Crosses Have Not Banished Yet   作:zoe.

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ワクチン接種で寝込んでいたため投稿が遅れました。
来週は更新あり、再来週は更新おやすみかもしれません。


第四章: Sorceress Queen (6) ― Rally the Forces

数日後、臨時の隊首会が召集された。

議題はもちろん虚圏臨時派遣部隊についてである。

「事前に回した資料の通り、現在虚圏に太古の大虚(メノス)が現れたと思しき状況なんだ。ついては状況の調査、対策立案に次のメンバーを派遣したいと思うんだけど、不都合があったら意見を出して欲しい」

総隊長京楽春水はそう状況を説明すると、懐から派遣メンバーを記した紙を取り出す。

「派遣部隊統括、十一番隊隊長更木剣八。以下、同隊副隊長斑目一角、三番隊副隊長吉良イヅル、四番隊副隊長山田花太郎、九番隊副隊長檜佐木修兵、十番隊副隊長松本乱菊。加えて現地の案内役として十一番隊付狩野雅忘人、外部協力者として鬼道衆副鬼道長雛森桃及び浦原喜助を招聘するものとする。何か質問は?」

一気呵成にメンバーを読み上げると、各隊長に視線を遣る。

「なぜあの男の力など借りるのかネ。技術に明るい人間が必要ならうちの阿近でも連れていけば良いものを」

不愉快極まりないといった様子で涅マユリがそう問いかける。護廷隊と近しい組織である鬼道衆はともかく、名誉回復されたとはいえ現状尸魂界内の人間ではない浦原喜助を招聘するというのは――涅にとっての個人的な因縁を差し引いても――近い専門範囲を持つ者としては面子の話として面白くないものである。

「答える必要はあるかい?聡明な涅隊長なら、わざわざボクが口にするまでもなく答えはわかっていると思うんだけど」

実際、それはその通りである。現状この大虚が尸魂界に影響を及ぼす可能性が高い以上技術開発局は尸魂界側の防衛準備に力を注ぐべきだし、いざ現地で戦闘となった場合を考えても――尸魂界側の戦力としては数えられないにもかかわらず――並の隊長にも劣らない戦力である浦原喜助を帯同させるのは「合理的」ではあるのだ。

「鬼道衆が出張ってくるってのはどういう話なんや」

矢胴丸の疑問はもっともで、むしろ今回の起用で気になるのはそちらである。本来鬼道衆は尸魂界内の儀式などを取り扱う部門であり、こうして前線に加わろうとすることはかなり稀なことである。特に百数十年前の魂魄消失事件に対処する際、最終的にトップ2をほぼ同時に失うことになって以降は特に消極的であった。

「ウチもようやく人が揃ったからね、こういうところでちゃんと動きたいんだよ」

特例的に隊首会に顔を出していた大鬼道長、鹿良澤三姫がそう答える。

「どうやら太古の虚って話でしょ?それならウチの方の知見が役に立つかもしれないからねー。私が行っても良かったんだけど、どっちかって言うとこういうのは桃ちゃんの方が得意そうだし」

「何か手がかりでも見つけたかい」

「京楽さんが情報くれたの昨日だからね、流石にまだこれと言っては。流石に千年以上前の話ってなると探すのも大変でねー」

「ま、そうだよね。よろしく頼むよ」

そして改めて各隊長を見回しそれ以上の異論が出ないことを確認すると、続けて指示を出す。

「そしたら、部下が指名された各隊長は明日の正午の顔合わせに来るように伝えること。あとは……更木隊長、斑目君にはなるべく早く来るように伝えてくれるかな。細かいところの打ち合わせ、多分彼に任せた方がいいでしょ」

「違ぇねえな」

 


 

「桃ちゃーん」

「なんですか、鹿良澤さん」

自らの執務室で大鬼道長鹿良澤三姫は副官を呼び出す。

「例の件、決まったよ」

「分かりました」

「同期の……えーと誰だっけ……そうだ、吉良君も一緒だってさ」

そう言いながら、他のメンバー構成についても手際よく伝えていく。常日頃備品やスケジュールの管理の杜撰さで副官からツッコまれてはいるものの、腐っても50年以上鬼道衆をまとめてきた実力者であり、こうした段取りなどはお手の物である。

「あー……トップは更木隊長なんですね……」

荒くれ者で知られる十一番隊のトップ、粗暴な言動と見るからに異質な外見で目立つ更木剣八は、大半の女性隊士からするとやはり近寄りがたい相手である。同期がいるということで一瞬覚えた安心感はすぐにより大きな不安によって上書きされてしまう。

「まあこの面子だと実務上取り仕切りは斑目君じゃないかな、さっきも個別に呼び出されてたみたいだし」

「それは……まあそうでしょうねぇ」

言うまでもなく更木剣八はどこまでいっても戦闘専門の男であり、派遣部隊のトップを任せられたからといってそうしたメンバーの管理ができる柄かといえば盛大に疑問符がつく男だろう。実際以前虚圏に向かった際には同行した朽木隊長と小競り合いをする有様であり、当時のいきさつを聞いた人間は当然に不安を覚えてしまう。一方副官の斑目一角は第三席であったころから隊務を実質的に取り仕切ってきた男であり、他隊含め多くの後輩の面倒を見ているという点からも護廷隊から広く評価されている。今回の布陣を見る限り、事実上のまとめ役は斑目一角であり、更木剣八は派遣隊最強の「矛」だろうというのが客観的な見立てであった。¬

「まあ浦原さんも同行するらしいし、そんなに気負うことはないよ。今すぐ現地で対応するっていうよりはまず現状調査だし、帰ってきてから対策をたてられるように情報を集めつつ、あとはちゃんと後方の安全確保をしてあげれば」

今回の派遣メンバーは隊長の中でも戦闘能力に優れた死神2人を筆頭に強力な布陣となっており、もちろん雛森自身も副隊長として力が劣る方ではなかった筈であるとはいえ、彼女に期待される役割は直接戦闘というよりは状況分析や後方支援の方にあると考えるべきだろう。

「それにしても、私で良かったんですか?てっきり鹿良澤さんが行きたいんだと思ってましたけど」

「んー……確かに昔は副官気質っていうのかな、こういうときに『自分が行けたら』って思ってたけどね。むしろ今はちゃんと部下に経験を積ませて、組織を発展させる方が楽しみなんだよね。何なら状況が許すなら観音寺君だって早いところちゃんと経験を積ませてあげたいし」

「なるほど……」

「あと、ちょっと気になることもあるし私がこっちに残った方が良さそうかなって」

実際のところ彼女には十三隊総隊長から主に技術面での協力要請が後々入ることが見込まれており、そうした点でも相対的に古株である彼女が前線に出るわけには行かないという事情も存在した。着任してまだ日が浅い雛森にとって、鬼道衆隊舎の深奥にある太古の遺物・記録を集積した書庫は――いくら整理整頓が得意な彼女であっても――まだまだ未知の場所であり、必然彼女の方が虚圏に向かう方が適材適所なのだ。

「まあ、無理しない範囲でよろしくね」

 


 

石田竜弦は久々に霊術院からの帰路にあった。

在学中実地研修では、各隊の計画や自身の専攻に従い高度な専門科目を履修したり自身の研究を進めたりするために――院生寮からではなく――隊舎から通うこともある。竜弦も久しぶりに院に戻り回道の発展的な科目を履修して四番隊隊舎に戻るところ、ふと先日のことを思い出していた。

「石田竜弦くん、ちょっといいかな。話があるんだ」

そう声をかけてきたのは三番隊第三席、石田誠弦であった。名前を聞いた時点でその予想はしていたが、彼は自身の数代前にあたる祖先、即ち滅却師の血筋の者であった。彼の方も竜弦が自身の子孫であることはわかって声をかけてきていた。

「あまり肩肘張らずに聞いて欲しいのだが……交流会のようなものに興味はないか?」

「交流会、ですか」

「本来は隊士になった者が参加するものだが、まあ君は相当優秀だと聞いているから早いところ声をかけておこうかと思ってな。自分自身の境遇から想像付いているとは思うが、護廷十三隊には現世にいた頃滅却師の力を持っていた人間がある程度いるのだ。そうした者同士で横の交流をする場を作っているんだ」

「なるほど……」

「まあ、それぞれの隊も階級も異なるから、現状はせいぜい初歩的な技術交流程度の緩い集まりではあるのだが」

「ありがとうございます。……ですがまだ配属されて日が浅いのでそうした場に参加する余裕があるかどうか、まだなんとも言えない状況で」

「それもそうだな。まあ答えを急がずとも良い、また落ち着いた頃に声をかけるよ」

「よろしくお願いします」

 

死神の力を得た今でも自分の内側には滅却師の力が残っていることは感じており、確かにそうした状況にある者が集まった場というのは魅力的ではある。しかし一方で、しっかりとしたトップダウンの組織であるはずの護廷十三隊で、恐らく上層部の承認を得ていないであろう組織を――それも本来色々な因縁を持つ滅却師という立場で――作っているという点に多少の引っ掛かりを覚えるところでもあった。先の大戦のことを考えても滅却師の組織が瀞霊廷の一般隊士に受け入れられるとは到底思えず、そうであるならその組織が「まともでない」活動をしている可能性は考慮しておいた方が良いだろう。他の滅却師達がどういう認識で死神の力を得てコミュニティを形成しているのかは分からないが、恐らく自分自身は――父宗弦の出自や自身が先の大戦で果たした役割を踏まえても――彼らと違う認識を持っている可能性も多分にある以上、軽々に誘いに乗ることが適切とは思えない。一方で組織のこと、あるいはそこから勧誘を受けた事自体をすぐにを上に報告するほどの状況とも思えず、どう対応するか迷っているうちに短くない日数が経過してしまった。

 




これで第四章終了です。
来週が幕間回、再来週はお休みかな……?
新年一発目に新章始める感じで考えています。
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