【完結】伝承者の友   作:ウルハーツ

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第3話

 フエンタウン・ジム前。

 

「よし、一丁上がりっと」

 

 そこで空を見上げながらサガリは晴れた顔で告げる。彼女の手持ちには新たに輝く4つ目のバッチがあり、それはこの街に居るジムリーダー……アスナから勝利を収めた証拠でもあった。

 

 ジムリーダーを祖父から継承された彼女は非常に緊張しており、最初は挨拶から何まで無理をしていたアスナだったが、バトルの中でその緊張は解れたのか戦いを楽しむ事が何よりも大事であると思い出した様子。恐らく次の挑戦者を前にはもう少しリラックスして戦える事だろう。つまり、この後にやって来るであろうハルカは少しだけ難易度が上がった事になるが……そんな事はサガリには知らない話である。

 

「さて、次は……ん?」

 

 5つ目のバッチを手に入れる為に向かうべき場所を手持ちにあるポケトレの地図で確認しようとした時。彼女は街へ来るために経由した山、えんとつ山の方角から沢山の鳴き声が聞こえる事に気付いた。それもそこには生息しない筈のポケモン、ポチエナの鳴き声だ。

 

 

『ポチエナ』かみつきポケモン

動くものを見つけるとすぐに噛み付く。

獲物がヘトヘトになるまで追いかけ回すが反撃されると尻ごみする事もある。

 

 

「ポチエナが大量? まさか、な……見に行ってみるか」

 

 何かを予感したサガリは微かに冷や汗をかきながら降りて来た山を上る。段差も乗り越え、草むらを超えてやって来た山の上。……そこには赤いフードを被った男女と青い服を着た男女がポチエナを出して戦い合う姿がそこかしこに存在。サガリは前者の姿を見て来た道を引き返そうと振り返った。

 

「待った!」

 

「っ!」

 

「お前、どっかで……んん~?」

 

「チッ! 面倒事は御免なんだよ! エナ、速攻で終わらせてここから逃げるぞ!」

 

 赤いフードを被った男がサガリの後ろに立っており、その姿に一歩下がったサガリを見て男は何かを思い出そうと顔をジロジロ見始める。するとそれを止めさせる様に、サガリはポケモンを繰り出した。現れたのは黒と灰色の体毛をしたポチエナの進化した姿。

 

 

【グラエナ♀】かみつきポケモン

どう猛な唸り声を上げながら姿勢を低くしている時は攻撃の前触れ。

鋭く尖った牙でガブリと噛み付く。

 

 

「のわぁ! いきなりだな! ポチエナ!」

 

「エナ、ピンチだ! 一撃で終わらせてくれ!」

 

 現れたグラエナのエナは一度サガリに視線を向けた後、相手がポチエナであると分かって再度見始める。その目は批判した様なものであり、恐らく弱い者虐めを良しとしたくないのだろう。だがサガリの声音には明らかな焦りが含まれており、何かを察したグラエナは威嚇と同時に前へ……気付けばポチエナの目の前に堂々と立ち塞がっていた。

 

 自分よりも大きな巨体に怯えるポチエナを前に、エナはその首元を噛む。それは優しい力であり、軽々と持ちあがったポチエナは地に足が付かなくなった事で焦った様に両手足をぶらぶらさせて鳴き声を上げる。そしてエナは大きく首を横に振って振り子を始め、やがて男へポチエナを放り投げた。

 

「のわぁぁぁ!」

 

 目を回す男とポチエナ。帰り道が出来た事でサガリはエナを戻そうとするが、そこで再び声が掛けられる。

 

「サガリちゃん!?」

 

「あ? って、お前は確か……ハルカ、だったか?」

 

「うん。でもどうしてサガリちゃんがここに?」

 

「安心しろ、ただの通りすがりだ。今からここを離れ……られないらしいな」

 

「!」

 

 現れたのはムロタウンで出会ったハルカであり、彼女はサガリの姿に困惑。だがその間に2人は他の赤いフードを着た男女数名に囲まれていた。そしてその内の1人がサガリの姿を見て声を上げる。

 

「あぁー! こいつ、マグマ団で指名手配してる子供よ!」

 

「なんだと!?」

 

「って事は、あの人の妹って事か!?」

 

「指名手配って、なんだよ?」

 

「サガリちゃん、前にこいつらと戦った時に拾ったんだけどね……これ、サガリちゃんだよね?」

 

 そう言ってハルカがバッグ取り出したのは一枚の紙。そこには【マグマ団Wanted!】と大きく書かれており、サガリの顔写真が張られていた。そしてその下にはサガリの特徴が沢山記載されており、誰がどう見ても自分を探す手配書の様なそれにサガリの顔が引き攣る。

 

「サガリちゃん、こいつらとどんな関係?」

 

「あー、なんて言うか……逃げだして来た、的な?」

 

「逃げるって……それだけ、サガリちゃんはこの人達にとって重要な存在って事……?」

 

「いや、こいつらって言うか多分1人だけなんだろうけどな。とにかく、こんな事で捕まる気は無いって事で。ハルカ、戦えるな?」

 

「勿論! でも、ごめんね。ちょっと疑っちゃった。この人達、悪い事する人達だったからサガリちゃんもその仲間なのかもって」

 

「俺は気にしねぇよ。だから、お前も気にすんな」

 

「うん! それじゃあ、行くよ!」

 

 気付けば周囲には大量のポチエナが居り、2人を取り囲んでいた。ハルカは手持ちからキノココを出してバトルの準備は完了。

 

 

【キノココ♀】きのこポケモン

深い森の湿った地面に生息。

落ち葉の下でジッとしている事が多い。落ち葉が積もって出来た腐葉土を食べる。

 

 

 サガリは引き続きエナと共に赤いフードの男女……マグマ団と戦いを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁー! 一体何人居るんだっての!」

 

「多分、幹部とかボスみたいな人が居るんだと思う。私も一度だけあった事あるけど、強そうだったよ」

 

「マジかよ……叩かなきゃ雑魚は引かないってか?」

 

 人数は非常に多いものの、ハルカとサガリの敵では無かった。だが倒せば次が、また次がと切りの無い戦いにサガリは苛々を募らせる。ハルカと共に時折移動していた結果、気付けば街へ戻るよりも山の方へと近づいており、もう簡単には帰る事など不可能だろう。

 

「やろう。私達で。アクア団、だったかな? あの人達も居るけど、互角みたいだから」

 

「……幹部って事はまさか……もう1人であってくれよ……」

 

「サガリちゃん?」

 

「やってやる。とっとと終わらせて帰るぞ!」

 

 突然やる気になったサガリ。この状況に不満を抱いていたのだから、それを打破する手段が見つかった事でやる気を見せたと思ったハルカは同意して山の奥へと向かう。道中のマグマ団員を蹴散らして、守りが一番多い場所へ到着した時。そこには太った男が立ち塞がっていた。

 

「ウヒョヒョ! こんな場所まで追って来たのですかこのチャイルドは。……んん?」

 

「……」

 

「おやおや、何処かで見た顔だと思ったら……今の今まで何処に行ってたんだお前はぁぁぁ!!!」

 

「ひっ!」

 

「……はぁ」

 

「お前がいなくなったせいで彼女は今使いモノにならないんですよ! そのせいで色々と計画に支障も……ですが、ここで捕らえれば問題ありませんね」

 

「ハルカ、こいつは幹部だ。ボスはきっとこの先に居る。行け」

 

「でも……うん、分かった! 気を付けてね」

 

 ハルカは目の前の男に面識があり、だが既に男はハルカなど眼中に無いと怒りをサガリへ見せている。その様子にサガリが先へ行く様に告げれば、少し戸惑いながらもやがて決意した様にハルカは奥へと進んで行った。

 

「良いのですか? リーダーマツブサに叩きつぶされますよ、あのチャイルドは」

 

「アイツは強いぜ? まぁ、ここで共闘しただけだけどな。……さて、んじゃやりますか」

 

「ここで貴女を確保すれば、彼女も元通り。計画に起きた支障も元通り。行きますよ、マタドガス」

 

「教えてやるよ、ホムラ。そう言うのを捕らぬ狸の皮算用って言うんだぜ? 来いっ! キュウ!」

 

 

【マタドガス♂】どくガスポケモン

腐った生ゴミから出るガスが大好き。

掃除をしない家に住み着き、家族が寝静まった真夜中にゴミ箱を漁る。

 

 

【キュウコン♀】きつねポケモン

真っ赤な瞳は怪しい光を放ち、相手の心を自在に操る。1000年間生きるといわれている。

9人の聖なる力を持った仙人が合体して生まれたという伝説がある。 知能が高く、人の言葉を理解する。

 

 

「キュウ。これだけは言っておく……負ければ、姉貴のところへ戻る事になる」

 

『っ!』

 

 その言葉だけでキュウコンは目を鋭くしてマタドガスを睨みつけた。技を使った訳では無いにも関わらず、防御力が下がった様な気がしたマタドガス。

 

 暫しの睨み合いが続いた後、サガリとホムラのバトルが始まった。




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