベースの周りには煙が発生していたが、それが収まってきた。
「そんな」
イリマは驚きの声を挙げ、イーブイもそれにつられる。
「クレベース、流石にアイアンテールは効いたみたいだな」
クレベースは『何ともない』と言いたげに咆哮する。事実、アイアンテールとスピードスターを喰らってもクレベースは全くビクともしていない。その場を動いてすらいなかった。
「クレベース、ふぶきだ」
クレベースの口からイーブイに向かってふぶきが放たれる。
「レーヴさんのあのポケモンって」
観戦しているリーリエは隣にいるククイ博士に聞く。
「ああ、あれは『待つロト!』」
ククイ博士が説明しようとしたところにロトム図鑑が割り込む。
『ここから先は僕が紹介するロト』
そう言ってロトム図鑑は液晶を起動させ、クレベースを表示させる。
『クレベース、ひょうざんポケモン。凍りついた体は鋼鉄のように硬く、背中には進化前のカチコールを載せて暮らしている。・・・流石にゲットされたポケモンだから載せてないロト。載せてる姿も記録したいロト』
ロトム図鑑は最後は残念そうな口調で説明した。
『今度レーヴにゲットした所に連れて行って貰うロト!!』
「こらこらロトム、そんなオーバーヒート並みに熱くならなくても」
ヒートアップするロトム図鑑をククイ博士が窘める。
「イーブイ、アイアンテール」
イーブイが再び接近する。クレベースの近くで飛びつきにかかり、一回転して鋼となった尻尾をクレベースに当てる。
「逃がすな、こおりのキバ」
全く動じないクレベースが接近していたイーブイを氷となったキバで噛んだ。噛まれた後はどんどんキバの冷気を受け、イーブイは右後脚と尻尾が凍ってしまった。
「そのままふぶき」
クレベースはイーブイを咥えたままふぶきを放ち、イーブイを吹き飛ばす。
「イーブイ、大丈夫ですか?」
イリマは倒れたイーブイに問うと、イーブイはフラフラになりながらも立ち上がる。しかし、右後脚と尻尾が凍ってしまっているので先ほどのスピードは出せそうになかった。
「クレベース、そろそろ体力は回復したか?」
「グオォ」
クレベースは『当然』といった感じで鳴き声を挙げ、イーブイとの距離を近づけていく。あられのお陰でクレベースはダメージを受けても直ぐに回復できてしまう。
「イーブイ、クレベースの足元にスピードスター」
ゆっくりだがイーブイに近づき始めたクレベースにイーブイは指示通りクレベースの足元を狙ってスピードスターを撃ってくる。
「イーブイ、ふるいたてる」
イーブイはスピードスターをやめ、自らにオーラを纏う。体に熱を持ったのか、脚や尻尾の氷が解け始めている。
「イーブイ、とっておき」
イーブイは再びクレベースに向かって走る。クレベースは前進を止め、迎え撃つような体制になる。
「クレベース、こおりのきば」
イーブイが飛びついてきたのを狙って氷となったキバで噛みつこうとする。
「イーブイ、そのままクレベースの上に載ってください」
しかし、イーブイは近づいたクレベースの頭を踏み台にしてクレベースの上に載る。
「そこで連続でとっておきです」
イーブイはクレベースの背中の上でとっておきを連発する。クレベースは何とか振り落とそうと体を揺するが、イーブイも必死にしがみ付いて落ちない。
「クレベース、あられだ」
背中にいるイーブイを唯一狙えるあられを使って攻撃する。イーブイの足などにあられが落ち、イーブイは痛みでクレベースの背中から落ちる。
「こおりのきば」
「負けましたね、イーブイ。でも、よく頑張りました」
「ブイィ」
こおりのきばを受けたイーブイはそのまま戦闘不能となる。イーブイは悔しそうに鳴いた。そんなイーブイをイリマは抱き抱えて僕の所にやってくる。
「良い試合でした。遠距離、近距離とそれぞれに技を持っているんですね」
「ありがとうございます、イリマさん。イーブイもありがとう」
イリマに抱き抱えられたイーブイは右前足を挙げて『ブイ!』と鳴く。
「イーブイも『どういたしまして』って言ってますよ」
イリマがイーブイの言葉を代弁するように言う。
「二人とも、中々の試合だった」
ククイ博士が僕たちの所に来て言う。
「ポケモンさんたちを回復させますね」
リーリエはバッグからキズぐすりを取り出してイーブイに吹き付ける。吹き付けられたイーブイは体力が回復したのか、イリマの腕の中から地面に飛び降りた。
「さあ、クレベースさんも」
クレベースにも近づいてキズぐすりを吹き付けている。
「アハハ、子供達に人気そうだゴルダック」
いつの間にかナリヤ博士がやって来ていた。ナリヤ博士はゴルダックの顔真似をしながら近くまで来る。タマゴのケースを確りと持って。リーリエが回復してくれたクレベースの周りには校長の言う通り生徒たちが集まって『デッカイなあ』や『カッコイイ』などと言っている。
「皆、水着に着替えてプールで遊んできなさい」
ククイ博士は生徒達に指示をしたので僕も
「クレベース、先にプールに行っててあげて」
クレベースを生徒達と遊ばせようと指示を出した。生徒達は嬉しそうに駆けて行こうとするが、その最初の子が周りを見ずに振り返って駆けたものだから後ろに居たナリヤ博士にぶつかってしまう。
「ああ!!」
ぶつかった衝撃でナリヤ博士はタマゴの入ったケースを投げ出してしまう。近くに居たリーリエが
「ひゃあ!?」
っと悲鳴を上げて急いでケースの方へ飛びつく。ケースは間一髪で地面に落ちるのを免れたのだが、異変が起こる。
「え?」
ケースの中のタマゴの上の部分にヒビが入り始める。そのヒビは次第にタマゴ全体に広がっていき、上の方が砕ける。
「コーン!」
中からはロコンが現れた。しかし、そのロコンは僕がよく知る赤い体色のロコンではなかった。
「コン?」
それはまるで雪のような白い体色を持ち、初めから尾が6つに分かれたロコンだった。
「色違い?でもないな。これが・・・」
『リージョンフォーム、ロト』
僕の横にロトム図鑑が来て説明してくれる。
『ロコン、アローラの姿。マイナス五十度の冷気を吐き、暑い時には氷のつぶてを出して周りを冷やす、ロト』
「冷気って事は氷タイプか。普通のロコンとはやっぱり違うんだな」
ロトム図鑑の説明を聞き、僕は理解した。初めて見たリージョンフォームなだけに最初は色違いだと思ったが。
「あ、あのレーヴさん」
か細い声に気付いて声の方を見ると、リーリエがまだ倒れている。しかし、その頬にロコンが頬ずりしている。
「私、懐かれてしまったみたいなのですが」
リーリエの言葉通り、ロコンは嬉しそうにリーリエの頬にすりすりと頬ずりさせている。疑う余地もなく懐いているようだ。
「うん、リーリエ。君を親だと思って懐いているね」
「・・・離して頂けませんか?これでは立てません」
「離してあげたいけど・・・ロトム、頼めるかい?」
僕がチラリとロトム図鑑の方を見る。ロトム図鑑は『分かったロト』と言ってリーリエの方に行き、ロコンを掴む。
『ロト~!』
ロコンが嫌がったのか、口から冷気を吐く。冷気を浴びたロトム図鑑は一瞬で凍り付いた。
「やっぱり、下手に引き離そうとするとマイナス五十度の冷気を喰らう」
凍っているロトム図鑑から『酷いロト』って声が聞こえてきた気がするが、凍っているから気のせいだろう。
「リーリエ、折角懐いてくれてるんだからこのボールで捕まえてみないか?」
僕はポケットから使われていないモンスターボールを取り出してリーリエに渡す。
「宜しいんですか?」
リーリエが僕の方を見て聞いてくるので、僕がナリヤ博士の方を見る。ナリヤ博士は笑顔で頷いて見せた。
「大丈夫みたいだよ、リーリエ」
ロコンも察したのか、リーリエの元を離れてボールが投げられるのを待つ。リーリエもロコンが離れたので立ち上がることができた。そして、モンスターボールを構える。
「え、えい!」
リーリエが投げたボールはロコンに向かって
行かなかった。氷漬けになっているロトム図鑑に当たって転がり、止まった。
「あ、あれ?」
リーリエは呆けた顔になる。
「リーリエ、捕まえるのはロトムじゃなくてロコンだよ」
「分かっております。次はちゃんと」
僕のツッコミにリーリエは頷いてボールを取りに行こうとすると、ロコンがボールの元に移動していた。
「え?」
そして、ロコンは自らスイッチを押してモンスターボールに入る。モンスターボールは何回か赤い点滅をするが、直ぐに消える。
「ゲットしたって事だよ、リーリエ」
「私、ポケモンさんをゲットしたのですね」
ロコンの入ったモンスターボールを抱えてリーリエは喜ぶ。
「初めてです。私、初めてポケモンさんをゲットしました」
「良かったな、リーリエ」
「おめでとうございます、リーリエさん」
ククイ博士とイリマが近づいて祝福する。
「懐いてるようじゃし、これから確りと世話をしていくのじゃぞ」
ナリヤ博士も近づいて祝福する。
「しかし、仮説は正しかったようじゃな。アローラでは原種ロコンが産んだタマゴでも孵化したらアローラのロコンになる。やはり姿が出生地の環境に影響されるという事じゃな。こうしちゃおれん、論文を直ぐに書かねば」
そう言ってナリヤ博士は慌てた様子で校舎の方に駆けていく。
「皆、まだ時間はあるから早く着替えてきなさい」
ククイ博士は生徒に再び指示をする。僕もクレベースに『先にプールに行ってて』と指示を出す。
「さてレーヴ。君はイリマに勝利した」
ククイ博士が改めて僕に言う。僕はジト目でククイ博士を見ていただろう。
「そんな眼をするなよ、ちゃんと説明するから」
そう言ってククイ博士は一度咳払いをする。
「色んな地方のジムを制覇してきた君に、このアローラで島巡りをして貰いたい。その為にイリマには来てもらったんだ」
「突然連絡を貰った時は驚きましたよ。前からレーヴさんをアローラ地方に呼ぶ話は聞いてましたが」
どうやら前々からククイ博士は計画していたようで、その為に今日イリマもスクールに来たようだった。
「カロスから帰ってくるのを狙って母さんをアローラに引っ越させて僕を来るように仕向けたんですね」
「まあ、島巡り以外にもやってほしい事があるのは事実なんだがな」
「でも、先ずは試練突破おめでとうございます」
そう言って灰色のひし形の石をイリマは僕に渡す。
「ノーマルのZクリスタルです」
僕は受け取るとその形に見覚えがあった。
「これは・・・Zリングに填めるやつですか」
僕はポケットから『かがやくいし』を取り出し、窪みに填めてみるとピッタリと一致する。
「それをZリングに加工して頂ければZ技を使えます」
イリマは補足説明をして自身の腕時計を見る。
「それではククイ博士、すみませんが僕はこれで。この後用事がありますので」
「おう、忙しいのにすまんかったな」
「いえいえ。ククイ博士が推す人とバトルできるのは中々ありませんから」
そう言い残してイリマは校庭から去っていく。
「さて、レーヴ。すまんが授業が終わるまでリーリエと待っていてくれ」
「そうですね。その間に・・・」
氷漬けになっているロトム図鑑の方を僕は見る。ククイ博士も釣られてそちらを見た。
「ハンマーを借りてきて氷を割っておきます」
「そうだな、そうしてくれ」
僕は用具室からハンマーを借りてきてリーリエと交代で氷を割っていく。授業が終わる直前に氷を割り終えたが、怒ったロトム図鑑が僕の顔面にキックを入れてきたので僕はロトム図鑑と喧嘩をする。それをリーリエが何とか止めた頃には僕とロトム図鑑はボロボロになっていた。
ドリームボール・・・・紫のボール・・・・