幼馴染が絶対に負けるラブコメ   作:ぽんしゅー

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第2部開始。
体育祭編から三学期終わりまで烏間くんが楽しそうにしてるだけなのでカット。


3年生編
エンカウント


 

 冬を越して、再びの春。

 

 二学期の終わりから三学期までの目まぐるしい出来事を振り返ると、あの後すぐにあった体育祭ではまぁまぁ目立った活躍をして準優勝。十日間も出ていない授業に付いていけずボロボロだった期末試験。クリスマスにはキャッキャッウフフしてるカップルを横目にサンタの着ぐるみに入ってバイト。修学旅行はクラスで楽しく京都に行ったし、バレンタインデーにはクラスの女子が配ってたチョコを男子でワイワイ食ってた。あとは狼谷と一緒にチョコ作ったぐらい?

 

 ちなみに式守とはあれ以降話してもないし連絡も取ってない。あの出来事は自分の中で過去として消化してはいるけれど、たまに思い出す己の行動の過ちにうっすら消えたくなる日が月に何度か。これが世にいう黒歴史というやつかもしれない。

 

 まぁなんやかんやそんなこんなで季節は廻って無事に三年に進級できた。

 

 そして今日は入学式で、通学路を歩いていると初めて見る生徒が視界に入る。桜色に彩られた通学路を緊張と期待の面持ちで歩み、袖口が余った制服を着用した新入生は初々しさを感じて可愛らしい。俺が清少納言なら筆を執ってた。

 

 在学生は在学生で新しいクラスが発表されて騒いでいる。昇降口前に飾られてるクラス分けを見て一喜一憂して群がっている。

 そんな群がる人混みの中でも目立つ後ろ姿に近づく。三年になっても相も変わらずオーラが出ている。

 

「狼谷ー、おはよ」

「ああ、おはよう」

 

 先に来ていた狼谷に声をかけて横に並ぶ。

 

「自分の名前見っけた?」

「いいやまだ。今来たばっかりだ。烏間の名前も見つけたら教える」

 

 俺たちの苗字は『か行』だから見つけるついでにお互いのも見つけやすい。一組から順に見ていって二組、三組と──。

 

「三年三組」

「案外早く見つけちゃったな」

 

 仲良く並んだ『狼谷』と『烏間』の文字。これで三年間狼谷とは一緒のクラスだ。

 

「じゃあ今年もよろしく」

「いえいえこちらこそよろしくお願いします」

 

 お互いにぺこりと頭を下げた。知り合いがいるのはちょっと安心する。

 

「んじゃ三組には他に誰がいるかなー………………」

 

 絶句した。

 

 ……ここに来る前になんとなく、本当になんとなーく嫌な予感はしていた。

 

 仲良く並んだ『狼谷』と『烏間』の名前の少し下の方。

 

『式守』という見慣れたけどあまり見たくない名前が載ってあった。

 

 

 

 ──そして。

 

 

「「……………………」」

 

 

 同じクラスなのはまだいい。避ければいい話だから。

 

 

 でも。

 

 

「「……………………」」

 

 

 席も隣の場合はどうしたらいい?? 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 クラスが変わって浮ついた空気はどこへやら、翌日からもう授業が始まった。

 

「えー、ここは……──であるからして……」

 

 式守とはファーストコンタクトで形式的な挨拶をして以来言葉を交わしてはいない。それにこのクラス式守の他に和泉とその友人もいるらしく、そこでグループになっている。申し訳ないことに式守も距離感を把握してくれているので、休憩時間などはそちらの方に混ざって話している。

 だからそのグループと関わらない限りは式守と話すことは無い……のだけれど昨日は和泉からお昼誘われそうになった時はヤバかった。その時は他のクラスの人らと食べると言って逃げた。

 休憩中はトイレ行ったり寝たふりして話すタイミングを無くすようにして過ごしてる。なんでそんな空しいことしなきゃならん。あと寝たふりしてると前の席の狼谷がつむじをぐりぐりしてくるし。

 

「ここは……──先ほど使った例文から……」

 

 だから一番安心するのは授業中だ。授業中は関わるタイミングが無くて助かっ──。

 

「はいじゃあ隣の人とこの大問④を解いてみましょうか!」

 

 ウワーーっ!! 英語の授業特有の大して意味の無さそうなペア学習ーーッ!! 一人で解かせてくれよ。

 

「……よろしく」

「……よ、よろしく」

「じゃあえっとこれ……」

「あっはい、解きますか」

 

 き、気まずっ……。やばいどうしよ。このペア学習、問題を早く解き終わってしまったら残り時間は地獄の無言タイムだ。出来るだけ時間使って余った時間を減らさないと胃が持たない! 

 

「一問目はA……かな」

「……うん。俺もそう思う」

「……二問目は……えっと」

「D……っぽい気がする」

「……うん、私も同じ」

 

 まっずい、思ったより簡単だぞこれ。しかも選択問題だし。先生は何を思ってこの問題をペア学習で解かそうとしたんだよ。

 

「(新しいクラスに皆が馴染めるようにですよ♪)」

 

 先生を見たらアイコンタクトが返ってきた。そうですよね。まだ馴染めていない人もいるから大事ですよねすみません。いつも分かりやすい授業をありがとうございます。

 

「三問目は……Cだね」

 

 ん? 

 

「いやBじゃね?」

「ん? これイディオムで成り立つから空欄に入るのはCの『to』じゃない?」

「でも空欄の後に名詞とto不定詞が入ってるから、ここには意味上の主語が導く『for』が入ると思う。あとそのイディオム『for』でも成り立つし」

「あ、本当だ。流石」

「えへへ……」

「………………」

「………………」

 

……っあ゛ぁ~~~~違うだろ! ! なーにが『えへへ』だ嬉しくなんじゃねぇよこのバカ! 

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………ぁの」

「はい。じゃあ前向いてくださーい。答え合わせしますよー」

 

 静寂すぎて波も起こらないような空間に先生からの助け舟が出て助かった。お互いに姿勢を正し、黒板の方に体を向けて先生の声に耳を傾ける。

 式守が何かを言いかけてたけど、聞こえないフリをした。

 

 別に話したくないわけじゃない。でも楽しそうに自分と話してる姿を想像するともう一人の自分が背後で囁いてくる。「なにを許された気になっているんだ」と。

 自分の黒歴史を許す気は無くて、式守との約束も果たす気は無い。もしこちらから話すことがあるとしたら忘却という名の時効だけ。

 

 だから式守がまだ修復できると諦めてないからしんどいことになっている。『もういいよ』と匙を投げてほしい。

 

 ……まぁこうなった以上式守が気を遣い続けるから、多分俺から何かしなきゃダメなんだと思う。そのための候補は三つ。

 

 候補一、もう一度式守と話す。

 候補二、和泉に事情を話して和解? 

 候補三、もういっそのこと明るく振舞う。

 

 今パッと考えられたのはこれだけど、どれも余計に拗らせそうな気がする……。

 

 ……じゃあもうあれだ。式守と根比べ。

 

 俺が関係の修復を望むのが先か、式守がそれを諦めるのが先か。どっちがこの関係に疲れて折れるかの勝負。

 

 やせ我慢は得意だから負ける気しないな。失恋で鍛えられた心のHPの高さ舐めんなよ。

 

 

 ***

 

 

 四限目のチャイムが鳴って昼休みに入った。和泉が近づく気配がしたので気づかないフリして教室から出ていく。幸運なことに和泉自身の不運が作用して、窓からボールが飛来して突撃しそうだったところを式守が防いでいたから、その隙に教室から出て行き食堂へと向かった。

 

 ……向かったはいいものの、今日はそこまでがっつり食べる気分じゃないし、この時期は新入生が入ってきて食堂を利用する生徒が増えている。夏休みに入る頃くらいには弁当派とコンビニ派と食堂派に分かれて人数が減って利用しやすくなるけど、混んでると座る席探すのも一苦労だからな〜〜……。

 

 よし! 今日はコンビニで優勝していくか。正門から回ると遠いから、体育館裏からフェンス乗り越えてショートカットしていこ。

 

 

 


 

 

 

 うわ。まじか。

 

「──なぁ今日バレー部見学しにいかね?」

「──あー、仮入部的な?」

 

 コンビニから教室に戻ってきたら私の机に誰か座っていた件。そこ隼瀬リサの席なんですけど。

 男子四人が集まって弁当食べてる……そこ私の席って言いづら……まぁいいや今日は譲ろ。今日は教室で食べる気分じゃないし。

 

 どっか別の場所……食堂……は、混んでるし座れなかったら徒労だから無し。

 屋上……は、一応開放されてるけどなんかヤンキーとかいそうだし、学生だけの暗黙の了解とかありそうだからパス。

 

 ……体育館裏とか? ヤンキーいそうだけど屋上と違って逃げ道ありそうだし……ちらっと見て居なそうだったらそこでお昼食べよ。

 

 

 

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