ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜   作:ポポタン

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でんき(?)ジム結成

 ショウがガラルに来てローズ委員長と戸籍の偽装などを済ませて、アリバイ作りのために孤児院にも顔を出し。願い星も手に入れてジムチャレンジに参加することにしてから、ローズ委員長とその秘書オリーヴと入念な打ち合わせをした。

 ジム巡りをどれだけの期間で終わらせるか。使用ポケモン。どれだけの話題を生み出すか。最終的な結果は。公開する情報にその後の着地点など、齟齬が出ないように「ガラルのショウ」を作り上げる。

 

 そうして作り上げたのが「キバナに追い縋る速度でジムチャレンジを駆け上がった天才少女。才能がある子ならば順路ではなく、ワイルドエリアを探索した方が良いという事例の提唱。セミファイナルをぶっちぎりで勝ち上がり、チャンピオンに惜敗するアイドルのような少女」だった。

 ショウも同調したローズ委員長の願い星を集める、ジムチャレンジを盛り上げる、ブラックナイトを引き起こすという目的に最も力になれることがショウのジムリーダー抜擢。

 

 ダンデの時のようなジムリーダー達へ与える起爆剤になって欲しかったとローズは言った。今はダンデ一強時代で、そのダンデに続こうとするジムリーダーも出てきたが停滞気味である現在。

 ダンデに匹敵する存在を投入してジムリーダーへ意識改革を施そうとしていた。そしてダンデ本人にもその地位が盤石ではないのだと知らしめる意味もあった。

 更にダンデとの白熱した試合を見せれば僕も私もああなりたいと子供達へ憧憬を燃やせると考えた。そこからダンデを超える者が現れても良い。

 

 

 計画に必要な存在は、最強のポケモントレーナーだ。

 

 

 憧れを抱く対象として、容姿が整った過去に悲惨なストーリーがある受け答えの良い天然気味なバトルに強くガラル愛に満ちた少女というのは舞台装置としてとても優秀だった。

 ローズ委員長の計画を加速するにはうってつけの人材がショウだった。本当に唯一の欠点が残念で、それだけのためにこんな迂遠な手段を講じる羽目になったが、ショウがいるのといないのでは計画の進み方が全く異なる。

 

 ショウはジムチャレンジでも見事に「ローズ委員長の忠実な駒」を演じ切り、晴れてでんきタイプのジムリーダーになった。これで準備は整った。

 後はメジャーリーグのジムリーダーとして適度にジムリーダー達と成績を調整して来たる日に備えること。そのために公式戦では本気でダンデだろうが潰しにいくこともあれば、後進の育成にも余念がなかった。

 

 今は公募で集めたジムトレーナー候補をチェックしていた。ジムリーダーごとにジムトレーナーの任命権があり、同じタイプのジムを引き継いだからといって前から在籍していたジムトレーナーを起用しなくてはならないという制約はない。

 なのでショウは自分の目でトレーナーを決めようとしていた。腕に自信のある者、前からジムトレーナーだった者、ただのショウのファン。

 

 ショウはでんきジムのリーダーながら使用ポケモンについてはでんきという制限をつけなかった。ショウがダンデ戦でバランスの良いパーティーを見せたことでそんな縛りをつけなかった。

 ジムバッジの保有数も制限を決めなかった。在野の埋れた才能が一つでも手に入れば良いと思っていたからだ。

 ショウは応募の余りの多さに辟易としていた。一人一人チェックしていたが、正直酷い有様だった。

 

(ええ……?この人、本当にジムバッジ三つも持ってるの?カブさんに勝ったの?どうやって?)

 

 経歴が書かれた書類を見ながらポケモンバトルを見ているが、良さそうと思った人はいなかった。ポケモンもトレーナーの質も低く、ヒスイの頃に捕まえたレントラーで様子を見ているが誰も決定打を入れられない。

 『こうそくいどう』をさせたわけでもない、ただのオヤブンレントラーだ。レントラーは攻撃しないように指示を出しているのでただ避け続けるだけだが、誰も攻撃を掠らせることすらできない。

 

 試験内容を誤ったか、とさえ思った。

 でんきタイプのポケモンは総じてすばやさが高いポケモンが多い。オヤブン個体とはいえレントラーはメジャー・マイナー問わずジムリーダーなら一撃を与えるくらいはできるレベルだ。

 タイプ不問とは言ったものの、でんきジムの試験なのだからでんきポケモンに関する試験だと考えなかったのか。正直『じしん』のような範囲技を使われたらレントラーが本能で察して壁を走るようなことをしない限り課題はクリアとなる。

 

 今の所、誰もじめんタイプのポケモンを使ってこないし、『じしん』のような大技も使ってこない。

 そのためレントラーは鼻歌交じりに攻撃技を避けていた。レントラーもショウはちょっと育てたものの、本格的なバトルはさせていない。

 ヒスイが魔境すぎたかと反省するショウ。

 

「ビート君。あなたはこの試験どう思います?」

 

「酷い試験だなと思います。出すショウ姉さんも、受けに来る人も。一撃を当てるだけならできそうに見える試験ですが、あのレントラーは凄く強く見えます。だからって受けに来る人は弱い。ジムトレーナーに応募して来たにしては、あまりにも」

 

 まだ八歳のビートはそう断言した。レントラーの評価には疑問を覚えたが、回答の後半は頷けた。

 ジムトレーナーの募集なのだから、せめてセミファイナルを戦った同期くらいの実力者ばかりなのだと思っていた。蓋を開けてみれば同期が優秀だったとわかる有様を数時間見せられる始末。

 ジムトレーナーとなればジムチャレンジの際にチャレンジャーとバトルをしてもらうことはもちろん、ジムの整備やポケモン塾などのイベントも一緒に運営してもらわなくてはならない総合職だ。

 

 先達として示さなければならないバトルの腕とトレーナーとしての才能。それが劣っている人をチャレンジャーや子供に見本として前に出すわけにはいかない。

 これはショウにとって誤算だったことだが、ジムトレーナーは給料も良く、ジムリーダーやチャンピオンに次ぐ花形の職業だ。ポケモンリーグが興行化してしまっているガラルではショウの知識にあるシンオウ地方とは人気度合いが異なる。

 

 そんな憧れの職業に、条件がゆるゆるな応募があったら誰もが飛びつくというもの。しかもそこのジムリーダーが今話題のショウともなれば応募が殺到するのは目に見えていた。

 これはある意味、ショウの自業自得だ。

 結局全員の実力を見切れたのは三日後。むしろたった三日で捌けたのかとローズ委員長は感心していた。書類作業を手伝っていたビートは倒れた。

 ショウはジムトレーナーを三人に絞り込む。結局同期のセミファイナルに残った三人だった。

 

(うん、まあ。良いでしょう。実力的にも知識面も問題なし。それに……セイボリーさんとクララさんは収穫だった。あの二人はエスパーと毒に専念させた方が強くなる。才能だけならピカイチだったけど、でんきタイプには向かないな。わたしの名前で他のジムに推薦してみようか?)

 

 そう思って二人とは面談をした。

 セイボリーはその提案を断り、彼はヨロイ島に行って修行することにした。その決断をショウは否定しない。

 彼はショウがエーフィーを使っていたために興味を持って受けに来たという。だがエスパージムはどうやら家族が関係しているようで、そこに戻る気はないとか。良い修行場所はないかと聞かれたのでショウはヨロイ島を答えただけ。

 

 もっと過酷な場所がガラルにはあるが、そこはショウやローズ委員長がちょっとした用事があったので教えなかった。

 セイボリーには激励の意味も込めてとあるポケモンを進呈した。アローラ地方で捕まえたでんき・エスパータイプのポケモンだ。珍しくて思わず捕まえてしまったが、バトルで使うわけでもなかったのでセイボリーに譲ることにした。

 

 彼は必ずジムリーダーになってみせますと言って出立した。それを期待しながらショウも見送る。

 

 逆にクララはどうしてもこのジムで修行したいと言ってきた。どうやら他のジムを逃げ出してきたようで、どくジムでは受け入れてもらえないだろうとのこと。

 そんな逃げ出した過去があるものの、ショウの試合を見てもう一度一念発起したという。それを聞いて、ショウは言葉を繰り出す。

 

「なるほど。わかりました。そういった事情であれば、ジムトレーナー補佐として雇うことは可能です」

 

「ほ、本当ですかァ?」

 

「はい。ただし、あなたをわたしはでんきジムのジムトレーナーとして一切鍛えません。あなたがでんきタイプのポケモンを持つことを禁止します」

 

「え……?」

 

 ショウの言葉の意味がわからなかったのか、クララは困惑を隠せない。

 条件はタイプ不問だったが、一応でんきジムなのだ。そこででんきタイプのポケモンを持てないとはどういうことか。

 

「単純な話です。あなたは自分の才能がどくタイプだと思った。わたしもそう思います。だからでんきタイプのエリートとして育てるより、あなたはあなたのスタイルを極めた方が伸びるでしょう。ですので、あなたにはジムの雑用をしていただきながらどくタイプを極める、契約社員の補佐としての道を進めます」

 

 ショウは一枚の紙を取り出してクララに渡す。

 ジムトレーナーの仕事内容と給料。それと比較するようなトレーナー補佐の業務内容と給料、契約の差が書かれた書類だった。

 

「お給料も正規のトレーナーよりも低くなってしまいます。わたしはあなたが大成するまで契約を切るつもりはありませんが、正規に雇ったトレーナーは全員あなたよりも年下です。そういう職場で良ければ、あなたを鍛えますよ」

 

「い、良いのォ?」

 

「そこに書かれている内容に不満がなければ問題ありません。わたしもフシギバナを使う関係でどくタイプにもある程度明るいですし。お力になれると思いますよ?」

 

 彼女が結果として計画の一部になれば良いとショウは打算を働かせただけだ。正規で雇ったトレーナーよりも才能がありそうなのに、こんなところで埋もれるのはもったいないと感じただけ。

 そんな彼女との契約を、クララはすることとなる。

 その日からショウはジムの雑事を正規トレーナーに任せてクララとビートを鍛えることになる。正規トレーナー三人も育てることは育てたが、上限があまりにも早く訪れたのでまだ伸び代がある二人の育成にシフト。

 

 正規トレーナーにはでんきポケモンを使えるように訓練をさせて、クララとビートには得意なポケモンを使わせた。

 なお、クララとビートの相性はあまり良くなかった。

 ビートは年下ながらクララを敬語で貶すし、そんな生意気な年下がクララは気に入らない。それでも二人とも強くなるためにお互いに文句を言いながらもショウの訓練に根気よく励んだ。

 

 その間に二人はショウに自分の境遇を少しずつ話す。

 ビートは両親と不仲になり、そこでローズ委員長に拾われたこと。そのためローズ委員長の力になるべく、ジムチャレンジに参加できるようになったら参加してチャンピオンになるということ。

 そのために、ダンデをあと一歩まで追い込んだショウの元で修行するのは勉強になるということ。ビートは件のジムチャレンジ以降からショウのことを尊敬して姉さんと呼ぶようになった。

 

 クララは初め、その可愛さからアイドルになろうと思っていたが、デビューしたまでは良いものの初CDは八枚しか売れなかったらしい。もっと売るならスタイルの良い身体を強調して売るように促されたためにアイドルを辞めたとのこと。

 ショウとビートはその曲を聴いてみる。タイトルは『クララにクラクラァ』。

 

「うぇ……。何ですか、この毒々しい曲。あなた、アイドルって言葉知ってます?偶像ですよ、偶像。これのどこに夢を抱けと?まだショウ姉さんがアイドルをやった方が億倍マシですよ」

 

「ビートきゅんひどくね⁉︎」

 

「わたしはアイドルなんてやりませんよ。ルリナさんのように二足の草鞋を履くのは無理です。……うーん……。でも八枚は幾ら何でも少なすぎでは?クララさんの容姿も含めてちゃんと宣伝していれば四桁は売れても良いような……。ネズさんとは方向性が異なりますけど、こういうアイドルもありじゃないですか?需要なんてどう変化するのかわかりませんし。ただプロデューサーがやっつけ仕事しただけのような……」

 

「ショウちゃん大好きィー!」

 

 ビートとショウがそれぞれ感想を言うと、クララはショウのことを抱きしめた。ショウの顔がクララの豊満な胸に収まるのを見てビートはサッと顔を逸らす。

 マセていても男の子だからね。

 そんな交流をしていく中で、クララがショウにある疑問をぶつける。

 

「そういえばショウちゃんってどうやって強くなったんですかァ?ジムチャレンジ中にワイルドエリアを蹂躙してたってネットで見ましたけどォ」

 

「気になりますか?なら気分転換も兼ねて体験ツアーをしてみましょうか。わたしの順位戦の日以外はワイルドエリアに篭りましょう」

 

「「え?」」

 

 というわけでジムリーダーとしての公式戦がある日以外は一ヶ月、全員でワイルドエリアで寝泊まりすることになった。まだジムリーダーになりたてだったので公式戦以外の仕事がないのだ。

 ワイルドエリアに着いてすぐ。ショウはピカチュウを繰り出してポケモンがいそうな場所へ『かみなり』を指示。それに驚いた好戦的なポケモン達が一斉に群がってくる。

 

「はい、迎撃」

 

「嘘でしょォ⁉︎マジヤバイってェ!や、ヤドラン!」

 

「ふ。こんな過酷な特訓を一人でしていたとは。さすがショウ姉さんです。行きなさい、テブリム!」

 

「ほら皆さんも。ビート君も頑張っていますよ」

 

「こんなことやってたら俺らの世代でぶっちぎりなのもわかるよ!」

 

 まだ幼いビートが果敢に攻め込んだのでそれに負けじとジムトレーナー達もポケモンを繰り出して迎撃する。

 ビートはローズ委員長に貰ったミブリムを既に進化させており、八歳にしては規格外の強さをしていた。

 ポケモンの群れが迎撃された後は、ショウがある物を見付ける。

 

「あそこにダイマックスエネルギーが溜まっていますね。巣の奥にダイマックスポケモンがいますよ。行きましょうか」

 

「今すぐに?」

 

「もちろんです。弱ったポケモンでどうやって格上の相手と戦うか。味方のポケモンとどうやって連携を取るか。格上とのバトルやダブルバトルの訓練としてこれ以上ない状況ですよ」

 

「……もしかしてショウちゃん、チャレンジャーの時も巣穴で二匹だけ使ってポケモンの育成したりしてたのォ?」

 

「はい。誰かが既に戦っていなければ、ダブルバトルで倒してましたね」

 

 ワイルドエリアの巣穴は複数人で入ることを推奨されている。罷り間違っても単独で攻めるような場所ではない。無茶をする人がいないか、常時リーグ委員が巡回をしている。

 特にジムチャレンジ中は多くのリーグ委員が見張っているが、そこはローズ委員長と共犯者であるショウ。許可証という絶対のお触れを持って一人で強行突破していた。

 

 ワイルドエリアのポケモンはただでさえ強いが、巣穴のポケモンはその上を行く。ポケモンの体力もそうだが、ダイマックス技をなんども放ってくるダイマックスポケモンは不思議なバリアにも守られているので攻撃が通りにくい。

 そんな巣穴のポケモンをチャレンジャーの時に蹂躙していたショウに、ビート以外が戦慄する。ビートは巣穴のポケモンを見たことがなかったので実感が薄かった。

 

 ヒスイを経験したショウからすれば純白の凍土には劣るレベルのポケモンしかおらず、たまにオヤブンポケモンレベルのポケモンが巣穴にいるくらい。この世界に来てから育て始めたポケモンでも余裕で勝てた。

 ショウはレッドに一度負けてから、世界を巡るためにこの世界のポケモンをきちんと育てた。この世界のポケモンで、レッドのパーティーとミラーマッチをしても勝てるくらいには。

 

 ローズ委員長とピチューでバトルをしたとか、ワイルドエリアでゴンベとイーブイを捕まえたとかは嘘だ。既にパーティーは完成していて、キバナの記録を抜かないように時間調整をしていただけ。

 ショウにとってジムチャレンジはガラル旅行でしかなかった。

 だからクララに説明したことは建前だ。

 

 でも修行としては良さそうだと思ってやらせることにした。

 巣穴のポケモンの相手をショウは手を出さずに見守り、五人に全部を任せた。公式戦がある日は休日として、ショウはマイナーリーグの順位戦を勝率九割という成績で駆け上がり、そのまま昇格戦に挑む。

 今年のメジャーリーグ降格候補は二人。ショウはその二人に圧勝し、メジャーリーグジムリーダーになった。

 

「というわけで皆さんメジャーリーグのジムトレーナーなので、来年のジムチャレンジで働いていただきます。これからメジャーでの順位戦に挑んでくるのでその結果次第で引越しになります。覚悟、しておいてくださいね?」

 

 そしてショウは序盤でキバナとネズにあっさりと負けたことで順位は七位。務めるタイプの関係もありショウは四番目のラテラルタウン配属になった。

 誤算だったのはショウの人気が出すぎてしまい、CM撮影やらファッション誌のモデルやらをやらなくてはならなくなってしまったこと。

 

「まあ、予想はしていましたけどね。でもこれでチャレンジャーが増えるのは良いことなので諦めてください」

 

「ある程度は調整してくださいよ?あんまり姿を見せると、シンオウ地方で何かを勘繰られるのは嫌ですから」

 

「ええ。私もアルセウスなる存在に邪魔をされるのは嫌です。どこまでそのポケモンの目が届くかはわかりませんが……。シンオウ地方への情報流出は控えますよ」

 

 そんな大人の取引があった。

 

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