LOST MODEL   作:瑠璃の炎

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色々やること多すぎて更新遅くなりました、申し訳ないです。


第3話:交流、そして安らぎのメロディ

 

――ある日の深夜・グリフィン本部「社長室」。

 

 

 暗い部屋の壁に青白いモニターが幾つも設置されている。その中央にある広いテーブルもモニターになっており、S09地区をはじめとした各地区の基地、そこに所属する人形部隊がそれぞれのポイントで作戦展開している様子が映し出されている。

 その机を挟むようにしてG&K社社長クルーガーと、上級代行官のヘリアンがモニターのマップで周辺地区の動向を注視していた。

 

「各地区の指揮官達は順調に戦果を挙げているようだな。」

「はい、特にS09地区の794基地のジャンシアーヌ指揮官、同じく390基地のヒノエ指揮官両名による戦果は我々にとって想像を超えるものとなっています。」

「うむ。彼女達ほど頼もしい指揮官はいない。だが、他の指揮官達も指を咥えて見ているだけではないだろう。彼女たちに触発され、彼らや人形達の士気が格段に高まっている。」

「おっしゃる通りです。しかし、問題なのは……」

 

 

 ヘリアンがマップの表示を切り替えた。切り替わったマップは地形がさらに広範囲が見れるように縮小し、より多くの地区が表示されさらに赤・黄・緑の3色がサーモグラフィーの様に映された。

 その画面の表示をヘリアンは手元の端末で操作していく。

 

「ここ2週間の、S地区および周辺のQ、R、T、U地区の一部地域の崩壊液濃度の変化ですが………。」

「うぅむ……。」

 

 クルーガーも言葉を詰まらせる。

 マップ上に表示されたサーモグラフィーの様なものは崩壊液濃度――所謂、汚染地域の状態を表すものだった。それをヘリアンが手元の端末で直近2週間の観測データを再生すると――なんという事だろうか、3色の表示が短時間で著しく変化を繰り返していたのだ。

 特に居住不可のレッドエリアと居住可能なグリーンエリアの変化が激しい。たった2週間の間でその2色の部分だけが頻繁に入れ替わり、その余波を受けるようしてに風で流された崩壊液がイエローエリアを形成する。

 

「殆どの地域は非居住区域ですので汚染レベルが上がったとしても問題は無いのですが、それを鑑みてもこの変化は以上です。」

「ヘリアン、確かこの現象が頻繁に起きる様になったのは何時だったか?」

「中・大規模での観測に限れば………『胡蝶事件』以降からです。それと、これに起因するかのように鉄血側、そして我々グリフィンの戦術人形が破壊される被害が増加。果てには民生人形や義体・電脳処理を施した人間にまで及んでいる状況のようです。」

 

 

「……………………『人形狩り』か………。」

 

 

「は?――あっ…失礼しました……つい……。」

「奴が去り際に言っていたな――。」

 

 そう言うと、クルーガーは少し上を向いて【ある人物】がグリフィンを去る際に言い残していった言葉を思い出す。

 

 

 

(クルーガー。近い将来、グリフィンが相手をするのは鉄血ではなく、より凶悪で野蛮な……【人形を狩り尽くす存在】が立ちはだかってくるだろう。――私は……「あの馬鹿」から人形達を護らなければならない。人形だけじゃない、罪もなく生活を制限されている一般市民も護らねばならない。だから私は此処を去る――。)

 

 

 

「ヘリアン。」

「はい。」

「陽が昇ってからでいい。S地区含め周辺地区の基地全てに緊急の通達を頼む。」

「承知致しました。直ちに要項を纏め、朝一に一斉通達できるようにしておきます。」

「うむ任せたぞ。」

 

 ヘリアンはクルーガーに対し綺麗な姿勢で敬礼をし、そのまま社長室から退出。独り残ったクルーガーは自身のデスクへ戻り、椅子に腰掛け腕を組みながら厳ついその顔をさらに強張らせしばらく黙り込む。

 何の音楽も掛けることもなく、ただモニターの青白い光が彼の姿を静かに照らすのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

――数日経ったある日の昼過ぎ・R08地区

 

 

 あの日以降【ザ・ワンド】達の人形拉致事件は起きず、街はいつもの様な平穏に戻りつつあった。従業員であった人形=シャロンを奪われた北部メインストリートにあるファッション店も今日から営業を再開したが、店外で客の相手をしている女店主の顔はあの日から少し痩せ細ってしまっていた。

 その店内で、スーツ姿のギムレットが全身鏡の前で困った顔をしながら両手で2着の服を持ち、交互に自分の前に翳しては「ちょっと違う…」等と小声で呟く。

 ギムレットはファッションというものに疎い。何故なら、彼女はずっとこのR08地区に滞在するようになってから真面に服を購入したことが無い。では今着ているスーツは何なのか?というと、人形の「スキンシステム」による換装で素体や外見の見た目を変えているだけなのだ。スーツ以外では青い軍服の様な服装に何度か変えた程度しかない。

 

 結局、1時間ほど店内をぐるぐる回ってようやく紺色のスキニーデニム1本と薄い黄色のストライプ模様が入った半袖タイプのドレスシャツと全体が薄い水色のシアー・シャツの2着を購入し、そのまま退店して家(厳密にはビジネスホテルだが)へ戻った。

 

 家に戻り、自室で先程買った衣類をベッド上に広げて値札などのタグを外していく。そして、彼女はスキンシステムを解除してスーツ姿から黒いブラとパンツの下着姿に一瞬で切り替わる。しかし、その身体は色素の薄い胴体部分に対し、右腕は黒い機械腕が上腕から手先まで剥き出しに、左腕側は肘から手先にかけてペールオレンジの傷痕がある腕で、それを上腕部分で金属部品で接合されている異形としかいえないものが露わになっている。

 

 この場に自身以外の者が居なくてよかった

 

 ギムレットはそう思いながら先ずドレスシャツを着て、次にスキニーデニムを穿き、最後にシアー・シャツを着て初めてのスキンシステムに頼らない私服を身に着けた。だが、このままでは両腕の異形な部分が丸見えだ。こればかりはスキンシステムで部分的に変えるしかない。

 

 

 直ぐにシステムを使って両腕を素体の色と同じに表面処理して違和感が無いように設定する。

 

「これでよし……。」

 

 鏡で身だしなみを整え、入念に着こなしをチェックをしていく。5分ほどでチェックが終わり、ベッド脇の壁に掛けていたサコッシュ*1を取って中に財布等の貴重品やハンカチを入れて右肩から斜め掛けにして出掛ける準備が整うと、そのまま靴を履いて自室を出て行った。

 

 1階のフロント兼エントランスホールでは、普段ギムレットがスーツで出入りしている姿しか目にしていなかったのか、爽やかな雰囲気の衣装に身を包んだ彼女の姿を見て従業員や暇を潰していた利用客が驚いた表情で注目する。

 

 そんな周囲の反応を気にする事なく彼女はエントランスホールを出て通行人の中に紛れていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 ギムレットが向かった先は中央噴水広場。

 先日、噴水の近くでギターを弾いていた少女の事が気になって毎日ここへ来たが全て外れた。私服を買ったのも流石にスーツ姿では何かの勧誘かと警戒されると思ったからだ。それに自身のメンタル内で「何か」が引っかかる感覚を覚え、それがその先日彼女が弾くギターの音色を聴いて以降続いたため、その蟠りの原因を探る為もう一度その音色を聴きに彼女に会いに訪れたのだ。

 

 ギムレットは辺りをキョロキョロと見回した。

 

「(いた……!)」

 

 ちょうど噴水を挟んだ向かい側で此方に背を向ける形でギターを持って座っている彼女を発見した。たまたま見回したタイミングが水が勢いよく噴出している時だった為に水飛沫の壁で見えなかったが、水の出が止まった時にその向こう側にいるのを見つけることが出来たのでギムレットは噴水を反時計回りでギターを弾く少女の許へ歩を進めた。

 

 一方、ギターを弾く少女ことM200は数日分貰った非番日を利用して、いつものように噴水広場でギターを弾きながらメンタルリフレッシュをしていた。この街に来てから暇な時間が出来た時にこの場所で弾くようになったが、その時点ではお金稼ぎだとかそういうのには興味も実行もしようとはしなかった。特段演奏が上手い訳でもないからだ。

しかし、ある時自分が此処に来るたびに毎回聴きに来ていた街の人達に「タダで聴くには勿体無いからお金を払わせてくれ」と言われた。もちろん最初は頑なに断ったのだが、彼らの熱意に根負けし次回から小さなボックスを用意して、特に値段も決めずにいつも通りリフレッシュだけを目的に演奏してきた。

 

 住民達の熱意と要望から設置したものとはいえ、M200の演奏は常連客をはじめとして多くに噂となって広まり、そんな彼らからの投げ銭は既に日本円にして凡そ15万程集まった。それ以外にもレゴブロックの様なおもちゃも幾つか混ざっていたが、これも一定数集めれば換金所で現金に換えられるので貴重な資金源だ。

今日も、そのボックスには紙幣に小銭・ブロックが入っていた。

 

 そしてまた一人、自身の演奏を聴きに歩を止めた客が来た。

 

 先日、聴衆の間から横目で追った人物。今日はあの日と違ってスーツ姿ではなく、少し露出を増やした爽やかな服装――「(この人もこういう服を着るんだ…。)」と思いながら、ただただ演奏をする。

 

 

 

~♪

 

 

 

「……………。」

「……………。」

 

 片や無言で座りながらギターを弾き、片や無言で目を閉じ立ちながらその演奏を聴く。

 その時間は夕方、太陽が沈み始めようとする時まで続いた。その間にも他の聴衆が立ち止まっては十数分聴き、一部はボックスに投げ銭したり、飲み物等の差し入れを置いて行って立ち去っていった。

 

 この時間までに何曲弾いただろうか——。

 メンタル記憶域にアーカイブされた曲はまだ残っているが時間的にここまでだ。M200は最後の曲を演奏し終えると、静かにギターを縦にしてお開きの合図をした。すると、最後まで聴いていたただ一人の聴衆ギムレットはパチパチと拍手を送る。

 

 

「素晴らしい演奏だったよ。」

「あ、ありがとうございます…。」

「だいぶ(ギターの)扱いに慣れているようだけど……以前は何処かでそういう仕事でもしていたの?」

「昔、友人に教えてもらったんです。殆どの曲はその人が作曲したものです。」

「ほぅ…、その御友人は今?」

「病気で亡くなりました。」

 

 ギムレットの質問に一問一答で答えていくが、その質問で少し空気が変わった。

 

「……申し訳ない……不躾な質問だったね。ごめんなさい。」

「いえ、気にしないでください。」

「ほぼ初対面の君に気を遣わせてしまったようだ……。だが、その御友人はとても素晴らしい人物だったという事は判るかな。」

「どうしてですか?」

「君にギター――、まぁ音楽というものを教え、自身が作った曲がこうして街の人々の歩を止め、多くの耳に入り、心に響かせている。もし、存命であれば有名になっていたに違いない――。少なくとも、『人形』である私のメンタルには響き、そして癒された。」

 

「貴女も人形なんですか?」

「うん。ま、ただのしがないOLやってるだけどね。……おっと、夕飯の買い出しをしないと。じゃこれ、素晴らしい演奏を聴かせてくれた代金、ボックスに入れとくね。また今度聴きに来るよ。」

「あっ……。」

 

 少しの間話し、ギムレットは用事の為に会話を切り上げると財布から一枚の紙幣を取り出してボックスに入れると、そのまま振り返ることなくM200の許から立ち去って行った。

 せめてお礼の言葉くらいは言いたかったが、後ろ姿のギムレットは右手を少し上げてサムズアップを見せていたので「まぁ、いいか…」とその姿を見送ってあげた。

 

 

 

 

 

 ただ、後で彼女が入れた紙幣額を見て気絶しそうになったのは少し先の時間である――。

 

 

 

 

*1
小さめのショルダーバッグの事





 少しだけですがギムレットとM200が会話する場面入れられたので満足。
(本当はもっと入れる予定だったけど5000字も書く気にならなかった……)

 あ、それと活動報告始めたのでちょいちょい一定の話数または各話での「こういう出来事もあった」的な事や没にした文章などの裏話とか書いていこうかなと思っているので、本編更新が無い時はそちらも覗いてみてもらえるといいかもです。
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