なぜ彼(彼女)は……。   作:Vは見て書き楽しむもの

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兄Kは……2

「……」

目が覚めた時、俺はまだ夢の中にいるような気分になった。

ここは俺の部屋で、目の前にいるのは俺の妹である西菜だ。

しかし、何故か今の彼女は制服姿ではなく、薄紫色をした浴衣を着ていた。

「……どうしたの?お兄ちゃん」

「え?」

「ぼーっとしてるみたいだけど」

「あ、いや……」

俺が戸惑っていると、彼女は不思議そうに首を傾げた。

「もしかして、まだ寝惚けてる?」

「かもな……」

「もう、しっかりしてよ」

彼女は呆れたように笑う。

「それより、どうかな?似合ってる?」

そう言って、その場でくるりと回って見せた。

「まあまあかな」「ちょっと!そこは嘘でも『可愛い』とか言っとくところでしょ!?」

「……悪い」

俺は素直に謝った。

「本当に反省してる?」

「してるしてる」

「絶対ウソだぁ……」

「そんな事より、一体どういうつもりなんだ?」

「そんな事って……」

不満げな表情をする彼女を無視して、俺は質問を続ける。

「なんで急に会いに来たりしたんだよ?」

「ん~……何でだろうね」

「おい」

「冗談だってば。ホントはね、お兄ちゃんに見せたかったから」

「何を?」

「私の新しい姿を」

「……」

「あれれ、もしかして感動してくれてる?」

「いや、全然」

「もう、つれないなぁ」

彼女は口を尖らせる。

「まあ、良いけどさ」

そして、俺に一歩近づくと、そっと手を握ろうとした。だが、途中で思い直したのか、すぐに引っ込める。

「やっぱり止めとこ」

「どうして?」

「だって、こんなのただのおまじないだもん」

「おまじないか……」

「うん。お兄ちゃんが元気になりますようにっていう、私からのプレゼント」

そう言うと、彼女は再びこちらに手を伸ばしてきた。

今度は避ける事もせず、じっとしている。すると、彼女の指先が俺の掌に触れた。

ひんやりとした感触だった。まるで氷のような冷たさだ。思わず、反射的に手を引っ込めそうになる。

しかし、何とか堪えるとそのまま彼女の手を握った。すると、彼女は驚いた様子で目を丸くする。

「お兄ちゃん……?」

「どうせなら、もっと強く握り締めてくれよ」

「う、うん」

彼女は戸惑いながらも、ぎゅっと力を込めてきた。俺もそれに応えるようにして、しっかりと手を握る。

「……痛いか?」

「ううん、大丈夫だよ」

そう答えると、彼女は嬉しそうな顔を見せた。その瞬間、心の奥底にあった不安が和らいだ気がした。

「ねえ、お兄ちゃん」

「何だよ?」

「またこうして会えるかな……?」

「それは分からないけど、きっといつか会えるんじゃないか」

根拠なんて無いけれど、今はそう信じていたかった。

「お兄ちゃん……」

「ん?」

「ありがとう……」

それが最後の言葉だった。気が付くと、俺の手を握っていたはずの彼女の手が消えている。

慌てて周囲を確認するが、既にどこにも居なかった。俺は深いため息を吐くと、その場にしゃがみ込む。

「……まったく、何だよ今のは」

誰もいない空間に向かって呟いてみた。当然のように返事は無い。

「お前には色々と助けられたけどさ、結局何も出来なかったじゃないか」

西菜を助ける事は出来たかもしれない。でも、その後に待ち受けているのは死だけだ。

それなのに、俺は彼女を救えなかった。

「……クソッ」

拳を強く握り締める。

「どうして俺は無力なんだよ……!」

その問いに答えてくれる者は誰一人としていなかった。

 

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