教室に入ると、友人である東雲さんが挨拶してきてくれました。
「おはよう西菜ちゃん♪」
「おはようございます、東雲さん」
彼女はとても可愛らしい容姿をしていて、性格も良いため男女問わず人気がある女の子です。
そんな彼女と私が仲良くなったきっかけは、2週間ほど前の出来事がきっかけでした。
◆ 放課後、いつものように1人で帰ろうとしていた時のことです。
昇降口を出ると、誰かに声を掛けられました。
「あの、西菜ちゃん?」
振り向くとそこには、東雲さんの姿がありました。
「えっと……何かしら?」
「ごめんなさい、いきなり声掛けちゃって……。実はね、西菜ちゃんに伝えたいことがあるの」
「伝えたいこと?何でしょうか?」
「うん。実はわたし、前からあなたのことが気になっていたんだよね。それで思い切って話しかけてみたんだけど……」
まさか告白!?と思いドキドキしながら次の言葉を待ちます。
すると彼女が口にしたのは意外な言葉でした。
「よかったら友達にならない?」
一瞬、何を言われたのか分かりませんでした。
しかしすぐに理解することができました。
「私なんかでいいなら喜んでお受けするわ」
こうして私たちは親友になったわけです。
◆ それからというもの、毎日一緒に帰るようになりました。
学校ではお互いにあまり話す機会がないため、この時間はとても楽しいものです。
「ねぇ西菜ちゃん、明日なんだけど予定空いてるかな?」
「特に用事はありませんけど……」
「それじゃあさ、買い物に付き合ってくれない?」
「別に構いませんよ」
「ありがとう!それじゃあ駅前に10時集合でどう?」
「はい、わかりました」
10時に駅か……確かここからだと電車で20分くらいだったはずなので早めに出る必要がありそうですね。
「楽しみにしてますね」
「こっちこそだよ!」
◆ 翌朝、私は早起きをしていました。
というのも昨日のうちに準備をしていたからです。
まずはメイクです。
ファンデーションを塗ったりチークをつけたりと時間をかけて仕上げました。
次に服を選びます。
以前ネットで見た情報によると、スカートよりもパンツスタイルの方が好まれるとかなんとか……。
悩んだ末に決めたのは白のスキニーパンツです。
トップスにはボーダー柄のトップスとカーディガンを着てみました。
最後に髪をセットします。
普段は後ろ髪だけを下ろしているのですが、今回はサイドテールに結んでみようと思います。
鏡の前で何度か確認してから家を出て駅に向かいました。
◆ 時刻は9時半頃になりました。
約束の時間までまだ30分ほどありますが、すでに着いています。
なぜなら、緊張しているからです。
同性とお出かけするのは初めてではないのですが、相手が相手ですから……。
ちなみに東雲さんはというと、まだ来ていません。
まぁ彼女も女子校生ですから、色々と忙しいのでしょう。
(あと5分で10時になるわね)
スマホを取り出して時間を確認していると、不意に声をかけられました。
「あれ、西菜ちゃん?」
振り向くとそこにいたのは東雲さんでした。「こんにちは、東雲さん」
軽く挨拶を交わした後、2人で歩き始めました。
(うぅ……変じゃないといいのだけれど……)
不安を感じながらも目的地に向かっていると、ふとあることに気がつきました。
それは――
(東雲さんの私を見る目がどこかおかしいような……)
最初は気のせいかとも思ったのですが、その後も同じような視線を感じたのです。
そして確信しました。
(間違いない……)
私のことを性的な目で見ている!
(ど、どうして……?)
理由が全く分からないまま、私たちの間には微妙な空気が流れ続けました。
◆ ようやく目的の場所に着きました。
ここは下着専門店です。
なぜこんなところに来たかというと、今日の目的がここだからです。
「さぁ西菜ちゃん、行こう!」
「えぇ……」
私は半ば強引に手を引かれながら店内に入ります。
「へー、結構いろんな種類があるんだね!」
「そうみたいね……」
「あっ、これ可愛い!」
「そ、そう……」
東雲さんは楽しそうに商品を見ていますが、私はというと少し居心地が悪い感じがしていました。
だって……
「ねぇ西菜ちゃん、ちょっと試着してみてもいい?」
「別に構わないけど……」
「やった!それじゃあ選んじゃおうっと♪」
東雲さんが手に取ったのは黒を基調とした大人っぽいデザインのブラジャーでした。
「ねぇ西菜ちゃん、これどうかな?」
「とても似合っていると思うわ」
「ホント?よかった~♪」
彼女は嬉しそうに微笑みました。
「ところで西菜ちゃんはどんなやつ買ったの?」
「えっ?」
東雲さんに言われて私は自分の胸元に目をやりました。
そこには白のシンプルなデザインをしたブラジャーがありました。
「その……あまり派手すぎるのは恥ずかしくて……」
「そうなんだ……」
「ええ……」
「……」
「……」
お互いの間に沈黙が訪れます。
「「あの……」」
2人同時に口を開きました。
「「どうぞ」」
「い、いえそちらから……」
「だ、大丈夫だよ……」
「……」
「……」
再び訪れる静寂。
「「あの……」」
「「やっぱり……」」
「「どうぞ」」
「「あ、あの!」」
「「はい!」」
「「あの!」」
「「あの!」」
「「どうぞ!」」
「「はい!」」
「もう、西菜ちゃんから先に言ってよ」
「ごめんなさい……」
「それで、何を言おうとしたのかしら?」
「うん、実はわたしも同じことを考えてたんだけどね……」
「「お揃いにしない?」」
私たちは顔を見合わせて笑い合いました。
◆
「「ありがとうございました!」」
店員さんに見送ってもらい店を後にすると、時刻は12時を回っていた。
「ねぇ西菜ちゃん、何か食べに行かない?」
「いいですね、行きましょうか」
近くにあったファミレスに入って食事を済ませた後、私たちは帰路についていました。
ちなみに会計は割り勘です。
「今日はありがとね、付き合ってくれて」
「こちらこそですよ。おかげで良いものが買えましたから」
「良かったらまた一緒に来ようね!」
「ええ、ぜひお願いします」
そんな会話をしているうちに別れ道にやってきました。
「それでは東雲さん、ここで失礼させていただきますね。本日は本当にお疲れ様でした」
「う、うん……。お休み、西菜ちゃん……」
東雲さんはどこかぎこちない様子です。
「えぇ、お休みなさい」
私は彼女の横を通り過ぎて自宅へと向かいました。
◆ 家に帰ってからも、私の頭の中では東雲さんの言葉が何度も繰り返し響いていました。
『西菜ちゃん、もし良ければなんだけど……』
『はい……?』
『わたしと……友達になってくれないかな……?』
(私と……友達……)
私は東雲さんのことが嫌いではありません。
むしろ好きと言っても過言ではないでしょう。
ただ、どうしても彼女に抱いている感情が友情なのか愛情なのかが分からなかったのです。
(私にとって東雲さんは何なんだろう……)
私はベッドの上に寝転がり、天井を見つめながら考え続けました。
◆ 翌日、いつものように登校していると後ろの方から声をかけられました。
「西菜ちゃんおはよう!」
「東雲さん、おはようございます」
「西菜ちゃん昨日のことなんだけどさ……」
「はい……」
「西菜ちゃんさえ良ければ、これからは"美奈ちゃん"って呼んでもらってもいいかな……?」
「分かりました、そう呼ばせていただきますね」
私がそう言うと東雲さんは嬉しそうな顔をしました。
しかしその直後――
「あと敬語も無しにしてもらえるとありがたいなって……」
「そ、それはさすがに無理があるような気が……」
「だ、ダメ……?」
上目遣いで見てくる東雲さん。
(くっ……卑怯ですよ……!)
「わ、分かったわよ……」
「やったー♪」
東雲さんは飛び跳ねて喜んでいます。
「でも、どうして急に呼び方を変えたりしたの?」
「えっとね、せっかくこうして仲良くなったんだから名前で呼び合った方がいいと思って……」
「そうだったのね……」
「うん……。それと西菜ちゃんに一つ聞いておきたかったことがあるんだけど……」
「何?」
「西菜ちゃんはわたしのどこが好きになったの……?」
「えっ……!?」
私は思わず立ち止まってしまいました。
「だって、いきなりこんなこと聞かれたら誰だってびっくりすると思うの……」
確かにその通りです。
「ごめんなさい……」
「うぅん、謝らなくていいよ。ただちょっと気になるだけだから……」
東雲さんは不安そうな表情を浮かべています。
「ええ、分かったわ……。実はね……」
私は意を決して口を開きました。
「あなたの笑顔に惹かれたの……」
「笑顔に……?」
「ええ……。あなたと一緒にいる時間は楽しくて、とても居心地が良くて……。だから、私はあなたのことをもっと知りたくて……」
「それで、好きになったの?」
「ええ、そういうことになるかしら……」
「へぇ〜、わたしって西菜ちゃんからそんな風に思われていたんだね!」
彼女は照れくさそうにはにかみました。
「私、今すごく幸せだよ」
「それなら良かったわ」
「ねぇ西菜ちゃん、手を繋いでもいい?」
「ふぇっ……?」
突然の東雲さんからの申し出に驚きを隠せません。
「嫌かな……?」
「べ、別にそんなことはないけど……」
「じゃあ繋ぐね」
東雲さんは私の手を握ると、そのまま歩き始めました。
「ちょっ、ちょっと待って……」
「待たないよ〜」
「はぁ……。もう、仕方がない人ね」
私たちはお互いに笑い合いました。
最近エアコンをフル活動している日々ですが皆さんはどう過ごしているんでしょうね。