暑い日が続いたり、恵みの雨が降って涼しくなったり、果てにはとんでもない事件・事故が起きたりと慌ただしいですね……。
今話より第二章の始まりです!
第5話:青と赤
【IMMORTAL QUARTET】
かつて勃発した第三次世界大戦――その最後の年に突如として現れた謎の女性4人を纏めて付けられた名称。
大戦中、各色のフード付きマントと仮面を着けた姿で各地の戦場に現れては、陣営問わず攻撃を加え、武器や食糧品を強奪して混乱に陥れたとされ、それがきっかけで大戦が早めに終結したと述べる識者も存在していた。また、参加していた国や各国の軍人達からは「戦場の悪魔(悪夢)」と呼ばれていたのに対し、各国の一般国民達からは「戦争を終わらせた救世主」や「世界を救う希望」と英雄視もされていた。
しかし、そんな彼女達の活躍が歴史の中で語られることは無かった。
何故なら当時の軍人達が、直に見た彼女達の異常な体質について隠そうとしたからだ。
「黄色のマントの者」、「青いマントの者」へ兵士十数名で銃撃による攻撃をした際、確実に命中し普通であれば死に至る量の銃弾を浴びたにも関わらず、その者の傷痕は見る見る内に塞がり元通りになったと報告が上がり――。
「赤いマントの者」、「紫のマントの者」に対しては装甲車による轢殺や砲弾での爆殺を試みたが、まるで効果は無く逆に返り討ちにされたという報告が上がった。
とある兵士は彼女達のその特異体質について、「まるで末期の
その後、全員数年に亘って行方を晦ませていたが、ある年に正規軍が潜伏先と思われる極東の島国の非汚染地域を特定、【ELID特殊殲滅作戦】と称してその潜伏先地域を襲撃。その場にいた感染・非感染の民間人まで巻き込み、さらに例の4人の内1名を「生体サンプル」として拉致。
他の3名のその後の動向は不明だったが、最近、鉄血工造が人類に反旗を翻す切欠となった【蝶事件】前後の期間においてその3名の内の誰かと思われる人形襲撃事件が頻繁に起きる様になった。
それが、【人形狩り】であり、現在グリフィンが頭を抱える問題である――。
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――T01地区内某所
瓦礫の山が幾つも広がる。
この地もかつては人類が生活し、栄えた土地だったのだろう。瓦礫の殆どは赤やオレンジの屋根瓦やレンガと思しきもので、それ以外は崩れた鉄筋コンクリートばかりだ。
辛うじて崩れずに原型を留めている大きな建物も、蜂の巣の様に無数の弾痕や爆発物で抉られた跡が残り、ここで行われた戦闘の激しさを物語っていた。
そんな地で、2つの影が瓦礫の上に座っている。
1つは銀髪で黒い羽があしらわれたジャケットを羽織った小柄な少女で、その手元には彼女が扱うには不釣り合いな大きな銀銃が握られている。
もう1つは、どこかの軍のお偉いさんなのか紺色の制服を着ており、左眼側に眼帯を付け、所々白くなった青髪の眼帯をした女性だ。その左腰と背中部分にはベルトに固定された細い革筒に薄灰色の「杖」の様な棒状の物が収められている。
殺風景な場所で小柄な護衛1人と行動とはあまりにも危険だ。ただ、2人がこの場に居る(または通らなければならない)のには何か訳があるのだろう。制服の女性は左手首の腕時計型デバイスから映る立体ホログラムマップを操作しており、護衛の少女は辺りを定期的に見渡して警戒をしている。また少女の足下には小さな何かの部品がそれなりに入った麻袋が置いてあった。
しばらくしていると――。
「!!? 」
隣で警戒していた銀髪の少女が銃を持って数歩前に飛び出し、自分達が向いてた方から右側に向いて構えた。それに気付いた制服の女性もデバイスを閉じる。
その方向を見ると鉄血らしき部隊が向かってくるのが見えた。しかも、その真ん中には巨大な剣を持った背の高い人形もいた。
「はっ…! こんな所にチビ戦術人形連れた人間なんて珍しいな! おいチビ、てめぇのご主人様の命が惜しかったら銃を下げな!真っ二つになる姿なんて見たくねえだろぉ!?」
「…………!」
「……Thunder、銃を下ろしな。コイツは私が相手しよう。」
「あぁ?なんだ戦れるのか?」
「君は確か、鉄血人形……エクスキューショナーだな? 」
「オレを知ってるのか? 」
「あぁ知っているとも。少し前までグリフィンの指揮官だったからね。君の別個体も何度か倒した事もある。もっとも倒したのは私が指揮したグリフィンの部隊だが……。」
制服の女性……いや、「指揮官」はそう自分の経歴を少しだけ話すと立ち上がってThunderと呼ばれた少女の前に立ち、背中側の革筒から左手で「杖」を抜くと右手に持ち替えてその先端をエクスキューショナーに向ける。
「はっ! 面白れぇ! 別件でこっちに来たが、暇潰しに相手してやるよ! ただし、その棒切れでオレの攻撃を受け止められるならなぁ! せいぜい期待外れな事だけはしてくれるなよ!? お前ら、手ぇ出すな! コイツはオレがやる! 」
エクスキューショナーは指揮官から無言の宣戦布告を受けると、売られた喧嘩を買うかのように威勢を上げ、自ら1対1で戦う為に取り巻きのリッパーやイェーガー達に手を出さないよう命令を下し一定距離まで退かせ、大きな機械腕で大剣を構えた。指揮官側もThunderに合図をし、Thunderもその合図に従って鉄血側と同じように一定距離まで退いた。
互いに代表者が前に出て得物を持って正対するその姿はまるで剣道や薙刀の試合の様だ。
不敵な笑みを浮かべて大剣を振り回すエクスキューショナーに対して、青き指揮官は静かに杖を真横に構えて精神統一するようにして目を閉じていた。
バッ……!!
先に動いたのはエクスキューショナーの方だ。そのまま突っ込むのかと思いきや、途中で足のブースターで上空へ飛び上がった。大剣を大きく振りかぶってブースターの切れたタイミングで自由落下を利用した叩きつけによる粉砕を狙うつもりだろう。しかし、指揮官の方は相手が攻撃を仕掛けているにも関わらず同じ体勢のまま動かない。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 」
ドゴォォォォォン!!!
落下の勢いから叩きつけられた大剣が大地を抉り、砂塵を舞い上げて指揮官を飲み込んだ!
……かの様に思われた――。
「はぁ!? 居ねぇだとっ!? 」
土煙の晴れた其処に誰も居ない。だが、エクスキューショナーは口には出してないが確かに自身の刀身部が相手の何処かに当たった感触はあった。叩きつけたのだから、相手があの棒切れで防御しようが生身で受けようが「何らか」の跡は残るはずだ。にも関わらずその姿は着地点で確認出来なかった。
「
「!? 」
斜め左後方から聞こえたその声にエクスキューショナーは素早く振り返り、左手に持っているハンドガンで対応しようとした瞬間――、バキンッと完全に向けきる前に銃の側面に風穴を開けられ破壊されてしまった。いくら鉄血ハイエンドモデルの中で下級のエリート人形とはいえ使用する装備はどれもそれなりの強度を誇り、簡単に穴が開くなど無い。それがただの棒切れから放たれた「突き」如きで破壊されるとは…流石にエクスキューショナーも驚愕せざるを得なかったのと同時に、ただの人間にやられた事に対する怒りがメンタル内にこみ上げる。
「てめぇ………! 」
「やはり、直で戦う方が通信越しでの指揮よりも遥かに威圧感、そして命のやり取りをしているという緊張感が高まっていいな。」
「ふざけんな!(落ち着け……! 何かカラクリがあるに違いねぇ…! それを見破るまで冷静でいろ俺! )」
相手の余裕とも挑発とも取れる発言に、湧き上がる怒りを抑え込みながらエクスキューショナーは破壊されたハンドガンを棄て、再び大剣を構える。
さっきの技はもう通用しない。
そう割り切ってエクスキューショナーは相手の出方を窺う。
対する指揮官は向こうが先手を再び打って来ないと見るや、左手を左腰側に収められている2本目に掛ける。
「!? させるか! 」
その動作にエクスキューショナーがすぐ反応し、2本目を抜かせまいと、様子見から一転して大きく大剣を振りかぶりながら攻撃に出た。しかし、それは早とちりだった。
ガキンッ!と振り下ろした剣は1本目の杖で防がれ、2本目はまだ抜かれていない。エクスキューショナーは完全にそちら側に気を取られてしまっていた。
距離を取る間もなく、腹部に強烈なヤクザキックで蹴り飛ばされてしまう。
「げほっ……ごほっ、うげぇ……! 」
「単純だったね、此方がそういう素振りを見せれば攻撃に転じてくると思った。やはりその程度のレベルなのか、期待外れだ……。君のそれ――
「……! 」
地面に転がるエクスキューショナーに向かって指揮官は煽るように指摘する。それと同時に、エクスキューショナーのメンタル内が怒りに染まり、リミッターが外れた。
「舐めるなよ……人間如きがぁ!」
地に大剣を突き立てゆらりと体を起こして立ち上がると、赤いオーラと共に身体の至る所に赤黒いひび割れ模様が走り、さらに同じような赤黒い稲妻が身体の周囲に迸り始めた。
「(何だ?その姿は?私がグリフィンに居た時はそんな情報は無かったはずだが……。)」
指揮官は赤黒く禍々しい力を纏ったエクスキューショナーの姿に驚きを隠せなかった。だが、それでも冷静さが失われる事は無かった。「
「(ちっ…よりよってこんな『色』か……。)」
「どうした?ビビッて言葉が出ねえか!? 」
「…………いや? 寧ろ――腹が立った。」
「は? 」
「その赤黒いのを見ると『アイツ』を思い出す――、まったく……ハイエンドモデルの実力を小手調べするつもりだったが………」
「お前は………要らない……」
「!? 」
ゾワッ…! とエクスキューショナーの全身に悪寒が走る。相手のドスの効いた声に対してではない。彼女の眼帯をしている左眼側から鋭く睨まれているような感覚に陥り、メンタル内がさっきまで熱を帯びていたのが急激な冷気を当てられたかの如く冷めていく。
この時エクスキュショナーはプログラムされた防衛システムの起動よりも早く――自らに今まで無かった経験=「破壊される事への恐怖」という防衛本能が初めて上回った。しかし、それでも一鉄血の戦術人形、そして一体……いや一人の武人としてのプライドが自身を奮い立たせ、その恐怖に打ち克とうとさせる。
「……そうか、てめぇがあの『蛇』か……! エージェントが言っていた【危険人物】――上等だ…! 俺は鉄血工造の『エクスキュショナー』! てめぇを叩き潰して処刑してやる!」
エクスキューショナーは高らかに改めて名乗り、指揮官を処刑対象として定めた。さらに右手に持った大剣を大きく後方に回し構え力を溜める。刀身に赤黒いエネルギーが集中していき、これから放たれる技が相当な威力・規模を誇る事を想像するのに難しくなかった。
そして、ニヤリと笑みを浮かべ――、
「霧月……処刑……!」
溜めたエネルギーの斬撃が前方一直線に放たれその通り道が地面を抉りながら指揮官に襲い掛かる……!
「単純だ。」
斬撃が届く前に彼女は右側に避け反撃に転じようとした。だが、それがエクスキューショナーの狙いだ。指揮官が気付いた時には時すでに遅し――、エクスキューショナーの頭上に現れたミサイルの様な形を模した黒いエネルギー弾が直線斬撃の欠点を埋める様に左右両サイドをを指揮官目掛けて射出・爆撃していく。
「くっ…! 」
「遅いぜぇ! 」
間一髪爆撃を躱す指揮官だったが、ブースターの加速で先回りしたエクスキューショナーの突撃を受けそのまま岩壁に叩きつけられてしまう。
「指揮官!? 」
思わずThunderが叫ぶ。
だがエクスキューショナーはThunderには目もくれず壁に叩きつけた指揮官の許へ歩を進めていく。一方、指揮官はゆっくりと近づいてくるエクスキューショナーに杖の先端を向けている。
「オルキヌス……クリック――」
小さく呟かれたその一言の後、一瞬の静けさがその場を包み込む。その直後にキィィン! と超音波のような小さな音が響いた。
「うっ…! がぁっ……!? な…何だ? 身体がっ……痺れて動けねぇ……!? 」
エクスキューショナーが急に苦しみだす。さらに金縛りに遭ったかのように身体を動かせない。表には出ていないが内部の伝達系が麻痺を起こしているようだ。
「てめぇ……! 」
「君は海洋系食物連鎖の頂点に立つ<生物>を知っているか?今君に放ったのはその生物が捕食し易くする為に行うという高度な狩猟技術の1つ……『クリック音』を超凝縮した音波だ。――そしてこの杖………いや『刀』は、それらを疑似的に再現することが出来る。」
「!? 」
指揮官は何が起こったのか理解できず、動けないまま自身睨み付けてくるを彼女に向けて静かに使った技の正体を説明する。そして驚くことに右手に持っていた杖の柄の部分に左手をかざしそのまま先端向かって動かしていくと、「杖」だった物が左手が通過した部分から反りの浅い鍔の無い「刀」へと形状が変わっていく。
「驚いたか?さっき君のハンドガンを貫いたのも、一瞬だけ先端を変えて突いたものだ。正直、こんな呪いを使わなくても良かったんだが……まさかそんな赤い能力強化があるとは思わなくてねぇ……。――さて、エンドゲームと行こうか?」
「(……身体が動く!? よし……! )――上等だ! 俺のとっておきで処刑してやるよ!! 」
ようやく身体の金縛り&麻痺が解けたのに気付き、少しだけ四肢を動かして指揮官に向かって大剣を突き付けるエクスキューショナー。対して指揮官はただならぬ雰囲気を纏いながら柄を両手で持ち、【水の構え】*1を取って正対する。片や大剣をブンブンと振り回し、片や静かに刀を構えて微動だにしない。両者の性格……いやこの戦闘における余裕の差が出ているとも言える。
そしてやはり先に攻撃を仕掛けたのはエクスキューショナーの方だ。
一番最初の時とは異なり真っ直ぐ相手に突っ込んで行く。……と見せかけてやや高くジャンプして空中前転して――、
「 (命 脈 断 絶 !! ) 」
振り下ろされた大剣を指揮官が左足を一歩分引いて刀身で受け止める。通常の刀剣なら一発で折れてそのまま斬撃を浴びていたであろう。しかし彼女の形態変化した刀はしっかりとヒビが入ることなくエクスキューショナーの大剣を受け止めるほどの強度を持っていた。一体それがこの世に存在する物質なのか、全くの未知なる物質で作られているのかは不明だが……。
「ぬぅぅあぁ! 」
「何!? 」
受け止めていた指揮官が反撃と言わんばかりの掛け声で僅かに刀身を下げ、一気に押し返してエクスキューショナーを空中に放り投げる。
「やるじゃねぇか! んじゃぁ、もういっちょぉぉ!! 」
空中に投げられたのを利用し、二撃目を叩きこもうと体勢を変え足のブースターを一瞬だけ噴射させて急降下していく。全てをぶつけるかの様に赤黒いエネルギーが右腕を経由・大剣に集束し、本体の刀身に上乗せされる形で全体が長く、大きくなっていった。
「……………」
相手の渾身の一撃が来ると察した指揮官は逆に落ち着いたまま、身体を右斜めに向けて右足を引き、剣先を後ろに下げた【金の構え】*2で迎撃態勢を整えていく。その刀身にはうっすらと青い光を纏っていた。真っ直ぐ見つめるその青き瞳には空から自らを叩き斬らんと強襲してくるエクスキューショナーの姿が映る。
「(最終処刑楽章・霧月……断絶!! )」
「(厄祓い……! )」
振り下ろされる赤黒い大剣と、振り上げられた青白い刀がぶつかる……!
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「ぐっ……!? 」
激しい刀剣同士のぶつかり合いの末、指揮官の刀がエクスキューショナーの大剣を弾き体勢を崩させ、同時に彼女の強化状態が解除されて纏っていた赤黒い亀裂や稲妻が消失する。それでもなおエクスキューショナーは指揮官に向かって大剣を振り下ろす。それに指揮官はすぐさま反応、相手に向かって左側に1歩ずつずれて刀を上段に持ち上げた【火の構え】*3を取り――、
「チェックメイト……。」
指揮官がずれたことでエクスキューショナーの振り下ろしが空振りに終わり大剣の剣先がが地面に突き刺さる。
「(やべぇ……やられる……! )」
大きな隙を晒し、相手は武器を上げて此方をロックオンしている――、すぐさま反撃する余裕も待機させている一般兵達に命令を下す時間も無い。完全に「詰み」だという事を悟ったエクスキューショナーは自身の敗北=(別個体に引き継がれるとはいえ今の身体での)死を覚悟し相手を称える様に笑みを浮かべて目を瞑った。
だが、その結末は意外な形で終わったのだった――。
バキンッ……! ゴトッ……。
「?」
エクスキュショナーが目を開けるとそこには刀を振り下ろした状態の指揮官と、根元あたりから両断された刀身が転がっていた。
「ふぅ……。」
やる事を終えた指揮官は刀を横に軽く振って再び「杖」の形状に戻し元の革筒に戻し、背を向けた。
「てめぇ……、何のつもりだ!? さっさと壊しやがれ! 」
エクスキューショナーはとどめを刺さなかった指揮官に対して激高した。
「私は人形を『救う』側だ、君を破壊するのが目的じゃない。それに今は君に多くの時間を割いている場合では無いのでね、武器を無力化させるに止めさせてもらった。まだ足りないなら、より強力な素体と得物を持っておいで、その時は文字通り……私の本気を以て破壊してあげるよ。――じゃあね。行こうThunder。」
「はい。」
「……っ! 」
そう言って指揮官とThunderはその場から立ち去った。残されたエクスキューショナーと鉄血兵達はただ茫然と立ちすくんでいた……。
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「指揮官、本当に倒さなくて良かったのですか? 」
「Thunder、君はあの戦いの中とは別に『何か』を感じなかったかい? 」
「別の…?」
「あの戦いの中、私は確かに感じていた。あの処刑人の遥か後ろから嫌な風の気配をね……。」
「……? 」
Thunderにはいまいち指揮官の言葉の意味が解らなかった。彼女は指揮官に再び訊ねようとしたが、喉元まで上がってきた所で結局訊くのを止めた。
だが、その意味は僅か先の「未来」で知る事となるのだった――。
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――1時間後・処刑人side
青制服の指揮官との戦闘が終わってからそれなりの時間が経った――。
部下に周辺の巡回をさせ、自身はただ独りさっきまでの戦闘ログを見返していた。傍らには折れた大剣と穴の開いたハンドガンが置いてある。相手の動きはどれをとっても自身を上回っていた、敢えて自分の攻撃を受けて追い詰められたのもワザとだと今になって気付いた。
しかし、何よりも気に食わなかったのは「情け」を掛けられた事だ。生きるか死ぬか?命を奪うか奪われるか?戦場においてその駆け引きは緊張を生む。武人気質なエクスキューショナーにとって指揮官から受けたその情けは最大の侮辱と屈辱に他ならない。思い出せば思い出すほど怒りが込み上げ、拳を握っている力がますます強くなる。
「くそがぁ……! 」
立ち上がって叫ぶ。
本来ならあの指揮官にぶつけるべき言葉だが、今は誰も居ない――と思ったその矢先。
ドゴォォン!!
「何だ!? 」
エクスキューショナーの目の前に「何か」が降って来た。ただ、その土煙に映る影は「人」である事は容易に確認できた。そしての影はそのまま此方に歩いてくる。
「誰だてめぇ? 」
「黙れ――」
エクスキュショナーの問いに、女声で答える謎の人物。そしていきなり彼女の首を掴み、そのまま……
グシャッ……
バキッ…………
ドサッ……。
謎の人物の足下に転がる「エクスキュショナー」だった鉄屑。その破片や周辺の瓦礫にはエクスキューショナーの赤茶色いオイルとは別に紅い瘴気の様な靄が立ち、それが触れている部分が現在進行系で崩壊し塵へと変えている。
「邪魔なんだよ……人形如きが……。」
そう零すと、謎の人物は離れた所でエクスキューショナーの指揮が途絶えた事で混乱していた鉄血兵の残党を破壊、全身から紅い瘴気を噴出してまるで風に乗るように飛翔し去って行った。
その行く先は――指揮官とThunderが向かった方向であった……。
「フキヨめ……、オレの邪魔ばっかしやがって……! 」
はい、衝撃な最後で締められた第5話ですが、今回は普段使わないカラー指定の特殊タグを使ってみたりしましたがいかがだったでしょうか?
まぁただのお遊びで使っただけなんですが(笑)
ご意見・ご感想お待ちしております。(たまに活動報告も覗いてみてね)