【完結】伝承者の友   作:ウルハーツ

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第8話

 ヒワマキシティ

 

 ジムの前で待っていたヒガナは、やがてそこから現れたサガリの姿を見て近づき始める。サガリの顔はとても満足気であり、ボールの中に居るエナも実は非常に満足していた。それもその筈。今までは退屈凌ぎと考えていたジムリーダーとの戦いを、本気で楽しむ様になった1人と1匹にとってその時間は最高だったのだから。

 

「やっべ、滅茶苦茶楽しい!」

 

「あはは。今のサガリ、今までで一番笑ってるかもね」

 

 楽し気な友達の姿を前にヒガナもまた、楽しい気持ちになる。だがそれと同時にバトルを楽しむ事を覚えたサガリがこれから積極的にバトルを仕掛けるであろう事も考えて多少の面倒も覚悟し始めていた。

 

「それじゃあ『そらをとぶ』も使えるから、ミナモを飛ばしてトクサネへ行こうか? チルタリス、お願い!」

 

「俺も頼むぜ!」

 

 ヒガナに加えて小さなサガリを乗せるのは、チルタリスにとって造作も無い事であった。暖かくフワフワな羽毛に包まれた2人。自然とその背に乗る際、サガリが中央に。その彼女を後ろから抱きしめる様にしてヒガナが乗り込み、やがて2人は空へと舞い上がる。そして2人は空を飛んだ。

 

「トクサネはあっちだな!」

 

「まぁまぁ、優雅に空の旅を楽しもうよ。っと!? あ、やっちゃった!」

 

「何だ! って、落ちるっ!?」

 

 それは突然の事であった。トクサネへ向かい空を飛んでいた2人は、遥か彼方から空へ向かって上がる光の柱を目撃する。その影響は空を飛んでいたポケモン達に影響してしまい、チルタリスは上手く空を飛べなくなってしまった。ヒガナと共に空へと放り出されたサガリ。このままでは唯では済まないと分かるも、彼女にこの状況をどうにかする術は無い。

 

「不味い! ボーマンダ、サガリを!」

 

 

【ボーマンダ♂】ドラゴンポケモン

翼が欲しいと強く思い続けてきた結果、身体の細胞が突然変異を起こして見事な翼が生えてきたという。

 

 

 ヒガナはチルタリスが体勢を整えると同時に回収されるも、宙を舞うサガリには届かない。そこでボーマンダを呼び出したものの、彼がサガリを助ける前に遠くから迫る何かがその身体を掻っ攫って行った。助ける者が居なくなった事で呆気に取られたヒガナだが、サガリを助けたその存在は大きく空を舞い上がって宙返りをしながらヒガナと並ぶ様に飛び始める。

 

「サガリ、他にも凄いのに懐かれてたんだね」

 

「出会ったのあの時だけだっての。ってか、この運び方しか出来ないのかお前は!」

 

『?』

 

「のわぁ! 首を傾げるなぁ! 落ちる落ちる!」

 

 それはサガリが捕まる前、彼女を一度攫った事のあるポケモン……ラティアス。あの時と同じ様にサガリはラティアスの口に加えられており、彼女が首を傾げるだけで体勢が大きく傾く為にサガリは未だ生きた心地をしていなかった。が、助けられたのは確かな事。やがて地上へ降りた時、サガリはラティアスから解放された後にお礼を言いながらその頭を撫でる。

 

「南の孤島からこの辺りは結構離れてるけど、ここまで追って来たのかな?」

 

「お前、俺を追い掛けて来たのか?」

 

『!』

 

「うん、かしずいてるね。キミを相当気に入ったみたいだよ。連れて行ってあげたら?」

 

「まぁ、今回は助けられた訳だしな……一緒に来るか?」

 

『♪』

 

 ラティアスは大きな鳴き声と共に身体を動かして喜びを表現する。こうして、サガリの5匹目の仲間として新たにラティアスが加わる事となった。

 

「ニックネームは……ラティ? ラテ、アス……いや、ティアだな」

 

「安直だけど、名前としては良いんじゃないかな?」

 

「安直って言うな。……これからよろしくな、ティア!」

 

 モンスターボールを取り出した瞬間、ラティアスことティアは自ら頭を差し出してボールに触れる。自然とボールはラティアスを捕獲しようとして、一切の抵抗もなくやがて中に納まった。と同時に勝手に開いて再び出て来たティアは、サガリの後首を加えて……空へと舞い上がる。

 

「だから、その運び方しか出来ないのかお前はぁぁぁ!」

 

「あはは! ……にしてもあの光、そろそろ目覚めるのかな?」

 

 瞬く間に空へと連れて行かれたサガリを見送り、ヒガナは光の柱が上がった方角へ視線を向ける。目指すトクサネシティの南側からその光は上がり、その原因を彼女は知っていた。だが何をする気も無い彼女は空へと飛んでしまったサガリを追う様に、再びチルタリスに乗って同じく空へと舞い上がる。

 

「思ったけど、今のサガリって下から見られたら簡単にパンツが見えちゃう気が……うん、本人には教えないでおこう。その方が面白いし、ね?」

 

 ヒガナは自分が乗るチルタリスへ告げる様にいうが、そもそも主人でも無いサガリに対して興味を持っていなかったチルタリスは首を傾げるだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、何だったんだあれ?」

 

「さぁ? でも、あれから何も起きて無いからそんなに気にしなくて良いんじゃないの?」

 

 トクサネシティへ向かう空で、サガリとヒガナは先程の現象について話をする。相変わらずサガリはラティアスに加えられたままであり、何時落ちるか分からないとヒヤヒヤしながらも彼女は何事も無い様に見せながら会話をしていた。何時までも怯えていてはカッコ悪いと思ったのだろう。

 

 あの光の現象について、2人が話したところで分かる事は何も無い。やがて見えて来た目的の街で2人は無事に着陸すると、そのまま最初に向かうのはポケモンセンター。ジムの場所もそこで聞き出し、サガリは早速向かい始める。

 

「んじゃ、行ってくる。相手はエスパーか……今回もクーとエナは活躍出来そうだな」

 

「頑張ってねー」

 

 適当にヒガナから見送られて、サガリはジムの中へ。1人残された彼女はトクサネシティにある宇宙センターを見に行く事にした。

 

「宇宙、か……。その内、サガリには話しても良いんだけどなぁ……って、あれは……」

 

 建物からロケットや空を見上げて呟いていたヒガナ。そんな彼女は見覚えのある赤いフードを来た女性が歩く姿に気付いて身を隠した。今では装いも変わり、パッと見は嘗ての下っ端と気付かれる可能性は低いだろう。だが、その人物……カガリには話が違う。直属の上司であり、サガリと仲が良かったヒガナは必然的に彼女からも顔を覚えられている可能性が高かった。

 

「…………サーチ…………ロック、オン」

 

「あちゃー、これは不味いかもね……」

 

 カガリは展望台へ上がり、そこからジムへ視線を向けていた。それは彼女が既にサガリの居場所を突き止めている証拠。ヒガナはその事実にどうしたものかと頭を抱えてしまう。

 

 ヒガナはカガリから見つからない様にジムの裏へと身を隠す事にした。そして数十分後、再び勝利を手にした事で晴れやかな顔をしたサガリが姿を見せる……と同時にヒガナは横から彼女の腕を掴んで急いで裏へと掻っ攫う。

 

「のわぁ! って、お前かよ」

 

「サガリ、気を付けてね……カガリ隊長が居るよ。もう、ジムに居た事は気付かれてる」

 

「んなっ! それ、不味いんじゃ……」

 

「かなりね。今すぐ空を飛んで別の街へ行った方が良いかも。多分、私達がこうしてるのも見てる筈。展望台から来るなら、持って3分くらいだよ」

 

「…………予測(プレディクト)失敗(エラー)…………サガリ」

 

≪!?≫

 

 掛けられた第三者の声に2人は驚き、視線を向ける。ヒガナの予想は残念ながら外れてしまい、2人の目の前には目から光を失くして不気味に笑みを浮かべるカガリの姿がそこにはあった。




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