「お待ちかねの強者だぜ、エナ!」
「お願い、オオスバメ!」
サガリはグラエナのエナを。ハルカはオオスバメを場に繰り出した。
『オオスバメ♀』ツバメポケモン
遥か上空を円を描く様に飛び回り、獲物を見つけると急降下。
足の爪でガッシリ掴んで逃がさない。
エナは目の前で羽を動かしながら飛び続けるハルカのオオスバメを前に威嚇する。それはグラエナとしての特性もあるが、単純に目の前のオオスバメが途轍もない強さを持つ強者である事を理解していたから。お互いに警戒をしながら主の指示を待てば、先に声を上げたのはサガリであった。
「エナ、『こわいかお』だ!」
「っ! オオスバメ、『こうそくいどう』!」
最初の行動はどちらも直接的な攻撃ではなかった。サガリの指示によってエナは自身に出来る最大に怖がらせられる顔を作りながらオオスバメを睨む。それを見て恐怖から守りが薄くなったオオスバメだが、ハルカの指示を受けてその場で左右へ移動を始める。徐々に勢いが出て来れば、その速度は残像すら生み出し始めた。
「まずは痺れてみろ! 『かみなりのキバ』!」
「オオスバメ! 避けてから『つばさでうつ』よ!」
地上でしか移動出来ないエナと空を自由に飛び回れるオオスバメでは、攻撃を当てるにしても非常に差があった。速度の増したオオスバメを相手に牙を痺れさせながら近づいたエナ。しかしその牙が届く事はなく、空を大きく舞い上がったオオスバメが翼を広げながらエナへそれをぶつけた。大きなダメージとは言えないものの、先制攻撃はハルカが勝ち取った瞬間である。
「すばしっこくて当たらないか……なら、『あくび』だ!」
エナは大きな欠伸をオオスバメにして見せる。それを移されてしまったオオスバメは眠気に誘われ始めた。ハルカはそれを見て即座にオオスバメをモンスターボールへ戻す。ボールの中に戻してしまえば、効果の出ていない『あくび』や混乱状態といった一部の状態以上は防ぐ事が出来るのだ。因みに精神的にも安定する為、下がった防御なども元に戻る。
「行って! キノガッサ!」
『キノガッサ♀』きのこポケモン
軽やかなフットワークで敵に近づき、伸び縮みする腕でパンチを繰り出す。
ボクサー顔負けのテクニックの持ち主。
交代して出て来たのは、嘗てサガリと共に戦った際にハルカが育てていたキノココの進化形……キノガッサ。進化前は『くさ』だけだったものの、今では拳を握ってシャドーボクシングを始める姿から分かる様に『かくとう』のタイプを獲得していた。そして『あく』であるエナに『かくとう』は弱点でもある。だが、エナは軽く後ろを見てサガリと目を合わせる。その目は何時かの様に自分が下がる事を良しとしていない。そして、それを以前は信じ切れなかったサガリもあの頃とは違った。
「はっ! エナ、タイプの相性なんてお前には関係ないよな!」
『!』
サガリの声へ答える様に、エナは『とおぼえ』をする。彼女の中で戦いに対する勢いが増し、その攻撃力は確かに上昇した。
「キノガッサ、マッハパンチ!」
「その覚悟、証明してやろうぜ! 受け止めて『ほのおのキバ』」
「嘘!?」
躱す事も逃げる事もせず、真正面から苦手な筈の『かくとう』技を受け止めたエナ。その顔は痛みを堪えて微かに苦しみを見せるが、それも一瞬。自ら迫ったキノガッサの身体に炎を纏った牙が突き刺さり、キノガッサの鳴き声が響き渡った。
やがてエナが口を離した時、弱ったキノガッサがフラフラした足取りでハルカの傍へ。エナ自身も身体を大きく揺らしながら呼吸しており、何方も残り体力は少ないのだろう。2人はそんな仲間を信頼して、戻さずに最後まで戦わせ続ける。
「お疲れさん。楽しめたか、エナ?」
「キノガッサ、ありがとう」
勝負は引き分け。ボールに戻した仲間へ激励を送り、互いに次のポケモンを場へ繰り出す。
ハルカが出したのは最初と同じオオスバメ。一方、サガリが場に繰り出したのはキュウコンのキュウであった。
「相手は強敵だ。負けたら姉の威厳が下がるかもな! ……元からあんま思ってないけど」
『!?』
キュウは最後の言葉が耳に入らず、最初の言葉だけで闘志を燃やし始めた。心なしかその場の温度が数度高くなった気がした2人。やがて第二ラウンドのバトルが始まる。
「キュウ、おにび!」
「避けて!」
エナの時と違い、キュウが放つ技は近距離である必要が無かった。キュウの放った技は空を舞うオオスバメの身体を撃ち落とす様に直撃。同じ要領で避けようとしてしまった為に、回避し切れなかったのだ。
『おにび』に直接的な攻撃力は無い。だがそれを受けたオオスバメの身体は『やけど』状態になってしまう。徐々にダメージを受けると共に、『つばさでうつ』等の物理的な攻撃の威力が落ちてしまうのだ。それは基本的に物理技を行うオオスバメにとって致命的な弱体化。
「更に弱らせてやれ、『あやしいひかり』!」
「っ! オオスバメ!」
キュウの目が妖しく光る。それを見てしまったオオスバメは混乱し始めてしまい、真面にハルカの指示を聞けない状態となってしまった。このままでは不味いとハルカが再びオオスバメを戻そうとした時、それを阻止する様にオオスバメの周りに炎の渦が生まれ始める。
「そんな!」
「『ほのおのうず』。今度は逃がさねぇよ! 『れんごく』」
渦が中心へ近づく様にしてオオスバメに炎が迫る。やがてキュウが大きく鳴き声を上げた時、オオスバメを中心に途轍もない熱気と余波が離れた場所に居るハルカにまで届いた。やがて炎が徐々に静まれば、渦のあった場所には倒れたオオスバメの姿。既に戦える状況ではない。
「ごめんね……。やっぱりサガリちゃん、強いんだね」
「なんだよ、今更。短い期間とはいえ一緒に旅したんだ。分かってたろ?」
「あはは……うん、そうだね。だから、油断出来ない。本気で行かないと!」
「端っからこっちは本気なんだ。そっちも本気じゃないと困るぜ!」
「それもそうだね! ホエルオー、行くよ!」
『ホエルオー♀』うきくじらポケモン
見つかった中では最大のポケモン。
大海原をゆったりと泳ぎ、大きな口で一気に大量の餌を食べる。
出て来たのは巨大なポケモン、ホエルオー。どんな原理で地上でも活動出来るのかは不明だが、宙を浮きながら空を漂うその姿には途轍もない迫力があった。
「『うずしお』!」
「まずっ! キュウっ!」
ハルカの出した命令が発動した技は、まるで先程キュウが行った『ほのおのうず』の水版であった。何もない地上から突如として噴き出した水が渦を巻き始め、キュウを飲み込む様に襲い掛かる。避ける事も出来ずに飲まれてしまったキュウは苦手な水の中で苦しみ始めた。
「キュウ! 『やきつくす』で水を蒸発させちまえ!」
サガリの声を聞いて弱々しくも炎を出したキュウは渦潮を蒸発させようとする。その目的は何とか果たせたものの、弱ってしまったキュウ。そんな彼女の足元が突然暗くなった時、サガリとキュウは上を見上げて自身に起きる未来を覚った。
「ホエルオー、『のしかかり』」
「キュウ!」
ホエルオーの途轍もない巨体がキュウを押し潰す様に圧し掛かる。やがてゆっくりと再びホエルオーが浮いた時、キュウがその下で倒れたままになっていた。
「今度一日くらい、お前の望んだ『妹』になってやるよ」
その声が果たしてキュウへ届いているのか、それは定かではない。サガリは彼女をボールへ戻すと、目の前で浮かぶ巨体を前に意を決した様子で次の仲間を繰り出した。
「行って来い、ティア!」
出て来たのはラティアスのティア。その姿を見てハルカは仲間になったラティオスをこの場に連れてくれば良かったと少し後悔する。
サガリが連れ去られた後、負けたハルカを慰めたラティオスはハルカの仲間となっているのだ。その際、ラティオスがハルカの仲間となって即座にラティアスは何かをラティオスへ告げて飛び去ってしまった。それは今にして思えば、連れ去られたサガリを探しに飛び立ったのだとハルカは思う。ラティオスはハルカを、ラティアスはサガリを主にしたかったのだと。
「『おいかぜ』からの『ねがいごと』で場の準備だ!」
「ホエルオー、ハイドロポンプで邪魔して!」
空を浮かぶホエルオーと、空を飛ぶティア。その機動性は後者の方が高く、ティアは身体を動かして攻撃を華麗に避けながら言われた2つの技を見事に熟した。追い風を受ける事で素早くなり、願い事によって攻撃を受けた場合の保険も完了。一撃は強力ではあるものの、耐え切る事が出来れば後々回復する事だろう。
「行くぜ? 『りゅうのはどう』!」
「ホエルオー、ハイドロポンプで応戦!」
互いの放つ技がぶつかり合う。威力は互いに同じ程度であり、しかしそれがティアとホエルオーの間にある差を現してもいた。竜の波動よりも、ハイドロポンプの方が威力の高い技なのだ。それが同時に当たって同じとなれば、ティアの技を放つ力の方が強いという事になる。
「ティア! ソーラービームの準備だ!」
「『ドわすれ』を繰り返して!」
ティアの身体に空の光が集まり始め、それを見たハルカは守りの力を上げる為にド忘れを繰り返させる。やがて光が溜まった事で放たれた威力の大きい輝くビームはホエルオーに命中。確かにダメージを与えたものの、掠り傷程度と言えるだろう。
「ガードシェア」
「だったら、のしかかり!」
「その前に『あまえる』だ」
「もう! しろいきり!」
能力を上げては分けられ、また下げられる。補助的な技の掛け合いに中々勝負が決まらない中、ハルカが少しずつ苛々を感じ始めた時。サガリはティアに命令する。
「あまごい」
「え……そんな事したら、私の方が有利に……っ! まさか!」
「確かにホエルオーは水タイプで雨が降れば有利だけどな、だからこそ不味いパターンもあるのは分かってるよな? ティア、『かみなり』だ!」
「ホエルオー!」
突如として周辺に降り始めた雨。やがてティアが行った行為により、雨雲に雷鳴が響く様になり……それはホエルオーを直撃した。その巨体を大きく痺れさせたホエルオーはゆっくりと地上へ落ち、そのまま瀕死に。それが決定打となり、ハルカはホエルオーを戻す。
「今は他に居ないの。お願い、ライチュウ!」
『ライチュウ♀』ねずみポケモン
電気袋に電気が溜まり過ぎた時は、尻尾を地面につけて放電する。
巣の近くには地面に焼け焦げた後がある。
雨乞いによって降る雨は、『かみなり』の命中率を確実なものへと変える。だが『でんき』タイプにおける雨の恩恵はそれだけであり、ハルカの手持ちは雨である事に都合の悪いポケモンが控えていた。
ティアに電気は効かず、ティア自身もライチュウに決定的な攻撃は持たないが、相性の話をすればティアの方が有利であった。ホエルオーが行った圧し掛かりのダメージも既に願い事によって回復しており、無傷と考えていいティアを前にハルカはそれでも臆さなかった。
「ライチュウ、『じゃれつく』!」
「ティア、空から『りゅうのはどう』!」
速攻で近づいたライチュウの攻撃が混ざった行動にティアは少しだけやられながらも空へ。そして放った竜の波動はライチュウへ直撃するが、ギリギリで回避したのかダメージは少なかった。
何度か攻撃と回避をお互いに繰り返していると、降っていた雨が止み始める。効果の薄い電撃を何度か受けながら、ティアは『ドラゴン』のタイプで着々とライチュウにダメージを与え続け……やがて先に倒れたのはライチュウであった。
「不利な戦いを強いてごめんね。でも、貴女のお蔭であの子達が頑張れる。……焼き尽くして、マグカルゴ!」
『マグカルゴ♀』ようがんポケモン
殻は皮膚が冷えて固まったもの。
触っただけでボロボロと崩れてしまう。マグマに入ると元の大きさに戻る。
ライチュウにお礼を言いながら新たに出したのは、マグカルゴ。既に弱ってしまっているティアはそれでも戦う意思を見せており、少しでも回復する為にとサガリは命令する。
「ティア、『じこさいせい』!」
「させないよ! マグカルゴ、『げんしのちから』!」
願い事とは違い、その場で即座に回復する事の出来る技。しかしそれがしっかりとティアの身体を癒す前に、マグカルゴの呼び出した岩がその身体へ降り注いだ。運が悪い事にそれはティアの羽にも当たってしまい、予想以上の深手によって回復は間に合わず、倒れてしまう。
「あのデカいのを倒せたんだ、お前は十分頑張ったよ」
ティアを戻したサガリは次のボールに手を掛ける。ハルカの記憶とサガリの手持ちで変化が無ければ、残る2匹の予想は非常に簡単であった。そして一番の相棒といえる存在が最後に来るのなら、次に来るポケモンの予想も。そして繰り出して来たのはハルカの予想通り……ではなかった。
「やるぞ、サーナ!」
『マスターが望むなら、例え世界が敵になろうと私は構いません!』
「サーナイト……正直、クチートで来ると思ってたよ」
「クーとは約束してるんだ。だから、まずはアイツをこの場に引きずり出してやるよ! サーナ、『みらいよち』!」
『貴女の未来に、脅威が迫っていますよ……っ!』
サーナは未来に攻撃を予知する。願い事の様に時間が経ってから回復する様に、それは時間が経ってから攻撃をする技。避ける術は基本的に存在せず、ハルカは早期決着を目指す他に無い。
「続けて『さいみんじゅつ』!」
『貴女は段々眠くなる……眠くなる……はぁ、マスターに使いたかったです』
「え、何言ってんの? お前」
話をする人物が増えただけで、その場の空気はやはり一変する。何処か仲の良い様な、ちょっと危ない空気も含んだサガリとサーナの会話。その一方でマグカルゴが眠ってしまった事にハルカは危機感を覚える。
「『めいそう』してから『サイコキネシス』」
『…………はっ!』
目を閉じて精神を集中させる事で特殊な技の威力を上げた後、サーナは何かを捻る様に両手を前に掲げて動かし始める。未だに眠り続けるマグカルゴの身体がゆっくりと上がり始め、やがて姿勢は逆さまに。そして地面へ叩きつけられる様にその身体は落とされた。防御も抵抗も出来ないまま、大きなダメージを受けたマグカルゴ。そこへ止めを刺す様に『みらいよち』で予言した攻撃が襲う。そうして瀕死となったマグカルゴをハルカは戻した。
「やっぱり、強い!」
「ま、何だかんだで一番付き合い長いしな」
『そんな簡単に私達に勝たれたら、困ります』
「あはは、息もピッタリ。でも仲が良いって話なら、私も負けないよ! おいで、バシャーモ!」
「……来たな」
『バシャーモ♀』もうかポケモン
戦いになると手首から灼熱の炎を吹き上げ、勇敢に挑みかかる。
相手が手強い程、激しく燃え上がる。
それはハルカという人物を知っている者なら、誰もが彼女の相棒として認識しているポケモン。嘗てはアチャモであり、ワカシャモとなり、バシャーモとして進化を果たしたその勇ましい姿はハルカの信頼をその背に受けて手首から炎を噴き出す。そして更にハルカは腕に着けていたバングルに手を当てた。
「私とバシャーモの本気、サガリちゃんに見せてあげる! メガシンカ!」
光に包まれたバシャーモはやがてその姿を更に勇ましいものへと変える。片足を上げて攻撃の姿勢を取る姿からはキュウと比較にならない程の熱気が放たれており、それを感じながらサガリはサーナを一度ボールへ戻した。
「クー、行けるな?」
バシャーモは『ほのお』・『かくとう』のタイプを持っている。一方、クチートは『はがね』・『フェアリー』。『ほのお』は『はがね』に強く、『フェアリー』は『かくとう』に強い。お互いにお互いの弱点を持ち合う同士だが、3段階の進化を経たバシャーモと進化をしないクチートでは根本的な能力に大きな差があった。……しかし、サガリは気にせずにボールへ確認する。まるで返事をする様にそれが動いた時、サガリはクチートのクーを繰り出した。
「何時かお前のアチャモ。もうバシャーモだけどな、そいつにリベンジしたかったんだとよ。だから、こっちも本気だ……クー、やるぞ! メガシンカ!」
「っ!」
アミュレットの宝石部分を胸の前で握り、そこから放たれる光がクーを包み込む。そして姿を再び見せた時、袴の様な服装に頭の顎を2本に増やした攻撃的な見た目をしたクーが姿を現した。後ろを見る様に半身を振り返らせながら、背を向けてバシャーモと相対するクーはとても戦う気を見せている。
クーとバシャーモは目を合わせる。お互いの姿は変わっていても、嘗て相対した者同士。当時と強さは大きく違い、その事実を前にして楽しそうに鳴き声を上げる。
「行くよ! メガバシャーモ、『ほのおのパンチ』!」
「クー、『てっぺき』で受け止めてから『ドレインキッス』!」
炎を纏ったメガバシャーモの拳が身体を非常に硬くしたクーに叩き込まれる。相性で考えればかなりの痛手だが、防御を大きく上げたクーはまだ元気であった。そして近づいたメガバシャーモの身体を2本の顎で抱えると、その身体に口づけをする。体力を奪うその攻撃はバシャーモにとって相性が悪く、またクーは与えたダメージに応じて回復。体力の残りで言えば、クーの方が優勢となる。
「メガバシャーモ、離れて『ビルドアップ』!」
「逃がすな。『じゃれつく』」
クーから何とか離れたバシャーモが呼吸を整える中、クーは更に追い打ちを掛けるが如くじゃれつき始める。
「『フェザーダンス』」
その時、ハルカの指示で近づいていたクーに自身の羽毛を絡み付かせ始めたメガバシャーモ。避ける事も出来ずにそれを受けてしまった事で、クーの攻撃は一気に威力を弱くしてしまう。……そして更に畳みかける様に、ハルカは指示した。
「もう1度『ビルドアップ』からの、フレアドライブ!」
「クー、避けろ!」
『っ!』
再び呼吸を整え、炎を纏いながら突撃するメガバシャーモを前にクーは羽毛が絡まって思う様に身動きが取れなかった。その攻撃は綺麗に命中してしまい、攻撃力が2度上がっているその威力は鉄壁をしたクーでも耐えられない。何とか立ち上がろうとするが、やがてクーは倒れてしまう。
「リベンジ失敗、か。でもアイツ相手に良くやった。今度、目一杯遊んでやるよ」
「これでお互い、最後の一体だね」
「あぁ。けど、クーとの戦いでそっちは消耗してる。大分不利だと思うぜ?」
「そんな事ないよ。メガバシャーモ、『ねむる』」
「げっ……しかもカゴの実持ちかよ」
ハルカの指示で眠り始めたメガバシャーモ。その疲労などは瞬く間に回復していき、更に眠りながら持っていた身を食べる。それは眠っているポケモンを起こす効果のある『カゴの実』。よって、メガバシャーモの体力は出て来た時と同じ満タンであり、更に言えばビルドアップを2度行った事で防御と攻撃が高まったままである。
「一気に同じ状況か。エナの時もあったからな、相性なんてどうとでもなる。……本当の相棒対決ってな。最後の戦いだ、やるぞサーナ!」
『再び、参ります!』
「一気に決めるよ! ブレイズキック!」
「避けてからのムーンフォースだ!」
「そのままニトロチャージで相手の技ごと蹴り飛ばして!」
メガバシャーモの炎を纏った蹴りを回避した後、空から光を集めて放ったサーナの技を今度は全身に炎を纏いながらメガバシャーモは真っ向から蹴りで応戦する。確かにダメージは入っているにも関わらず、突撃して来たその身体に接触してサーナはよろめいた。……その瞬間を、ハルカは見逃さない。
「シャドークロー!」
「っ! 距離を取れ、サーナ!」
『ぐぅっ! 間に、合いません……でした』
影の力を纏った爪がサーナの身体に傷をつけた。それが弱点でもあったサーナは大きく後ろに下がりながらもフラフラの状態で、そこへハルカは畳みかける。
「かえんほうしゃだよ!」
「受け止めるのは流石に厳しいか……なら、かげぶんしんで隠れろ!」
『私が何処に居るか、わかりますか?』
傷を負ったサーナの体力は半分程度なのだろう。火炎放射を真っ向から受け止めるだけの力は残っておらず、サガリはサーナに指示を飛ばす。やがて動き始めたその身体がメガバシャーモを囲う様にして、どれが本物なのか見分けをつけられなくした。適当な方向へ攻撃しても、意味はない。それを分かっていたハルカは静かに目を閉じてから……告げる。
「終わらせよう……メガバシャーモ、ブラストバーン!」
「っ! サーナ!」
『!?』
メガバシャーモの身体を中心に炎の光が生まれ……やがてその力は辺り周辺を焼き尽くす程の爆発を引き起こす。影分身で囲む様にしていたサーナは偽物と本物全てが爆発に巻き込まれてしまい、煙の中から徐々に疲れ切って動けないメガバシャーモと倒れて動けないサーナの姿が見える様に。
「俺の負け、か……お前は強さは本物だ。この先に進んでも、何とか出来るだろうな」
倒れたサーナを戻し、サガリは自らの負けを認めるのだった。