ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜 作:ポポタン
ジムチャレンジが始まって半月。
今年の進行度の観点から早くも盛り上がっている。今年はそもそも推薦状の時点で相当盛り上がっていた。ローズ委員長が推薦したビート君。ネズさんが推薦したマリィちゃん。
そして、チャンピオンダンデが初めて推薦したチャレンジャー。弟のホップ君とご近所さんのユウリちゃん。弟のホップ君はまだわかる。ネズさんと一緒だからだ。
でもユウリちゃんは違う。ただご近所さんで適齢期になったからって推薦状を渡すほどチャンピオンの推薦とは軽くない。初めての推薦ということがそれを助長している。
リーグ委員長やチャンピオンというのは推薦する上で重すぎる肩書きと思われている。推薦された人の多くはジムリーダーやチャンピオン、それに準ずる結果を残している。推薦されたチャレンジャーにとっても重いものになる。
そんなものを、ただの女の子に渡すだろうか。ローズ委員長に確認してチャンピオンが推薦をしたと聞いて驚いた。十年チャンピオンを続けているのに初めての出来事だからだ。
顔写真は見ていたので開会式で探してみたら案の定。本当にこの世界は少年少女の関係性が好きらしい。
バトルをしなくてもわかってしまうほどの才能。それを感じ取れるほど、ユウリちゃんとホップ君は別格だった。
まるでわたしとジュンを見ているようだった。
まだポケモンを鍛えて間もないから手持ちポケモンはそうでもないみたいだけどあの二人はこの短期間で化ける。それこそ本当にチャンピオンになってしまうほどに規格外だった。
だから二人には、ジムチャレンジをクリアしたら渡すポケモンのことを考えた。二人が六番目のジムであるこのキルクスタウンに来るのはいつになるだろうか。
そしてまだ半月だというのに、キバナさんの記録に迫る記録を出している天才がいる。隠すこともなく、ビート君とマリィちゃんだ。
二人とも幼少期からポケモンを育てているため手持ちの強さが半端じゃなく、既に三番目のジムであるカブさんを突破していた。そのせいで二人ともキバナさんとネズさんの再来と言われている。
ダンデさんは迷子になって遅かったから、彼の再来とは呼ばれない。
ビート君は手持ちを全員最終進化させたどころか、クララさんにも勝つほどの実力者だ。チャレンジャーの中にジムリーダーが混ざっているようなもの。だからジムチャレンジ用のジムリーダーの手持ちを一発で倒していくビート君。
そのせいでジムチャレンジのヌルさに顔を顰めているビート君だけど。ビート君が強すぎるだけだ。ジムトレーナー見習いとしての経験値がジムチャレンジを簡単にさせてしまっているだけ。
それに彼が見ていたのは六番目のわたしのジムなのでジムチャレンジをわたしレベルで想定していたら肩透かしを食らった、といったところだろう。ビート君ごめんね、生き甲斐搾取して。
マリィちゃんも似たようなもので、譲ったミジュマルが既にダイゲンキに進化していた。そのせいでカブさんをタイプ相性で圧倒していたけど、流石にビート君レベルの実力はまだない。それでもジムトレーナークラスの実力は十分ある。
この二人が注目されすぎて、チャンピオンが推薦したはずの二人がまだ二番目のジムに着いたくらいだから比較されている。ビート君とマリィちゃんが規格外なだけなのに。
むしろユウリちゃんとホップ君の才能だけなら二人よりも上かもしれない。いや、運命力とでも言うものだろうか。二人にはガラルでも特別な何かを感じる。それが何かまではわからないけど。
あと、今年更に盛り上がっているのは街で度々見かける妨害集団、エール団の存在だ。ダイマックスバンドを着けたおそらくチャレンジャーを見掛けると様々な理由をつけて足止め行為を行なっている。
あんなマリィちゃんがプリントされたタオルを振り回してあくタイプのポケモンを使っている時点で正体なんてモロバレなんだけど。それは言わぬが花というやつだろう、うん。
そんなこんなで盛り上がっているジムチャレンジだけど、わたしは暇だ。最速はおそらくビート君だろうけど、それでもあと二十日くらいはかかるはず。なのでその間にリーグから頼まれている仕事を済ませる。
写真撮影だったり、ポケモン教室だったり。テレビ番組に出たり。こういうところで顔を売るのもジムリーダーの仕事なんだから仕方がない。
どうせ今年で終わりだ。気楽にやろう。
もしこんな風に顔を売っている様子を知り合いに見られたら寝込むけど、この世界に知り合いはいない。好き勝手させてもらう。
ということで色々と仕事を終わらせてキルクスジムに戻ると久しぶりにクララさんが訪ねていた。どうしたのかと思って顔を出すと即座にクララさんが走ってきてわたしの両肩を掴んだ。
「ちょっとショウちゃん⁉︎あのポケモン達とモンスターボール何ぃ⁉︎」
「あ、その件ですか。わたしの部屋にどうぞ」
大勢に聞かせる話でもないのでわたしの個室に。そこでぼんぐり色のモンスターボールから出された二匹を見て頷いた。
ちゃんとハリーマンとオオニューラに進化している。思った通りだ。
「この子達って色違いのポケモンじゃないの⁉︎ハリーセンが進化するなんて知らなかったし、このモンスターボール、使用できる奴だと二百億とかって値が付いてるんだけど⁉︎」
「あ、使用できるとそんなお値段なんですね。知りませんでした」
「ショウちゃーん⁉︎」
使えないモンスターボールの値段は知ってたけど、そうなのね。そんなお値段になるんだ。モンスターボール系統のレシピは売りに出さなくて良かった。
まあ、使用できるって言ってももうポケモンが入っちゃってるから未使用じゃないし、その値段にはならないだろう。多分。
「ハリーセンの進化系はハリーマン。ニューラの進化系はオオニューラです」
「……知ってたんだぁ。この子達、元のタイプとも違うよね?」
「はい。ハリーマンはどく・あくタイプ。オオニューラはどく・かくとうタイプですね」
「やっぱりぃ……。クララに渡した時点でそういうことだよねえ。一応クララなりに調べてみたけど、そんなポケモンの名前は出てこなかったよ?」
「でしょうね。わたしも調べましたけど、世界最古のポケモン図鑑はオーキド博士の物です。それ以前のポケモンの生態は極一部の伝説のポケモンしか残っていませんよ」
ヒスイという言葉は残っていても、ヒスイにどんなポケモンがいたのかなんて情報は残っていない。ポケモン図鑑があったことすら知られていない。
わたしのような人が送られなかったのか、送られて図鑑を完成させたけど残らなかったのか。そもそも完成しなかったのか。その辺りは調べようがない。ディアルガの力を使ってわざわざヒスイのことを確認しようとは思わない。
アルセウスに捕捉されたくないのに会いに行く理由がない。わたしはヒスイに用はなく、求める場所は別の位相だ。
「それを知ってるショウちゃんって何者?」
「ガラルのメジャージムリーダー、でんきマスターらしいですよ?」
「らしいって……」
「わたしの肩書きはそれなので、それ以外に答えようがないですよ。重要なことはわたしの出自ではなく、そのポケモン達とクララさんが仲良くしているかどうかですよ」
「それはバッチシィ〜。めっちゃ仲良しだよ、ウチら」
「ならいいじゃないですか。ここにいる理由なんて、ここにいるから以上の理由はありませんよ」
どこぞの神様が勝手にやったことを考えるだけ無駄だ。会ったら全力で殴るけど、不干渉が一番。今の所何も手出しをされないのがある意味怖いけど、ウォロさんの行動も直接は止めなかった。
タイミングを図っているのか、直接は介入できないのか。どっちにしろわたしはやるべきことをやらなくちゃいけない。
わたしは何に代えても、やり通す理由がある。
「クララさん、マイナーリーグで圧倒的ですね。戦績が非常に良くて、鍛えた身としては誇らしいです」
「でしょでしょ〜?でもさあ、セイボリーに負けちゃったんだよお!ヤドランのミラー対決にあのライチュウにはしてやられた!あのアローラのライチュウ、ショウちゃんがあげたんだって?」
「はい。珍しくて捕まえたはいいものの、でんきもエスパーも手持ちとしては被っていましたから。なら必要としている人に譲った方がポケモンも幸せですよ」
セイボリーさんはジムに来てくれた時にあげたアローラライチュウを丁寧に育ててくれたようだ。そのライチュウでクララさんにトドメを刺していた。現在唯一マイナーリーグで黒星をつけられた相手ということでクララさんは怒っているようだ。
「そういやビートきゅん凄くね?最速記録樹立してるとか。サイトウちゃんもやられたって」
「ああ……。ビート君の適性タイプはエスパー・フェアリーですから。タイプ相性的に四・五はポンポン越えていきますよ。ここに来るのが一番速いのはビート君でしょう。二番目の速度のマリィちゃんはあくのエキスパートなのでサイトウさんのところで足踏みするかどうか次第ですね」
仕事をしている内にビート君が快進撃を続けていたらしい。
わたしもロトム軍団で戦うけど、レベル差がありすぎて勝つ気がない。ビート君はタイプ相性と戦術的にわたしの次のネズさんを突破できるかどうか、そこが問題だろう。
ネズさんさえ超えればキバナさんもそのまま抜ける。最速記録はビート君の物になるだろう。
マリィちゃんも強いけど、ビート君とは大きな隔たりがある。ジムトレーナー見習いとジムリーダーの妹の差というか。
まあ、ビート君も愛弟子だからわたしを突破したらもう二匹プレゼントしようと思ってる。マリィちゃんにはもう一匹あげたからこれ以上の肩入れはしない。そうなると差は広がるだろうか。
ビート君がこのガラルを背負うと言うならそれでいいと思っている。ダンデさんよりは愛着があるから託すなら彼かクララさんがいい。
ユウリちゃんとホップ君にあげるポケモンも決めた。他の子はどうでもいいや。今の所注目チャレンジャーはいない。
「クララさん。ビート君にはこの二匹をあげようと思ってるんですけど、どう思います?」
見せるのは種類の違うモンスターボール。クララさんが「うわ、また出した」って顔をしてるけど気にしない。
そのボールの中に入っているポケモンを見て一匹はウンウンと頷いていたが、もう一匹はボールを両手で掴んで凝視していた。
「え?……えぇ?ショウちゃん、捕まえてたの?っていうか、モンスターボールでぇ……?」
「はい、まあ。苦労しましたけど、譲ろうと思って」
「ビートきゅんにあげちゃうの?……期待値高くね?」
「このジムチャレンジを見てたらガラルを任せる気になりませんか?」
「まあ、ビートきゅんならチャンピオンになってもおかしくはないけど……。ビートきゅんにこのポケモンの適性あるの?」
「さあ?あるといいですね」
「そこは行き当たりばったりなんだ⁉︎」
そんな雑談をして、クララさんは帰っていく。
本当にわたしのジム一番乗りは、ビート君だった。