Crosses Have Not Banished Yet   作:zoe.

59 / 65
終章: Right fathers in the right places (2) ― Cathartic Reunion

「ご無沙汰してます、空鶴さん」

「おう一護、珍しいな」

そろそろ壮年期も終わろうという年齢になった一護は、久しぶりに西流魂街にある志波家本家を久々に訪れていた。以前初めて会った頃、鉄拳制裁を受けていた頃ほどではないとはいえ、まだまだ単なる「従姉弟」という程気安く話しかけられる相手ではなさそうだ。

「ちょっと京楽さんに呼ばれてたんだけど、ついでだからこっちにも顔出そうかと思って。うちの親父、迷惑かけてないっすか?」

「叔父貴ならしばらく前に来てたけど、日番谷の坊主に連れられて瀞霊廷(あっち)行ったっきりだぜ」

「へぇ……って冬獅郎が『坊主』はちょっと酷いんじゃないっすか?もう結構背も伸びてるのに」

「おれん中じゃあいつは叔父貴にくっついてたガキのまんまだからな」

「そんなもんすか……あれ、岩鷲は?」

「ああ、あいつも今は向こうだよ」

「へー……ってえぇっ!?!あいつ死神にでもなったの!?!?」

元来のツッコミ気質のおかげか、それともこちらに来ると結局のところ自身が「若造」でしかないという安心感のおかげか、かつて若かった頃そのままのノリでツッコんでしまう。死神の力があるとはいえ元々人間である一護の魂魄は年相応の見た目になっており――高い霊力によりほとんど老いる様子のない――空鶴とはとっくに逆転して見えるのだが、この二人の関係性は半世紀近く前の初対面の頃から大して変わってはいない。

「まあ色々あってな。確か仮免で今ルキアちゃんとこにいたはずだぜ」

「すげえ話っすね、それ」

「元々叔父貴がこっち来てる間にちょっと根性叩き直そう、つって稽古つけてもらってたんだが、まあ思ったより成果が出たんでな。こないだ試験受けて霊術院入って、そのまま上手くやってるらしいわ」

「まあそりゃあいつ元々霊圧はちゃんとしてましたし、あんだけ実戦くぐってきてんだから死神としてもやってけるでしょうけど…」

もう一人の従姉弟である岩鷲とももう長いこと会っていないが、かつて一緒に戦っていた頃のことは半世紀ちかく過ぎた今でもすぐに思い出せるほどの鮮烈な記憶である。だが、初対面のときに「流魂街一の死神嫌い」を自称して衝突した身としては、その彼が死神としての道を歩み始めたということに驚きを禁じえないところではある。とはいえ、空鶴の言うとおり十三番隊にいるのであれば、瀞霊廷で良く顔を出している先でもありそのうちすぐに再会することになるだろう。

「つかお前こっちで油売ってていいのか?」

「久々に流魂街(こっち)の知り合いと会っていこうかと思って、ちょっと早めに来てるんすよ。幸い一勇もとっくに独立してますし、現世じゃ時間に自由の効く身ですしね」

「お前もさっさとこっち来りゃいいのによ」

「それ遠回しに死ねって言ってますよね!?」

瀞霊廷(あっち)にはよく顔出してんのか?」

「無視かよ……。そんなでもないですよ。正直向こう行くと変に厚遇されちゃうんで居心地悪いんすよね」

「そりゃあ仕方ねえだろ、何しろ三界を救った英雄サマだからな」

「やめてくださいよ……」

志波家(ウチ)もお前みたいなのが来て安泰だな!」

「心にもないこと言うのやめましょうよ、元々貴族の役割なんかろくに気にしてなかったでしょ」

「まあおれとしちゃそれで良かったんだがなぁ……どうも最近そうも言ってられねえらしいぜ?叔父貴がこないだボヤいてたわ」

「親父が……?そいつは嫌な予感しかしませんね」

「ま、岩鷲も向こうにいるんだしおれはこっちで自由にさせてもらうわ」

「ほんと変わらないっすね……」

「お前ももうこっちに関わって長いんだ、志波家(ウチ)がどういう家かは知ってるだろ?」

「まあそうですけど……」

 


 

「えーっと……これはどういう集まりです?」

一番隊隊舎に呼び出された現三番隊隊長志波一心は、普段の隊首会より大分人数の少ない室内を見回した。

「例の一件の後始末でね、ちょーっと面倒な話になったのよ」

面倒な、という割にはいつもの飄々とした雰囲気を崩さない京楽春水がそう応じる。

「さて、揃ったし行こうか」

「ここでやるんじゃないんですか?」

「違うよ、ここはあくまでボクらの集合場所。本番は()()()さ」

「気張れよ、当主代行殿」

「何の話ですか、夜一さん」

「あれー、やっぱり聞いてないんだね」

「やっぱりってなんですかやっぱりって」

「空鶴さんは『おれが行くより現役の隊長が行く方がカッコ付くだろ』って言ってたよ」

「カカッ、奔放な当主を持つと苦労するのう?」

「よりにもよってあなたがそれを言いますか、夜一さん……」

 

「こんなとこ、初めて来ましたよ」

少しの後、一行は中央四十六室の待つ中央地下議事堂まで来ていた。尸魂界の最高意思決定機関である中央四十六室のいる区画は基本的に他の機関の管理する場所からは隔絶されており、一般の死神はおろか隊長格でさえそうそう訪れることはない。無論総隊長は職務上それなりの頻度で呼び出されるのだが、隊長在任期間の短い一心にとっては初めての経験であった。

「護廷十三隊総隊長、京楽次郎総蔵佐春水以下――」

「朽木家当主 朽木白哉」

「四楓院家当主名代 四楓院夜一暁宗(あきむね)

「あー…志波家当主代行 志波将監(しょうげん)一心」

「本日の議事のため参りました」

京楽がそう締めくくると、議事堂を守る巨大な扉が開かれる。

 

『我々が呼んだのは貴殿だけのはずだったが、総隊長』

中央四十六室は慣例として――少なくとも自らの席を持たず、喚ばれて議場の中央に来る外部の人間に対しては――その顔を隠して相対するため声の主が誰であるのかは定かではないが、京楽が「部外者」を伴って現れたことを咎める声が早速上がった。

「すいませんねぇ、事が事ですから。ボクの一存でどうこうできる話じゃあないでしょう。むしろ、あんた方が彼らに声をかけてないことの方がおかしいんですよ。特に志波隊長に、ね」

『……!』

中央四十六室は四十人の賢者と六人の判事からなる、という建前であるが、事実上その席の大半は各貴族の「指定席」に過ぎず、結局のところは貴族同士の利害関係の調整が優先され、あるいは非貴族の死神や流魂街の一般魂魄の事情は後回しにされるという状況にある。そうした彼らからしてみれば、中央四十六室に席を持ちこそしないがその一方で「正一位」というどのメンバーより格上の位階を持つ(あるいは持っていた)三家の面々は邪魔以外の何物でもなく、当然彼らの側から接触してこない限りはわざわざ呼び出して話を聞きたい相手ではない。言わば「寝た子を起こす」ような事をした京楽の行動は疎ましいことこの上ないだろう。

「さて、お許しもいただけたようですし早速本題に入りましょうか。改めて状況の確認から行きましょう」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。