Crosses Have Not Banished Yet   作:zoe.

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さあ新章アニメ始まりましたね!
(まだ忙しくて見てないですが……)


第三章: Past in Flames (2) ― Dissipation Field

「それは……尸魂界に我々の存在が露呈することにはなりませんか」

時は更に数日遡る。

見えざる帝国、銀架城(ジルバーン)でキルゲは下された命令についての疑問を口にした。

「今回の作戦では標的一人にしか姿を見せることはない。ナジャークープが失敗しなければ、”死人に口無し”だ」

キルゲの隣で跪いていたナナナ・ナジャークープはそう名指しされ表情を固くする。

「そのための陽動をするのがお前の仕事だ、キルゲ。お前に与えた力なら十分その役に立つはずだ」

「――了解しました、陛下」

 

―封じられし王は900年を経て鼓動を取り戻し 90年を経て理知を取り戻し 9年を経て力を取り戻し 9日間を以て世界を取り戻す―

滅却師の間で伝えられてきた「聖帝頌歌」という伝承の通り900年の眠りから覚めたユーハバッハは、99年後を見据えて多くの計略に着手していた。特に100年ほど前の尸魂界の侵攻で露呈した前線兵力の不足は深刻に見られており、星十字騎士団のメンバーを中心に新たな力が授けられつつあった。

ユーハバッハは力を分け与えることはできても、その運用のノウハウまで完璧に伝えられるわけではない。結局力を与えられた部下はその力を実際に使うことで運用方法を理解し自分の戦い方の中に落とし込む必要があり、その機会もまたユーハバッハの計画の元に与えられていくのである。

 

「陛下、補佐に部下をつけてもよろしいでしょうか?」

「好きにすると良い。私はお前に目標の達成を命じたのだから、そのために何をどう使うかはお前の責任で決めればよい」

「わかりました」

 

以前から見えざる帝国で暮らしていた多くの生え抜きと違い、100年ほど前に現世から逃げ込んできたキルゲ・オピーは、その実力から特例的ともいえる抜擢を受け、こうした任務を割り当てられることが増えてきた。今回の任務は直接的に敵と接触することではなく、ナジャークープが敵と一対一の状況で接するお膳立てをすることであり、そのために与えられた「聖文字」という新しい能力を活用する必要があった。

 

作戦の次第はこうである。

既にユーハバッハからもたらされている情報として、「標的」は病弱であり、派遣部隊が見合った強さの敵と会敵した場合には本陣に一人残ることになるとのことだった。そのため、キルゲは自身の「聖文字」、「監獄(The Jail)」でメノスを捕らえておき、部隊メンバーが可能な限り本陣から離れるような場所とタイミングにて解放、戦闘に入らせる。そうして「標的」を完全に孤立させたところをナジャークープが襲撃する、といった流れである。この作戦に利用するメノスは既に確保済であったが、決行に際しては派遣メンバーの動向を逐次確認する「目」が必要と考えており、キルゲはそのために自身の部下である若手を選出した。

 


 

そして、計画どおりの状況が訪れた。

朽木蒼純は病に倒れ、その穴を補うべく「事前の作戦計画通りに」残るメンバー全員でメノスに対処する。結果として蒼純は一人天蓋に取り残され、ナジャークープの襲撃を受けることになる。

 

「邪魔するぜ、死神さんよ」

 

このタイミングで、手筈通りキルゲは自身の能力で二人を囲い込む。それなりに広い空間を囲い込もうとすれば当然拘束力は低下するが、一方で今回の主眼である霊圧の遮断に関しては然程影響が出ないため、これで戦闘中も隊士達が隊長の異変に気づくことは恐らくない。

 

「何者だ」

蒼純は重い体を引きずりながら賊に向き直る。本調子でなくとも、護廷十三隊の副隊長として戦わねばならない局面は存在する。対面した敵の霊圧は未知のものだが、逃げ出すわけにはいかない。

 

「名乗る程のもんじゃねえさ」

そう言いながら、刀の柄のようなものを取り出す。持ち主であるナジャークープが込めた霊圧によって青い刃を生み出したそれは魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)といい、弓矢による遠距離戦を主とする滅却師にとって数少ない接近専用の武器である。最終的には弓で射出することができるため建前としては「矢」ではあるものの、基本的には柄を握って振るうものであり、滅却師にとっての「剣」に限りなく近い。

「貴様……滅却師か」

「ご想像にお任せするぜ」

それを聞いた蒼純もまた、自身の斬魄刀を構える。

紺青(こんじょう)揺蕩(たゆた)(すい)()(りゅう)(おう)

蒼純が解号を口にすると、斬魄刀の刀身がうすぼんやりと青く光り始める。そして、光とともに青みがかった霧が少しずつ広がっていく。

 

『――厄介だな』

ナジャークープは内心そう思った。

今回の「標的」、朽木蒼純に関する情報はまったくと言っていいほどなかった。病弱ゆえ前線に出ることも少なく、結果その能力に関する情報が得られていないのだ。

ユーハバッハに与えられた力は「相手を観察する」ことには長けているものの、たとえば即死級や概念系の攻撃、また「絶えず変化する」ような搦め手には対処しやすいものではない。そして解放の様子を見る限り、そのいずれかである可能性が否定できなかった。

 

「とりあえず様子見といくか!」

そう言いながら、ナジャークープは左手に神聖弓を作り出し、右手で魂を切り裂くものを持ったまま神聖滅矢を撃ち出す。放たれた矢はそのまま蒼純に向かい――

「おい、マジかよ」

――消滅した。

より正確に表現するならば、蒼純の斬魄刀から広がっている「霧」に()()()()のだ。

 

「破道の四、白雷」

蒼純がそう唱えてナジャークープを指差すと、白い光が超速度で迫ってくる。

「おいおい、俺らよりよっぽど飛び道具がうめえじゃねえかよ」

飛廉脚で避けならがそうぼやく。

「もう一発!」

そして神聖滅矢でもう一度攻撃する。

…だが、やはり矢は消滅してしまう。

「クソっ、厄介だな」

「白雷」

すかさず反撃に放たれた白雷がナジャークープの爪先を掠める。

「まず足を狙うとはいい性格してんじゃねえか、お坊ちゃん」

見るからに育ちの良さそうな外見をした優男だが、先程から大振りな高火力なものではない低級破道でこちらの動きを制限してきており、その風貌に似合わず老獪な戦い方である。飛び道具が通用しない以上は距離を詰めて魂を切り裂くもので戦うほかないのだが、いかんせん鬼道相手に距離を詰めるのは難しい。

「仕方ねえ、疲れるのは嫌いなんだがな!」

そういいながら魂を切り裂くものを一旦しまい、本格的に神聖弓を構える。

「さっきの消え方、アレは何かで打ち消してるってヤツだろ」

そして一気に大量の矢を射出する。

「こうすりゃ効くんじゃねえか?」

膨大な量の矢に直面した蒼純は瞬歩で事もなげに回避し、予想通りとでも言いたげな表情を見せる。

「やっぱりな、避けるってこたぁ効くってことだろ!」

そう言いながら更に追撃する。

いくら外部の霊子を集めて戦う滅却師とて神聖滅矢を射出するためには自身の霊力をそれなりに使っており、これだけ打ち込めば当然自身の消耗は避けられない。しかしながら、攻撃の手を緩めれば当然相手は処理能力をすべて攻撃に回すことができ、安全圏から一方的な消耗を強いられることになる以上、背に腹は代えられない状況だった。実際のところ、涼しい顔をしてはいるものの蒼純からの反撃自体は随分と軟化している。ナジャークープとしては時間が自身の能力の味方である以上、こうして時間を稼ぐことは有効だと思われた。

しばらく撃ち合いをしていたところ、蒼純が攻撃の手を止めた。

「何のつもりだ……?」

その機を逃すはずもなく、ナジャークープは更に追撃する。蒼純は足も少し鈍っており、矢の一部が当た……らなかった。多くの矢が蒼純に吸い込まれていったにもかかわらず、その全てが消滅したのだ。

「おいおい、効くんじゃなかったのかよ」

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ――破道の三十三、蒼火墜!」

そして反撃とばかりに完全詠唱の鬼道が放たれる。

 

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