——幼い頃からいろんなことに打ち込んで来たことにより、いわゆる多趣味と呼ばれる人間になった俺、『板橋
だから、都内でも屈指のガンプラ売り場があるお台場、ダイバーシティーによく足を運んでおり、その日もガンプラを買いにお台場を訪れていた。
「今日は何買おうかな」
後頭部に手を組んだ俺は澄み渡った空を眺めつつ独り言をこぼす。雲一つない春の空は、柔らかな陽光を振り撒きやさしさを覚える。
そんな心地よさに浸っていた時、ユニコーン立像の足元に人だかりを見つける。
「なんだろ、あれ?」
フェスティバル広場のステージの上で、眩いほどの存在感を出しながら楽しげに歌い踊って、観客たちを魅了する1人の少女。
それは俺自身も例外ではなく、その光景——否、その少女の姿に目を奪われた。観客達の前でありながら物怖じせず、凛とした表情でありながらどこか親しみやすい。それ故か、彼女に釘付けになっている俺がいた。
「す、すげぇ……」
燃え盛るような情熱を振りまく彼女の歌と踊り。それを前に自身が魅了されていると感じた時、いつの間にかライブは終わり彼女の姿もなかった。
「終わった……のか」
途中から見たが、そんな僅かな時間で俺は彼女の圧巻のステージを魅了されてしまう。そんな非現実的だと思っていたことが現実に起こる。それが信じられなかった。きっと、踊っていたあの子に一目惚れしたんだと言うことに。
観客達が各々散っていく中、未だに熱が冷めないままの俺はステージを凝視したまま立ち尽くす。
「同い年ぐらいの子だったけど……そんな風には見えなかった」
目の前で繰り広げられた歌と踊りは、自身の網膜に強く焼き付けられたようで、先程のそれらが少なくとも俺の目には映ったままなのだ。
「アレは一体、なんだったんだ……?」
不思議に思いながらも我に返った俺は、当初の目的を遂げるためにステージ前を離れようとする。その時、とある声で思わず足を止める。
「「ウチの高校だー!」」
近場にあったイベントポップアップを眺めながらはしゃぐ少女2人組の姿が不意に俺の目に映る。あの制服は確か……虹ヶ咲の制服だったよな。この近辺に学校あるって話だから、きっと放課後に遊びにきたんだろうな。
件の2人組をしばらく眺めていると、ツインテールに結った黒髪の少女が傍らの朱髪の少女の手を引き走り去っていく。
「楽しそうだったな」
誰にとなく呟いた俺は、先程まで2人が眺めていたポップアップの前へと赴く。
「虹ヶ咲学園、スクールアイドル同好会?」
5人の少女が描かれたそのポスターを眺めながら、上部に描かれていた名前を読み上げていく。同好会……ということは、まだ部活として認証されていない駆け出しって事だよな。それであのレベルって……ますます驚きだ。
それでさっき踊ってた子は……『優木せつ菜』って名前の子か。あの感じ——一定数の人間が彼女の事を知っていたのを鑑みると、恐らくはネットなどで名が知れ渡ってると思う。あとで調べてみるか。
1人思慮にふけていると、自身の後方にある等身大立像が轟音と共に発光を始める。アレが光ってるってことはもう5時か……?!
「こんな時間に……」
左腕に巻いた腕時計を確かめた俺は、ステージを見上げる。先程までの余韻が微かに残り、人々を魅了した彼女が踊っていたその場所を。
「行くか」
ステージに背を向けた俺はダイバーシティの中、本日の目的地へと入るのであった——
帰路に着いた俺は、池袋方面行きの電車に揺られながらチャットアプリを開き、とある人物を探していた。
「確か……残ってたよな。お、あったあった」
中学2年以降、疎遠となっている友人の連絡先を見つけ出した俺は、トーク画面を開く。やべ、最後の会話が新年明けた時の挨拶じゃねぇか。『あけましておめでとう』って書いてあるぞ。
「これでいきなり連絡するのなんか気が引けるなぁ」
返信するか否か悩んでるうちに列車は大崎を通り過ぎていたようで、いつの間にか周りにいる乗客が増えていた。あれ、さっきまで天王洲アイルだったと思ったんだが? というかぼちぼち降車駅の池袋じゃん。
「とりあえず……聞いてみるか」
1人ぼやいた俺は再び携帯画面に視線を戻すと、意を決して友人へとチャットを送る。
『いきなりごめん。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?』
それだけ送った俺は携帯を仕舞うと、座席の背もたれに身を預け抱えていたリュックをクッションのように抱いた。
「そういやここ数年……直接会ってないな」
最後に会ったのは、中学3年の3月だったかな……。となると、高校に入学する前に会ったきりか。
「元気、だといいな」
『まもなく池袋。池袋——』
脳裏に微かに残る
「はぁ、なんか疲れたな……」
溜息を吐いた俺は座席から立ち上がると、リュックを背負い扉の前へと歩んでいくのだった——
帰宅後、自室に篭った俺は本日ガンダムベースにて購入した『ユニコーンガンダムペルフェクティビリティ』を黙々と組み上げていた。HGのユニコーン系統はフレームの分パーツが多くて組みにくいんだよなぁ……。でも、武装フル載せとかいうロマンを前にしたら抗えなくて買ってしまった。
「ここをこうして……よし、本体終わり」
椅子に座ったまま伸びをすると、背骨が小気味良い音を立てる。だいぶ集中してたかもね。体が固まりかけてるくらいだし。
「というか今何時だ?」
卓上に置いたデジタル時計に視線を向けると、『21:30』との表示があった。確か俺が最後に見た時は20時過ぎだったから……1時間半もプラモ組んでたのか。
「風呂入るか……」
そう思い寝巻きなどの着替えを探すためにクローゼットを漁っていると、卓上に置いてあった俺の携帯から通知音が聞こえてくる。
「なんだろ?」
着替えを取り出した俺は、それをベッドの上に置くと携帯を手に取り通知を確認する。そこには『なに?』と短い返信が示されていた。
「この文の感じ……アイツからだろうな」
文体から大体の予想を立てた俺はチャットアプリを開く。そこには俺の予想通りの人物、『中川菜々』と書かれたトークに新規通知が届いていた——
どうも初めましての方は初めまして。ご存知の方はお久しぶりで御座います。希望光でございます。
この度はご閲覧の方誠にありがとうございました。見切り発車で始まったこちらの作品ですが、なんとか進めていけるように頑張っていきたいと思います。
では、また次回の更新でお会いしましょう。