【完結】伝承者の友   作:ウルハーツ

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第10話

「……はぁはぁ……んぅ…………ボクの、負け……」

 

 バトルに敗北したカガリは荒い息をして頬を軽く染めながらぺたん座りでその場に座り込んだ。サガリはそんな姿を見てから、ティアにお礼を告げてボールへ戻した後にカガリの前へ。

 

「これで姉貴はマツブサのじゃない。俺のだ」

 

「っ! …………ボク、は……サガリ、の……?」

 

「サガリ、その言葉は不味いと思うなぁ。もう手遅れだけど」

 

「?」

 

 勝敗が決まった事でサガリは姉であるカガリがマグマ団を止める事になると考えて、思うがままに告げる。実際はサガリの提案を呑んだ訳ではないカガリだが、彼女の言葉にその目は一瞬輝きを放つ。そして先程から赤かった頬が更に染まり、何処か蕩けた様な視線が今度はサガリへ注がれ始めた。

 

 ヒガナは彼女の言った言葉がある意味でカガリに効果抜群である事を理解していた。妹に対して異常なまでの感情を抱く彼女が、その相手から自分のモノだと言われたに等しい言葉。マツブサに対する尊敬とサガリに対する親愛が混じっていたカガリに、明らかな別の愛が生まれた瞬間である。

 

「…………ボクは、サガリのモノだから…………マグマ団も、辞める。…………ボクは、サガリのモノだから」

 

「あ、あぁ。そんなに何度も言わなくても。ってか『モノ』って……」

 

「サガリ、自分の言葉には責任を持たなくちゃ駄目だよ?」

 

「だから、なんなんだよ? 俺、変な事言ったか?」

 

 自覚の無いサガリにヒガナは溜息をついた。

 

 こうしてカガリは妹であるサガリのモノとなり、彼女の傍で過ごす様になる。マグマ団を辞めるとなれば、彼女とサガリを引き剥がす任務の存在も無い。恐らくこれからは例え火の中水の中、どんなところへでも彼女はサガリへ着いて来る事だろう。

 

「取り合えず、一段落かな。これからよろしくね、カガリ隊長。って、もう隊長じゃないんだった」

 

「…………誰?」

 

「ガクッ。私、覚えられてると思ったんだけどな。……私はヒガナ。サガリの友達、かな?」

 

「もう少し自信持って言えっての。間違い無く俺の友達だよ、お前は」

 

「……………………友達。なら、許す」

 

「ほっ。彼女は許されなかったけど、私は大丈夫だったみたいだね」

 

「…………我を忘れてた」

 

「なるほど、サガリの事で頭が一杯一杯だった訳だ」

 

「今度ハルカにあったら謝らないとな」

 

「ヤダ」

 

 即答で拒否するカガリにサガリは頭を抱えた。

 

 その後、一度ポケモンセンターへ戻った3人は今後についての話をする。この旅に最終目的地は無いが、目標はサガリのジム巡りだ。その為に向かう先はルネシティであり、少し休息した後にそこへ向かう事で話は決まる。そして外へと出た時、サガリは異様な熱に襲われ始めた。

 

「なんだ? 陽射しが……強いな」

 

「あぁ~、遂に目覚めちゃったか」

 

「…………予想外」

 

「何の話だよ?」

 

「うーん、サガリちゃんは何にも知らない、というか教えてもらえなかったもんね。そうだなぁ、端的に説明するならこの日差しはポケモンの仕業だよ」

 

 照り付ける陽射し。暑い季節の陽射しなど比では無いその威力はやがて世界そのものを干上がらせてしまいそうな程だった。そこで何も知らないサガリはここで始めてヒガナとカガリからマグマ団の目的について教えられる。

 

 マグマ団の目的。それは人が生きる大地を増やす事。その為に超古代に居たという神話に登場するポケモン、グラードンを目覚めさせる事であった。

 

 

『グラードン』たいりくポケモン

大地を盛り上げて大陸を広げたポケモンと神話で語り継がれている。

カイオーガと死闘の末、眠りについた。

 

『カイオーガ』かいていポケモン

大雨と大波で大地を覆い、海を広げたポケモンと神話で語られている。

グラードンと死闘の末、眠りについた。

 

 

「んじゃ何か? この日照りはそのグラードンって奴の力って事か? 大地が広がるどころか、このままじゃ全部干からびるぞ」

 

「マツブサは甘く見てたんだろうね、神話に語られる伝説のポケモンの力を」

 

「…………強い陽射し、あっちから」

 

「ルネシティの方か。取り敢えず、行ってみよう」

 

 カガリの指差した方角は最後のジムがあるルネシティに向かう方角。サガリは休んで元気になったティアを呼び、再び『そらをとぶ』を使ってルネシティを目指し始めようとする。ヒガナも同じ様にポケモンを出すが、カガリの手持ちはバクーダのみ。ヒガナが彼女の分もポケモンを呼ぼうとして……その必要が無いとボールをしまった。

 

「おい、何でしまうんだよ。って、またか!?」

 

「?」

 

「気にしないで良いよ。ほら、カガリはラティアスの背中に」

 

「…………分かった」

 

 突然、首の後ろを掴まれて持ち上げられたサガリ。それはティアがサガリの後ろ首を加えた瞬間であり、カガリはティアの背に乗ってやがて彼女は飛び立った。何故か空を飛ぼうとすれば、銜えられるのが当たり前になって来たサガリは不服そうにぶら下がったまま腕を組みながら移動するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルネシティ、目覚めのほこら前。

 

 そこにはマグマ団の幹部であるホムラとリーダーのマツブサ。またマグマ団とは敵対関係にあるアクア団と呼ばれる組織のリーダー、アオギリ。その他にも以前サガリが出会ったダイゴやルネシティのジムリーダーであるミクリ。ハルカの友達である少年ユウキと……彼ら全てに希望を託された少女、ハルカがそこには居た。

 

「それじゃあ、行ってきま……!」

 

「何か、来るっ!」

 

「あれは……カガリか。なら、傍に居るのはやはり」

 

「見慣れない奴も居るみたいだな」

 

 空から現れたラティアスの姿に驚いた面々は、その背に乗る存在や何故か銜えられた少女の姿を見て驚きながらも警戒する事無く見上げていた。今から大きな戦いへ出るという手前で現れた一時とはいえ共に旅をした仲間、サガリの存在にハルカはほこらへ向かう足を戻して近づき始める。

 

「サガリちゃん!」

 

「よう、ハルカ! 元気にしてるみたいだな!」

 

「サガリちゃんも、無事で良かった! ラティアスに銜えられて来るなんてビックリだよ!」

 

 

「リーダー…………ううん……マツブサ」

 

「その言い回し、マグマ団を抜けるつもりか?」

 

「うん…………ボク、サガリのモノに……なった、から」

 

「……そうか」

 

「…………怒らない?」

 

「君達の姉妹仲を歪ませてしまったと、前から思ってはいた。それが良い方向へ向かったのだろう。なら、何も言う事はない。だが、それでも敢えて一つだけ言わせてもらうなら……今までご苦労だった、カガリ」

 

「っ! うん…………マツブサ、ありがとう……!」

 

 

 ハルカとの再会を喜ぶサガリ。一方でマグマ団のリーダーであるマツブサと話をするカガリ。それぞれに起こった出来事は分からずとも、その結果や互いが無事だった事を知れただけで全ての者にとっては良い事であった。

 

「で、この異常な日差しの正体がポケモンって話を聞いたぜ?」

 

「うん。この先にグラードンが居るんだ。だから私が止めて来る」

 

「なら俺も」

 

「残念だがそれは不可能だ。グラードンと戦えるのは『あいいろのたま』を持つ彼女のみ。それに我々が開発したマグマスーツも一着のみだ」

 

 手伝おうとするサガリへ不可能である事をマツブサは告げる。この世界の命運を目の前の少女1人に託す事となり、それを大人であるマツブサ達は悔やんでいた。が、他に方法が無いのも事実。授けられた者にしか『あいいろのたま』は力を発動しない。ハルカだけしか、この問題を解決出来ないのだ。

 

「大丈夫だよ、サガリちゃん。あたし、必ず何とかしてみせるから!」

 

「……あぁ。生きて帰って来いよ。……そうだ、ハルカ。ここのジムには挑んだのか?」

 

「ううん、まだだよ!」

 

「ならさ、終わったら……バトルしようぜ! 俺とお前、どっちが強いかまだ分からないままだからな!」

 

「あはは! うん、やろうね!」

 

 やがてゆっくりと開き始める門の中へと入って行ったハルカはそのまま姿が見えなくなってしまう。待つ事しか出来ないサガリ達はその後、ルネシティを中心に世界へ光が降り注ぐその時まで、ハルカの無事と世界の無事を願い続けていた。

 

 

 

 

 

 

「目覚めたグラードンは彼女が何とかしてしまった。カイオーガを目覚めさせても、もう彼の者はやって来ない。……なら、私が呼ぶしかない。私の使命を、ホウエンの真実を知ったらサガリ、君はどうするのかな?」

 

 その光が降った時、1人の少女が未来を思いながら静かに呟いた。




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