プールに移動するとクレベースが何人かの生徒達を背中に載せて歩いている。
「おーい、授業は終わったから着替えに教室へ戻れ」
ククイ博士が生徒達に指示すると、ようやく生徒達もプールから上がって教室へと戻り始める。
「クレベースも戻ってこい」
生徒達がプールから上がったのを確認して僕はプールの中を歩いているクレベースに指示をする。クレベースもプールから上がり、僕の元へ来た。
「グオォ」
クレベースは久しぶりに水の中に入ったからか嬉しそうに鳴く。その周りをロトム図鑑が回って写真を撮っていた。
『う~ん、子供達を載せるクレベースは撮れたけど、本当はカチコールを載せている所を撮りたいロト』
「ロトム、それはカロスのフロストケイブに行かないと見れないよ」
『アローラにはカチコールはいないロト。残念ロト』
「クレベースさんともそこで?」
「そうだよリーリエ。まだ当時はカチコールだったけどね。探検してたら偶然出会って、後を付けたらそのまま地底湖みたいな所に出ちゃってな。そこでクレベースやカチコール達が暮らしてた」
「このクレベースさんは最初に出会ったカチコールさんなんですね」
「暫くそこで遊んで、帰ろうとしたら付いて来てた」
「グォ」
クレベースが少しずつ僕の所に近づいてくる。
「あの~、クレベースさんが段々と近づいて来てるんですが」
リーリエが心配そうに僕に言ってくる。
「ああ、カチコールの時は体当たりすることが多かったけど、今は、ふぎっ!!」
「れ、レーヴさん!!」
クレベースが僕の上にのしかかる。流石に脚で体重を支えているから全ての重さがかかっている訳ではないが。
「今はこうやってのしかかるのが、クレベースの愛情表・・げ・・・ん」
「きゃああ!、レーヴさん!?、レーヴさん!!」
僕は気を失ったのだろう。リーリエが叫んでいるのが聞こえたが、それに答えられる力はなかった。
「ハハハ、レーヴは本当に懐かれているな」
車の後部座席に座る僕をククイ博士はミラー越しに見てくる。隣にはロトム図鑑を挟んでリーリエも座っている。
「懐かないのはロトムぐらいじゃないかな?」
僕は隣に居るロトム図鑑を見ながら言う。
『僕はリーリエにゲットされたロト。だからこれからはリーリエが親ロト』
僕はとりあえず掴んでぶん回しておいた。ロトム図鑑は目を回して座席にダウンする。
「お、ちょうど良い方が居る」
ククイ博士は前にケンタロスに乗る老人を見つけて車を止める。
「アローラ、ハラさん」
「おお、ククイ君。アローラですぞ」
老人はケンタロスを止めるとそこから降りて運転席側に回る。
「今日は街にでも行ってたのですかな?」
「いえ、今日はスクールで講義でした。ハラさんはどうして?」
「ケンタロスが逃げ出したそうでしてな。何とか捕まえて今帰っている最中でしてな」
「ブモ~ォ」
ケンタロスが元気に鳴き声をあげる。僕は窓を開けてケンタロスの顔を触ってあげるとケンタロスは嬉しそうに再び鳴き声を挙げる。
「おや、初めて見る方たちですな。アローラ」
ハラと呼ばれている老人が僕やリーリエに気付いて
「アローラ、リーリエと申します」
「アローラ、レーヴです。宜しくお願いします」
僕とリーリエは自己紹介をする。
「レーヴはカントーから引っ越して来たばかりなんです。こう見えて、バトルの腕は確かですよ」
「博士、『こう見えて』は余計です」
僕が博士にツッコんでいると
「ハッハッハ、なら明日にリリィタウンでちょっとしたポケモンバトルの大会がありましてな。誰でも参加できますし、良ければ出てみますかな?」
ハラが笑いながら言う。
「良いんですか?」
「勿論ですぞ。トレーナーなら誰でも歓迎です」
「なら、出場します」
僕は出場を承諾する。
「では、明日にリリィタウンで。楽しみにしてますぞ」
「あ、ハラさん。レーヴがカプ・コケコから石を貰ってるんですが」
「何と!?」
ハラは驚いた声を挙げる。僕はバッグから件の石を取り出して手渡す。
「確かに、これはかがやくいし。フム、これを少し預からせて頂いて構いませんかな?」
「大丈夫ですよ」
「では、改めて」
そう言ってハラはケンタロスに乗って駆けていく。
「それじゃあ、僕たちも出発しよう」
ククイ博士はそう言って車を発進させた。
翌日、僕はククイ博士に案内されてリリィタウンを訪れる。と言っても、リーリエの許からほしぐもが飛び出した時に追う過程で通り過ぎた場所だった。あの時はそれどころではないから覚えていないが。
「リーリエは帽子を買ってから後で来るそうだ」
リーリエは先に街でブティックに行ってから来ることになっている。
「レーヴ、あれが今日戦う所である
ククイ博士は村の中央に一段高くなった木製の舞台を指差して言う。
「今日はポケモンバトルで戦いを奉納するんですね」
「その通りですぞ、レーヴ君」
僕がそう言うと、同意するようにハラがやって来る。
「
そう言うとハラは一枚の紙を渡してくる。
「今日の対戦表ですぞ。三回勝てば優勝なので、頑張るのですぞ」
そう言うとハラは別の場所に行ってしまう。僕は対戦表で一回戦の相手をチェックする。
「えっと・・・スカル団のしたっぱ・・・これ、登録名として良いの?」
名前としてはどうかと思うが、とりあえず一回戦の相手が分かった。でも、ククイ博士がその名前を聞いて少し苦い顔になったのが気になるが。
「さて、僕達は一番最初の試合だから準備しないとね。頼みますよ、ロトム」
バッグからロトム図鑑を取り出す。
『僕はリーリエにゲットされたけど、仕方なく従ってやるロト』
「・・・そんな事言ってるとまたぶん回すよ」
「なあなあ、それってポケモン図鑑!?」
と、僕とロトム図鑑がやり取りしているといきなり同じ年位の少年に話しかけられる。その少年はロトム図鑑を観察するように周りを回った後に僕を見てくる。
「じいちゃんとも親しそうに話していたし、やっぱり図鑑を貰う人は凄いんだな」
黒いTシャツに花柄のある黄色いズボン、オレンジ色のサンダルを履いた少年は笑顔を浮かべたまま
「俺、ハウっていうんだ。じいちゃんはさっき君が話してた島キングのハラなんだ」
ハウと名乗った少年は言う。
「祖父が島キングなんて凄いな。僕はレーヴ、宜しく」
僕は手を差し出すと、ハウはそれを握り返してくれる。
「まあ、色々とあるけどねぇ。俺、
「僕はカントーで暮らしてて、つい先日にアローラに引っ越したばかりですよ。それに、僕も島巡りをする事になりました」
「一緒じゃん。俺もこの前帰ってきたばかりだし、こっちに友達いないから友達になろうよ」
ハウは笑顔を崩さずに言う。僕は少し思案するが
「良いよ」
承諾する。
「レーヴもこの大会に出るのか」
早速親しくなったハウとベンチで腰かけて話す。ハウの言葉からハウもこの奉納試合に出るようだった。
「あ、ここにレーヴの名前ある。俺と戦うのは二回戦か」
対戦表を見るとハウとは隣のブロックで僕とハウが一回戦を勝てば二回戦で当たることになる。
「でも俺の相手はグズマさんだしなぁ」
「知ってる人?」
「うん、昔ちょっとね」
その時、スピーカーからアナウンスが流れ始める。
『一回戦の対戦選手、テント前に集合してください』
それを聞き、僕は立ち上がってテント前へと向かった。
ハウオリシティ。メレメレ島だけでなくこのアローラ地方最大の街。そこのショッピングセンターの一角にあるブティックにリーリエは居た。
「トリコーン、レーヴさんには似合いそうですが、私には似合いそうにありませんね」
「キャプリーヌ、でもやっぱり私には」
その帽子も置き、ピクチャーハットを手に取った。
「お兄さまに付けて頂いたリボンはありませんが、私には」
ギュッと帽子のつばを折り曲げて目には涙を浮かべる
「お母さま・・・お兄さま・・・・」
か細い声でそう言いながら帽子を取り、会計の方に向かった。
アローラ地方南西に位置する島、ポニ島。ここの道路を一台の白いセダンが走行している。
「代表、実験の結果ホールを短時間ですが人工的に開くことに成功したようです。しかし安定させる事ができず消滅しました」
白衣を着てソラマメの様な緑のサングラスをかけた男性が代表と呼ぶ人物に話しかける。
「そう。やはり安定させるにはあの子が必要なのね」
代表と呼ばれたワンピースを着た女性が答える。女性は足を組みながら男性の話を聞いている
「はい。しかし、代表のお坊ちゃまもお嬢様も面倒な事をしてくれました。あれで研究が・・・」
「支部長」
支部長と呼ばれた男性は突然言われた肩書にビクッとなる。女性は足を組み替えて
「おかしな事を言うのね。私に息子も娘も居ないわ」
女性は凄みをきかせて男性を見る。
「はい、申し訳ありません。代表」
男性はたじたじになりながら謝罪する。
「もうじき車では入れない場所になります。ヘリモードに切り替えて目的地に向かいます」
前の運転席から白いつなぎを着た男性が二人に声をかける。車は止まり、スイッチにてヘリに変形する。ヘリに変形したのちローターを回転させて飛び立った。
「それより確かなの支部長?、祭壇に新たなホールが兆候があるというのは」
「観測数値上、間違いありません。これまで開いたホールと同等の数値を示しています」
男性がファイルを開いて説明する。それを聞いた女性はどこか虚ろな、まるで精気の感じられない目になる。
「ああ、早く会いたいわ。私の愛を注げる存在、最も美しい存在、ウルトラビースト」
言葉の後半に行くに従って精気は宿り、寧ろ輝いて見えた。ヘリはローラー音を轟かせながら祭壇と呼ばれた場所を目指して飛行していった。