【完結】伝承者の友   作:ウルハーツ

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第5話

 トウカシティ。

 

 ハルカの父親がジムリーダーを務めるジムのあるそこへ、2人は5つ目のバッチを手に入れる為に来ていた。ジムリーダーはその立場から1日に何度か挑戦を受ける必要がある。ハルカとサガリが同時に訪問したとて、それは問題では無かった。

 

 ジムリーダーのセンリは娘と4つのバッチを手に入れたらバトルをしようと約束。その夢が叶う事を喜び、また新たに友達が出来ている事にも喜んでいた。そして同時に傍から見れば同い年かそれ以下の見た目だが、只者ではないと感じ取る。

 

「どっちからやるかな?」

 

「流石に俺が割って入るのは無いな。約束だったんだろ? 思う存分、やって来い」

 

「うん。ありがとう、サガリちゃん!」

 

 先に挑むのはハルカとなり、ジムリーダーと挑戦者として、親子の真剣勝負が始まる。

 

 センリの扱うポケモンを主にノーマルタイプ。一方ハルカの相棒はアチャモから進化したワカシャモであり、タイプは『ほのお』と『かくとう』。後者はノーマルに強く、その戦闘は基本的にハルカが優位に立ったまま続いた。その才能と信頼関係からか、ピンチになる場面も無く……ハルカは勝利を収める。

 

 

【ワカシャモ♂】わかどりポケモン

野山を走り回って足腰を鍛える。

スピードとパワーを兼ね備えた足は、1秒間に10発のキックを繰り出す。

 

 

「ふぅ……やったっ!」

 

「負けた、か。……強くなったな、ハルカ。数日前に旅へ出たとは到底思えない」

 

「数日前って……マジかよ」

 

 ジムバッチを受け取り、感慨に浸るセンリの姿を前に彼の言葉を聞いたサガリは驚いていた。ハルカの成長速度は常軌を逸していると。だがそれをこの場で指摘する事も、そもそも親子の会話に口出しをする気も無かったサガリ。やがて話が終わった時、センリは改めてサガリと相対する。

 

「娘だと油断した訳ではない。だが、改めて気合を入れなければな」

 

「連続で行けるのか?」

 

「勿論だ。寧ろ慣れている」

 

「それじゃあ、今度は私が見てるからね!」

 

 ハルカが離れ、サガリがセンリと相対する。そして2人は同時にポケモンを場へ繰り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キンセツシティ。

 

「次は西側か……」

 

「波乗りを使えるのは……私の場合、ホエルコかな?」

 

 

【ホエルコ♀】たまくじらポケモン

目の上についている鼻の穴から体に溜めた海水を吹き出し、人を驚かすのが大好きなポケモン。

 

 

「俺は居ない、か。最悪、泳ぐか?」

 

「それじゃあ、一緒に乗って渡ろうよ! 私達なら、2人で乗っても大丈夫!」

 

 5つ目のバッチを手に、新たな舞台となるホウエン地方西側へ向かう為に訪れたキンセツシティで2人は海を渡る手段について話をする。

 

 技マシンと呼ばれる道具を使い、『なみのり』という技を持ったポケモンが居ればそれに乗って海を渡る事が出来るのだ。ハルカは都合よくポケモンが居たが、サガリの手持ちである4匹になみのりを扱えるポケモンは居ない。しかしハルカの提案は可能であり、サガリはそれに乗る事とした。

 

「ホエルコ、お願い! サガリちゃんは私に捕まってね!」

 

「あぁ……よっと」

 

 丸いホエルコの上へ乗ったハルカに続いて、今度はサガリがハルカの背中を掴みながら乗り込むと腹部に手を回す。向かい側に見える大地へ向かってホエルコが泳ぎ始めれば、簡単に2人は西側へ続く道へと辿り着いた。

 

「ここから先に行った場所に、ヒワマキシティだね」

 

「あぁ。そこのジム戦が終わったら別行動だ。次に会うのは何処だか分かんないが、どっかで会うだろ」

 

「向かってる先は同じだもんね。あれ?」

 

「?」

 

 話をしながら歩みを進めていた時、突然ハルカが目の前を見て首を傾げる。サガリがそれに気付いて前を見た時、そこには1人の男性が立っていた。着飾るその姿は様になっており、明らかに何処かのお金持ちだろう。だがその雰囲気は只者ではなく、強者の気配をヒシヒシと感じさせる。

 

「ダイゴさん!」

 

「やぁ、ハルカちゃん。それと……」

 

「この子はサガリちゃんです。ダイゴさんの後に石の洞窟で出会って、あたしと同じ様にジムに挑んでるんです!」

 

「どうも」

 

「こんにちは。はは、どうやらポケモンだけじゃなくて旅の仲間にも出会えたみたいだね」

 

「一時的、だけどな」

 

 ハルカとダイゴは知り合いの様であり、その出会いはサガリと同じ場所であった。唯一違うとすればその印象だろう。しっかり者のダイゴと、野生のポケモンが現れる場所でも寝る危なっかしいサガリ。だが年や見た目の関係から、ハルカはサガリと仲良くなりやすかった。仲の良さが違う理由はたったそれだけ。

 

「ここへ来たと言う事は、次はヒワマキシティに行くのかな?」

 

「はい!」

 

「なるほど。君なら彼女を倒す事もきっと出来る筈だ。頑張ってね」

 

「ありがとうございます!」

 

「彼女、ね……なにもんだよ、あいつ……って、なんだっ!?」

 

 爽やかな笑顔で立ち去ろうとしたダイゴに、その言葉を聞いてその正体が気になり始めたサガリ。だがそんな3人の元に突然、一匹のポケモンが現れる。翼を生やし、主に赤と白の体色をしたポケモン……ラティアスだ。

 

 

【ラティアス♀】むげんポケモン

人間の心を敏感に感じとる。

敵意をキャッチすると、全身の羽を逆立てて激しく鳴き声で威嚇する。

 

 

「サガリちゃん!?」

 

 突然現れたラティアスはサガリの後首を加えると、そのまま何処かへ向かって飛び去ってしまう。突然誘拐されたに等しい出来事にハルカが動揺する中、ダイゴは一時的には呆気に取られていたもののすぐに我へ返ってポケモンを呼び出した。

 

「ハルカちゃん! 乗るんだ!」

 

「っ! はい!」

 

「一体、ラティアスは彼女を何処へ……!」

 

 ダイゴに言われるまま、彼が出したポケモンに乗ってサガリを追う様に空へと舞い上がった2人。やがて辿り着いたのは大きく離れた場所にある南の孤島。不思議な感じのするその場所で、2人はラティアスがサガリを銜えたまま森へと入って行く姿を目撃する。

 

「奥へ行ったみたいだね。追い掛けよう!」

 

 2人はポケモンから降りて足で森の中へ。やがて開けた場所へ出た時、そこには地面に座り込んで目を回すサガリとそんな彼女の顔に自らの顔を当てて覗き込むラティアス。そして何かを大切そうに握り締めたままハルカとダイゴを見つめるラティオスの姿があった。

 

 

【ラティオス♂】むげんポケモン

優しい心の持ち主にしか懐かない。

腕を折り畳むと空気抵抗が減り、ジェット機よりも速く空を飛べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラティオスが抱えているのはラティオスナイトと呼ばれる石であり、不思議な力『メガシンカ』をするのに欠かせない道具であった。そしてラティオスとラティアスの二匹は人の心などに敏感であり、危険を察知する事にも優れている。

 

「ここへ彼女を連れて来たのは、何かから自分達を守って貰うため……?」

 

「何かって、一体何から……っ! サガリちゃん、あれ!」

 

「んぁ? ……おいおい、マジかよ!」

 

 ダイゴの予想は当たっており、その会話の最中にハルカとサガリには見覚えのある赤いフードを被った女性が2人現れる。やがてその2人はハルカとダイゴの前に立ち、2人の顔を眺めてからラティアスとラティオスに挟まれたサガリの顔を見て目を見開いた。

 

「…………ヒヒっ!」

 

「うわぁ、凄い偶然だねー。いや、これはもう必然かな?」

 

「何だ、この空気は……只者じゃ、無い!」

 

「マグマ団! こんな所へ何しに来たの!」

 

「…………やっと、補足(サプリメント)。…………このまま、捕獲(キャプチャー)……アハ♪」

 

「ちょっと、聞いてるの!」

 

「…………何、お前」

 

「ハルカちゃん、気を抜いちゃ駄目だ。彼女も、何かが可笑しい!」

 

 それはカガリと彼女に伝言を伝えた少女であり、カガリはハルカとダイゴの事等眼中に無いとばかりにサガリへ視線を向け続けていた。だがそれを遮る様にハルカが立って声を掛けた時、掛けられるその声は苛立ちや怒りの含まれたもの。思わずハルカは恐怖から一歩下がってしまう。

 

「随分荒れてたんだよ。でもキミが居るかもって分かったら飛んで来たって訳」

 

「お疲れさん。でも俺、帰る気は無いからな?」

 

「ふぅん。まぁ良いんだけどさ、嘘つきは少し痛い目見ないと駄目だと私は思うんだよね」

 

「ったく……力尽くも辞さないって感じだな」

 

「キミが居ないと私暇でさー。だから、しょうがないよね?」

 

 一方、少女とサガリはそんな状況が生まれた中でも飄々とした態度で会話を進める。ハルカはマグマ団とサガリに関係がある事は知っていたが、まるで友達の様に話す2人の姿に驚かずには居られなかった。ダイゴの視線も厳しいものとなる中、サガリは立ち上がる。

 

「なぁ、あんた」

 

「僕かい?」

 

「そこの2匹を頼む。こいつらは……俺がやる」

 

「っ! 私も手を貸すよ、サガリちゃん!」

 

「……分かった。君達に任せよう」

 

「ははっ! 久しぶりに楽しくなりそう!」

 

「…………サガリ、ちゃん……? …………お前が気安く、サガリの名前を、呼ぶなぁぁぁぁ!」

 

 ラティオスとラティアスを守る為の戦い……というよりは、サガリを連れ去る2人に抵抗する本人とその仲間。そんな歪な状況下でのバトルが今、始まる。




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