ハルカはマグマ団のリーダー、マツブサに勝利を収めた。だが相手はハルカを子供だと侮って油断しており、本気を出そうとするその一歩手前で緊急連絡を受けてえんとつ山を後に。既にサガリの姿は無いものの、ハルカは遠くからホムラを相手に勝利を収める姿を目撃していた事から心配はしていなかった。
「リーダー、マツブサ。実は……」
「なるほど。今すぐカガリへ伝えろ。恐らく作戦を続けていれば会える、とな」
「はっ!」
別の場所へ移動するマツブサにその道中、ホムラがサガリの情報を伝える。するとそれを聞いたマツブサは即座に判断して、現在
マグマ団基地。
そこはミナモシティと呼ばれる大きなデパートやコンテスト会場で有名の街。だがその端にはマグマ団の基地があり、ワープ盤を渡って訪れる部屋の1つにその女は居た。
家具と呼べるものはベッドと机、パソコンのみ。パソコンの画面にはサガリと女が並んで映る写真が壁紙とされており、ベッドの上で膝を抱く様にして女は顔を伏せていた。
彼女の名前はカガリ。マグマ団の幹部であり、サガリの姉でもある存在。だが妹がマグマ団から消えた事が切っ掛けで塞ぎ込んでしまい、今は何も行動しない空っぽな存在に成り果ててしまっていた。
そんな彼女の部屋に1人の少女が現れる。下っ端同様に赤いフードを被ったマグマ団員の1人。彼女が現れてもカガリは反応しないが、そんなのは分かっているとばかりに少女はカガリの傍へ。そして「ふぅ」と息を吐いてから、口を開いた。
「カガリ隊長、サガリちゃんが見つかったみたいですよ」
「……………………っ!!!!!」
「うわぁっと! 思った通りの反応」
「…………
「はいはいっと。リーダーとホムラ隊長がえんとつ山に行ったのはご存知ですよね? そこに現れたみたいですよ」
「…………
「負けたみたいですね。でも、リーダーから伝言みたいですよ。えっと……『次の作戦に参加せよ。恐らく奴は現れる』だそうです」
「…………
先程まで塞ぎ込んでいたのが嘘の様にベッドから立ち上がったカガリはそのまま部屋の外へ。1人残された少女はそんな姿を見送りながら、一仕事が終わった事で安心した様に溜息をついた。
「居なくなっても人騒がせだなー、ほんとに。…………『俺は居なくならない』って言ったのにさ。私も行こうかなぁ」
少女はそう言ってカガリの部屋を後にする。その後、基地の中は幹部とリーダーが居なくなった事で下っ端のみとなったが、攻め込む相手も居ないため平和の一言であった。
フエンタウン。
「えへへ、お待たせ!」
「その様子じゃ、勝ったみたいだな」
「うん! 少し危なかったけど、ほら! ジャーン!」
ハルカがマグマ団との戦いを終えてジムへ挑戦する為に訪れたその町に、サガリは同じ様にして戻って来ていた。
街の中へ入ってポケモンセンターへ訪れたハルカはそこで湯上りのサガリと遭遇したのだ。温泉が有名な町であり、サガリ曰く戦闘の疲れが取れるとの事。ハルカはジム戦を終えたら入ると決めて、挑戦。ポケモンセンターにはまだサガリが残っており、そんな彼女へ嬉しそうに見せつける。
「サガリちゃんも今4つなんだよね?」
「あぁ。次はトウカか?」
「うん。トウカシティのジムリーダ-はね、あたしのお父さんなんだよ!」
「なるほど。納得だ」
ハルカのバトルセンスは非常に高い。現状、彼女は負けた事が無いだろう。それが父親譲りなのか、彼女自身の才能なのか……。
「トウカシティか……良かったら一緒に行かない? ほら、旅は道連れって言うし! 同じ目的なら、ね?」
「良いけどよ。多分ヒワマキ辺りまでになるぜ? ミナモには近づきたくないんだ」
「? 分かった。それじゃあ、まずは温泉♪ 温泉♪ 一緒に入ろ!」
似ておらずとも、傍から見れば姉妹の様に仲が良い2人。ハルカに引っ張られてサガリもまた温泉に入る事となり、ポケモン達も共に疲れを癒してから2人はトウカシティへと向かう事となる。
そこはポケモン達のコミュニティ空間。サガリのポケモン達も互いが互いの事を知り、絆を深めている。主人が同じという大きな共通点から始まった絆である。
『何とかお姉さんの立場は守れたわ!』
胸を張ってそう言い切るのはキュウことキュウコン♀。彼女はサガリの姉としての立場を死守したいお姉さん気質なポケモンである。因みに出会いはロコンの頃に幼いサガリと出会い、遊んだ末というクチートと似た様な馴れ初めである。
『ロコン』きつねポケモン
生まれた時は白い1本の尻尾。
愛情をタップリ受けると、尻尾は6本に分かれて見事な巻き毛になる。
『歯ごたえの無い奴ばかりだった』
唸りながら欲求不満といった様子で告げるのはエナことグラエナ♀。強い奴と戦い、自らが強くなる事を何より楽しむポケモンだ。出会いは強そうなサーナイトを連れていたサガリを見つけて挑んだのが切っ掛け。群れで過ごす事を良しとしなかったが、サガリに捕まってからは仲間の面倒見も悪くない。
『サガリぃ、サガリぃ』
そんなグラエナの背中で眠りながらサガリの名前を寝言で呼ぶのはクーことクチート♀。ムロタウンの石の洞窟でサガリと出会い、遊んだ末に途轍もなく懐いた甘えん坊である。出来ればボールじゃなくて外に出てサガリの腕にしがみついていたいと普段から言っており、偶にそれが許される事もある末っ子的な立場にある。
『ですが、完全に今回の件で場所は気付かれてしまいましたね』
真剣に今後の事を考えるのはサーナことサーナイト♀。サガリが初めて育てたポケモンであり、出会いは単純にサガリが最初に見かけたポケモンだったから。
因みにラルトスの頃からであり、当時の彼女もまたサガリが最初に見かけた人間であった。お互いにお互いが欲しいと思った一目惚れ。弱ってすら居ないのに、サガリが明後日の方角に投げたモンスターボールへ自ら当たりに行って大人しく捕まった経緯がある。
『ラルトス』きもちポケモン
頭の角で人の気持ちを感じ取る。
人前には滅多に姿を現さないが、前向きな気持ちをキャッチすると近寄る。
『いいですか! もしお義姉さんのところへ返されてしまったら、今までとは違って好きにマスターの傍には居られません!』
『あの人、私達を離したものね……仲が良い私達に嫉妬したのよ、きっと』
『ボールからも出れない。戦う事すら、出来ない……っ!』
『サガリぃ……ぎゅぅー、えへへ』
『マグマ団との戦いに呼ばれた時は油断する事も手を抜く事も厳禁です。負ければ最後、私達はボールから出れずマスターにも会えなくなってしまうかもしれません!』
サーナの言葉に真剣な目をする2匹。彼女達は絶対に負けられないと、改めて勝利への決意を固める。
そんなポケモン達の会話など露知らず、ハルカと共に温泉で気持ちよさげに目を細めるサガリは今一度疲れを流してジムへ挑む為に心の準備をするのであった。