ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜   作:ポポタン

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繋がるズレと憎悪

 ショウとウォロはギラティナの『シャドーダイブ』でテンガン山の頂上を目指していた。

 だが、暗闇から飛び出た場所は頂上に向かうための洞窟がある近くだった。シンオウ神殿に直接出たわけではない。そのためショウはウォロの方を見る。

 

「ウォロさん?」

 

「どうやらギラティナの力を、あの裂け目が拒んでいるようです。と言ってもそれは『シャドーダイブ』の移動の力のみ。それ以外は大丈夫でしょう。──おそらくディアルガとパルキア、どちらのドラゴンもいる。その二匹とギラティナは同格。二匹がかりの結界をギラティナ単体では超えられません」

 

「そう。ここまでくればもう目の前だから良いですけど」

 

 ショウは頂上まで移動できなかった理由にそっけなく返す。そのまま洞窟へ歩き出した。

 

「まもなく最終決戦ですからね。ショウさん、必要な道具とかありますか?ツケにしておきますよ。ボールとか足りてます?」

 

「大丈夫です。伝説のポケモンだろうが、ボールは一個あれば十分ですから。二匹いても、二個あればそれ以上は要りません」

 

「確実に捕らえられると?」

 

「はい。だって──ボールを二個も使ったポケモンなんていませんから」

 

 ショウはヒスイに来てからも、『ヒカリ』だったシンオウ時代を振り返っても、ボールを二個も使ったポケモンは一匹たりともいなかった。それが伝説・幻と呼ばれる区分のポケモンであっても、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 普通のポケモンであればクイックボールを投げればそれだけで捕まえられて。伝説や幻のポケモンは直感的に捕まえられないと悟ったら弱らせて、イケると思ったらボールを投げるだけの作業。それだけでポケモンなんて捕まえられた。

 

 ヒスイに来て、オヤブンポケモンと対峙するようになってからも対処方法は変わらなかった。手持ちのポケモンで弱らせてボールを投げれば捕まえられた。ボールに違和感はあっても効率は全く変わらなかった。

 オヤブンポケモンであっても、イケると思えば戦闘もせずに捕まえたこともある。

 ショウからすれば、他の人がどうしてポケモンを捕まえるのにそこまで苦労するのかがわからないのだ。

 

 まずボールを投げるコントロールがない、下手くそは論外。ショウは投げれば確実にポケモンのウィークポイントに当てられた。弱点にボールが当たった衝撃も込みでショウは捕獲を成功させていた。

 ショウでもこのポケモンは一発で捕まえられないと思うポケモンもいる。ヒスイにはクイックボールがないのでその勘が働くことはよくあった。そういう時は弱らせて捕まえられそうな時に捕まえるに限る。

 

 だが他の人は完全に弱らせていないのにボールを投げて、ボールを無駄にして逃げられるということがある。ショウからすれば全然弱らせていないのに何をしているのだと思う行為。眠らせるなり氷漬けにするなり、手段はいくらでもあるのに一・二回攻撃を当てただけでボールを投げる意味がわからなかったのだ。

 こういう捕獲談義を、ポケモン図鑑を作っていたコウキとしたこともある。何故ああも他の人は焦るのだろうかと。

 

 その答えとしては「僕らにはポケモンをどれだけ攻撃してひんしにしないかがわからない。その捕まえられるっていう確信もないままにボールを投げてるよ」というもの。

 それになんだそれは、とショウは思った。そんなもの、ポケモンの様子を見ていればわかるだろうに、他の人にはわからないのだから。

 

 アカギにもそれが見えていたようで、アカギもポケモンの捕獲と育成が上手かった。そういう共通点も『ヒカリ』が信頼を置いた理由だ。

 そういう特性もあってショウは多くのボールを持ち歩かないが、今はモンスターボールがちょうど二個ある。これで十分だった。

 

 シマボシからボールのレシピを教わって、テルに作り方も教わったが。結局モンスターボールしかクラフトすることはなかった。スーパーボールとかハイパーボールを使ってもモンスターボールと効果が変わらず、それを作る理由が見出せなかったからだ。

 クイックボールはモンスターボールよりも確実に効果があったために『ヒカリ』の頃に愛用していたが、重要なポケモンを捕まえていたのはいつだって赤と白のモンスターボールだ。

 

 本音を言えばクイックボールだって必要なかった可能性もあるが、『ヒカリ』はコウキに相談してモンスターボールだけで捕獲するのは異常だと言われて、ボールの効果を隠れ蓑にしていただけだ。

 そんなショウの言葉に、ウォロは引き笑いをしていた。

 

「そう言えばジブンからボールを一切買わなかったですからね……。イチョウ商会でもショウさんの活躍からボールの需要があると思って在庫を増やしたのですが、結局買っていったのは他の団員ばかりで予想よりも売り上げが上がらなかったとか言っていました」

 

「ああ、わたしボールは買ったことないですね。素材はいくつか買いましたけど。だって自分で作るボールの方が性能が良かったんですもん」

 

「……はい?」

 

「イチョウ商会に粗悪品を売らないようにって言った方が良いと思いますよ?わたしのはもちろん、テル先輩のボールよりも劣化してる商品なんて、コトブキムラのバカな人しか買いませんから」

 

「……フムフム。ジブン、ショウさんの異常性を甘く見ていたようです」

 

 ショウはテルにクラフトの仕方を教わって、すぐにテルの作品よりも良い物を作った。最初はテルの腕前が低いのかと思ったが、売りに出されているボールや他の人が使っているボールの方が貧弱だとわかって、テルの腕の良さを再認識したのだ。

 そういうわけでショウは時間があれば自分が使う分のボールをクラフトして、時間がなければテルに手間賃を払ってボールを作ってもらったこともあった。それが一番捕獲率を上げられる手段だったために。

 

「つまりショウさんが投げたボールは確実に揺れが止まると。羨ましいです」

 

「え?()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「………………。なるほどなるほど。貴女を追放したデンボク殿はバカですね!」

 

「でしょう?これでもシマボシ隊長に次ぐココノツボシ隊員だったんですよ?誰のおかげでポケモン図鑑がほぼ完成したと思ってるんですか。あとはディアルガとパルキア、ギラティナの図鑑でおしまいだったのに」

 

「……伝説のポケモンは図鑑に含まなくても良いのでは?ディアルガとパルキアはシンオウ様として崇められていますし、ギラティナは歴史の影に追放された存在です」

 

「じゃあもう完成ですね。まあ、わたしはもうあのギンガ団の人間ではありません。ラベン博士やテル先輩、シマボシ隊長があの図鑑を有効活用してくれれば良いです」

 

 ウォロはヤケクソ気味に笑顔を向けて、ショウのご機嫌取りをする。

 この本人の勘違いと、資質の無自覚さにはウォロ自身も騙されていた。どれだけショウを甘く見積もっていたのかと過去の自分をぶん殴りたくなっていた。

 ポケモンバトル、捕獲、クラフトの才能。更には自己評価の低さなど、常時監視できていなかったウォロからすればショウの情報を得るために用いてきたのが人からの伝聞ばかりだったので過小評価してしまいがちだった。

 

 正直ウォロだって純白の凍土くらいなら無傷で調査できる。キング・クレベースだってギラティナかウィンディ、ルカリオがいればどうとでもなると思っていた。だからクレベースを鎮めたとしても、自分にだってできるとしか思っていなかった。

 これだけ他人と異なる才能があって、自己評価が低いショウのことだ。まだ隠し球があってもおかしくはないと警戒を強める。

 

 もっともあとショウが話していない才能とはポケモンに懐かれやすいということと、ポロック作りが上手なこと。そして()()()()()()だがポケモンコンテストに出れば一瞬の内に優勝できる才覚があるだけ。彼女は一回もコンテスト本戦に出たことがないし、出るつもりもないが、そんな能力が秘められていた。

 ショウからすれば和気藹々とした談笑(?)をしてゆっくりと頂上に向かっていたところで二人の後ろから足音が聞こえた。その足音はどうやら急いでいるようでダダダダ!という音が洞窟に反響する。

 

 こんな場所に人が来るはずがないと思っていた二人は立ち止まって誰だろうとその足音の主を待つ。相当強いポケモンを連れていなければこのテンガン山まで来られるはずがなく、理由としてもショウを追いかけてきたか、この紅い空をどうにかしようとする正義感の強い人間しかいない。

 足音の軽さからポケモンではないと確信していたショウはポケモンボールの準備だけをしていた。

 

 そして、現れたのは金髪の少年。このヒスイの地には不相応な現代風の衣装を身に纏った、ショウではなく『ヒカリ』にとって見覚えのある人間。

 腕にくっつけた、おそらくポケッチだった物が白く大きく変化し棘がついたセンスのない物を装備させられた哀れな少年が現れたことで、ショウの目のハイライトが完全に消えた。

 

 今までは現代に帰るためにわずかに瞳孔に光が残っていたが、今は完全に無しか映していない。

 走ってきた少年は息を切らせながら、ショウをしっかりと見据えて叫ぶ。

 

「ヒカリ!やっぱりお前、ヒカリだな⁉︎」

 

「ヒカリ?……ショウさん、お知り合いですか?随分奇天烈な格好をしていますが」

 

 ウォロが問いかけた後にショウの瞳を見て、失敗だったと気付く。最近もかなり追い詰められた瞳をしていたが、今のショウは群を抜いてヤバイ状態だった。ウォロがサッと目線を逸らすほどに、目が濁っていた。

 

「……あーあ。ジュンも来ちゃったのか。ウフフ、あの邪神、どうしてくれようか。一発じゃ気が済まなくなってきた」

 

「なんだってんだよ……!ラベン博士の図鑑にあった写真を見た時からヒカリだとは思ってたけど……。そんな金髪に染めちゃって、グレたのか⁉︎」

 

 ジュンが知っているヒカリは黒髪だった。そんな幼馴染が金髪になってGの文字をデカデカと貼り付けた現代風の衣装を着ていればジュンだって困惑する。

 ショウは一つ深呼吸すると、ジュンをまっすぐ見つめて問いかける。

 

「ねえ、ジュン。『ヒカリ(わたし)』との思い出を語って?」

 

「え?いきなりなんだよ?家が近所の幼馴染で、ナナカマド博士にポケモンを貰ったことでチャンピオンになるための旅を始めて。お前は()()()()()()()()()()()()()()()()ジムバッジを集めて。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんでシロナさんを倒して新しいチャンピオンになったから俺はバトルタワーに挑みつつお前に勝つって宣言したけど。それがどうした?」

 

「うん、齟齬だらけ。ありがとう、ジュン。あなたはわたしの知ってるジュンじゃない」

 

「はぁ?」

 

 ショウは確かめたいことが確認できて満足げに頷いた。その一方左拳は強く握られていて、爪が手の腹に突き刺さって血が滲み出ていた。

 まだ飲み込めていないジュンに対して、ショウは真実を告げる。

 

「ジュン、わたしはね。確かにシロナさんに勝ってチャンピオンになったよ。でもディアルガを捕まえたことはないし、ポケモンコンテストなんてものに出たことはないの。だからあなたの知るヒカリと、わたしは別人だよ」

 

「えー?パラレルワールドとかいう奴か?うーん……。ポケモンコンテストに出てないヒカリとか想像もできないんだけどなぁ」

 

「……そっちの世界でも、ママはポケモンコンテストが大好きなのかな?そうじゃなかったらコンテストに興味なんて持たないはずだし」

 

「ん?おう。オバさんはコンテスト優勝経験もあるし、ヒカリに熱心にコンテストのこと教えてたぞ。チャンピオンを目指してたのは俺との約束だからって言ってたな」

 

 それを聞いて『ヒカリ』の爪が更に深く突き刺さる。

 一度顔を伏せて沈痛な表情をした後、目を閉じて表情をリセットさせた。

 ジュンに八つ当たりをしても意味がない。ジュンは一切悪くない上に、ジュンの知るヒカリへ暴言を吐いても仕方がないことだ。

 『ヒカリ』の奥底に燻っているドス黒い感情はこの場にいる誰に言っても意味を為さない。

 だがまた一つ、アルセウスに会う理由が増えてしまった。

 

「……ジュン。あなたもノボリさんも絶対に元の時代、元の世界に戻してみせる。だから今だけは邪魔をしないで」

 

「ヒカリ!たとえお前が俺の知ってるヒカリじゃなくても知ったことか!今のお前を放っておくと嫌な予感がする‼︎頂上に行って、どうするんだ!」

 

「簡単だよ。わたし達をこの世界に呼び出した存在に会いに行くの。それで、わたし達を元の場所に帰してもらうようにお願いするだけ。ついでにこのヒスイも少しだけ元通りにしてあげる」

 

 『ヒカリ』はポケモンボールをいくつかジュンに向かって放り投げる。

 そこから出て来たのはクレセリア、ヒードラン、()()()()()()()()()。どの個体も通常のポケモンよりも遥かに強力なポケモンだった。

 

「みんな、ジュンの足止めお願い。ウォロさん、行きますよ」

 

「え、ええ」

 

「ヒカリ、待て!待てって!」

 

 ジュンの制止の声など無視してショウとウォロは頂上へ向かう。追いかけようとしたジュンは四匹のポケモンに進路を塞がれてしまった。

 この場を潜り抜けて追いかけるには目の前のポケモン達を倒すしかなさそうだった。

 

「くそ、一人でなんでもかんでも背負いこもうとするなよな!いけ、カビゴン!フローゼル!」

 

 ジュンが同時に指示を出せるポケモンは二匹が限界だ。相手は四匹いるが、その代わりにトレーナーはいない。

 擬似ダブルバトルでジュンはこの場を突破しようとしていた。

 




ショウ「モンスターボールをマスターボールに変える力!」
ポケモン「⁉︎」

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