ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜   作:ポポタン

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ポケモン配布

 ショウはジムリーダーに就任してすぐメジャーリーグに昇格するというキバナやルリナが為した偉業に続き、ジムチャレンジの四番目のジムであるラテラルタウンのジムを任されていた。

 メジャーリーグの順位は七位だったのにジムチャレンジの順番では四番目というのは理由がある。八人の中での順位がどうであっても、最初から三番目のジムの順番はほぼ固定だ。

 

 くさタイプのヤロー、みずタイプのルリナ、ほのおタイプのカブ。この三人が一番目から三番目を担当する。これは純粋にタイプの問題もあった。基本のタイプはこの三つにノーマルが加わった四つとされている。

 つまりジムチャレンジャーにとってもこの四タイプなら育てやすく勝ち上がりやすいのだ。この四タイプがメジャーリーグにいる場合順番はほぼ固定になる。

 

 最初にドラゴンタイプやあくタイプを配置しても、誰もが相性的に勝てなくなるだけ。ならば対応できるポケモンが最初の順路で捕まえやすいこの四タイプを先頭に持ってくることがガラルでは常識になっていた。

 後の順番はメジャーリーグの順番通り。ショウはこのルールに従って四番目のジムを任されていた。

 最初から順位戦で暴れて一位や二位になると目立ちすぎる。だから最初の順位戦では手を抜きまくった。七位となると来年もマイナーリーグの人と昇級戦をしなくてはならないが、これは必要経費だと割り切っていた。

 

 今年は順位戦で暴れると決めていたために。

 ラテラルタウンの周辺はスナヘビやダグトリオなどのじめんタイプのポケモンが出るためにでんきジムはクリアしやすいだろうとネットでは話題になる。だが、ショウの目的はトレーナーを育てること。

 直前に捕まえたポケモンを使うだけで勝てる優しいジムにするつもりはなかった。

 ジムチャレンジ用のジムミッションも完成させて、開会式に向かう前に。ビートへ質問をしていた。

 

「ビート君。あなたはジムチャレンジ中どうしますか?最初の内はチャレンジャーがいなくて暇でしょうが、チャレンジャーが到着してしまえばわたしも忙しいですよ?」

 

「将来の予習のために見学させてもらいます。僕はショウ姉さんを超えてチャンピオンになる男ですから」

 

「そうですか。ならご自由に」

 

 開会式を終えて一ヶ月半。

 ようやくショウのところにジムチャレンジャーがやってきた。例年の平均を考えれば十分に速いペースだ。

 そんなジムチャレンジャーに、一人目ということもあってショウが直接説明を始める。

 

「ようこそ、サイトウさん。あなたが初めてのわたしのジム到達者です。なのでわたしがジムミッションについて説明しますね」

 

「はい!お願いします!」

 

 サイトウという少女は褐色肌で良く鍛えている少女だった。ラテラル空手なるものの上級者なのだとか。

 その少女のポケモンの才能も確かだとわかって、ショウは舌舐めずりをする。

 

「最初のターフタウンではポケモンの習性を思考するミッション。バウタウンではトレーナーの脳の柔らかさを試すミッション。エンジンシティではトレーナーとしての基礎である捕獲とバトルについて試されたと思います。そして、五番目のジムではトレーナーの人間性が試されます。では、四番目のジムのここではどのようなことが試されるでしょうか?」

 

「ええと、ポケモンやガラルの歴史などでしょうか?このラテラルタウンは遺跡で有名なので」

 

「なるほど。街の特徴を捉えた答えですね。ですが不正解です。わたしはラテラルタウンからすれば余所者ですので、歴史を問うつもりはありません。歴史を勉強してもバトルは強くなれませんからね」

 

 ショウは歴史を勉強したが、それがポケモントレーナーとして糧になるかと問われればNoと真っ先に否定するだろう。そもそも彼女が歴史を調べたのはトレーナーとしてではない。

 ジムチャレンジはあくまでチャレンジャーのトレーナーとしての素質を確かめるだけのこと。

 五番目が人間性。六番目がトレーナーとしての直感。七番目が精神的な忍耐力。八番目がダブルバトルの才能。

 

 他のジムミッションと被らないようにショウはジムリーダー達から話を聞いていた。去年体験したこともあって、ショウは一つ思った。

 トレーナーのことに偏りすぎではないかと。

 

 ポケモンのことを考えるのは最初のターフタウンだけ。しかもそれだってウールーをワンパチから避けてゴールへ追いやるという羊飼いの真似事をするだけだ。ワンパチはジムトレーナーをバトルで倒せば止めてくれるので、バトルが強ければなんとかなってしまうもの。

 もちろんショウもジムトレーナーをさっさと倒してゆっくりとウールーを誘導した。最初のジムはそんなくらいで突破できてしまうのだ。

 だからショウは、ポケモンについて答えさせると決めていた。

 

「わたしのジムは簡単です。ポプラさんとちょっと被ってしまいますが、なんてことのないポケモンに関するクイズですよ。不正解になっても大丈夫です。その場合はジムトレーナーとバトルして勝っていただければ正解ということにします。全問不正解だと悲しいですけど、結果として知識を蓄えてくれれば良いですから。というわけで第一問です」

 

 クララがチャレンジャーにホワイトボードとマジックペンを渡す。クララのジムチャレンジ中のお仕事はこれになる。

 

「むし・エスパータイプのイオルブ。このポケモンに対して効果がいまひとつになるタイプを四つ答えてください」

 

「でんきタイプじゃない⁉︎」

 

 サイトウが叫ぶものの、これはタイプ相性の問題なのでそこまで難しくなかった。しっかりとくさ、じめん、エスパー、かくとうと書き込んだのでショウは赤い札でできた丸の棒を上げる。

 

「はい、正解です。第一問はこのくらいの難易度です。たまにタイプ相性も曖昧なままの人がいるので、そのふるい落としですね。では第二問。かくとうタイプのバルキー。このポケモンは三種類の進化が確認されています。この三匹とは?」

 

 これは得意分野だったのか、サイトウはすぐにサワムラー、エビワラー、カポエラーを書き込んだ。もう一度ショウは丸の札を上げる。

 

「これまた正解です。進化条件が異なり、どういった条件で進化するのか、それを知っておくこともトレーナーとして求められることです。では第三問。他の地方とは違う姿が確認されているガラル地方のニャース。このポケモンは進化するとニャイキングになりますが、では通常のニャースは進化したらどんなポケモンになるでしょうか?」

 

「えっ⁉︎」

 

 これにはガラルから出たことがなかったサイトウは困惑する。

 制限時間の一分が過ぎる前に、サイトウは項垂れて言葉を紡ぐ。

 

「わかりません……」

 

「正解はペルシアンですね。ちなみにタイプは普通のニャースと同じノーマルタイプですよ。サイトウさん、世界は何もガラルだけではありません。ポケモンも様々な地方にいて、様々な姿に適応しています。ガラルだけに留まらず、世界にも目を向けてみてください。もしかしたらあなたの気に入るポケモンも世界にはいるかもしれませんよ?」

 

 ショウなりのアドバイスをした後、不正解だったのでジムトレーナーとバトルをしてもらう。だがサイトウはジムチャレンジ用に調整されたでんきポケモンを一蹴していた。

 その実力に、伸び代に。ショウはまたも逸材を見付けたと喜ぶ。

 彼女が使ったポケモンを見て、こっそり手持ちのポケモンを変えていた。彼女の不利にならないように、フェイバリットポケモンを外す。

 

「はい、ジムミッションクリアです。では準備ができたら奥のスタジアムへ来てください」

 

 スタジアムは満員だった。ショウが初めてジムチャレンジの相手をすること。相手がジム巡りで今年最速を叩き出しているサイトウであること。これらのことから観客が多かった。

 通常のジムチャレンジではカブのところでほとんどのチャレンジャーが足止めを受ける。ミッション自体はそうでもないのだが、カブが強過ぎるのだ。ちゃんと有利タイプのポケモンを育てていても、状態異常であるやけどにされて追い詰められるというのはよく見る光景だ。

 

 カブでチャレンジャーの過半数が脱落するという。そんな最初の関門なのだ。

 そのカブを乗り越えた優秀なチャレンジャーを見たいと、四番目のジムは結構観客が来る。そこまで大きくないスタジアムが満員になるほど。立ち見客もいた。

 ショウがジムリーダーとしての公式戦で使ったでんきタイプはピカチュウだけ。ジムチャレンジでは流石にタイプバラバラにしないだろうという信頼があったために誰もがどんなポケモンを繰り出すのか楽しみにしていた。

 ジムチャレンジだろうが天候変化のためにコータスを使うキバナとは違うのだ。

 

「行って、カポエラー!」

 

「出番だよ、フロストロトム!」

 

 サイトウが出したのは逆さになって頭で回転をしているかくとうポケモンのカポエラー。対するショウが出したのはロトムのフォルムチェンジ、でんき・こおりタイプになった冷凍庫の形をしたロトムだった。

 そのロトムはかくとうタイプに効果が抜群だったのであっさりと倒されてしまう。その次にショウが繰り出したのは。

 

「頑張って、ヒートロトム!」

 

 今度はでんき・ほのおタイプになったロトム。

 これには観客もサイトウも全てを察する。サイトウは新しくジムリーダーになったショウについてはかなり情報を仕入れて来たのだ。

 このジムチャレンジで使う四匹のポケモンは全てロトムではないかと。

 

 そしてその予想は当たっていた。

 出されたポケモンは全て、フォルムが違うもののロトムだけだった。

 

 

 サイトウちゃんと勝負が終わってでんきバッジを渡して。

 試合後の握手が終わると渡したいものがあるからとジムリーダーの控え室に彼女を呼び出した。

 部屋の中にはわたしとサイトウちゃんしかいない。ビート君やクララさんも入れることはしなかった。サイトウちゃんはどうして呼ばれたのかわからないようだ。

 

「まずはこれ、わざマシンね。80の『ボルトチェンジ』。それと決まりででんきジムのユニフォームのレプリカ。恥ずかしいけど規約だから」

 

 本当に恥ずかしいけど、ファンを増やすための先行投資なんだとか。わざマシンは有用なものだから良しとしよう。

 これまでもこれらの物を貰ってきたようで迷いもなく受け取ってくれる。ファンの子だと推しのタイプのユニフォームを着てくれるけど、わたしはでんきもゴーストもメジャーにいなかったから最初のユニフォームのままだった。

 

 これで渡す物は本来終わりなんだけど、これだけならわざわざ個室に呼ぶことはない。これからすることは一方的な贔屓だ。

 彼女の前に赤とぼんぐり色をした古めかしいモンスターボールを置く。

 

 この実際に使える百年近く前のモンスターボールだけで実はかなり希少価値があるらしい。興味本位でネットオークションなどを見たけど、使えない壊れたモンスターボールで五億くらいの値段が付いていた。

 誰かにあげる以外に見せる気をなくした瞬間だった。

 サイトウちゃんは目の前に出されたモンスターボールの意味がわからずに首を傾げている。

 

「激励の印です。そのポケモン、鍛えて是非ファイナルトーナメントで戦いましょう」

 

「え?えっと……。ポケモン、ですか?」

 

「はい。ジムリーダーが一人のチャレンジャーに肩入れをするのはダメなんですけど、あなたならこの子を立派に鍛えられると思ったので。わたしの手持ちはほぼ固定されています。なのでこの子に世界を教えてくれると嬉しいです」

 

 サイトウちゃんは中のポケモンを見る。そこに入っていたポケモンを知らなかったのだろう。もう一度首を傾げていた。

 

「あの。この子くさタイプでは……?」

 

「はい。くさ・ひこうタイプですね」

 

「わたし、かくとうタイプ専門というか……。一番相性の良いタイプはかくとうだと思っています」

 

「ふふ。パーティーを見ればわかります。騙されたと思ってついでで育ててくれればいいんですよ。きっと驚きますから」

 

 サイトウちゃんは断るのも失礼だと思ったのか、ポケモンを受け取ってくれる。驚いてくれると思うけど、そこまで育ててくれるかどうか。

 あなたがダンデを超えるか、強くなったあなたをダンデが負かすのか。楽しみに待ちましょう。手加減した試合よりも、同レベルの真剣勝負の方が経験値としては上でしょうから。

 

「わたし、ラテラルタウン出身なんです。去年のジムチャレンジを見て純粋にショウさんのことを尊敬しました。そんなあなたがこの街のジムリーダーを務めていて、こうして期待していただけている。……この子を託す意味まではわかりませんが、期待を裏切りたくありません」

 

「こちらが勝手に期待しているだけですから。ただあなたはその子とも一緒に旅を楽しんでください。期待なんて重いだけですよ」

 

 本当に。そんな余分なモノを自覚したら息苦しくなるだけ。

 わたしはサイトウちゃんにそれほど期待していない。ただわたしは不完全な存在だから可能性があるなら賭けてみたいだけ。

 ヒスイから送り込まれて。どんな可能性にだって縋り付きたいだけの諦めの悪い人間。それがわたしだ。

 

 この半月後。サイトウちゃんと同じくらいの才能を持ったオニオン君がチャレンジャーとしてやってきた。なので彼にもジム戦の後にとあるほのおタイプのポケモンを譲った。

 サイトウちゃんと同じような反応をされたけどゴリ押しで預けた。

 さて、二人はセミファイナルまでに二匹を育てることができるだろうか。楽しみだ。

 

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