LOST MODEL   作:瑠璃の炎

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仕事が繁忙期だった為、前回から大分間が空いてしまいました。

サブタイの付け方が某遅効性SF漫画みたいな感じになっていますが気にしないでください。


第11話:ギムレット③

 

――[CLOTHES SHOP]地下フロア。

 

 

 1Fから随分と長い階段を降って来た。まだ目的のフロアに到達はしていないが、降って行く毎に段々と銃声の様な音が聞こえてくる。そしてさらに降ると開きっ放しの鉄扉から差し込む光と、巨大な開けた空間が現れた。

その空間内で、人型の的に向かって拳銃を持った屈強な男性が射撃訓練をしていた。

 

「ハロ~、モールガン大佐。」

「ん? おぉ、ギムレットか! 久し振りだなぁ! 元気にしてたか!? 」

「まぁ~ぼちぼちだね。大佐も相変わらず元気そうで。」

「おいおい、俺ぁもう退役してるんだ。大佐呼びは勘弁してくれや。」

「そんな事言ったって、一度貰った肩書なんてそうそう消せるもんじゃないでしょうよ。」

「はっはっはっ違えねぇな! それよりもどうした!? 」

「ちょいと拳銃を貰いたくてね。」

「何? またあの地区で何かあったのか?」

「少しね。そんでその問題に少し関わっちゃったし、今後の活動に支障が出かねないから拳銃一丁くらい持っておかないと、って思ってね。」

「はぁ~そういう事か。だが、それならお前さんとこのボスに頼めばよかろうよ。」

「ボスは今だいぶ不機嫌さ。」

「はぁ?」

「先日、【人形狩り】と接触したらしいの。それで一緒に居た新人の人形傷つけられて、さらにはボス自身もかなりの痛手喰らった上に逃げられたらしいからダメなのよ。」

「かぁ~、飽きねえなぁ奴らも……。(第三次世界)大戦の時もやってなかったか? 」

「ボスが大戦の時何をしていたのかは私は知らない。けど、間違いなくその時から……いやもっと前から確執があったのかもしれない。だから、今ボスがああなっている間は碌な助けも期待は出来ないかな……。」

 

 最初は明るく互いの再会を喜び冗談を交えながら会話していたのに、段々とその空気が重苦しい雰囲気で会話が進んでいく。ギムレットはモールガン大佐に事情を説明するとともに今の現状を彼に話す。

彼は射撃ブース台に腰掛け、腕を組みながら「う~む…」と唸っていた。

 しばらくして――、

 

 

「分かった。お前さんの頼みを聞こう。拳銃ならそこのコレクションエリアにある程度は揃っている。どれを手にしたい? 無難なワルサーP38に、コルトSAA、グロックシリーズに、S&W社のモノもあらかた揃っているぜ。」

 

「SP2022は無いの? 」

 

「あん? 随分珍しいの欲しがるじゃねぇか。何か思い入れでもあんのか? 」

「さっき言った問題の最中で、警察から借りて使ったんだ。緊急ASSTしたから使うんならソレの方がいいかなと思ってね。」

「ほぉ~、ならそのSP2022はこっちだ。口径はどれを使う? .357SIG弾と.40S&W弾、それとも9mmParaの方か?」

「警察が使ってたのが.40S&W弾だったからそれ用のやつお願いできる? 」

「いいぜ。」

 

 モールガンは理由を聞いて納得するとコレクションエリアに移動し、壁に掛けてあったSP2022を一丁取ってギムレットの前の棚に静かに置いた。

 

「コイツがSP2022の.40S&W弾仕様のやつだ。」

「………。」

 

 ギムレットは棚に置かれたSP2022を静かに見つめる。そして両手を机に置いた状態からパンっと軽く叩いて素早く銃を取り、マガジンの着脱から本体の分解・組立を目にも止まらぬ速さでその作業をスムーズに行う。

 その横でモールガンは「ほぉ…!」と小さな感嘆の声をあげた。

 一連の動作を終え、元の状態に戻したSP2022を再び机の上に置き、ギムレットは「ふぅ…」と息を吐き――、

 

「31秒……、『本来』の半身じゃないからこれが限界かな……。やはり思うように動かないものだね。」

「それでも十分な速さだとは思うけどな。」

「大佐はどの位で出来るのよ? 」

「俺がソレでやった時は14秒くらいだな。現役だった若ぇ頃は『1秒の遅れが死に繋がる』と当時の部隊長に扱かれて必死にやってきたからな。」

「ほらね……、私の半分以下で出来ちゃうじゃん……。」

「そもそも、お前さんは戦闘に向いてない人形の筈だろう? いくら銃を最低限扱えるモジュールだか何かを搭載してるとはいえ、戦闘用に作られた人形に比べたらそんなもんじゃないのか? 」

「それはそうなんだけど、私は替えの利かない人形なんだ。たとえ戦闘用でなくとも私が無ければ使えないものもある。だから護身用としても戦闘用としても得物は持っておかないといけないんだよ。結局、自分の身を守れるのは自分だけだし。」

「確かにな……。よし、じゃあこのまま持っていくか? 」

「そうさせてもらうよ。あと予備の弾薬も幾つか貰える? 」

「あぁ構わないさ。マガジン3本分は付けてやるよ。」

「ありがとう大佐。あ、お代はもう大佐の口座に振り込んでおいたから。」

「早えな……、てか俺が『お代は要らねえ』って言う前にやるなよ! せっかく『無料』でやろうとしたのによぉ……! 」

「大佐……、一応此処ミリタリーショップでしょうよ……。」

「あっ! そういえばそうだったなぁ。知り合いしか来ねえからすっかり忘れてたぜ! わっはははぁ! ――おっと、忘れねえうちに専用のケースも渡しとくぜ。」

 

 互いに軽いノリで冗談を交えながら話を進めていき、モールガンは最後にSP2022専用のガンケースを渡す。ギムレットも渡された後「ありがとう」と一言言ってから、銃と予備マガジンをケースに収納した。

 そして、ケースを手にギムレットはモールガンと共に地上の服屋の方へ階段を上って行った――。

 

 

 

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――[CLOTHES SHOP]

 

 Ms.モールガンとM200がレジカウンター横の椅子に座って談笑している。ギムレットが地下のミリタリーショップでモールガン大佐に用事で行っている間、M200は夫人から衝撃の事実を聞かされたりしたが、その後は特に踏み込んだ話も無くただ日頃の愚痴を言い合うだけの会話になっていた。

 しばらくして、奥の扉からモールガン大佐とギムレットが入ってきた。

 

「あらダーリン、ギムレットちゃんとの用事は終わったの? 」

「あぁ。――ところでハニー、そこのちっこいのは誰だ? 」

 

 夫婦が言葉を交わす中、大佐は夫人の横に座っている見慣れない少女を指して訊ねた。

 

「ギムレットちゃんの連れの子よ。M200ちゃんって言うのよ。」

「M200? という事は嬢ちゃん戦術人形か。しっかし、その体であの長物扱えるのか? ……いや戦術人形としての性能を疑ってる訳じゃねぇんだが、どうしても軍にかつていた身としてはあまり女子供が重てぇ銃持って戦うってのが慣れなくてなぁ……。」

「大丈夫だよ大佐、M200はこう見えてもR08地区で自警団みたいな人形グループの一員なんだ。そこのリーダーからもそれなりの信頼があるからちゃんとした実力は持っているよ。」

「いや……あの……ギムr――」

「そうなのか? まぁ、ギムレットが言うのなら確かにそうなんだろうな。悪かったな初対面でいきなり気を悪くするような事言っちまって……。」

「あ、い…いえ、慣れてるので大丈夫です……。」

 

 夫人から紹介された際、M200の体格を見て実銃の方であるM200を当然ながら知っているせいか、訝しみながらモールガン大佐は疑問を呈した。だが、直後にギムレットが彼女の立場や地位、そしてその活躍を話してフォローを入れたのを聞いて、直ぐに自身の固定観念によって初対面であるM200に対し傷を付けるような発言をした事を直ぐに詫びた。

 それに対しM200は似たような事例に何度も遭っているからか、謝罪する彼に逆に気を遣うように言葉を返した。

 

「さて、そろそろ御暇しようかな。」

「あら、もう帰っちゃうの? もう少しゆっくりしていきなさいな。」

「そういう訳にもいかないんだ。午後も大事な用があってね。それに、私たちがいない間にも脅威が迫ってるかもしれない。また今度、R08地区が落ち着いたら来るよ。」

「わかったわ。気を付けてねギムレットちゃん、それとM200ちゃんも。」

「あ、そうだギムレット、お前さんとこのボスに言っておいてくれよ。『ちゃんと顔見せに来い! 』ってな。」

 

「わかったよ。じゃあまたねお二人とも。」

「えぇ。」「おぅ! 」

 

「お邪魔しました……。」

 

 

 ギムレットはモールガン夫妻に別れの挨拶をして先に外へ出る。そこから少し遅れてM200も二人の方を向いて深々とお辞儀をしてギムレットの後を追うようにして店を出ていく。

 

 

 

 駐車場までの道中、そして車に乗り込むまで二人は終始無言だったが、ギムレットがエンジンを掛け車を少し走らせたところで、M200は先程Ms.モールガンから聞いた事を思い出し、運転中のギムレットに話しかけた。

 

「あの……」

「何? 」

「モールガンさんから聞いたのですけど……――」

「うん? 」

「ギムレットさんが【LAZGARD(ラズガルド)】のナンバー2っていうの本当ですか? 」

「…………。」

 

 M200の質問にギムレットは黙る。

 動揺したからなのか、それとも何か言葉を見つけるために裂く思考の為なのか、走行している車のスピードがほんの少し遅くなった。もっとも、ほとんど後続車がいない道路状況だからノロノロ運転したところで文句言われたり煽られることは無いだろうが……。

 ギムレットからの返事が無く、M200は何かタブーに触れて彼女を怒らせたんじゃないかと内心焦りを感じた。そして気まずい雰囲気を抜け出すために別の話題を出そうとした時だった――。

 

 

「夫人はおしゃべりだなぁ……。」

「え? 」

 

 ようやく彼女は口を開いた。

 

「昨日食事の時にチラッと話して、後で詳しい事をいつかは話すつもりだったけど………、こうも早く時が来るとは思わなかった――。Ms.モールガンが君に話した通り、私は人形保護組織【LAZGARD】のナンバー2……企業で言えば副社長の立場にある。昨日も話したけど私の役目は組織拡大に必要な施設、人員、そして安定的な資金の交渉・確保。これが揃わなければ私達が目的としている『人形保護』が捗らなくなってしまう。」

 

 いつもよりトーンの下がった声でギムレットは静かに、そしていかに彼女自身の仕事が大事なことであるかを重く話した。

 

「『人形保護』……ですか? でもそれってグリフィンやI.O.P.の仕事ですし、そちらに任せるべきなのでは? 」

「I.O.P.はともかく、グリフィンにいる職員・指揮官全員が(戦術)人形という存在に対して快く思っていたり、正当な扱いをしているとは限らないよ。ロボット三原則を盾にぞんざいな扱いをして廃棄処分にされた人形達、あとは指揮官が戦いに怖気づいて逃げて基地を放棄した結果、転属先が決まらず行き場を失った彼女達が荒野や廃墟を彷徨う事にもなる。君ら『野良人形連合』の中にもそういう経験をしてやって来た人形もいるんじゃない? 」

「それは……、確かにいますけど……。」

「彼女達は運が良い方なんだよ。もしそういう居場所が見つからなかったら鉄血の連中にやられるし、反人形団体や窃盗団とかに解体されて売り飛ばされたり……。それに、ここ最近は【人形狩り】による被害も無視できないくらいに広がっている。うちのボスはその人形狩りの犠牲にならないよう、人形達を保護するためにグリフィンを辞めてまでして組織を立ち上げたんだ。まだ道半ばだけどね……。」

 

 

 しばらく話をしていると、車は小さな喫茶店に入って駐車した。

 

 

「話の続きは軽くお昼を取りながらしよう。」

 

 そう言ってギムレットは車外に出た。M200もシートベルトを外して外に出て行く。

 店内はアンティークの……――というか如何にも「ザ・喫茶店」と思わせるステレオタイプな内装だ。適当に空いている席に座り、最初に出てきたウェルカムコーヒーにスティックシュガーとコーヒーフレッシュを一つずつ入れ一口啜る。古めかしい空間に落ち着いた曲が流れる、そのしつこさも煩さも無い雰囲気がより一層コーヒーの味と香りを惹き立てる。二人はそのままウェイターに店のおすすめ品を注文して、また外の景色を眺めながらコーヒーを飲んで寛ぐ。

 

 

「いい景色だね。」

「そうですね。」

「こういう景色が大昔はもっと世界各地にあったと思うと今の年老いた人間達が羨ましく思うよ。ただ、それが愚かな一部の人間や鉄血、そして人形狩りに壊されていくのは心が痛むなぁ……。」

「それについて詳しくは分かりませんが、街の人達がたまに口にしているのを耳にしますね。」

「………………。」

 

 M200の言葉を聞き、ギムレットはコーヒーを静かに飲み干し、しばらく外の景色に目をやってから神妙な面持ちで静かに口を開く。

 

「人形狩り――正式には『紅の人形狩り』。また、第三次世界大戦に突如として現れた【IMMORTAL QUARTET】の一人でもある。奴が現れた地域は急激に崩壊液汚染が加速し、一気に死の地域へと変貌させてしまう。人形のみを破壊対象として狙い、グリフィンをはじめとするPMC各社はもちろん、正規軍や各国が危険視している存在。そして…………うちのボスが因縁を持ち、且つ最優先で行方を追っている女さ。」

 

「!? 」

 

「ボスがわざわざ私のメンタル内に入れてくれたアーカイブの一部だ。それ以上の事はプロテクトが掛かって閲覧が出来なかった。ボスからも『決して奴の事を追跡したり、遭遇しても戦おうとするな。ただ逃げろ。』とだけ言われたよ。」

 

 彼女の口調が少しずつ重くなっていく。M200は黙って聞いていたが話の内容やギムレットの口調でその人物が如何に野放しにしておけない存在であることは、今まで連合仲間や街の人達が話していたのを聞いていた時以上に事が重大なのだ、と改めて認識させられただでさえ小柄な体格がその恐ろしい事実を突き付けられてさらに小さくなってしまった。

 ギムレットが話している最中に注文したメニューが運ばれ、ウェイターも小さく「お待たせしました」と呟いてすぐに去って行ってしまった。口頭注意が無いのを見る限り、店内でその話はタブーではなさそうだが少々気不味い雰囲気になりつつあった。

 だが彼女はそんな事を気にも留めず運ばれてきた食事に手を付けていく。話した側である彼女は何も思っていないだろうが、聞かされた側であるM200は食事に手を付けながらも心の中で「よく平気な顔で食べれるな……」と悪態を吐いた事だろう。

 

 しばらく無言で互いに食事をしていく中、突如店内レジカウンターに設置されたやや大きめの液晶モニターから速報を知らせる効果音が響いた。

 

 

<ニュース速報です。先日、T04地区で発生したしました「人形狩り」が関与していると思われる被害について、G&K社は報道陣の取材に対し事件翌日のものと思われる映像を公開いたしました。映像は人形狩りが立ち去った後と思わしき内容で、一部気分を害される部分が映り込む可能性がある為、お食事中または体調がよろしくない視聴者の方はご注意ください。

では公開された映像を流します。>

 

 男性アナウンサーが速報を伝えると、注意喚起の後に画面が変わり公開されたという映像に切り替わる。

 映像は、現場を撮影している人物の前方に何名かの分厚い防護服に身を包み、アサルトライフルを携えた武装兵が周囲を警戒しているシーンから始まった。映像の中の人物達は終始無言で意思疎通は全てハンドサインで行っていた。やがて被害の大きい場所に到達したのか、地形が抉れていたり、廃墟となった建物には明らかに弾痕とは言い難い、まるで切られたような真新しい跡が残されていた。

 この辺りは、先程ギムレットが話していた内容と一致している。

 

 しかし、それよりも目立った物があった。

 

 ビービービーッ! ビービービーッ!

 

 と映像から複数の警報音が鳴る。

 

 カメラマンは直ぐに自身の防護服に下げられた装置を映す。ガイガーカウンターの針がメーターのレッドラインに振れている。つまり既にこの地区は重度のコーラップス汚染に曝されてる事を示している。そして、それを確定させるかのように再び映像が周辺の景色に戻り、また少し前進すると――、

 

 

「「………!? 」」

 

 

 映し出された映像にM200はもちろん、ギムレットも箸を止めて絶句した。

 

 

 

 

 そのカメラが映していたのは………――、

 

 

 

 青白く光り輝く液体の様なものが壁に飛散し、地面のあちこちに水溜りを形成している場面。

 

 そして、その青白い液体の周囲に紅い瘴気が立ち込めている異様な光景だった。

 

 

「ボス…………」

 

「えっ? 」

 

 

 テレビの映像を観てポツリと呟いたギムレットの言葉をM200は聞き逃さなかった。

 

 

<映像はここまでです。なお、現在T04地区の該当区域では映像の様な光景は確認されず、俄かには信じ難いですがコーラップス汚染もグリーンレベルにまで落ち着いているとの情報です。以上、ニュース速報をお伝えいたしました。>

 

 

 異様な光景をしばらく映したところで、再び男性アナウンサーの画面に切り替わり、現在の様子が伝えられたところでニュースは終了したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は2~3回くらい掛けて話の終盤に出たニュースの中身をやっていきます。
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