Crosses Have Not Banished Yet   作:zoe.

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あけましておめでとうございます。
書けちゃったので投稿します。

……というより、既に大分書き溜めが進んでるので年末年始だからといって更新を止める理由がないんです。
本日から新章突入、ついに物語が加速します。


第五章: Grasp of the Hieromancer
第五章: Grasp of Hieromancer (1) ― Rally Maneuver


 

誇りなく生きるは

獣に同じ

 

誇りに殉ずるは

鬼に同じ

 

誇りを踏み躙るは

人に同じ

 


 

「まったくもう、ちょっと外したらすぐこうなるんですから……」

半ば趣味、半ば仕事で行っている尸魂界全土の”ドサ回り”から数日ぶりに隊舎に戻ってみると、隊首室が見事に荒れ果てていた。元々三番隊は尸魂界の「内側」を向いた仕事が多い関係上書類仕事は――例えば七番隊や十一番隊のような戦闘部隊と比べると――それなりに多い方であり、こうした分野に強いイヅルが隊舎を空けると業務が滞りがちなのは市丸以降四代どの隊長の時代であっても変わらない傾向である。無論、これはイヅル自身の適性を見込まれた結果そうした方面への適性が相対的に低い隊長が選任されがち、という護廷隊人事の産物でもあるのだが……。

それにしても、新隊長志波一心は前任者達と比べても酷いと言わざるを得ない。書類が積み上がるだけならまだ理解はできるが、備品や私物が書類の束と混在して飛び散っている状況になるのは流石に理解の範疇を超えている。この惨状を見て、「現世では医者として暮らしていた」などと言っても――特に前・現四番隊隊長両名の隊首室を見たことがある者なら――誰も信じないだろう。

「すまんなーイヅル。どうもこういうの苦手なんだよな」

「一心さん前も隊長やってたはずでは……?」

「ほれ、前は冬獅郎がいたから……」

「あー……」

納得の一言である。史上最年少で護廷隊の隊長に任ぜられた日番谷冬獅郎は単純な戦闘能力のみならず隊務の方でも極めて優秀であり、副隊長松本乱菊が「アレ」でも隊が正常に動くのは――志波隊長時代から――彼の功績によるところが大きい、というのは護廷隊全体の共通認識であった。もっとも、松本副隊長が大分副官らしからぬ雰囲気になったのは一心が尸魂界を離れ日番谷が隊長に就任してからだ、ということは吉良含め若手の副隊長達の知る話ではないのだが。

「ああそうだ、石田君の件なんだけど」

とっ散らかった隊長の私物を一箇所にまとめているイヅルに、思い出したかのように一心が声をかける。先日自身が報告を上げたばかりの話であり、何か具体的な「証拠」でも出たのかと少し身構える。

「何かありましたか」

「こないだ平子隊長が来たんだけど、彼を副官に引き抜きたいんだってさ。どう思う?」

「なるほど……」

イヅルは少し逡巡する。

上位の席官が他隊の隊長から引き抜かれて副官や隊長になること自体はそこまで珍しい話ではない。自身や同期の阿散井恋次を筆頭に現在の隊長格でも昇進前に他隊に所属していた者は少なくなく、それ自体は基本的には歓迎すべきことである。

ただ、気になることがあるとすればタイミングである。昨今石田本人に関する懸念が自分や新旧隊長の間で共有されはじめた時期、というのが偶然であればよいのだが、引き抜こうとしているのがあの平子真子であるということまで考えると少し引っかかる部分がないわけではない。かつて藍染惣右介の上官だった頃、最終的には藍染の方が上手だったとはいえ彼に対して早くから違和感を覚えていたという話を伝え聞いたこともあり、その平子隊長が興味を示したということに特別な意味がある可能性を感じてしまうのだ。

「とりあえず現状の業務範囲とか見た感じでは大丈夫だ思うけど、今彼が抜けて当面問題になりそうなこと、あるか?」

「まあ引き継ぎとかで少しはバタバタしそうですけど、基本的には大丈夫じゃないですかね。それより『例の件』の話は平子隊長には伝えてるんですか?」

「まだ伝えてないよ。そもそも平子隊長のことだし、ある程度わかってるんじゃないかって気もするしなぁ……まあ本決まりになりそうなら一応伝えようとは思うけど」

「あー…それはまあそうですね」

 


 

「また随分大所帯になったな……」

自身に同行することになったメンバーを改めて見回して、アイスリンガーは嘆息する。

先日イグアラダから齎された未知の大虚の情報を自らの目で確認するためにメノスの森に向かおうとしたところ、たまたまそこに訪れた者や面白そうだといってついてきた者が加わって、半ば調査隊のような様相を呈している。元々虚というのはあまり社会性のない者が多い中で、こうして勝手連的に徒党を組むというのは中々珍しい事態ではある。

「まあ、賑やかでいいじゃねえか」

そう笑うのはガンテンバイン・モスケーダ。以前十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)の一員だった彼は、藍染が去ったあとは現状のハリベル体制に与せずアイスリンガーなど非主流派の破面と交流を続けている。今回はちょうど顔を出しに来たところ、メノスの森に向かおうとする一行を見かけて「面白そうだから」という理由で加わっている。

「まったく、なんでアンタまで来るのよ」

そう悪態をつくのはロリ・アイヴァーン。かつて藍染惣右介の侍女であった彼女もまたハリベル――というよりはその従属官である三獣神(トレス・ベスティア)との折り合いが悪く、結果として主流派とは距離を置く形になっている。当たりが強い性格も災いし、多少なりとも恩義のあるアイスリンガーはともかく他の男性の虚とは極めて関係が悪い。

「未知の存在を見に行くんだから、人数が多い分には…」

彼女の『相方』であるメノリ・マリアも当然ながらメンバーに加わっている。確かに今回の趣旨が未知の対象の調査である以上、とりあえず頭数がいるのは重要といえばその通りである。もっとも、今回彼女達に声をかけたアイスリンガーとしては彼女たちこそ――斥候や監視といった――頭数稼ぎの扱いであって、能力等々に期待しての人選ではないということは、メノリ自身気づいてはいないようだ。

「実際、現地でどうするつもりだ?」

言い争いを続けるガンテンバインとロリを無視して、先導役となるイグアラダはアイスリンガーに問いかける。今回の趣旨はあくまで「調査」ということだが、その最終的な目的や手順に関しては他のメンバーにはまったく共有されていない。

「とりあえず、実際にそいつをこの目で確かめてから考えるしかなかろう。お前の話が正しいなら極めて異質な存在なのだ。細かい計画を立てようにも情報が足りなさすぎる」

「そりゃそうだな。ま、あいつらも弾除けや鉄砲玉くらいにゃなるか」

冗談めかしていうイグアラダに対し、アイスリンガーは「お前もそうなんだがな」というツッコミをすんでのところで飲み込むのだった。

 

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