ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜   作:ポポタン

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最後の開会式

 また新年度が始まる。今年のジムチャレンジが迫ってきたのでわたしも準備を進める。今年のジムチャレンジの内容もリーグに提出済みで、あとは開会式に出てジムチャレンジャーを待つだけだ。

 でも今年はローズ委員長の計画が大きく動く年なので準備に余念がない。いつも使っているモンスターボール以外にも用意をしておく。

 さあ、今年は誰かにこの子達を預けられるかな?

 

 それだけを楽しみに開会式に向かう準備をしていると、ビート君がわたしの前にやってきた。どうせ一緒にエンジンシティで開会式を行うのだからと、一緒にアーマーガータクシーに乗っていくつもり。

 ジムトレーナー三人に留守を任せてジムの外に出るとビート君が質問をしてきた。

 

「ショウ姉さん。最近オリーヴさんと連絡を取り合っている回数が多くありませんか?」

 

「んー、そうですね。ガラルのインフラを整えるためにでんき使いのエキスパートとして意見を求められることが多くて。素人意見から着想を得る、ということは研究者の皆さんってよくやっているそうですよ?一つの見解に固まっているところを上手くブレイクスルーさせてくれるとかで」

 

「そうですか。……あなたの見た目が三年前から一切変わっていないこととは、関係ないんですね?」

 

 ビート君の目が、不安そうに変わる。

 そう、わたしはヒスイから帰ってきて見た目の変化がなかった。ガラルに来る前の二年ほどで様々な地方を巡ったけど、身長も体重も容姿も一切変わらなかった。まるでこの姿でわたしの存在が固定されているかのようだった。

 髪も伸びないし、爪も伸びない。一度精密検査をしたけど、未知の力で時間が止まっているらしい。わたしは心音もなく、脈もない。呼吸もしているフリだ。

 

 

 つまり、生きている人間には思えないような身体をしているという結果が出た。

 

 

 確実にアルセウスの影響だ。本来ならもうこの世界に来て六年になる。わたしは十七歳になったはずなのに、見た目は今やビート君と変わらないくらいの十一歳の少女にしか見えない。

 それが不思議で仕方がなかったんだろう。女性は可愛いままで羨ましいと言うしファンは老けないことにアイドル性を感じている。それでもジムチャレンジの時から一切見た目が変わらないことを怪しむ人もいる。

 

 この前もネズさんに妹と変わらない少女にしか見えないと煽られた。これでも心は十七の乙女ですけど。

 ビート君も不思議に思ったのだろう。ジムチャレンジ中にわたしを心配して失敗して欲しくなかったから、適当に誤魔化す。

 

「わたし、完全に成長が止まっているようです。もう身長も伸びませんし、顔もあまり変わらないようです。定期的にシュートシティの病院に通っていたでしょう?あれ、わたしの体質を調べるためだったんです。ローズ委員長に変わってオリーヴさんが面倒を見てくれていまして」

 

「……それは……」

 

「命とかに別状はありませんよ?わたしという人間は普通に怪我もしますし、短命というわけでもありません。それはマクロコスモス・ホスピタルが証明してくれましたよ。ちょっと変な女というわけです」

 

 不老にはなったっぽいけど、不死じゃない。呼吸が必要ないけど、水の中では呼吸が苦しくなる。怪我もするし普通に痛い。血を流したら貧血にもなる。のくせに、月の物が一切来ない。全くもって歪な身体だ。

 アルセウスに身体を改造されたのか、時空を渡る関係でそうなったのか。なんにせよアルセウスのせいだ。

 殴られたのが嫌だったのか。やっぱりアイツの考えは全くわからない。

 

「ビート君はジムチャレンジに集中してください。ローズ委員長のためにわたしを倒して、チャンピオンにも勝って、ダンデさんの不敗神話を崩すのでしょう?」

 

「……はい」

 

「ならわたしのことは壁としか思わないように。ジムチャレンジ中は姉さん呼びも禁止です。……わたしのジムミッションをクリアしたら、あなたにピッタリなポケモンをあげますよ」

 

「ああ……。姉さんが有望だと思ったチャレンジャーにあげる、たまに問題になる事案ですね。わかりました、楽しみにしておきましょう」

 

 本当に頑張れ。

 まあ、ローズ委員長は君のことなんとも思ってないんだけど。

 ローズ委員長の記憶に残れるように、ぶっちぎりな成果を見せてくれると嬉しい。

 それはつまり、あなたがガラルを託し得る人物になるということだから。

 

 

 エンジンシティの開会式に足を踏み込む。

 幼馴染のホップと一緒にワイルドエリアを抜けて辿り着いたエンジンシティ。ワイルドエリアでポケモンを捕まえて、これから始まる開会式に心が踊った。

 開会式はローズ委員長のお話と今年のメジャーリーグジムリーダーの紹介を行うという物。今年もジムリーダーの入れ替えがあったので一箇所変更になっている。でも私のお目当ての人はメジャーリーグ序列三位だ。ジムの場所も変わっていない強者。

 

 今ではジムチャレンジャーの女子全員の憧れの的。誰もが彼女のようになりたいと思ってチャレンジに挑む。

 私達チャレンジャーが全員スタジアムに入ると、ローズ委員長がマイク越しに入場してくるジムリーダーを、私達が短期間で倒さなければならないガラルでも有数の実力者を紹介する。

 

 

 

「ファイティングファーマー!くさタイプ使いのヤロー!」

 

 

 

 紹介順はジム巡りの順番通り。

 最初は筋肉質ながら柔らかい笑顔が特徴のヤローさん。彼はメジャーリーグの序列は六位なんだけど、彼の優しい性格から最初のジムを任されている。それに彼は農業をやっているので最初のジムチャレンジを行う場所が農業の街ターフタウンというのはちょうどいいのだろう。

 

 

 

「レイジングウェイブ!みずポケモンの使い手ルリナ!」

 

 

 

 モデルを副業でやっている褐色肌の綺麗な女性。彼女も男女問わず人気がある。彼女の序列は七位だったので順番通りかと思われるが、彼女はどんな順位でも大体二番目のジムを務める。それはみずタイプという御三家と呼ばれるポケモンのタイプの一つを扱っているからだ。

 

 

 

「いつまでも燃える男!ほのおのベテランファイターカブ!」

 

 

 

 今年のメジャーリーグでは一番の年配に当たる、大ベテラン。ホウエン地方からやってきた序列四位のイケオジ。白髪も渋くて素敵。

 彼も序列に関係なく、ほのおタイプを扱うことから三番目のジムに固定だ。ジムミッションはまだしも、彼自体が強くて彼でつまづくチャレンジャーが多い。ジムバッジを三つ集めるのが最初の難関だと言われている。

 その彼はここ、エンジンシティのジムが担当だ。

 

 

 

「ガラル空手の申し子!かくとうエキスパートサイトウ!」

 

 

 

 今年昇級戦に勝ち上がり、四番目のジムを任されるようになったかくとうタイプ使いの少女。三年前のジムチャレンジでセミファイナル準優勝をした実力者。去年まではマイナーリーグにいたが、マイナーリーグでの勝率は圧倒的だった。

 昇級戦で去年は阻まれ、今年はギリギリであるもののジムリーダー最年長のポプラさんをタイプ相性が壊滅的に悪かったものの撃破して昇級したマイナーリーグの星。

 彼女はある因縁があるので私もすごく注目している。彼女は四番目のラテラルタウンのジムにいる。彼女の地元らしくてインタビューで喜んでいた。

 

 

 

「サイレントボーイ!ゴーストタイプのオニオン!」

 

 

 

 ジムリーダーの誰よりも背が低い少年。本当に私より歳上なのだろうかと思ってしまうほど小さい少年。それでも序列五位という確かな実力者で今年はアラベスクタウンのジムを任されている。

 彼にも確認したいことがあった。是非ファイナルトーナメントで戦いたい。

 そして──一番関心を集めている、ジムチャレンジの頃から変わらない愛らしさを保った、今も笑顔を振りまきながらゆっくり歩いている少女に視線が集まる。

 

 

 

 

 

「ファンタスティックガール!でんきマスターショウ!」

 

 

 

 

 

 心なしかローズ委員長の声が大きかった気がしなくもない。

 四年前のジムチャレンジで今のチャンピオンダンデさんをあと一歩まで追い込んだ最強のジムリーダーの名前を冠する絶世の美少女。

 ファッションセンスが高く、ルリナさんのようにモデルなんて滅多にやらないのに彼女が着た服は少女達が血眼になって買い求めるほど彼女の広告塔としての力は絶大だった。

 

 そしてバトルの腕は鬼のように強い。でんきマスターなんてローズ委員長は紹介したけど、彼女の本気のパーティーはバランスの取れた混合パーティー。ジムチャレンジはでんき統一パーティーにしてくれるが、それはチャレンジに合わせているだけ。

 彼女の本質はチャンピオンと同じバランスの取れたパーティーを組むことができる万能性。それでもでんきタイプが好きだからでんきジムに就任したんだろう。

 

 だからローズ委員長のでんきマスターという呼称はある意味皮肉めいている。本当は他のポケモンも扱う力のある天才。他のジムリーダーのようにタイプを固定してそのタイプを極めているのであればマスターと呼んでもいいだろう。

 けど彼女は、タイプに拘らず育成できる天才だ。これは限られた人にしかできないことで、多くの人はあるタイプに適性があったためにそのタイプのポケモンの統一パーティーを組んでいるだけ。ジムリーダーも多くはそうだ。

 

 そういう人達はそのタイプを突き詰めることで時には相性が悪くても競り勝つことができるプロフェッショナル。だからこそ、多くのトレーナーが憧れる。ほとんどの人がそうだから。

 だけど、たまにタイプに拘らず捕獲・育成ができる人がいる。それがチャンピオンやショウさん、そしてエリートトレーナーと呼ばれるような人達だ。

 

 こんな人達は世界を探しても極一部で、ガラルにだって多くはない。実はキバナさんもこの複数タイプに適性がある人で、だからコータスなどを天候始動要員として起用している。

 ショウさんは今ではガラルでチャンピオンと人気を二分している。いや、他にも人気のジムリーダーはいるけど、二トップは誰かという話で。

 

 私も憧れている。彼女に勝ちたいと心の奥底から思う。ホップやダンデさんには悪いけど、私はチャンピオンになることよりも彼女に勝ちたいという欲が強い。

 次は七番目のジムリーダーのはずなのにいない。その人が誰かはしっているけど、入場の際にいなかったから今日はいないのだろう。

 

 

 

「ドラゴンストリーム!トップジムリーダーキバナ!」

 

 

 

 スマホロトムで自撮りをしながら最強のタイプと名高いドラゴンタイプをメンバーとしているガラルの序列一位、他の地方だったらチャンピオンになれるのではないかと噂されるイケメン炎上系ジムリーダー。

 ジムチャレンジ最後の難関。圧倒的なタイプ相性に潰される人も多いという。彼を越えられるチャレンジャーは毎年六人ほど。それだけ彼は強いということ。

 その前に七番目のジムまでで粗方蹴落とされちゃうんだけどね。

 

「一人来ていませんが……。ガラルが誇るジムリーダー達です!」

 

 彼らを間近で見て。観客の歓声が響き渡って。

 ホップも興奮しているようだ。目がキラキラとしている。

 私もショウさんを間近で見られて頬を緩ませていると──不意に彼女と目が合った。

 

 絹のような透き通る金髪。ガラス細工のような蒼い瞳に射抜かれて、その彼女が私やホップを見て、微笑んだ後に──手を軽く振っていた。

 周りを見て、周りには私とホップしかいなくて。ホップと目を合わせた後に照れながらもファンサービスへの返しとして手を振り返した。

 それが合っていたようでショウさんは頷いてくれた。

 

 ──ナニコレ。推しに手を振って貰えるとか私、果報者では?

 心臓がバクバク言っている。開会式に緊張しているんじゃなくて、ショウさんに認識してもらえたことが何よりも嬉しくて。

 私の両頬はカジッチュのように真っ赤になっていた。

 

 それからは開会式のことをあまり覚えておらず。

 更衣室に戻ってユニフォームからいつもの服装に着替えた後、エンジンスタジアムの受付近くでホップと合流していた。

 

「うおおおお!すげえ興奮してきた!あのスタジアムに立って実感が追いついてきたこともそうだけど、あのショウさんに手を振られたぞ⁉︎」

 

「うん。──もう死んでもいい」

 

「何言ってるんだユウリ⁉︎ジムチャレンジはここからだぞ!もしここで死んだらショウさんと戦えないまま終わっちゃうぞ!」

 

「ハッ!そうだね、戦わないと悔いが残る。ありがとうホップ」

 

「おう、どういたしましてだぞ。じゃあユウリ!これからジム巡りでどっちが早く終わらせるか競争だ!」

 

 ホップはそう言ってすぐに走り出してしまう。

 私は、この感動をじっくりと味わいながらターフタウンを目指すのだった。

 ──ユウリ()の冒険が、始まる。

 

 

「──ミ ツ ケ タ」

 




ポプラさんごめんね。
あの癖のある感じ、扱いきれないんだ。
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