遊戯王を知らない人が遊戯王に関わる話   作:すずなりゆうか

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毛玉と言ったらケセランパサランじゃないのか…。

その日は朝から雨が降っていて、気分が落ち込む蒸し暑い日だった。私、小波遊希は一人傘をさして気まぐれに近隣にあるコンビニで甘酒を買いに歩いてきていた。

 

夏バテ予防に毎日のように飲んでいた甘酒を補充するのを忘れていて、ぐったりとしていたがさすがに明日の分がないと本格的に動けなくなってしまう。夏休みとはいえ、やることはたくさんあるのだから動けるうちに補充しに来たのだ。

 

──プシュっと買ったばかりの甘酒を開けながらじめったい外に出た私はふと、入店する時には置いてなかったダンボールが落ちているのに気がついた。中には新聞紙が敷き詰められていて…茶色いなにかがうぞうぞと動いている。

こんな天気の悪い、雨曝しなところに動物を捨てるなんて無責任なヤツが居たもんだなぁ…なんて、そのダンボールがなんとなく気になって覗き込んでいた。

 

(……猫、ではないな)

 

猫にしては…どこか変だ。

毛玉…、としか言い表せない茶色の塊はそれなりの大きさのあるダンボールの中で動いている。

 

(ぬいぐるみでは、なさそう)

 

ぬいぐるみならまんまるもありえそうだけど、ダンボールにハマっているそれは明らかに生きていた。もしかして、私が知らないだけの外来生物?それともオカルトチックな妖怪の類?とか思いながら───なんとなく、ツンと毛玉を突いてみた。

 

「くり?」

「うわぁ!?」

 

くるん、と一回転してパッチリ開かれる緑色の2つの目に驚いて尻餅をついて───

 

「ケセランパサラン!?」

 

毛玉、妖怪、丸っこい…という情報から出てきた名前がそれだった。

 

「くりくり!?」

「えぁ…違うの?」

 

珍妙な鳴き声をしたその生物が『なにそれ!?』って言ったような気がして、首を傾げると…

 

なんでだろうか。『ちがうよ!』と否定されたような気がする。この感じだと犬猫より賢い…というか、完全に人間の言葉を理解しているような気がするのは気のせいだろうか?

 

「…えー…」

 

スマホで『毛玉 妖怪』で検索してもやっぱり『ケセランパサラン』しか出てこない。そもそも妖怪じゃないんだろうか?よく考えたらケセランパサランは白いから茶色のコレは元々違うのか。

 

「……見なかったことにして帰っていい?」

「くり!?くりくり!!」

「だよなぁ…」

 

晴れてる日ならまだしもこんな土砂降りの日にここに放置しておくっていうのもなかなかかわいそうな気がする。しばらく、うーん…と悩んだあと、甘酒を一気に飲み干してゴミ箱に投げ入れたらそっとダンボールごと持ち上げて傘を広げる。

 

「変なウイルスとか持ってないことを祈るからな」

 

変な病原菌とか毒とか持ってたらまずダウンするのは私だろう。とりあえず、家に連れ帰って一日保護したあと考えるか…と、ザンザン降りの雨の中歩き帰った。

 

 

 

「ただいま」

 

──玄関を開けると家はシンと静まり返っていた。

どうやら時間的にも家族はだれも家にいないらしく、私はホッと一息して靴を脱ぎ真っ直ぐ自室へと戻れば、すぐにダンボールを机の上に置き、誰も入ってこないように自室の鍵を閉める。そして、ダンボールの蓋をゆっくりと開けるとくりくりとした緑色の瞳がこちらを見つめていた。

 

「…あー…部屋についたから出てもいいぞ?」

「くり」

 

──ダンボールから顔を出してぐるりと辺りを見渡して、安全だと認識したのかふよっ、と浮き上がる毛玉をみた私は『この毛玉、飛べるのか…』とどうやって飛んでるのかわからないソレを抱きしめてみる。

 

「あー…軽すぎて飛んでるわけじゃないのか」

「くり!くりくりぃ!!」

「えっ、お前…性別あったの!?」

「く、くりぃ…」

 

綿毛みたいに軽いから飛んでいると思いきや、まるで同じ大きさの犬猫を抱き上げているかのような重さがそれなりにあり、生き物独特の温かみがあった。軽く撫でてみれば長毛の猫のような毛の柔らかさがあって…───あっ、水に濡れたらかなり縮みそう…。

 

「くりぃ!!」

「──うわッ」

 

そこらの犬猫より触り心地いいんじゃないか?とさわさわしてたらピキッと音が聞こえたと思えば、毛玉は尻尾を振り上げ打ち付けてきた。手加減はしてくれたみたいだが、かなりご立腹のご様子。

 

「あんまりベタベタさわるなって?」

「くり!くりくりぃ!」

「あー、それは嫌」

 

毛玉曰く、『服の下に手を入れられて撫で回されるの!あなただって嫌でしょう!』と言っているような気がした。確かにそれは自分も嫌である…想像しただけで鳥肌が立つ。と、いうことは毛玉にとって毛を通り越して皮膚に触れられることはそういうことなのか…って、一人で納得する私がいた。

 

「軽く撫でるのはセーフ?」

「くり」

 

つまり、根元まで触れてくれるなってことか。

じゃあ、これはどうなんだろうか?と、なんとなく椅子に座って一度も使ったことのないペット用の毛艶ブラシを片手に持って毛玉をブラッシングしてやろうとすると───『なにをするの!!』ってプンスコしながら腕の中から逃げていった。

 

「あっ、ごめん。ブラッシングしてみようかと思って」

 

部屋の隅。それも天井のかどっこに浮遊してジッとこちらを見つめていた。かなり警戒されたっぽい。黙ってブラシを当てようとしたのは失敗だったかな。

 

しばらく、じーっと見つめていたら毛玉はかどっこからふよふよと浮遊してダンボールに収まって、パタンっと蓋を閉めて静まってしまった。さすがに初対面でブラッシングはダメだったみたい…?

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