なぜ彼(彼女)は……。   作:Vは見て書き楽しむもの

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人によっては不快になるところがあります。


????な世界線の西菜

吾輩は犬人である。名前は黒橋西菜。

そんな吾輩は今、人生最大の危機に直面していたのだった。

「――それで? 何か申し開きすることは?」

「……いや、あの……」

場所は吾輩の部屋。時刻は夕方五時を少し過ぎた頃合いである。

目の前には仁王立ちする母上様。背後では、父上様が正座して縮こまっている。

ちなみに、我が家の家訓の一つに『女性に逆らうべからず』というものがある。これは父上様が昔、母上に言いくるめられて作ったものらしいのだが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。……まあ、そのせいでこうして怒られているわけだが。

「――えーと……つまり、父上様が浮気をしていた、ということですか?」

「違う! 誤解だ!」

父上様は必死になって否定するが、この状況で何が違うのか全く分からない。

「あらそう? じゃああの写真は何なのかしらね?」

母上はテーブルの上に一枚の写真を置く。そこには若い女と腕を組んで歩いている父上様の姿があった。……ふむ、なかなかお似合いの二人ではないか。

「ち、違うんだって! あれはその……ほら、会社の同僚の奥さんなんだよ!」

「へぇ~」

「……っ!?」……なるほど。どうやら二人は不倫関係にあるらしい。そして、今日も密会していたところを写真に撮られたというところか。しかし、それにしてもこの写真……。

「……父上様。これはいつどこで撮影されたものです?」

「……えっと……一昨日かな?」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………えっと、その、なんだ。お前にもちゃんと説明しようと思っていたんだけどさぁ……」

沈黙に耐えかねたのか、父上様はぽりぽりと頭を掻きながら言い訳を始めた。

「……その前にさっきの話を聞いてしまってな。ついカッとなって家を飛び出してしまったのだ……」

「……あー、そういうことですか」……まあ、分からなくもない。気持ちは分かる。吾輩だっていきなり『結婚することになった』と言われた日には暴れまわるだろう。……でも、だからといって人の恋路を邪魔するのは良くないと思うぞ?

「そ、そうだ! 西菜からも言ってやってくれないか? 私は会社の同僚と結婚する気なんてないって!」……それはそれでどうかと思うが。そもそも、何故そこまで必死になる必要があるのか理解できない。父上様にはすでに妻がいるはずなのだから、そちらを優先してあげれば良いのではないか?

「――母上様、ここは一つ穏便に済ませるというのはいかがでしょうか?」

「ん? どういう意味かしら?」

「ですから、今回の件に関してはなかったことにして、何も見なかったことにするということです。父上様も反省しているご様子ですし……」

「……確かにそうねぇ。私もちょっと熱くなりすぎたわ。あなたは大人しくしてなさい」

「よっしゃ!」……本当に喜ぶのなら最初から素直に謝るべきだと思うのだが。

「それじゃあ父上様。今後はこのようなことがないようにお願いしますね?」

「おう任せろ!」

「あと、あまり母上様を心配させないでください。いいですね?」

「はい!」

父上様は満面の笑みを浮かべると、「よし! 飲みに行くぞ!」と言って立ち上がる。

「あらそう? じゃあ久しぶりに二人でデートしましょっか♪」

「うん!」……まったく、調子の良い人だ。

「――で、結局こうなるんですね」

夜八時過ぎ。駅前にある居酒屋にて。

吾輩の隣には母上様と父上様の姿がある。……そして、向かい側にいるのは二人の男女だった。

「おい西菜! もっと飲め!」

「いえ、もう結構飲んでいますので……」

「ダメだ! 今日は父さんが奢ってやるからな! ほら、遠慮せずにどんどん頼んでくれ!」

「あ、はい……」

正直かなり酔いが回っている。これ以上飲むと明日の仕事に支障が出てしまうのだが……。

「ふふっ、お父さんったらすっかり酔っちゃってるみたいね?」

「はい。母上様の方こそ大丈夫ですか?」

「ええ平気よ。私もまだ全然余裕だし。ほら、あなたもまだまだいけるでしょう?」

「あ、ああ……」

「あらそう? じゃあ次は日本酒にしようかしらね~」

「うむ。そうすると良い」……なんとも楽しげである。二人だけの世界に入ってしまったようだ。

「……あの、少しよろしいですか?」

「はい?」

「先ほどから気になっていたのですが、どうしてお二人は一緒に?」

「ああ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は安藤玲奈といいます。よろしくお願いします」

「あ、どうも。黒橋西菜と申します。こちらこそよろしくお願いいたします」

お互いに頭を下げる。……ふむ、中々礼儀正しいお嬢さんのようである。「えっと、それで……質問の答えなんですけど、実は私たち付き合っているんですよ」

「そうなんですか?」

「はい。二か月前からお付き合いさせていただいています」

「へぇ~」……意外と長いな。しかし、この若さで結婚とは……。

「……失礼ながらお聞きしたいことがあるのですが、お二人はいつ頃からお知り合いになったのでしょうか?」

「あ、やっぱり気になりますよね。えーと……私が大学三年生のときに告白して、それからずっとです」

「……なるほど」

「……あの、何か変なこと言ってしまいました?」

「いえ、そういうわけではないのですが……。ちなみに、いつ頃結婚を考えているのですか?」

「うーん……。一応卒業してすぐに、と考えているのですが、お互いの両親からはもう少し待ってほしいと言われていて……」

「……」……まあ、そんなところだろう。普通に考えれば大学を卒業してから結婚を考えるのは当然のことだと思うしな。それにしても……

「……随分とお若いご夫婦になるようですね」

「え? そう見えますか?」

「はい。とても仲が良さそうなので」

「ふふっ、ありがとうございます。でも、実は私の方が年下なんですよ?」

「え? 本当ですか!? それはまた……」

「はい。だから、周りからはよく『しっかりしている』とか言われているんです。実際は逆なのに、おかしいですよね?」

彼女は困ったような笑みを浮かべる。……なるほど、そうだったのか。どうりで父上様よりも母上様のほうが落ち着いているわけだ。

「……そうかもしれませんね」

「あ、そうだ。もし良かったら西菜さんもうちの父を説得するのを手伝ってくれませんか?」

「……え?」

「もちろん無理にとは言いません。ただ、私一人ではちょっと心細くて……。だから、ぜひ協力していただければ嬉しいなぁと思いまして」

「は、はい……分かりました。出来る限り力になってみましょう」

「ありがとうございます!」

「いえ、これくらい大したことではありませんよ」

「ふふっ、頼もしいですね。それじゃあ、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願い致します」……何やかんやで結局はこうなるのだ。まったく本当に面倒くさい人たちである。

「おい! 聞いてるか西菜!」

「はい、ちゃんと聞いておりますので安心してください」

「ならいいんだがな! ほら、もっと飲め!」

「いえ、もう十分すぎるほど飲んでいますので……」

「ダメだ! 今日は俺が奢ってやるからな!遠慮せずにどんどん頼んでくれ!」

「あ、はい……」……はあ、仕方がない。

「すみませーん! ビール二つお願いしま――」

「おい西菜!」

「はい、なんでしょう?」

「お前はいつまで母さんのところに居るつもりなんだ?」

「え?」

「せっかくこうして家族四人で集まったというのに、母さんばかり構ってないで少しは父さんの相手をしてくれてもバチは当たらないと思うぞ?」

「はあ……」

「ほら、こっちに来て酌をしろ! ほれ!」

そう言って父上様は酒を勧めてくる。……まあ、確かに母上様にべったりというのも失礼かもしれない。

「そうですね。では、お言葉に甘えて」

「おう、そう来なくっちゃな」

「お待たせしました~」

「おお、来たか。さあ西菜、早く注いでくれ」

「はい」……まあ、たまにはこういうのも悪くないか。

「ねえ西菜君」

「はい?」

「西菜君はいつからお父さんと付き合ってるの?」

「えーと……確か高校二年生の終わり頃だったと思います」

「へぇ~。結構最近なのね」

「ええ、そうですね」

「ねぇねぇ、どこで知り合ったの? やっぱり文化祭?」

「いえ、違います。実は……」……それから私は彼女に両親の馴初め話をした。「そっかぁ。お母さんはお父さんに一目惚れだったんだね」

「はい、そうみたいです」

「それで西菜君の方は?」

「えーと……私の方は特に何もなかったかなぁ。ただ、一緒に居るうちにいつの間にか好きになっていた感じです」

「ふむふむ。そういうのもいいわよね。ロマンチックだし」

「そうですね」……私の場合はむしろ逆なのだがな。まあ、そんなことはどうでも良いのだが。

「でも、まさか二人が結婚するとは思わなかったなぁ」

「え? そうなんですか?」

「うん。だって二人は昔から全然性格が違うじゃない? だから私としては喧嘩ばっかりして別れちゃうんじゃないかと思ってたんだけど……」

「ああ、それは大丈夫ですよ。私たちの場合、喧嘩らしい喧嘩は一度もしたことがありませんから」

「へぇ~、それは凄いわね。でも、どうして?」

「えっと……なんて言えば良いのか分からないんですけど、お互いに相手のことをよく知っているからなのか、自然と一緒に居られるんだと思います。だから、きっとこれから先もずっと仲良くやっていける気がするんですよね」

「なるほど……。なんかいい話聞いちゃったかも」

「ふふっ、ありがとうございます」

「そういえば、西菜君は今の仕事楽しい?」

「仕事ですか?」

「うん。ほら、私も一応働いている身だからさ。何か参考になるかなって思って」

「そうですね……毎日忙しくて大変なんですが、それでもやりがいはあるので楽しんでいますよ」

「へえ、そうなんだ。ちなみにどんな仕事をしているの?」

「あ、すみません。それはちょっと言えない決まりになっているもので……」

「あ、そうだったの……。ごめんなさい、余計なこと聞いちゃって」

「いえいえ、気にしないでください。それより、次は何を頼みましょうか?」

「ん~、それじゃあこの『黒毛和牛のステーキ』をお願いしようかしら」

「分かりました。それじゃあ注文しますね」

「お願いします」

「――お待たせしました~」

「ありがとうございます。さて、いただきますか」

「そうですね」

「あ、そうだ。せっかくだし写真撮らない?」

「いいですね! ぜひ撮りたいです!」

「ふふっ、良かった。それじゃあ、はいチーズ」パシャッ!「はい、オッケーよ」

「ありがとうございます」……こうして私は彼女との食事を楽しんだ。




最近眠気がひどくて丸々3日寝てました。
病院に通うことになりました。
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