Crosses Have Not Banished Yet 作:zoe.
週1投稿で4週1章くらいのペースで書けたらなー、位の感じでいきます。
というかそろそろアニメがスタートですよ!!
第二章: Divergent Growth (1) ― Student of Elements
我々は種を蒔く
それが次の世界を生み出すが故に
蒔いた種が悪に芽吹こうとも
その歩みを止めることは許されない
我々はただ種を蒔き続ける
「―さて、まず前回の復習をしよう」
ここは真央霊術院の大教室。
教壇から一番隊第二副隊長、沖牙源志郎が呼びかける。
紆余曲折を経て現行の四半期制が導入されて以降、霊術院の教壇に現役の席官や隊長格の死神が立つことも少しずつ増えてきた。沖牙は年齢の影響かついに髪も真っ白になり、かつての上司山本重國を思わせる厳格さからとっつきにくさは感じるものの、説明の的確さから学生達に人気の講師の一人となっていた。
「鬼道において言霊の詠唱の意義はどこにあるか、豊川」
「霊力の流路を効率的にコントロールすることが目的です」
「その通り。皆がこの霊術院に来て、一~二回生の頃にまず意味もわからないまま唱えさせられたあの言霊には、その詠唱によって『鬼道』を出力するための霊力を流す『道』を整える意味があるわけだ」
そこまで一気呵成に説明すると、沖牙は少し間を置く。
「恐らく最初に詠唱したとき、何か『道が通った』ような感覚があったかと思う。それこそがこの『霊力の流路』が開く、ということだ。もちろん、詠唱を省略してもその道を通すこと自体は可能だが…」
と、再度言葉を切り、ある生徒に目をやる。
「こうした詠唱破棄は高等技術だ。失敗すれば当然『流路』が不完全なまま霊力を流すことになる。『流路』が間違っていれば威力の低下に繋がるし、『流路』の一部が細かったり切れていたりすれば、最悪の場合には暴発に繋がる。故に、霊術院の練習場では原則禁止となっているわけだ。わかるな、観音寺」
「う、うむ。もうしない」
そう釘を刺された「観音寺」という名の、地黒で妙なサングラスを身に着けた生徒は心底反省した様子でそう返した。そう、紅露で行き倒れていたところを竜弦に救われたミサオとは、観音寺美幸雄、すなわちあのドン・観音寺その人であった。竜弦ともども特進学級に入れるほどの霊力で、特に鬼道の才に長けていた彼はつい先日、無断で詠唱破棄を試した結果、赤火砲を暴発させて練習場の壁に大穴を開けてしまったのだ。本人ばかりでなく、級長の豊川までこっぴどく叱られる結果になったことは言うまでもない。
「とはいえ、こうした詠唱破棄や後述詠唱といった技能は今後鬼道を実戦で使おうとする以上は避けて通れない。ということで、今日は詠唱省略に関する理論を勉強しよう。この理論を正しく身に着けた者は、上位席官以上の監督下であれば実践練習を行うことが認められる」
先の大戦後、大量に戦死者を出してしまった十三隊は、一時的に霊術院から「見習い」として在学中から実務に携わる仕組みを開始した。その後数十年経った今現在では、正式な制度としてカリキュラムに組み込まれるようになっている。一方隊員の能力の底上げも大事であるという認識も根付いており、以前は六年の年次でほぼ自動的に進級・卒業する仕組みであったところ、今やよりシビアに進級や卒業の判定がなされるようにもなっている。一定の水準を満たさなければ進級もできず、また在籍期限までに護廷隊をはじめとした各組織への所属に至らなかったものは「卒業」としては扱われない。
「さて、配属希望は持ってきたかい?」
集められた4人に対して、霊術院職員がそう問いかける。
このインターン制度で特に問題がなければ卒業後もその隊に入隊するのが通常であり、インターン先の希望はそのまま卒業後の進路希望でもある。本来であれば実際の希望調査よりも前の段階から、選択科目等を通じてある程度希望先の隊とコミュニケーションを取っているのだが、今回集められた4人はそうした部分を飛び越えて超スピードで進級してきているため、特別の対応が必要となったのだ。
「ふむ。志波君はやはり十三番隊、観音寺君は……鬼道衆か。石田君は四番隊、豊川君は五番隊か。助かったよ」
「どういうことでしょうか」
竜弦がそう問い返す。
「ほら、ここまで『飛び級』してきたのは久しぶりだからね。皆の希望先が重ならなくてありがたいのさ」
「なるほど……」
「まぁそもそも、ちゃんとこうやって書類とかちゃんと出してくれるだけでもありがたいんだけどね」
遠い目をしてそう述懐する。
「何かあったんですか?」
豊川がそう問いかける。
「いや……まあ『彼女』とは当面会わないだろうから大丈夫さ。なにぶん優秀な子は『変わった』子も多いからね……」
霊術院職員は教師以上に変人・問題児の被害を受けてきたのだろう。その顔には一種の諦観が浮かんでいた。
「それにしても、なんで五番隊なんだ?」
岩鷲は豊川翔太にそう問いかける。学籍の上では3四半期の「先輩」にあたる豊川だが、この三人が後ろから追いつく頃から(竜弦以外は)気安い言葉遣いで話す仲になっている。
「学院長に勧められたのさ」
「そうか、石和先生は五番隊出身だったな!」
観音寺が相槌を打つ。
「斬鬼どっちも得意なんだから、君にも声がかかってたと思うんだけどな、石田君」
「私は――」
そう言いながら少し足を止める。
「やはり回道の方が性に合っているのさ」
「観音寺君はどう……」「わたしか!どうも走りまわったり刀を振り回したりっていうのが性に合わなくてな!!」
食い気味にそう返す観音寺。外見こそトレードマークであった口髭が消えるレベルに若返っているが、竜弦のように「前線で敵と戦う」訓練を受けてきた人間とはまた違う精神なのか、単純に生前ろくに体を動かさなかったツケなのか、日頃の授業でも斬術や白打に関しては一般学級の学生にも見劣りしかねないレベルであった。
「なるほどね。そうなると、もう3ヶ月後には皆ばらばらか」
「あれ?俺は?これ俺にも聞く流れじゃないの?」
しみじみとそう言った豊川に対し岩鷲がツッコミを入れる。
「ほら、だって君の場合もう聞くまでもないじゃない」
「まあそりゃそうだけどよ」
「随分凄い人だったんだな、兄上は」
こうして四人でよく話をする中で、岩鷲は事あるごとに元十三番対副隊長であった兄海燕について語っていた。そのため、岩鷲が兄の後を追って十三番隊を志望するというのはもはや共通認識となっていたのだ。
「ああ、兄貴は霊術院を二年で出たエリートなんだ。死神になるからには兄貴みてぇな男になりたいんだよ」
実際、以前の制度ではあまり「飛び級」が一般的でなかったこともあり、六年の年限を待たずに卒業していった者はみな隊長格として尸魂界の歴史に名を残していた。もっとも岩鷲自身も(制度が変わり飛び級が増えたとは言え)入学から一年で最終四半期のカリキュラムを受けている自分自身も順調に行けば2年3ヶ月での卒業という兄並のスピードなのだが、どうもその自覚はなさそうだ。
「まああと3ヶ月、しっかりやろうか」
豊川の言葉を最後に、優等生四人組はまた次の教室へと向かっていった。