ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜   作:ポポタン

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ブラックナイト

 わたしが女子選手控室に行くとユニフォームに着替えていたユウリちゃんとマリィちゃんがいた。ユウリちゃんはわたしのレプリカユニフォームを着ていて、マリィちゃんはあくタイプのレプリカユニフォームを着ている。

 マリィちゃんもちょうどいいや。手伝わせようかな。ポケモンの暴走ならきっと手伝ってくれると思う。

 

「やあ、ユウリちゃん。マリィちゃん」

 

「あ、ショウさん!外が大変みたいなんです!」

 

「うん知ってるよ。ガラル中でポケモンがダイマックスしちゃってるんだ。だから二人にはちょっと手伝って欲しい。マリィちゃんはスパイクタウンに、ユウリちゃんはナックルシティに向かってほしいな。ナックルシティが一番被害が大きいみたい」

 

「あたしは地元だからわかるけど……。ユウリはナックルシティに向かわせるんですか?」

 

 マリィちゃんにそう問われる。

 まあ露骨すぎるけど、一応他の人達の状況も把握した上で誘導しているんだよね。

 

「ジムリーダーは担当している各街に既に向かいました。このシュートシティはマクロコスモスの社員達が対応をしています。あとは観客の腕自慢の人達が。彼女の家があるハロンタウンにはさっきホップ君が向かいましたし、ビート君は既にナックルシティに向かっています。ナックルシティはキバナさんだけでは手が足りなさそうなくらい被害が出ていますのでこれからわたしとチャンピオンも向かいます。わたしもできる限りのことはしますがそれでも被害が出そうなので手伝ってください」

 

「そんなにナックルシティは酷いんですか……?」

 

「ガラルの中心地ですから。おそらくこのシュートシティと並んで被害が大きいですよ」

 

 実際ローズ委員長が願い星を纏めて保管しているんだからあの街が一番被害が大きくなっている。少し前に実験をした時もナックルシティの周辺でダイマックスの暴走事件が起こっていた。

 シュートシティはマクロコスモスの人達が対応しているからまだマシなんだけど、ナックルシティは突然の出来事に慌てている。いつもは人が居ても今日は観戦のために人が離れている。

 そんなことも合わさってナックルシティは結構まずい状況だ。ローズ委員長の風評被害を少しでも減らすためには実害を減らすのが一番だ。

 

「キルクスタウンには戻らなくて良いんですか?」

 

「そこはジムトレーナーに任せますので。マイナージムの人達もいますから」

 

 ユウリちゃんもマリィちゃんも向かってくれるというのでエスパータイプのポケモンでテレポートでマリィちゃんを送ると、わたしもユウリちゃんと一緒にナックルシティへテレポートで向かう。

 既にナックルシティは大きくなったポケモンが多数闊歩していた。すぐにポケモンを出して技一発で混沌させた。ギャラドスが何かをしようとしていたのでピカチュウを投げて10万ボルトで終わらせた。

 その一瞬の決着にユウリちゃんが首を傾げながら質問をしてくる。

 

「……あの。わたし必要でしたか?」

 

「必要だよ。わたし一人で全部できるわけないから。ワイルドエリアも近いから強いポケモンが多いんだよ」

 

 実際色々なポケモンがワイルドエリアから押し寄せている。ナックルシティのジムトレーナーが頑張って食い止めているけど、それだってギリギリだ。今も実際ギャラドスが中に入り込んでいた。

 ユウリちゃんを連れて街の防衛に移行する。

 ブラックナイトが完全覚醒するまでユウリちゃんの疲労を抑えながらローズ委員長の合図を待つ。

 ガラル各地でポケモンの暴走が続く中。

 とうとうガラルの災厄たる龍が目を覚ました。

 

 

 ヤバイヤバイ!何で野生のポケモンがダイマックスしてるんだ⁉︎

 ショウちゃんの聖地巡礼目的でキルクスタウンに来てたらポケモンに襲われるなんてどうなってるんだ!って思ったらガラル地方全体で起きてる事態なのかよ!

 ショウちゃんのジムトレーナーが対処しているが、それだっていつまで保つか。俺もポケモンを繰り出すが、ダイマックスエネルギーが分散しているのかこっちのポケモンはダイマックスできるポケモンが少なかった。

 

 優秀なトレーナーならダイマックスができているようだが、ほとんどのトレーナーはそのままで戦っている。

 複数のダイマックスポケモンが襲ってくるが、今日はジムチャレンジのセミファイナルが行われているのでキルクスタウンの人はいつもより少ない。肝心のショウちゃんもセミファイナルの観戦に行っていていない。

 いや、いないからこそ俺たちファンがこの街を守るんだ!そうやって立ち上がったファンがたくさんいた。そのたくさんがポケモンを繰り出しても、野生のポケモンは全然減らない。

 

 そもそも一般人の俺たちのポケモンの練度は低い。キルクスタウンの周りはワイルドエリアには近くない代わりに雪山を生き残る強いポケモンが多い。そんなポケモンがダイマックスをしているのだから迎撃だって大変だ。野生のダイマックスポケモンは四人くらいで戦うことが推奨されている。

 そんなダイマックスポケモンが複数来ているのだから迎撃だって大変だ。

 

「も、もうダメだ……!」

 

「諦めるな!ショウちゃんのホームタウンを穢してたまるか!」

 

 そんな絶望的な声も上がる中、ダイマックスポケモンたちへ『かみなり』が落ちる。それをやったのはかなり大きめのレントラー。そんな特徴的なポケモンを、ショウちゃんのファンでありジムトレーナー募集を受けた俺たちが間違えるはずがない。

 

「ショウちゃんのレントラーだ!フーディンもいる!」

 

「あの大きなポケモンは見間違いようがない!この街にはショウちゃんの加護がある‼︎」

 

 一気に活気付くキルクスタウン。それだけでキルクスタウンはどこの街よりも優先的にダイマックスポケモンの迎撃を終えていた。

 それでもまだ空は紅いまま。住民は不安に怯えながらも体格の良いポケモン達と一緒に街の護衛を続ける。

 ショウちゃんのいないこの街は俺達が、このフラゲ民が守ってみせる!

 ……なんか話してみると結構あのスレの住民がいた。誰も彼もショウちゃんの聖地巡礼に来ていたようだ。

 相変わらずショウちゃんは俺達を狂わせる女神なのだと、自覚した。

 なんせそんな人間が千人以上いるんだから、全く魔性の女だぜ。

 

 

「な、何あれ……」

 

 ユウリちゃんが空を見上げて呟く。空から落ちて来たような、紫の龍。ウルトラビーストに比べれば龍と呼んで良いフォルムにアレがポケモンだろうと理解する。

 デオキシスやジラーチのように宇宙由来のポケモンもいるからあのブラックナイトも宇宙由来の可能性はある。けどポケモンの範疇で良いだろう。

 

 ようやく。

 ようやくわたしの願いが叶うのだと、口角が上がってしまった。いけないいけない。今ガラルは未曾有の危機。そんな場面でジムリーダーのわたしが嗤うなんてダメだ。

 見たこともないフォルムの巨大生物に愕然としているユウリちゃんの手を引っ張る。

 

「行きますよ、ユウリちゃん。防衛網も構築できています。外よりもあのポケモンをどうにかするのが先決です」

 

「え、え⁉︎アレを、私達で⁉︎」

 

「はい。突如空から降ってきたあのポケモン。この現象に無関係とは思えません。伝説のポケモンとは異常な事態とセットなことがしばしばありますから」

 

 わたし達がナックルスタジアムの中へ向かう様子を見てダンデさんも中へ向かおうとする。キバナさんも来ようとしていたけど、外の防衛網で獅子奮迅の活躍をしていたわたし達三人が抜けるのを知って自分まで抜けるわけにはいかないと思ったのだろう。

 キバナさんはそのまま外で指示出し。ドラゴンエキスパートだから来て欲しかったけど、その判断は責められなかった。

 

 ダンデさんがリザードンと先に入ってしまう。大人としての義務かな。わたしやユウリちゃんに何かをさせる前にチャンピオンとして責任を取ろうとしたのだろう。

 そして──一蹴されるチャンピオンの姿が目に映った。

 

「ダンデさん⁉︎」

 

 ブラックナイトはそこまでか。わたしの知るシロナさんを超えるほど鍛えてあげたのに膝を着くダンデさんとリザードン。今もガラルへガラル粒子を提供し続ける救いの神を、矮小な人間じゃ太刀打ちできないなんてまるで神話の一頁みたいだ。

 だけどこの世界において。そんな神話の繰り返しはそんな矮小な人間と絆のあるポケモンの力でねじ伏せられるものだ。

 

 かつてわたしが、シンオウとヒスイで(二度も)やったことなんだから。他の少年少女もやっているのならわたしは何も特別な人間じゃない。

 そしてそんな特別な人間がどこの地方にも一人は必ずいる。それがダンデさんじゃなかっただけの話。

 さあ──ユウリちゃんはガラルの救世主足り得るかな?

 

「ユウリ、来るな!このポケモンは君の手に負えるポケモンじゃない!」

 

「私じゃダメでも、きっとショウさんなら……!」

 

「わたし?うーん、まだダメ。というか、それじゃあ根本的な解決にはならないんですよ。ですよね?ローズ委員長」

 

「はい。まだ増大したガラル粒子ではガラルを救うには足りません。これでは結局百年後にガラルは終末の世となるだけです」

 

「え……?ローズ、委員長?」

 

 わたしの横に来るローズ委員長。彼はスマホロトムを見ながら手元のパッドでもガラル全域の様子を確認しているようだ。

 ローズ委員長が現れたこともそうだけど、わたしがあのポケモンを止めようとしていないことにもユウリちゃんはショックを受けているっぽい。一応少年少女への自分の人気というものは理解しているつもりだ。ショウちゃんがわたしのファンっぽいということも気付いている。

 けどそんなショックだったか。そうかぁ。そんなメンタルでこのガラルを救えるかな?

 

「今の調子だとあとどれくらいの維持が必要ですか?」

 

「丸一日、ですかね。もしかしたら一週間、一ヶ月必要かもしれません。最もそれはブラックナイトを誰も捕獲できずこのままの状態を維持する場合の話です。どなたかが捕まえてくれて、度々ガラル粒子を提供してくれればそこまで悲観することはありません」

 

「別に一ヶ月でも良いですよ。それくらいの保存食くらいありそうですし。英雄……いえ、救世主がそれまで現れなかったら最終手段を取ってわたしが捕まえます」

 

「お願いしますね」

 

「う、ウソ……。この事態をローズ委員長が起こして、ショウさんもそれに加担してるの……⁉︎」

 

 ジムチャレンジに夢見ている少女には厳しい現実だったらしい。

 わたしもローズ委員長も結局ジムチャレンジを試金石としか思っていなかったし、全てこのブラックナイトのためだけに取り繕っただけのものだ。

 ローズ委員長としてはジムチャレンジの経済効果もガラルのためになっているんだろうし、徹頭徹尾ガラルのために身骨を砕いて来た人だ。このブラックナイトを愉快犯で引き起こしたわけじゃない。

 

 ということを説明する時間はない。

 火事場の馬鹿力じゃないけど、人って試練を与えると物凄い力を見せるものだ。このまま悪役ムーブをしていた方が彼女は強くなれるかもしれない。

 子供は可能性の塊だ。大人にはないものをたくさん持っている。

 わたしができたことを、あなたにもやってほしい。それだけのためにわたしはこの状況を見守る。

 その状況で、後ろからもう一人が走り込んで来た。

 

「姉さん!……ローズ委員長?二人とも一緒だったんですね」

 

「あ、ビートくん。ちょうど良かった。あのポケモン捕まえられる?タイプはどく・ドラゴンだよ」

 

「……捕まえれば、この騒動は終わるんですか?」

 

「うん。姉からの最後のお願い」

 

 あまり姉として接してこなかったけど、ビートくんは家族に、そして自分を助けてくれる人に弱い。それは彼のバックボーン的に仕方がないわけで、こういうのはクリティカルヒットしてしまう。

 ローズ委員長も頷いて促したことで、ビートくんは状況がわからないまでもモンスターボールを構える。

 全く。酷い人間になったものだ。

 そのことを指摘する大人もこの場にはいるわけで。

 

「ショウ!君は彼までも利用する気か⁉︎」

 

「まあ、はい。ダンデさん、わたしは彼らを信頼しているんです。保険も用意しているので、少年少女の挑戦を見守っているだけですよ」

 

「その重い期待を乗せて、彼らは無事に済むと思っているのか⁉︎こんなガラルを背負うようなことを……!」

 

「それはこのガラルにおいて。チャンピオンになることとどれだけ異なるのですか?」

 

 純粋な疑問をぶつける。

 ダンデさんだってチャンピオンになったのはユウリちゃんと変わらない歳だ。スポンサーがついてずっと世間から注目を浴びて、ポケモントレーナーとして頂点で居続けなければならない。相応しい品格も求められて、数々の挑戦を跳ね除ける。そしてガラルの危機に率先して立ち向かう。

 そんなの、早いか遅いかの違いだけじゃないか。

 別に死ねって言ってるわけじゃないんだし。

 

「今も全地域で被害が出ている!これに失敗したらガラルそのものが崩壊するんだぞ!」

 

「わたしのポケモン二百匹を全地域に配置済みです。住民の皆さんも頑張っているのでそう簡単に被害は出ませんよ。なんのためにマクロコスモス関連会社の入社条件をジムチャレンジの成績を加味する、というものにしたと思っているんですか?ローズ委員長がこの事態を想定していたからに決まっているでしょう」

 

「そうですね。それにここにはジョーカーたるショウくんがいます。万が一はないんですよダンデくん。本当にジョーカーなので、あまり切りたくはない手ですが」

 

 ブラックナイトは伝説のポケモンといえどもアルセウスと比較すれば全然強くない。だからわたしなら簡単に制圧できる。

 いや、アレが頭おかしいだけか。まさしく規格が違いすぎる。アレと比べれば全部のポケモン、全部の生命が劣ることになる。

 あんなのでも、生命としては一つ上のステージに立っているからなあ。本当になんなんだあのバケモノ。

 

「ユウリ、早く構えてください。あなたもショウ姉さんに期待されたんでしょう?ならあのポケモンくらいさっさと捕まえますよ」

 

「ビート君はあの二人がこの事態を起こしたって知っても怒らないの……?」

 

「あの二人の隠し事なんて今更です。それにこのために僕を鍛えていたとしても……姉に期待されて喜ばない弟がいると思いますか?」

 

「そっか。──うん、それならやろっか」

 

「ええ。ここは一つ競争といきますか。どちらがあのポケモンを捕まえるか」

 

 ユウリちゃんとビートくんの共同戦線ができあがる。二人のどっちかが捕まえてくれれば万々歳。

 問題は。

 

「そっかあ、ハロンタウンの方向……。あの変な森か。ローズ委員長、剣と盾の英雄が来ます」

 

「それも予測通りですね。ですが過去にブラックナイトを鎮めた実績があるのも事実。今回は下手したら殺そうとするかもしれません。止めてください」

 

「わかりました」

 直感でまた伝説のポケモンが来ると予感して。

 その予想は正しかった。

 ナックルスタジアムで、ガラル史に残る戦いの火蓋が開けられた。

 

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