【完結】伝承者の友   作:ウルハーツ

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第9話

 トクサネシティ、ジムの裏。

 

 そこでサガリとヒガナは自分達を追い掛けてきたであろう、カガリと相対していた。彼女はジッとサガリに視線を向けており、ヒガナの事が眼中にない。だがハルカの時と同じ様に間へ入り込む様に話し掛けてしまえば、排除の対象となってしまうだろう。

 

「…………サガリ……帰る」

 

「断る。俺はあそこにずっと居る気は無いし、姉貴の思い通りになるつもりもない!」

 

「…………反抗期? でも、駄目。…………言う事、聞かないなら……お仕置き」

 

「っ!」

 

 ゆっくりとモンスターボールを取り出すカガリの姿にサガリもティアの入ったモンスターボールへ手を掛ける。ヒガナはその場を見守りながらも、決して排除の対象にはならない様に黙っており、それはサガリからしても寧ろありがたい配慮であった。何時かの様に怒りを交えて殺意を込めたバトルになっては、最悪街に被害が出てもおかしくないのだ。

 

「……バクーダ……ミッション、スタート」

 

「チッ! ティア、頼んだ!」

 

 呼び出されたバクーダとラティアスのティアは相対する。既にジム戦によってエナとクーは疲労しており、主に戦えるのは残りの3匹のみ。空を飛ぶ事で『じめん』タイプの技を回避出来るティアが選ばれたのは、当然とも言える。カガリは何時か見た事のあるポケモンの姿にその目を大きく開いて驚いた様子を見せるが、やがて微かな笑みを浮かべた。

 

「…………手懐けたんだ…………凄い、ね」

 

「っ! ……なぁ、姉貴。俺達の居場所って、マグマ団じゃなきゃ駄目なのか?」

 

「?」

 

「もし俺が勝ったら、マグマ団を辞めてくれないか?」

 

「…………」

 

「マツブサを心酔する様になって、姉貴は変わった。前までの姉貴は家族に固執なんてしなかったし、自分のする事の意味を分かってた筈だ。けど、アイツの命令ってなってからは考える事すらしなくなった。俺を外に出さなくなったのも、それからだ。姉貴は姉貴じゃ無くなった」

 

 カガリの純粋な称賛を受けたサガリは、過去の自分達を思い出しながら言葉を続ける。少し言う事が不思議で天然なところもあるが、それでもマグマ団と出会う前のカガリは今とはっきり違った。両親が既に居なくても、姉妹で仲良く過ごしていた2人。そこに亀裂が入った主な原因こそがマグマ団なのだ。

 

「色々考えたんだ。姉貴から逃げだして、トレーナーとして大事な事を知って、それで分かった。姉貴が俺を閉じ込めるのは、自分がしてる事を見られたくないからだ。知られたくないからだ」

 

「! 違う!」

 

「けど俺は何時までも子供じゃない。姉貴が悪い事をしてるなら、止めるのが妹である俺の責務だ。……だから姉貴。今のあんたを、マグマ団幹部のカガリを俺はぶっ潰す」

 

「わぁ、言い切ったねー」

 

「っ! そんなの、不可能……!」

 

「なら勝ってみせろよ、姉貴。妹を潰して、マグマ団としてマツブサの夢を叶えろ。その代わり、俺が勝ったらもうあんたはマツブサの部下じゃない……ただの俺の姉貴だ!」

 

「ぐっ、う、うぅぅ……うあぁぁぁぁぁ!」

 

 妹か組織の何方を天秤に掛ける事となり、カガリはその状況に頭を抱えて叫びながらバクーダへ向けて我武者羅にメガシンカをさせる。すると、そんな光景を見たヒガナが何かをサガリに向けて投げた。サガリが驚きながらも受け取って見れば、それは首に掛けられるアミュレットの様なもの。だが大きな宝石の様な物が1つ装飾されている。

 

「これって」

 

「キーストーン、だよ。ポケモンのメガシンカには欠かせないもの。他にもポケモンに持たせるのがあるけど、ラティアスは自分のを持ってる筈だから」

 

「メガシンカか……やってやる!」

 

「本当に大切な家族なら、目を離しちゃ駄目だよ。何時居なくなるか分からないんだからね」

 

「? あぁ……ティア、準備は良いな!」

 

 サガリの言葉へ返事をする様に鳴き声をティアは上げる。それを確認した後、サガリは首に付けたそのアミュレットの宝石部分に片手で触れ、胸の前で握り締めながら一度目を閉じてから戦場へ視線を向ける。

 

「俺達に、力を……メガシンカ!」

 

 人間の心を感じ取る事が出来るティアだからこそ、サガリの想いを受け取った彼女は強い光に包まれ……やがて姿を変えた。その迫力と威圧感は大きく増し、目の前でメガシンカをしたメガバクーダでさえその姿に一瞬怯む。

 

「始めようぜ、姉貴。最初で最後の姉妹喧嘩だ!」

 

「……脳内模擬戦闘(マインドシミュレート)失敗(エラー)解析(アナライズ)、開始……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティア、空を飛んでからしねんのずつき!」

 

「……ふんかで応戦」

 

「飛んで来る岩をよく見ろ! 勢いが出来たら臆せず突っ込め!」

 

 空へと舞い上がったティアを撃ち落とす様に、メガバクーダが背中から噴火を始める。溶岩が飛び、そこから放たれた灼熱の岩石がティアの元へと迫るが、ティアは一直線にメガバクーダへ近づきながらも軽く左右へ避ける事でそれを回避する。そして大きく距離が縮まった頃、再び放たれた岩石の1つがティアの顔面へ命中。……しかし勢いの増したティアのずつきは岩石をも砕き、メガバクーダの身体へ激突した。

 

「そのまま続けて至近距離でりゅうのはどうだ!」

 

「! …………メガバクーダ、あくび」

 

 続けて放った技は完璧にメガバクーダへ直撃した。2つの技を完璧に受けたメガバクーダは倒れる手前だろう。しかし2つ目の攻撃を与える際にされた技、あくびによってラティアスは眠気に誘われてしまった。次の行動をした後は、その眠気に抗えずに眠ってしまう可能性が高い。戦闘中と言えど、欲求には人もポケモンも逆らえないのだ。

 

「ティア、ねがいごと!」

 

 眠ってしまうと分かれば、その対策として出来る事の1つは耐えられる状況を作る事。『ねがいごと』はその場では効果が無いものの、行った少し後に体力や疲労を回復できるという技である。目を閉じて願い祈るティアだが、それが終わると同時にそのまま彼女は寝入ってしまう。

 

「…………メガバクーダ、のろい……繰り返し(リピート)

 

 攻撃はせずにその場で動かずに技を発動し続けるメガバクーダ。元々足の遅いメガバクーダは更に鈍足となるが、その身体は頑強に。攻撃力も徐々に高まって行く。やがてティアが目を覚ました頃には、上がるだけの攻撃と防御が上がり切ってしまっていた。

 

「攻撃は仕方ない。けど、防御なら何とかなる。ティア、ガードシェア!」

 

「っ! ……かえんぐるまで、阻止」

 

 ティアが先程と同じ様に何かを祈り始める中、メガバクーダは身体を回転させてティアへ炎を纏いながら突撃する。やがてその一撃を喰らった事でフラフラになったティアだが、彼女の技は無事に成功していた。

 

 ガードシェアでメガバクーダの上がった防御とティアが持つ本来の防御力を一度合わせて半分にする事で、お互いを同じに。結果メガバクーダの防御力は減少し、ティアの防御力は上昇する。更にここでねがいごとの効果が発動し、軽減されたかえんぐるまで受けたダメージは全て癒される。

 

「寝て回復してまだまだ元気だな。全力でミストボールだ!」

 

「……かえんぐるま……弾き飛ばす」

 

 サガリの言葉を受けてティアが前方に光の弾を作り始める。一方、それを弾きながらティアへ攻撃しようとするメガバクーダ。やがて放ったそれと突撃した巨体が煙を生み出し、場は静寂に包まれる。しかし既に攻撃を2度も受けたメガバクーダと、受けたとはいえ回復しているティアでは耐えられる攻撃の限界に大きな差があった。

 

「…………敗北(ルーズ)…………」

 

 メガバクーダの巨体が倒れる振動を感じて、カガリは負けを認める。最初と最後の姉妹喧嘩、その勝者は妹であるサガリとなった。




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