幼馴染が絶対に負けるラブコメ   作:ぽんしゅー

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正直ここまで伸びると思ってなかったのでストックありません(血涙)
それに今回隼瀬さん視点の番外編なのでかなり短いです。


立つ鳥跡を濁しすぎ

 アタシはリビングのPCの電源ボタンを押した。PCが頑張っている起動音が鳴り止むと、青い画面から自分のデスクトップの画面に切り替わる。

 

 デスクトップに置いてあるアイコンをダブルクリックしてゲームを立ち上げた。

 

 最近ハマっている『マッシュタウン』というオンラインRPGだ。ざっくり説明すると、可愛いアバターたちが可愛いモンスターをばったばったなぎ倒していくゲームだ。

 

 アタシがログインして1分も経たない内に唯一のフレンドがログインしてきた。

 

 

【ムキムキチョモランマ さん Lv832 がログインしました】

 

『よっす』

 

 リビングには親がいるので声は出さずにゲームチャットで挨拶する。

 

『ウス。相変わらずログインするスピードはや』

『四六時中PCに張り付いてるからな。んで今日どのダンジョン行く?』

 

 現実では一人ぼっちのアタシが唯一この世界で夜の短い間に会話する友達。ボイチャは繋いでないけど、この人とやり取りしてたら実際に誰かと話しているような温かい気持ちになる。

 

『ねぇムキムキチョモランマさん』

『なんぞ? くまむし』

『好きってなにかなぁ?』

『哲学か?』

『あのね』

 

 アタシは『ムキムキチョモランマ』さんとダンジョンを周回してレベリングしながら、今日の文化祭であったことを話した。窓から飛び降りた男の人の話を。

 

『恋か。私には縁遠い話だな』

『でも窓から飛び降りるほど好きなのに、諦めてるってなんかこう』

『もやもやするか』

『うん』

 

 アタシは可愛いものが好き。

 雨も好き。

 オシャレも大好き。

 

 でも一時期嫌いになりそうになった。思春期特有の若気の至りってヤツ? 

 

 なりたい自分になれない自分が嫌になりそうだった時、ある人がアタシに話しかけてくれた。それが式守センパイ。

 何もかも嫌になったあの日の朝、公園で雨の中泣いている私に傘を差しだしてくれて、私に気付かせてくれた。

 

 好きだったらどんな理由でも諦めちゃいけないって。

 

 だからアタシはその好きを守るために強くなるって決意して、今も頑張ってる。そうしたらアタシがアタシらしくなっていくのを感じて、心の中の苦しさは消えた。

 

 でも、あの人はとっても苦しそうに見えた。

 

 多分あの人は自分の事が好きだ。そして自分のあるがままを通す強さを持っている気がする。文化祭に来た一般人を楽しそうにナンパしてたし。自分の中のカッコイイをちゃんと持ってる人だと思う。

 

 だから分からない。私の中で矛盾している。自分を貫き通した延長線上に“好き”があるんじゃないの?

 

『ほう。強いなソイツ』

『ほわっつ? なにゆえ?』

『欧米か。ソイツって自分の好きな心を殺して応援してるわけだろ? 一度好きになったものを諦めるっていうのも相当強い心が必要だぞ』

 

 私はその人が言った言葉が脳裏に思い浮かんだ。

 

 

「――だって俺その人にはカッコいいとこしか見せたくないし」

 

 

 あぁ、そっか。

 

 私は自分らしくいられないことを拗ねていじけて子供みたいに周りのせいにしていたけど、あの人は自分の中で気持ちを砕いて咀嚼して自分なりに受け入れているんだ。

 

『大人だなぁ』

『だろ? もっと褒め称えろ』

『ウンウン大人大人』

 

 あの人にもう一度会ってみたいな。

 ……なんか似てたしな。雨の日に傘をくれた式守センパイに。

 

『――逃がさないから』

 

 あの日の重なった姿を思い出す。人がごった返す中力強くアタシの腕を掴んだあのシーン。もちろんカッコよさでいえば式守センパイの圧勝だけど。

 印象にのこったのは脳を揺らすようなハスキーな低い声と、綺麗な手だったのにちゃんと女子とは違う男らしい手。

 

 男の人ってあんなに力強いんだ…………………………。

 

「……ハ? 違うから。アタシそんなチョロくないから」

 

 心臓がひと際強く脈打ち、全身に勢いよく血液を送りだして体温が上昇してなんかいない。

 

 別に、ちょっとドキドキとか、していない。

 

『つか落とし物拾っちゃったんだけど返した方がいいのかな。

 紙切れだから別にいいと思っちゃったんだよね』

『物によるけど返したほうがいいかもな』

『やっぱり? じゃあ持っとこ』

『直接会って返すのか?』

『2年後くらいに』

『遅すぎて草』

 

 ポケットに入れていた、紙切れを取り出す。ハートの形をしていて番号が書かれている。

 あの人が飛び降りた近くに落ちていたものだから本人のものか分からないけど、あの辺りには誰もいなかったからきっとあの人のものだと思う。

 

「……覚えててくれてたら、返そ」

 

 丁寧に折りたたんで財布の中に入れた。

 

『ばいざうぇい』

『うん?』

『名前知ってんの?』

『あ 聞くの忘れてた』

『おま』

 

 




ムキムキチョモランマ(八満)
式守の友人。ゲームはガチ勢。
隼瀬の話に心当たりがあったが気にしないことにした。
そして寝たら忘れた。

くまむし(隼瀬)
現在中学二年生。ゲームは半ガチ勢
もう使ってしまったが、コーヒー一杯無料券に名前が書いてあることを忘れていた。
来年は受験生で文化祭に行けないので、その辺散歩したら運良く会えないかな~と思っている。


次回から2年生編、球技大会からです。
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