俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~ 作:三流二式
声が聞こえるんだ。
微睡みの最中、ふと意識が目覚め、眠気が抜けきっていない瞼をうっすらと開く。
開いた薄眼から覗くのは見慣れた自室の風景でなく、延々と続く虚無の暗闇。
目覚めたばかりでまるで働かない頭で、一体ここは何処なのだろうかと、『私』は何とはなしにぼうっと考えてみた。
しかし目覚めたばかりの頭は考えるという行為を行うには、いささか荷が重かったようだ。
しばらくの間『私』は、寝転がったままの姿勢でぼうっとしていた。
そして目が覚めた後はいつだってそうしてきたから、いつものように上半身を起こそうとして、優しく、されど明確な意思を感じる手つきで、そっと押し戻される。
〝このままもう一度眠ってしまえばいい〟
『ソレ』は押し戻した手つきと同じ優しさと慈愛に満ちた声で、そう言った。
『私』は『ソレ』の言葉を眠気が抜けきらぬ頭で理解しようと努力したが、どうやっても無理だったので、眠気を覚ますために目をごしごしと拭った。
〝ダメだ。そんな事をしてはいけない。眠ってしまえ〟
まだ何か言っている。まだ頭に入って来ない。だから『俺』は大きく欠伸をし、それから伸びをして完全に眠気を払い去ってから耳を澄ませた。今度こそ『ソレ』の言う事を理解するために。
〝あぁ、やはりお前は停滞を望まないのだな〟
俺の目の前に居た、金色の光に覆われたヒトガタが、心の底から残念そうに首を振った。
一目見て、『ソレ』の正体が分かった。そしてなぜこうも頑なに俺を眠らせようとしてくるのかも。
リンドウさんの『ソレ』も、半身をただ助けようと死に物狂いで奔走していた。俺の『ソレ』も方向性こそ違うけど、きっと俺を助けようとして、これ以上この先の悲劇を見せないように、眠るように促しているのだろう。
『彼』からの提案は確かに魅力的に思えた。正直いい加減しんどくなってきたところだった。
だってこの世界に産まれ落ちてから、良いと言える事なんてただの一度も無かったし。
「でもそうはいかない」
俺の言葉に、『彼』はため息を吐いた。
深く長い、まるで魂を吐き出そうとしているかのような長いため息だった。
〝パパ……ママ……〟
どこからか、声が聞こえる。
「泣き出してしまいたい悲しみも、叫びたいほどの苦しみも、誰かを助けた時だけ、ほんの少しだけ和らぐんだ」
俺は言いながら『彼』に近づいていった。『彼』は近づいてくる俺を、唯々悲しそうに見ていた。
〝辛いぞ〟
「知ってるよ」
〝苦しいぞ〟
「だろうね」
〝報われんぞ〟
「そうでなきゃいけない」
〝……馬鹿め〟
俺は笑った。
〝助けて……誰か助けてよう……〟
何処からか、声が聞こえるんだ。誰かが俺に、助けを望む声が。
「行かなきゃ」
俺は『彼』を
〝…よかろう。それがお前の望みであるのならば〟
金色の巨人はそう言って、俺に手を伸ばした。俺も巨人に手を伸ばした。
俺の手と巨人の手が触れた瞬間、世界が金の光に包まれる。
闇が、晴れる。
■
「知ってる天井だ……」
目が覚めると、俺は自室のベッドに横たわっていた。
起き上がろうとして、腹に鈍い痛みが走った。
服をめくって確かめてみるが、そこに傷なんて物はさっぱり存在しなかった。
不思議に思って腹を摩ってみたり、腹筋に力を入れてみたりしたけど、痛みなんてこれっぽっちも走らなかった。
「まあ、いいか」
俺はまくっていた服を戻し、そもそもどうして俺はここに居るのか思考を巡らせようとした瞬間、間欠泉の様に俺の頭の中から記憶が噴き出した。
リンドウさん、プリティヴィ・マータ、泣いているアリサさん、鈍い痛み、轟音、瓦礫の山、誰かの叫び、悪態、わらわらと追いすがる女帝の群れ。
「あぁそうか、俺はしくじったのか……」
全てを思い出した俺は、起こした上半身を再びベッドに沈め、腕で顔を覆った。
悔しかった。それ以上に情けなかった。
いけると、確信していた。
リンドウさんと一緒に教会内のマータをぶち殺し、アリサさんを説得ないし連れ出せると。出来ると。思っていた。
「思っていたんだけどなぁ……」
結果は御覧の通りだ。
エリックさんを助け出せたから、リンドウさんもいけると思っていた。だが俺には細々とした流れは変える事は出来るようだが、大規模な流れを変える力は無いらしい。
結局のところ、俺はただ手前勝手に場を乱してみんなに迷惑をかけただけだった。
「軌道修正を……せねば」
しかしそういう事が分かった事は大きな収穫だった。幸い筋書きが変わらないのならば、リンドウさんは生きている。かろうじて、だが。
「最終目標は変わらない。筋書きも変わらない。シオは月に行くし、ロミオ君は死ぬし、ケイトさんも死ぬし、ジュリウス君も終末捕食に囚われるし、シックザール支部長も死ぬ。でも、最後の終末捕食、こいつだけは何とか出来るはずだ」
これから俺は様々な戦いに身を投じて行く。シックザール支部長の嫌がらせの様な『特務』、シックザール支部長の作り出した『偽神』、『堕ちた英雄』に、もしかしたら『第二のノヴァ』、『傲慢なる狼』、『世界を拓く者』、『原初のアラガミ』、『世界を閉ざす者』。
そしてその果てに、俺の望む物はある。
「3年だ。3年ですべてを終わらせる。世界を滅ぼす。俺の命の全てを賭けて」
俺に大いなる流れを変える力は無い。しかし、少しずつ小さな流れを変え続ける事によって、もしかしたら、大いなる流れに干渉できるチャンスが生まれるかもしれない。
塵も積もれば山となるように、一筋の小さな流れが束となり、大いなる流れを変えるだけの流れを俺自身が作り出せるのやも知れぬ。
答えは分からない。そんなもの死んだ後に考えればよい。
「よーし。なら早く動かなきゃな。俺はやるぜ!」
うおーっとベッドから跳ね起き、着替えてから部屋を出ようとすると、ベッドの隅に畳まれた黒い服と一通の手紙が置いてあることに気が付いた。
何ぞ何ぞと俺は手紙を手に取り、差出人を改めると何と支部長からあてられたものであることが!
俺はおったまげながら手紙を読んでみると、リンドウさんの『特務』の引継ぎと、そこに置いてある服を着るように、という内容だった。
「え゛っ、もうですかい!?」
俺は驚愕に目を見開きながら綺麗に畳まれていた服を持ち上げ、更に驚愕に大口を開けた。
「す、『スイーパーノワール』!?』
それはスイーパーノワールという黒いコートだった。
「あ、あの人は! どうしてこう、人の心を傷つける様な事をこうも簡単にできるんだ!」
俺は黒コートを掲げながら、怒りでわなわなと震えながら叫んだ。
だって黒コートですよ! 黒コート! こういうのはめちゃくちゃかっこいい人が、ソーマ君とかリンドウさんとかが着る様なものじゃん! 俺みたいなちんちくりんが着たってダッセーだけじゃん! ♰キリト♰じゃん!
「もー!! もー!!!」
俺はぷんぷん怒りながら、仕方なくコートに袖を通す。
これは命令ゆえに仕方なくですー! 俺の意思じゃないですー!
せっかく意気揚々と出かけようとしたのに、あの腹黒支部長のせいで台無しだ! こっちの事情も考えてよ! (憤怒)
「っと、その前に髪を結わなくちゃ」
俺は出かける直前で自分の髪が結われていない事に気づき、慌てて机の引き出しからゴムを引っ掴むと、鏡の前で髪を結わえ、どたばたと部屋から出ていった。
とほほ、これじゃ決意も台無しだよー!
俺は部屋から出ると、真っ先に向かったのは榊博士のラボだった。
ラボの中に入ると、博士は相変わらず忙しそうにモニターとにらめっこをしていた。
「おやカカシ君、目が覚めたよう……君、そのコートは」
俺の姿に気づき、モニターから目を離した博士が着ているコートについて言及しようとするのを、俺は手で制した。
分かる。分かりますよ博士。不貞腐れて寝ていた奴が部屋から出てきたら♰キリト♰だったら、そりゃあなた、一言いいたくなるのも分かるってもんですよ。
でもただでさえしくじった事と支部長からの嫌がらせで神経すり減っているっていうのに、その上知り合いから格好について言及されたら貴方、『彼』の提案に乗っちゃいますよ。マジで!
「そう……か、うむ。それが君の覚悟であるというのならば、私は尊重しよう」
とか何とかよく分からない事を言って肩をバシバシと叩いてくる博士に、俺はウッス! と生返事を返すしかなかった。
それから体調の事と意識を失っている間に何が起きたか説明を聞き、俺はその場を後にした。
エレベーターに乗り込み、エントランスがある階を押しながら、俺はこんなダッセー格好について皆に一体どんなことを言われるのであろうか気が気でなく、テンションは地の底に沈みそうな程急速に萎えていた。
このお話は基本的に原作準拠で進んでいきます。
目新しい展開を求めていた視聴者さんには申し訳ないです。
元よりゴッドイーターの二次創作が増える事を意図して書いているので、そういう展開になるのも多少はね?
だからみんなこのお話でゴッドイーターの大まかな流れを理解して、二次小説、書こう!そうすれば投稿者も心置きなく失踪できるしね!