ポケモンLEGENDS IF〜もしショウが悪堕ちしていたら〜   作:ポポタン

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神の加護/呪い/信奉者

「くそう!」

 

 

 ジュンは奮闘した。

 

 

 その地域を代表する伝説のポケモン達を相手にして、通常のポケモンでダークライとヒードランを撃破したのだ。練度的にもジュンの手持ちポケモンより上だったのにも関わらず、六匹を駆使してその二匹を打破していた。

 だがここまでだ。クレセリアの異常な耐久力とシェイミの回復力に持久戦を仕掛けられ、ジュンのポケモン達は段々と削られてとうとう最後の一匹であるドダイトスが倒れた。

 

 ジュンのポケモンも強い。だがそれ以上にクレセリア達のレベルがほぼ上限に近く、その上種族値の差が大きすぎた。相手に大体先手を取られる中、ポケモンバトルの腕だけでダークライとヒードランを倒したジュンを『ヒカリ』は純粋に褒めるだろう。

 

 テルに貰ったきずぐすりなども全部使用してこの結果だ。もう回復のための道具は残っていない。げんきのかけらやげんきのかたまりと言った希少な物はもちろん、なつき度が下がってしまうが絶対的な力を持つ漢方のふっかつそうなども持っていなかった。

 ジュンの目の前は──真っ暗になることはなかった。

 

「お前達もヒカリのポケモンだろう⁉︎頼む、通してくれ!あんな……あんな、泣くのも我慢してるヒカリを放っておけるか!この空を一人で解決させるなんて、ジュン(オレ)は受け入れられない!あの時もヒカリに任せて、アイツは伝説のポケモンを捕まえたっていう重荷を背負っちまったんだ!そんなの、オレはもう見て見ぬ振りはできねえよ‼︎」

 

 ジュンはドダイトスを抱えながら叫ぶ。

 クレセリアもシェイミも、ジュンのその言葉に思うところはある。ひんしになっているヒードランとダークライも、頷けるなら頷きたかった。

 それでも彼女達にとってはショウこそがおやだ。

 

 ショウがジュンを通したくないと思い、この場を四匹に任せた。ならばここを死守するのがクレセリア達の役目だった。

 そしてそれがジュンの最後の手段だとクレセリア達もわかっている。手持ちのポケモンを回復する手段がないからこうやって情に訴えかけようとしていることを。

 なら、尚更退けなかった。ショウの望みを叶えるためなら、心を鬼にすると伝説のポケモンが決めていた。

 

 だからこそダークライは全力で呪われている自分の力を最大限発揮したし、ヒードランもこの場所を壊さない程度に暴れたのだ。

 どうやっても退きそうにないポケモン達の態度にジュンは奥歯を噛んだが、その時にジュンの訴えに応える者がいた。

 

 ジュンがヒスイに来てから変化した左腕に装着したポケッチ。痛々しいデザインになって外すこともできなかったのでジュンは邪魔に思っていたが、それがいきなり光り出して辺りを包み込んだ。

 

「え?なんだってんだよ……?」

 

「クルルルル……!」

 

 その光の正体に気付いてクレセリアはうねり声を上げてシェイミを庇った。

 その光が消えた頃には、ジュンの手持ちのポケモンがボールから出て来て、全員ひんしから復活したどころか完全回復してジュンの前に立ち上がっていた。

 

「お前達……?まさか、今の光が治してくれたのか?」

 

「クワーーーー!」

 

「キュウウー!」

 

 元気になったジュンのポケモンと打って変わって、クレセリアとシェイミの怒りの叫びが洞窟に響く。視線も明らかに強張っており、先程までの抵抗しつつも温厚な眼差しを向けていたポケモンとは一転した表情を見せていた。

 ダークライもヒードランも、回復していないのに立ち上がろうとしていた。だが一度ひんしになった状況からは簡単に立ち上がれない。

 

 さっきまでも数の差で勝っていたが、今はダークライとヒードランがひんしでクレセリアとシェイミも手負いだ。万全の状況とは程遠く、バトルをしたことでジュンとその手持ちのポケモンの実力も測れていた。

 だからこそ、クレセリアはマズイと考えた。相手が完全に復活していたのであればこちらが負ける可能性が高いと。シェイミの回復にも限界があり、クレセリアの防御だって完璧ではない。

 

 ならばいっそ、数を整えた方が良いと考えた。負傷した自分が残るよりはシェイミの負担も減るだろうと。

 正直ダークライに任せるのはダークライの性質からあまりやりたくなかったことだったが、今はショウの願いを最優先にすべくクレセリアは決心する。

 

 

 彼女が使った技は『みかづきのまい』。

 

 

 洞窟の中なれど、月光が差し込めるような神秘的な舞をクレセリアは踊る。その端麗さにジュンもポケモン達も何もできなかった。誰もクレセリアだけが使えるその舞の効果を知らなかったから。

 この世界でその舞を知っているのはショウだけだった。

 踊りきったクレセリアはその舞に全てを使い切ったかのように浮かぶこともできずに地面に伏せる。舞の美しさとクレセリアがいきなり倒れたことにジュンは困惑しかなかった。

 

 そしてムクリと。

 倒したはずのダークライとヒードランが何もなかったかのように起き上がる。シェイミの傷も消えており、完璧な状態の伝説のポケモンが三匹、立ち塞がっていた。

 

「クオオオン!」

 

 更にシェイミが遠吠え一つ。すると四肢がスラリと伸びて今までの愛らしい姿から地でも空でも駆け上がれそうな戦うための姿に変化していた。

 スカイフォルム、というものに変化したシェイミ。クレセリアという空中担当がいなくなったためにシェイミがバトンタッチされた形だ。

 

 意地でも通さないという意思表示に。ジュンも覚悟を決める。もう泣き落としなんて使わない。自力で突破してみせると。

 

「お前達も本気ってことだな?伊達にヒカリのポケモンじゃないってことか……。さっきの光はわかんねーけど、押して通るぜ!」

 

 もう一度、ジュンはポケモン達に指示をする。

 洞窟の先でも、紅い空が揺れていた。

 

 

「終わり、ですね。さあ『もののけプレート』をください。それとも商品を使ってポケモンを回復させますか?何度やっても同じ結果にしかならないと思いますけど」

 

 わたしの目の前にあるのは、もう終わった結末。

 ウォロさんの最後のポケモン、ガブリアスが倒れてウォロさんに残っているポケモンはいない。それは腰のモンスターボールを見て確信していた。

 ボールに入れていないギラティナも倒れ伏している。にも関わらずわたしのポケモン達は誰も傷付いていない。まさしく完封といった結果だった。

 

 ──いつもこうだ。ポケモンバトルはコンテストに比べれば遥かに遣り甲斐はあったものの、勝ててしまう。負けそうだなって思ったのはジュンとアカギ様くらいで、逆にシロナさんには負けないなと直感していた。

 それは多分、わたしを知っているかどうかの差。わたしを本気で倒そうとしてくれるかどうか。わたしを倒そうと、わたし個人を見てくれる人。ジムリーダーや四天王、チャンピオンの場合わたしではなくチャレンジャーというフィルター越しに見たわたししか見ていない。

 

 挑まれる側という意識なら簡単に蹴散らせた。システム上わたしから挑みに行くのだからわたしへの対策なんて考えられずにベストな手持ちで挑むしかなかったんだろうけど。何も対策しないでわたしのポケモンを止められると思っていたら大間違い。

 そういう意味ではジュンはポケモンのレベルがわたしの手持ちに比べて劣っていても、どうにかしようと試行錯誤をしていた。だからわたしも一度エンペルトが倒されたのは驚いた。

 

 アカギ様はただ単に、わたしと同等にポケモンの育成が上手かった。それにわたしという為りを知っているからこそ、わたしを倒す道筋が見えていたんだろう。一番苦戦した相手はアカギ様だった。

 今回のウォロさんは不意打ちを仕掛けるしかないというメンタルで挑んできて、初手にエースであるギラティナを切ってきたのが間違い。ガブリアスもエースなんだろうけど、わたしのガブリアスの方が強い。

 

 まだ真正面から挑んできた方がわたしを倒せた可能性は高い。そっちが卑怯な手を使ってきたからこっちもルール無用で殴り返しただけ。

 ルールを決めて戦ったらきっと苦労しただろう。バクフーンくらいは倒されていたかもしれない。

 でも、そうはならなかった。

 

 目の前にいるのは、いつも通り膝を着いた敗者が一人。

 たった一回負けただけでそう落ち込まないで欲しいんだけど。ジュンは何度も立ち上がって挑んできたし、アカギ様は次に戦ったら勝てるかどうかわからない。

 ジムリーダーや四天王、シロナさんも負けた直後は驚いていたけど、それが仕事だからと立ち上がった。

 

 立ち上がれなかったのはほとんどが野良のトレーナーだったかな。一匹のポケモンに全て蹂躙されて、わたしを見る目が変わって。

 どうせそう感じる心もすぐになくなるからいいかと、わたしは無視してきた。あれはおそらく恐怖の目線。実力差に怯えていたんだろう。

 ウォロさんは怯えていたわけではなく、わたしにプレートを渡すのが嫌なだけだと思う。

 

「……一つ、聞かせてください。プレートを全部集めて、アルセウスとあって貴女は何をするのですか?貴女はこのプレートがアルセウスに関する物だと言ったら興味を持ちました。つまりアルセウスと何かをするつもりでしょう?」

 

「ああ、そんなこと。大枠としてはこの時代に不遇に飛ばされた人間を元の世界に戻すこと。さっきジュンにも言ったことですね。で、わたしの心からの願望が一つ。──直接ぶん殴らせろ。それだけです」

 

「──────ハ?」

 

 わたしの言葉が理解できなかったみたい。口を大きく開けて、目を点にしてこっちを見てくるウォロさん。

 そんなにおかしなことを言ったかな?至って平凡な、ちっぽけな望みだと思うけど。

 

「…………なんと?」

 

「だって、いきなりこんな世界に連れてこられたんですよ?わたしとノボリさんに至っては記憶も奪われる始末。怒るのが当然の仕打ちだと思いません?」

 

「それは……まあ、そうですね」

 

「でしょう?なので殴れる時に殴っておこうかと。その後元の時代に戻してもらうだけです」

 

「捕まえたり、しないのですか?」

 

 ウォロさんがそんなことを聞いてくるが。

 そんな答えは決まり切っている。

 

絶対にイヤです。わたしに理不尽を押し付けた、絶対に信用できないポケモンを捕まえる理由が何処にあります?あんなポケモン、要りませんよ」

 

「要ら、ない?」

 

「はい。もしアルセウスが欲しいんだったらご自由にどうぞ。ウォロさんもアルセウスに会いたいんでしょう?わたし達が帰った後ならお好きに」

 

「貴女の……お零れに預かれと?」

 

「わたし達が帰る前に何かされて帰れなくなったら困りますし。でも、拒否権ないですよね?わたしに負けたんだから」

 

 そういうマウント取りという意味でもウォロさんと戦った意味はあった。

 どんな理由があると、誰にだって邪魔はさせない。あのジュンが来てしまった以上、余計に邪魔をして来そうなウォロさんは排除しておきたかった。向こうから襲って来たのは本当に都合が良かった。それに最後のプレートも持っていたなんて。

 これでヒスイ中を駆け巡らずに済むし、プレートを持ってるかもとディアルガ・パルキアに変な配慮をしなくて済む。気が楽になった。

 

「……貴女に情けをかけられるくらいなら、他の方法を探します。そして敗者は潔く身を引きましょう」

 

 そう言って紫色のプレートを手渡してくれたウォロさん。案外素直なんですね。いや、凄く嫌そうだけど。

 これで十八枚のプレートが集まった。アルセウスが現れる気配は、ない。むしろ時空の裂け目が大きく開いたような気がする。まだ全てのポケモンに出会ってないから顔を出さないのかな?

 捻くれ者め。

 

「ショウさん。──ワタクシが時空の裂け目を開いてキングとクイーンを暴走させた張本人だと言ったら、ワタクシのことも殴りますか?」

 

「ああ、ギラティナの力を使ってやったんですか?殴って欲しいなら殴りますよ?」

 

「……てっきり元凶のワタクシも殴りたいんだと思いましたが?」

 

「あなたは時空の裂け目を開いただけでしょう?本当だったら未来の人間なんて必要なく、誰かが事態を納めたんだと思いますよ?それかあなたやギラティナの願いが叶っていたか。それを嫌がったアルセウスがわたしやノボリさんをこの時代に送り込んだのでしょう。ノボリさんはオオニューラを管理するキャプテンが足りなかったから。わたしは、あなたやギラティナを止めるために。あなたがキッカケでも、わたしを選んだのはあなたじゃない。わたしをここに送り込んだのはアルセウスだとわかっていますから」

 

 ウォロさんが気持ち悪いことを言ってきたから懇切丁寧に説明をしてあげる。

 イヤだよ、イケメンのこと殴るなんて。それにシロナさんに似ている人を殴るのは気が引ける。

 プレートがアルセウスに会う条件だったとしたら、それを四枚も結果的にくれるよう手を回してくれた恩人になる。そんな人を殴りたくない。それくらいの倫理観はわたしにも残っている。

 

「貴女は……よくわからない人だ。見誤っていたワタクシはデンボク殿をバカにできませんね」

 

「あの男の名前を出すあなたは嫌いです」

 

「おや、これは失敬。……そうですか。貴方は既にアルセウスに会っていましたか。コギトさんの言葉はそういう……。選ばれた余所者(貴女)と、選ばれない身内(ワタクシ)。この差は何でしょうかね?」

 

「伝説のポケモンの思考なんて考えたって無駄ですよ。神話の神様がただの人間に物事の流れを一から十まで説明してくれると思いますか?」

 

「それはそうだ。だからこそ問うてみたい。……プレートがダメなら、伝説の『てんかいのふえ』でも探しましょうか。さようなら、ショウさん。貴女が元の時代に戻れることを祈っています」

 

 ウォロさんはそう言うと、ギラティナにげんきのかたまりを与えて『シャドーダイブ』でどこかへ消えていった。

 正直、悪い人には思えないんだよね。伝説のポケモンに出会えるなんてよっぽどの低確率。どんな手段でも使わないと会えないだろうと覚悟して行動したウォロさんを責められない。わたしだって『ギンガ団』として色々としてきたからなあ。

 キングやクイーン、それに関係する人を困らせただろうけど、奇跡的に死人は出なかった。だから極悪人とは呼べない。

 

 そう呼ばれるのはわたしだ。

 この罪はしっかりと背負って、その上で帰らなくちゃ。わたしの、ジュンの、ノボリさんの居場所はここじゃないんだから。

 シマボシ隊長達には迷惑をかけちゃうけど、元々わたし達がイレギュラーな存在だ。多分辻褄合わせとかはアルセウスがするんだろう。それがアルセウスの責任だ。

 

 わたしはシンオウ神殿に繋がる舗装された階段を登っていく。まだ残された神殿の姿。これがわたしの時代では槍の柱と呼ばれる場所になる。おそらく何かがあってこの神殿が崩れて、跡地の姿を誰かがそう名付けたんだろうね。

 わたしが時空の裂け目に近付いたのと同時に、裂け目が広がる。そして出てきたのは四足歩行の蒼色のドラゴンの姿。わたしの時代にも石像などが残っている、シンオウ地方で有名な伝説のポケモン。

 ディアルガが、そこにはいた。

 

「ふふ。この子も連れ帰ったらアカギ様は喜んでくれるかなあ?さあ、いつものように捕まえてあげる。行っておいで、マンムー」

 

 ポケモンボールを投げる。マンムーはさっきもボールから出したけど、結局戦わなかったから万全な状態だ。

 アカギ様、『ギンガ団』のみんな、ジュン。

 今帰るから、もうちょっとだけ待っていてください。

 

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