LOST MODEL   作:瑠璃の炎

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また戦区が始まる始まる……。あ~めんどくさい。


と言う訳で本編どうぞ!。


第10話:同行と言う名の監視

 

 ピー、ピー、ピー……

 ピー、ピー、ピー……

 ピー、ピー、ピー……

 

 壁面の巨大モニターの明かりだけが煌々と輝く薄暗い部屋で、通信音が鳴り響く。

 そのモニターの前に置かれた背もたれを倒したゲーミングチェア風の椅子から、むくりと人影が起き上がる。

 そして、モニター下部の操作機器にある内の1つボタンを押して応答した。

 

 

『貴官にしては遅い応答だったな。』

「ヘリアンか……、何の用だ? 」

 

 モニターにグリフィンのヘリアントス上級代行官の映像が映し出され、受話器を模した通話中マークと「LIVE」の赤文字が添えられている。

 

『なんだ? 随分と不機嫌そうな様子だが? 』

「あぁ、物凄く不機嫌だ。うちの大事な部下を傷付けられたものでね。」

『まさかとは思うが、【人形狩り】と接触したのか? 』

「そうだが? 」

『そうか……、では日を改めた方が良いか? 』

「いいや……構わない。幸い部下の損傷は軽微なものだ。寧ろデカい損失は私の方だがな。――それで? 要件は何だ? 」

『実は、近日中に行われるグリフィンの召集会議の警備を依頼したい。』

「警備? 」

『そうだ。前回、グリフィン管轄地域にある巨大地下施設が鉄血によって襲撃された事件を知っているとは思うが、今回はごく普通の地上施設での会議となる。当然ながら鉄血はもちろんの事、我々によろしくない団体の襲撃もあり得る。当日は業務提携している2つのPMC各社にも協力を要請しているが、「念には念を」だ。元グリフィン指揮官とはいえ貴女の協力……その【力】を借りたいのだ。これは、クルーガーさんからの頼みでもある。』

 

「…………内容は理解したが、うちはまだそこまで大きな組織でも、真面な戦力も少ない。それに私のこの力が必要と言うに、余程その会議では鉄血や反団体が狙う、もしくは不都合な議題が上がるって解釈で受け取るが? 」

 

『そう捉えてもらっても構わない。』

「……わかった。出来る限りの事はしよう。」

『協力感謝する。日時が確定し次第、そちらに座標を送らせてもらう。心身共に疲弊中の中済まなかった、当日再会できる事を楽しみにしている。』

「あぁ、私もだ。」

 

 

 プツン……。

 

 

「ふぅ…まったく。ようやく基地の設備も充実してきたってのに、立て続けに面倒事が来るなんてねぇ……。年寄りに休ませる時間は無いのかねぇ……。ま、いいけどさ。」

 

 そう愚痴ると、その影はまた椅子に深くもたれ掛かった――。

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

――R08地区

 

 深夜――。

 街の明かりがほとんど消え、静寂と不安・恐怖が寝ている市民達の精神を蝕んでいる中、ギムレットは自身が寝泊まりしているホテルの屋上に居た。

 傍らにはジュラルミンケースが一つ置かれ、彼女はそれを横に倒し、取っ手両側のロックを外してケースを開いた。

 その中には拳銃……とは言い難いほどの銃とそれに付けるであろうアタッチメントらしき物、そしてその横には青いラインと鳥のような絵が描かれた高さ10cm程の筒状の物体……カプセルが入っていた。ギムレットはそれを手に取るとケースを閉め、それを地面に置いて上面の黒い薄べったいボタンを押して起動させた。直後、薄緑色のホログラムディスプレイが展開され、彼女はそのディスプレイを慣れた手つきで操作し、最後に現れた青色のディスプレイに表示された[Enter]の文字をタッチすると全てのディスプレイが消え、カプセルが仄かに発光した。

 すると、キィーン…という小さな音と共に青白い光が本体を包み込み「何か」を出現させた。その後音と光は消え、上には胴体がはみ出るくらいの大きさを持った上面が青い羽毛の鳥が乗っかっていた。

 

「無事転送完了……。さて、昼間の件に手と口出ししたからには、こっちもちゃんと仕事しないとね。」

 

 そう言いながら現れた鳥の頭頂部を人差し指で軽く叩く。

 

 すると……――、

 

 フィ~ン………、ピィロロロ…チチッ。

 

 起動音と囀りが小さく鳴り、閉じていた瞼が開いてゆっくりと立ち上がる。ギムレットはその鳥の右足に小さな発信機を取り付け、そっと鳥を右手に乗せる。。

 

「鳥型ドローン『ルリビタキ』――、今夜の夜間哨戒はキミに任せるよ。暗視設定、バッテリー残量もよし。さぁ……行っておいで! 」

 

 空に向かってルリビタキを送り出すと、そのまま彼方遠くへ飛び去って行き完全に闇夜に紛れて視認不可となった。バッテリーはフルの状態からゼロになるまで最大96時間は飛行・陸上での活動が出来る。また、電線や電気が通っている物体に留まる事で脚部から充電を行える設計の為、活動地域によってはバッテリー残量を気にする必要が無い。

(もちろん、その逆ならばその地域では最大の96時間分しか活動できない事になる。)

 

 偵察に飛ばしたルリビタキは朝までR08地区とその周辺を周り、地上で怪しい動きをしている団体や個人を捜し出す。その際、怪しいと判断されたものはリアルタイムでギムレットの端末に座標と2分程度の映像が送られる様になっている。

 

 一通り作業を終えると彼女は持って来た荷物を手に取って屋上を後にし、朝に偵察を終えたルリビタキが入れるよう自室の小窓を開けてゆっくりとくつろぐのだった。

 

 

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――7時間後

 

 

 ピィロロロ…チチッ……

 

「んっ……。」

 

 小鳥の囀る声でスリープモードが解除される。掛け布団も使わずそのままベッドの上で休眠していたギムレットは目を擦りながら身体を起こした。

 窓を見ると偵察から戻って来たルリビタキが上機嫌に囀っている。枕元に置いていた端末に何もアラートメッセージが出ていない。つまり、日付が変わった深夜から未明・明け方まで、偵察を行った時間中に怪しい動きをした団体や個人は発見されなかったようだ。

 これを安心して良いのか、それとも何か尻尾を掴めなかった残念な結果として捉えるべきか……。ギムレットは頬杖を付いて「はぁ…」と落胆と安堵が混じった何とも言えない溜息を吐いた。

 

 しばらく考え事をした後、ジュラルミンケースからカプセルを取り出してルリビタキをまたホログラムディスプレイで操作、転送して収納した。

 ギムレットは転送作業を終えると、ベッドから出て着替えを済ませて朝食を取りに向かった。

 

 

 

――同時刻

 

 ちょうど同じ頃、南部メインストリートを少し抜けた先――。

 以前ギムレットがIOPの代表者と面会をしていたホテルの一室では、エリーヴァがタブレットで再生した映像を観ていた。画面はとある人物を映したところで一時停止されており、その映っている人物をまじまじと見る形で彼女は固まっていた。

 

「どこかで見た感じがしますわ……。」

 

 そう呟くと、動画のシークバーを少し先に送って、ギムレットがその場しのぎで使ったSP2022を持っているシーンに切り替わり、そこから再生する。

 その映像は視点から、昨日同ストリート内で騒動を起こしたスカウト――あの機体が撮影したと思われる映像だった。

 

「かなり戦闘慣れしていらっしゃいますわね。でも私が知っている人物とは少し異なりますわ……。まぁ、世の中には『自分と同じ顔が4人はいる』と言いますし、彼女もその類なのでしょう。もっとも、人形であれば空似どころか全く同じ容姿ではありますけど……ふふっ。」

 

 エリーヴァはラフな格好で寛ぎながらも、紫紺の眼を輝かせながらどこか楽しんでいるような表情でその映像を眺めていた。

 しばらくは役者の仕事が無い。その為、マネージャーにも休暇を取らせた。あらゆる面において彼には自身が女優として活動を始めた時から世話になっていた。プライベートな時間を除いて今まで大きな負担ばかり掛けてしまっただろう。

 だからこそ、仕事を忘れてもらいたい思いと労いを込めて休んでもらった。

 

 そして、もうすぐそんな彼の負担も少なくなる。

 

 

 永遠に……――。

 

 

 エリーヴァは天井を見つめながら静かに呼吸を整えた。

「準備」は着々と進んでいる。

 素晴らしき最高の舞台を作り上げるには、最高の機材、最高のスタッフ、最高の脚本、最高の出演者たち、そして……最高の主演が必要だ。

 主演以外はほとんど揃ってきた。

 

 あとはその主役がどうしても表に出てこなければならない展開作りをしなくてはいけない。ドラマや舞台の制作において役者の選定はもちろんだが、役者が乗った列車が走るレール=脚本も重要だ。ぐっと惹きつけられるような内容でも役者が実力不足であれば役者に批判が集まり、逆に役者が経験豊富の大ベテランで固めても脚本の出来が悪ければその作品は駄作の評価を受ける事になる。

 

 しかしエリーヴァが作ろうとしている舞台は肝心の主役が不在だ。自身の協力者たちに僅かな手掛かりを託し、女優業で忙しい自分に変わって捜させているが、今日この日まで一切の手がかりは見つかっていない(他人の空似は見つかったが……)

 街の住民に聞き込めば、大昔に流行った動画クリエイターの類か何かと勘違いされる始末。

 

 エリーヴァはギリッ……と歯軋りをし、ただ孤独な時間を過ごすのだった――。

 

 

 

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 場所は戻り、朝食を終えたギムレットはスーツ姿に着替え、外出する準備をしていた。彼女にとって今日は特に重要な日だ。

 この後、ギムレットは隣のR10地区にある店で用事を済ませ、午後からはある企業のトップとのな面会がある。店の方はちょっと曰く付きだが、そこの店主はかつての第三次世界大戦で軍の人間として関わっていた人物だ。訪れるのは鉄血の大規模襲撃の直後以来か、数ヶ月経っているとはいえ店主もかなりの高齢とまではいかないが還暦済み。体調的な部分も心配される年齢ではある。まぁ本人は「あの黒い悪魔並みに生命力はしぶてぇから大丈夫だ。」と初対面の時に言ってはいたが……。

 企業の方は、ボスにとってかなり思い入れ――世話になった所らしく、自分がボスと出会った当初はやたらその企業の話ばかり聞かされていた。

 自分の生い立ちは話さない癖に……。

 

 身だしなみを整え、必要な荷物と貴重品を持って部屋を出てエントランスに向かうと……。

 

 

「ん? 」

「あ……。」

 

 

 エントランスの待合席に見慣れた人物がちょこんと脇にキャリーケース1つとギターケース、そしてそれらとはまた別の……おそらく半身を収納しているであろうケースが置かれていた。

 

 

「何してるのM200? そんな大きな荷物持って……。」

「あっ…えっと…昨日の一件があったので。その……グローザさんから『暫く一緒に行動しろ』と……。」

「ふぅん……。」

 

 気まずそうな表情で事情を話すM200だったが、少々様子がおかしいようにも見えた。ギムレットはただ一言「ふぅん」と訝し気に返したが、その後に続けて――、

 

 

「要するに『監視』って訳ね。」

 

 

 と、わざと口に出した。

 

「うっ……それは…その…、すみません。僕はそういうつもりじゃないのですけど……。」

 

 M200は申し訳なさそうに何度も頭を下げて謝罪した。

 

「別にいいよ、M200が悪い訳じゃないし。それに、元々言い出しっぺで手を出したのは私の方だし――。それより、荷物置いていきなよ。部屋に案内するからさ。」

「あ、はいっ…! 」

 

 そう言って、ギムレットはM200のキャリーケースを預かって、彼女と共にちょうど同フロアで停止していたエレベーターに乗り込み、ギムレットの部屋へと向かった。

 そして部屋に着き中へ案内し――、

 

「ここが私の部屋。ベッドはこっち側を使ってね。あ、そうだ、これから別地区に移動するから一応銃だけは持った方がいいよ。道中は鉄血とかうろついてるかもしれないし、鉄血の機械兵や人形を偽造して運んでる怪しい業者とかとすれ違ったりするかもしれないしね。」

「わかりました。しばらくお世話になります。」

 

 二人は握手を交わし、M200を連れてギムレットは今度こそ用事を済ませにホテルを出た。

 

 

 

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――30分後・R10地区

 

 およそ25分程かけレンタカーで隣R10地区へやってきたギムレットとM200。ここはグリフィンの基地が置かれているため治安はそれなりに良く、R08地区で起きた鉄血の大規模襲撃にいち早く応援を出し、結果的にR08地区の損害は決して少なくなかったものの、R10地区グリフィン基地は一定の戦果を収め、その他多くの実績を残している。

 ちょうどギムレット達が車を置いた駐車場からもその基地ははっきりと見える。

 

 そんなグリフィン基地を遠目に見ながらギムレットはライフルケースを背負ったM200を連れて用事のある店へと向かった。

 

 5分後――。

 

 目的の場所に着いた。

 

「??? 」

 

 店の看板には「CLOTHES SHOP」……つまり洋服屋なのだが、M200は疑問に思った。服の購入ならR08地区にも幾つかファッションショップはあるし、品揃えも豊富なのだからわざわざ隣町まで来る必要は無い。

 困惑する彼女を他所にギムレットはさっさと店内に入って行く。慌ててM200も後を追いかけて店内に入って行く。

 

「いらっしゃいませ~。……って、ギムレットちゃんじゃない! 久し振りねぇ! あら、後ろの子は? 」

「久し振りMs.モールガン。彼女はM200、戦術人形だよ。それより今旦那さんは居るかい? 」

「ええもちろん、地下に居るわ。また何かあったの? 」

「まぁね。少し彼に用があるから先に失礼するよ。」

「わかったわ。ごゆっくりね。」

 

 ギムレットは温かく出迎えてくれた女店主=Ms.モールガンと軽く会話をし、その後奥の扉を開けて用事がある人物のいる地下へと向かった。

 

「貴女はギムレットちゃんに付いて行かなくていいの? 」

「あ…、いえ僕はただの付き添いなので……。それにギムレットさんは仕事でここに来たんだと思いますから変に付いて行く必要はないのかな……って。」

「ねぇ、ギムレットちゃんと出会ってどのくらいになるの? 」

「えっ? まだ1、2ヶ月くらいしか経ってないですけど? 」

「あらそうなの? てっきり、ギムレットちゃんがいる【LAZGARD】っていう組織の子なのかと思ったわ。」

 

「ラズ……ガルド??? 」

 

 聞き慣れない言葉だ。

 昨日の事件が起きる少し前に、何かしらの組織に属しているとは聞いていた。また彼女自身がR08地区や他地区に赴いているのは組織の拡大に必要な設備やら人員の確保・交渉に奔走している事までも知っている。

 

 M200がグリフィン所属の戦術人形だったならば、恐らくどこかで聞いていたかもしれない。だが残念な事に、彼女は野良人形であり、R08地区もグリフィンの管轄外。外からの情報はほとんど入ってこない。

 

 そんなM200に対してMs.モールガンはさらに――、

 

 

 

 

「ギムレットちゃん、そこのナンバー2よ。」

 

 

「……!??? 」

 

 

 その場がシーンと静まり返った。

 

 

 2人だけのフロアで「しまった……!」と言わんばかりに口元を抑えるMs.モールガンと、情報が整理出来ずに唖然とした表情で突っ立っているM200――。

 

 

 何とも言えない空気と、ただ空しく壁時計の秒針がコチコチと時を刻む音だけが響き渡った。

 

 





鳥型ドローン「ルリビタキ」


全長:15.5cm(実際のルリビタキより少し大きめ)

【説明】

 主に(隠密)偵察、威力偵察、そして物資支援を行う為のドローン。現実の鳥と全く同じ見た目・質感の為、撃ち落とすかEMPを起動等しない限り看破するのは不可能。
 偵察だけならば同じ鳥型の「コルリ」がいるが、攻撃手段&支援が出来る此方の方がよく運用されている(元々はコルリで得たデータや欠点を改良して開発されたのがルリビタキ)。
 バッテリーで動くのでフル充電で最大96時間、電線等の電気が流れている場所に留まれば足から充電可能。
 威力偵察の際の攻撃手段は、嘴(口)内にある超小径口の銃身から内臓バッテリーを消費して放たれるエネルギー弾。さらに、眼は暗視機能も付いているため、夜間での活動も可能。
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