ホウエン地方のポケモンリーグチャンピオンとなったハルカは旅を止めて実家のあるミシロタウンへ帰って来ていた。家族である母親、トウカシティでジムリーダーをしている父親。そして隣に住むハルカにとって最初で一番の友達、ユウキ。彼らに迎えられて優しさに包まれながら一夜を過ごした彼女は、朝を迎えると家の外へ。
「やぁ、おはよう。ハルカちゃん」
「えっ!? えっと……確か、サガリちゃんと一緒に居た」
「あれ、もしかして覚えて無かった? あ、そっか! 名前は教えてなかったかな。初めて私とキミが出会ったのは、南の孤島だよ」
「南の孤島……あ! サガリちゃんのお姉さんと一緒にいたマグマ団の!」
「そうそう。私はヒガナっていうんだ。この子はシガナ。よろしくねー」
自宅の前には見覚えがあるものの、名前も知らない人物が立っていた。ハルカはヒガナからヒントを貰って彼女との遭遇を思い出すと、何処か気安い彼女の自己紹介に困り顔で頬を掻きながら答える。が、すぐに何かを思い出した様にハルカはヒガナへ質問した。
「貴女はサガリちゃんと一緒に居たんだよね? サガリちゃん、何処に行ったの?」
「んー? あ、ちょっと疑ってる? 大丈夫大丈夫、今彼女は自由に彼方此方動いてるから。その内……ううん、必ずキミが彼女と再会する時は来るよ」
「? どういう……」
「っと、そろそろ行こっかな。ここは良い街だね。静かで、人も優しい。……ハルカちゃん、家族は大事にするんだよ。お隣のお友達も、ね」
ヒガナはそう告げて、ボールからポケモンを出した。瞬間、彼女とシガナはそれに攫われる様な形でその場から姿を消す。空へと飛んで行ってしまった彼女を見送った後にハルカは隣の家へ。そこにはユウキと彼の母親が居たものの、ユウキは軽い怪我を負っていた。
彼が怪我をした理由。それは朝になり、窓を開けた瞬間に女の子が中へと入って来たというもの。メガシンカに必要なキーストーンを奪い、抵抗したユウキとバトルになるも彼は手も足も出せずに敗北を喫した。ドラゴンタイプを使う相手であり、傍にはゴニョニョが居たと聞かされた時。ハルカは即座に確信する。それがヒガナであると。
「確かここを出て行く間際、トウカって言ってたけど……イタタ」
「トウカ……トウカシティだ! ごめんユウキ、私行ってくる!」
彼の言葉からヒガナの向かった先を察したハルカは、即座にポケモンの力を借りて空へと舞い上がる。隣の隣にあるその街へ簡単に辿り着いたハルカは、まず最初に早朝からジムリーダーとして出勤しているであろう父親のセンリへ話を聞きに行こうとして……その隣にある家から聞こえた少年の声を聞いた。
「今の、ミツルくん!?」
それは旅の途中、この街で出会った少年……ミツルのものだった。身体が弱いという彼はポケモンを欲しがり、ハルカが見守りながらラルトスを捕まえてから少年は徐々に元気に。旅を初めて道中で何度かバトルもし、最終的にはチャンピオンになる前の強者が集うチャンピオンロードで心身共に成長した彼とハルカは戦った。
そんな彼の声を聞いてハルカは急いでその場へ近づく。……そこはミツルの家前であり、彼は真っ黒なフードを頭から被った女性と対峙していた。
「…………キーストーン…………渡して」
「だから、失くしちゃったんです!」
「…………
「何してるの!」
「あ、ハルカさん!」
「…………チッ」
「貴女……カガリさん!」
「…………お前も、キーストーン……持ってる?」
「え? あ、うん」
「…………そう。……すぅー、はぁ…………なら、寄越せぇ!」
「えぇ!?」
女性の正体はサガリの姉であるカガリ。ハルカがその事実に驚く中、カガリはハルカに確認する様に質問した。思わず正直に持っている事を教えてしまったハルカ。するとカガリは何かを落ち着かせる様に深呼吸をしてから、ポケモンを出して有無を言わさず勝負を仕掛けてきた。
「ふぅ、ビックリした」
「……はぁはぁ…………サガリ、ごめんなさい」
「!? どうしてサガリちゃんの名前が出て来るの! ちゃんと説明して!」
「…………撤退」
「あ!」
カガリは嘗て戦った時の様にバクーダをメガシンカさせて挑んだが、あの頃より途轍もない成長を遂げているハルカには全く歯が立たなかった。疲労よりも驚きに出た汗を拭いながら安心したのも束の間、カガリの言葉にハルカは問い質そうとする。が、カガリは答えずにその場を逃げる様に去ってしまった。
「ありがとうございました!」
「あ、うん。怪我はない?」
「はい。あの、僕実はキーストーンを失くしてしまって。あれがこの前ニュースになっていた、キーストーンを奪っている人なんでしょうか?」
「多分。でもどうしてキーストーンを集めてるんだろう。サガリちゃんの為……?」
ハルカは考えるも、答えを出す事は不可能に近かった。ミツルと別れて一度ミシロタウンへ戻ろうかと思った矢先、今度はハルカの元にダイゴからの緊急連絡が入る。
そして彼女は彼に呼び出された先、カナズミシティにて再び世界へ迫る脅威。隕石の接近について知らされる事となった。
トクサネシティ。宇宙センター2階。そこでは今正にホウエンへ、この世界へ迫る脅威への観測と対処について話し合いが行われていた。現チャンピオンとして、嘗て世界を救った者としてダイゴと共にやって来たハルカは隕石の存在や、やるべき事についてを聞かされる。
「つまり、隕石の軌道にワープホールを作って何処かへ飛ばしてしまう。という事か」
「そんな事が……」
「可能なのだよ。その為に必要なのが隕石の欠片だ。そこでハルカ君にはもう1つ……」
常日頃から隕石について調べていた学者……ソライシ博士の提案を聞いていたハルカとダイゴだったが、突然1階が騒がしかった事で話は中断。やがて関係者以外立ち入り禁止にも関わらず姿を見せたヒガナの姿に驚きながらも、全員は彼女へ近づいた。
「やぁ、ハルカちゃん。それと、ダイゴさんだったかな?」
「ヒガナさん、だったね。どうしてここに?」
ダイゴは彼女を警戒する。嘗て自分達にとって敵といっても良かった相手であり、今尚その正体が謎に包まれている彼女に気を許せないのは仕方のない事だろう。しかしヒガナはそんな事を気にした様子もなく、星に迫る隕石やソライシ博士が考えたその対処法についてをまるで聞いていたかの如く言い当てる。そして、告げた。
「キミ達が危機を逃れる事、それは他の誰かが危機に陥る事に繋がる。分かるかい?」
「何が言いたい?」
「キミには言ってないよ。博士もキミも、想像力が足りてない。ハルカちゃんは分かるかな?」
「他の、誰か……?」
「うーん、キミにも難しかったかな。まぁ、キミ達が何かしなくても隕石は私達が対処する。黙って見てなよ」
「私達、だと? 一体何をする気だ……!」
「話しても足りてないキミ達には理解出来ないよ。それじゃあ、またね」
ヒガナは何もせず、言いたい事だけを告げて去ってしまう。彼女の言葉やその意味、目的についても気になる3人だったが、目下の迫り来る脅威への対応を優先する事とした。嘗てハルカが旅で訪れた街の傍にある流星の滝と呼ばれる洞窟。そこにある『いんせきのかけら』を手に入れる事となったハルカ。
彼女はそこでダイゴと共に流星の民と呼ばれる古くから伝わる伝承や神話を後世に残し続けていたお婆さんと出会い、やがてヒガナの正体を知る事となる。嘗て予言されたホウエンに迫る危機。それを止められる唯一の存在。ヒガナが行った、グラードンとカイオーガを呼び起こす計画。全てサガリが本人から聞いた内容だ。
「もしかしたら、サガリちゃんはヒガナさんに協力してるかも」
「トウカシティで彼女のお姉さん、嘗てマグマ団幹部だったカガリに会ったと言っていたね。彼女の事は僕も余り知らない。が、サガリちゃんに固執していた事はあの南の孤島での一件で分かる。そんな彼女がもしヒガナに協力しているとなれば、十中八九サガリちゃんも協力者の筈だ」
「カガリさんはキーストーンを集めてました。でも、何の為に?」
「キーストーンを? だとすれば、最近ホウエンで頻発している強奪事件は彼女達の仕業という事に……」
ヒガナの正体を知り、その目的が自分達と同じ様にホウエンを救う事だという事実を知ったハルカは同時にここまでで出会ったカガリの存在やヒガナと親しかったサガリの存在も気にする。本人と出会わなければ、何かを意図して行動しているのかも分からないだろう。ダイゴは先行してトクサネへ戻り、ハルカも『いんせきのかけら』を手に流星の滝を後にした。