Crosses Have Not Banished Yet   作:zoe.

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“自分が生まれてきた日がいつか”を覚えている人はいない
ただ自分が最も信頼する人から聞いたその日が誕生日だと信じるしかないんだ
“誕生日を知っている”それだけで幸せなことなんじゃないかな


(訳:今日誕生日です)


第五章: Grasp of Hieromancer (3) ― Crashing Footfalls

「あー、この空気、久しぶりだな」

いの一番に黒腔を駆け抜けた更木剣八は虚圏に足を踏み入れると、少し足を止めて過去を思い返していた。

「まったくもう、早すぎますよ更木サン」

すぐ後ろを走っていた浦原喜助もすぐに合流する。

「知るか。着いて来れねぇお前らが悪い」

「そうは言っても、結局狩野サンの道案内がないとどこ行けばいいかわかりませんよ?」

「メノスの森ってのは地下にあるんだろ?じゃあ適当にそこら辺掘って強そうな奴がいそうな方向行きゃあいいんじゃねえか」

相変わらずの雑さである。そもそも更木剣八は霊圧知覚も方向感覚も壊滅的で、過去の戦いでも頻繁に「強者の方向に向かう」はずが明後日の方に向かう事態になっており、いい加減学習して欲しいというのは関係者の総意と言っても過言ではないだろう。

「そうは言いますけど、虚圏の地下はメノスの森以外にも色々な構造物があるらしいんで手当たり次第に掘ってもたどり着けるとは限らないんスよ」

実際虚夜宮の外縁部である地下通路や”3ケタの巣”として知られる区域には、以前黒崎一護の一行が侵入した際に崩落し行き止まりになったままになっている部分が残っているし、メノスの森に至っては戦いの余波を受けて地形が変動しているようなところもあるため、無計画に地下に潜ったところで目指す場所には到底たどり着けないだろう。最悪の場合虚圏の地底に生き埋めになる可能性すらあるわけで、流石の浦原も必死で更木を引き止める。

「どうせ今回の対象はそうそう逃げる雰囲気があるわけじゃないんス。ちゃんと体制を整えてから行きましょ」

 

なんとか浦原が更木を引き止めているうちに後続隊も無事合流し、一行は目的地へ移動し始めた。かつて虚圏は荒涼と広がる目印もほとんどない一面の砂漠であったが、藍染惣右介が介入して以降は虚夜宮という巨大構造物が遠くからでも視界に入るようになっているため、方向感覚を失いにくくなったというのは予期せぬ贈り物だろう。今回尸魂界からの派遣部隊には途中で虚圏側のメンバーも合流することが検討されはしていたのだが、いくらなんでも死神と破面が隊を組むということについては両者が――特に尸魂界側の上層部、主に四十六室が――難色を示したため、死神単独で荒野を進むことになっている。直近まで虚圏にいた狩野雅忘人とて当時地図のようなものを持ってきていたわけではない関係上、道案内とはいっても相当大まかな誘導が精一杯であった。

 

「そろそろ、俺が地上に投げ出された地点が近いはずです」

雅忘人は浦原にそう伝える。

「わかりました。それじゃあこのあたりから下に行きましょうか」

浦原は後続に合図を送り行軍を止めると、地底への道を開ける準備を始める。

「予定通りここからメノスの森に侵入し、目的地を目指します。皆さんはアタシが準備している間、周囲の警戒をお願いします」

「了解」

今回の虚圏派遣は現在虚圏を実質的に統治するハリベルが承知の上で進められているものだが、虚圏には彼女の下につくことをよしとしない虚・破面も数多くおり、そうした非主流派からみれば当然この死神一行は招かれざる客である。派遣メンバーの手厚さを考えればいきなり窮地に陥ることは考えにくいが、とはいえ戦力の一角である浦原が技術的な部分に手を取られている間は特に警戒するに越したことはない。

 

「お、開いたな」

数分後、浦原が地底への道を開き終えた途端に更木が単身飛び込んでいく。

「まったくもう……。斑目サン、皆さんの準備は大丈夫ですか?」

「あァ、いつでもいけるぜ」

「それじゃあ皆さん、3つ数えたら飛び込みま……」

突入の指示を出そうとしたその瞬間、複数の強力な霊圧が接近してきたことに気がついた。浦原以外のメンバーも皆同様に気が付き、各々その方向へと向き直る。

「来やがったな」

 


 

メノスの森に向かう途中、アイスリンガー・ウェルナールは異変を察知した。この虚圏に外敵が侵入する事態が以前何度も起きたことから備えていた感知システムの作動を知らせる通信が自らの研究室から飛んできたのだ。それは即ち、外部から虚以外の何者かがこの虚圏に踏み入ったことを示している。状況を考える限り、尸魂界の死神が自分達同様例の未知の大虚の調査、あるいは討伐のために派遣されてきているというのが最も有力な可能性だろう。

「どうかしたのか」

多少表情に出ていたのか、イグアラダにそう問われる。

「死神がこちらに来ている」

「へぇ……そいつは面白えじゃねえか」

面白いことなどあるものか。自分はあくまで調査のために来ているのであって、死神はその邪魔にこそなれ助けになる見込みなどない。虚圏に派遣されるような死神は当然それなりの戦闘力を持つ可能性が高く、そんな連中と事を構えるのは極力避けたいものだった。

「おい、どうやら死神が来てやがるらしいぜ!」

テンションの上がったイグアラダが、止める間もなく他のメンバーに伝えてしまう。なんとか遭遇を避けようと考えていたが、こうなってしまってはそういうわけにもいかないかもしれない。

「ほう、それは面白いな」

案の定、ガンテンバインの目がギラつきはじめる。どうもこのあたりの連中は無駄に好戦的でよくない。戦いというのは何かを得るため・守るために避けられないときに初めて選択すべきことであって、ただ目の前に気に食わない奴がいるからといっていちいち斬りかかっていてはキリがないだろう。とはいえ脳筋共が勝手に駆け出していくのを止めることができるはずもなく、目を覆いながらなるべく面倒な事態にならないことを祈るアイスリンガーであった。

 

「いたぜ、あっちだ」

ガンテンバインが指さした先には確かに数名の死神の一団がいた。既にこちらに気がついて斬魄刀に手を伸ばしている者もおり、戦いはもはや不可避だろう。

「お、アイツ帰ってきやがったか!!」

案内役だったイグアラダは遠目に因縁の相手を見つけた。彼は破面化する前からの習性として他の戦いから落伍した者を狩ることを主としていたが、とはいえ一度戦いながら決着を付け損ねた相手というのは「別腹」である。破面化して手に入れた斬魄刀に手をかけ、今にも飛びかからんばかりに身構える。

もはや仕方ない。どう見ても死神の集団はこのままイグアラダが単身斬り込んで無事に済むレベルには見えない。こうなったら適度に分かれ、それぞれが別の相手を受け持つしかないだろう。アイスリンガーはため息をつくと、全体に突撃の号令をかけた。

 

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