吾輩はYP系VTuberである。名前は黒橋西菜。
そんな吾輩は今、とある企業の面接会場に来ている。そう……吾輩はついに就職したのである! それも超大手企業のVtuber事務所だ。
なぜこうなったかと言うと、話は1年ほど前に遡る。
「うーん……困ったなぁ」
大学4年生の夏頃、就職活動真っ只中の吾輩は悩んでいた。就活サイトに登録し、説明会や筆記試験などを受けに行ったが、これと言ってピンとくるものが無かったのだ。
そもそも吾輩は人見知りなので、知らない人と話すのも苦手だし、知らない会社で働いていく自信も無い。「はぁ……」
深いため息をつきながら家に帰ると、スマホにメールが届いていた。差出人は父上だった。内容は『お前の就職先が決まったぞ』というものだった。
吾輩には兄がいるのだが、その兄はすでに社会人として働いている。そしてどうやら父は兄から仕事の話を聞いて、吾輩にこの話をしたらしい。
しかし正直言ってあまり興味がなかった。というより働くことに少し恐怖心すら抱いていた。
でもまあせっかく決まったことだし、とりあえず話だけでも聞いてみようと思った吾輩は、父の勤める企業がある場所を調べた。そこは東京にある大企業だった。
数日後、吾輩は父と一緒に東京の本社へと赴いた。そこで人事部長を名乗る男から言われたことは、「君、ウチで働く気ない?」というもので、まさかの展開に驚きつつも、吾輩はその誘いを受けたのであった。
それから吾輩は東京での生活を始めた。初めての一人暮らしだったので最初は不安だったが、慣れてしまえば案外快適なもので、毎日楽しく過ごしていた。
そんなある日のこと、吾輩は会社の休憩室でスマホを見ながらコーヒーを飲んでいた。すると、一人の女性が話しかけてきた。
「あら?あなたも休憩中ですか?」
その女性は身長が高くスラッとした体型をしており、長い髪をポニーテールにしている女性だった。顔立ちはとても整っており、美人という言葉がよく似合う人だった。
「えっと……どちら様でしょうか?」
「ああ、すみません自己紹介がまだでしたね。私はこの会社の広報を担当している者です」
そう言うとその女性は名刺を渡してくれた。そこには『株式会社D-gray(ディーグレイ)
広報担当 赤嶺莉奈』と書かれている。
「あの……失礼かもしれませんけど、おいくつなんですか?」
「私ですか?23歳ですよ」
年下だったのか……。吾輩は勝手に25歳以上だと思っていたので驚いた。
「それじゃあ先輩ですね。よろしくお願いします!」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
こうして吾輩はこの人と知り合った。そしてそれから何度か会話をするうちに仲良くなっていった。お互いの仕事内容などについて色々と情報交換をしたりして楽しい日々を送っていたが、ある日突然彼女からこんなことを言われてしまった。
「実は最近、新入社員を募集しているんですけど、もし良かったら応募してくれませんか?」
それは意外な提案だった。確かに募集自体はしていると聞いていたが、まさか自分に声をかけてくるとは思っていなかったのだ。
正直なところ、吾輩はあまり目立つようなタイプではないし、性格だって人見知りなこともあって暗い方だと思う。それに容姿についても平均的だろうと思っているので、自分に声がかかる理由がわからなかったのだ。だが彼女は真剣に吾輩のことを評価してくれたらしく、わざわざ面接までセッティングしてくれることになった。吾輩はそれを受けることにした。
そして当日、吾輩は指定された時間にその場所へ行った。するとそこには既に赤嶺さんの姿があり、吾輩を見つけると笑顔を浮かべながら手を振ってきた。
「こんにちは西菜ちゃん!今日は来てくれてありがとうございます!」
「いえ、こちらこそ誘っていただいて嬉しいです。ところで本日はどのような用件でしょうか?」
「はい。今回はあなたを採用するかどうかを決めるために、あなたの人柄について調べさせていただきました。その結果、ぜひ我が社で働きたいという気持ちに変わりがなければ、採用したいと思っています。いかがでしょう?」
「そうですか……。わかりました。それでしたら是非働かせてください」
吾輩がそう答えると、赤嶺さんはとても嬉しそうな表情になった。
「よかった!それではこれからよろしくお願いしますね」
「はい。よろしくお願いします」
その後、吾輩は彼女と二人で本社へと向かった。そして面接が始まる前に軽く挨拶をしておいた。
そしていよいよ面接が始まったのだが、吾輩は緊張してしまい上手く喋れなかった。そしてそんな吾輩を気遣ってか、赤嶺さんが優しくフォローを入れてくれた。そのおかげでなんとか最後まで話すことができた。
そして結果は採用。吾輩は晴れてこの会社で働くこととなった。
寒くなりましたね。
帽子かぶって外に出ないと耳が凍ります。