Crosses Have Not Banished Yet 作:zoe.
「お久しぶりっス、一護さん!」
「おう、八々原さん」
「相変わらず堅いっスねー、呼び捨てでいいのに」
「気にすんな。他のみんなは?」
「そのうち来るんじゃないっスか?」
志波家の屋敷を後にした一護は、瀞霊廷の一角にある居酒屋を訪れていた。その戦闘能力や実績を考えれば隊長と並ぶ方が自然なところではあるものの、如何せん実年齢の若さと本人の気質、また日頃の付き合いの関係から副隊長の集まりに顔を出すことが多かった。
「そういえば、一護さんは志波君ともお友達なんでしたっけ?」
「志波って……親父……のことじゃなくて岩鷲か?まあ友達っつか腐れ縁だな。あいつなんかやらかしたのか?」
「むしろ逆っスよ。彼の同期含めて今回のインターン組は優秀だって評判で。今回の事件でも他の若手守って活躍したらしくて」
「へー、あいつが『優秀』ねぇ……まああんだけ色んな相手と戦ってきてたら流石にそこいらの学生と混ぜたら気の毒か」
「アタシより早く霊術院抜けてきたって話っスから相当なもんスよ」
「そりゃあすご……え?! 八々原さんってそんな優等生だったの!?!?」
日頃絡んでくる雰囲気からは一切感じとれない、あまりに意外な背景情報が突如出てきて思わずツッコんでしまう。
「こうみえてアタシ、今の制度になってからは入学後最速で副隊長になった死神らしいっスよ?」
「へー…人は見かけによらねえなぁ」
「まあ学生時代授業は寝るわ課題は出さないわで散々怒られてきたんで、半ば追い出されたみたいな感じでしたけど」
「……前言撤回、先生方が気の毒になってきたわ。よくそんな不良学生がスピード出世できたな」
「矢胴丸隊長に声かけてもらってなかったら今のアタシはないっスよ。インターンで隊に来てからというもの、効率よくサボる方法とかしっかり教えてもらったんで」
「確かにあの人そういうの得意そうだよなぁ……。それにしても霊術院ってーのも結構複雑なのか?普通に年次で卒業してくもんだと思ってたよ」
「ま、今の時点で並の隊長より強い一護さんには無縁でしょうけどね。昔は普通に6年で卒業するシステムだったらしいんスけど、今は各段階ごとの試験に受からないと進級できないし、逆に先の段階の試験に受かるなら飛び級ができる、って感じなんス。最近じゃアタシたち副隊長もたまに教えに行ってますし、それなりに育ってくる子たちの質も安定してきてるんスよ」
「なるほどなぁ……。いやな、俺もそのうちこっち来たらちゃんと通ってもいいかな、って思ってんだよ。結局基礎とかろくに勉強しないまま
「流石に一護さんと一緒にされたら他の学生が気の毒っスよ、いい意味で……」
そうこうしているうちに、続々といつものメンバーが集まってくる。
「おう一護、また老けたな!」
「開口一番ひでぇ挨拶だな……そりゃお前らと違って普通の人間なんだから老けもするだろうよ」
「親……じゃねえ、志波隊長とはもう会ったのか?」
「別に親父でいいだろ。どうせ明日の
「おうよ。まあ橙璃はもう隊長んとこ行ったし、苺花も上位入りしたからって一人暮らしさせろってうるせえけどな」
「苺花ちゃんももういい年なんだからそのくらい許してやってもいいんじゃねえのか?」
「お前らと一緒にすんな、まだあの年はこっちじゃヒヨッコなんだよ」
「子離れできねえ親はみっともねえぞー」
「うるせえ!……一勇はどうしてる?」
「相変わらずだよ。現世じゃとっくに独立する年だからな、好きにさせてるよ」
「なるほどなぁ」
「こら恋次、そこで立ち話してたら邪魔でしょ。さっさと奥行きなさい」
二人で話をしていると、後ろからやってきた乱菊が声をかけてくる。
「お、熊如珍しいじゃない……そか、今日は一護が来てるもんね」
副隊長陣の中でも圧倒的に若い方である八々原はあまりこうした集まりに顔を出さないため、一瞬珍しいものを見たような顔をしたもののすぐに得心する。
「黒崎、いくら三界どこでもモテるからって浮気は良くねえぞ」
「檜佐木さん、冗談キツいっすよ……。ってか、二人で来たんすか?」
乱菊の後ろから現れた檜佐木修兵に声をかけた途端、二人が一瞬顔を見合わせる。
「あー…、さっきそこで会ったから。ほら、うちら隊舎も近いからさ」
「ふーん」
一護にとってはさほど重要な話ではなかったようでそれ以上の深掘りはしなかったものの、そのやり取りを傍目で見ていた弓親は何かを察したような視線を一角に向ける。
「そういや修兵、今回も大活躍だったらしいじゃねえか」
「大活躍つったら
元々三席にいた頃から事実上の――それも最先任級の――副隊長扱いをされてきた一角は、この場で数少ない修兵が敬語で語りかける相手である。その一角から今回の戦役における活躍を褒められはしたものの、そこを誇るでもなくむしろより大きな戦果を上げた後輩の方に話を持っていくあたりが、彼の善性を象徴している。
「多分それお前が卍解した時も皆思ってたぞ、なあ松本?」
「いやー、ほらアタシたちは先に聞いてましたから」
「その話、日番谷隊長含め割と皆信じてなかったって聞きましたけど?」
「お前に言われると余計に腹立つんだよなぁ……」
一人完全に「格下」の弓親に対しては――かつて一度剣を交えたこともあってか――多少当たりが強い修兵だが、当の弓親は何食わぬ顔で聞き流している。
「で、当の吉良はどこ行ったんだ?そろそろ皆揃ってもいいはずなんだが……」
今日の幹事を買って出ていた恋次はまだ現れない同期を気遣う。元々貴族出身のイヅルは若い頃はそれなりに真面目な生活態度だったのだが、昨今――特に大戦以降は――任務や行事に遅刻することも珍しくなくなって来ており、他方学生時代はがさつで知られたものの現在は――規律に厳しい隊長の元――割と真面目で通っている恋次からすると時として気を揉まされる相手になりつつあった。
「ま、どうせあいつのことだからそこら辺ほっついてんだろ。そのうち顔出すだろうし、先に始めてようぜ」