俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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一人称視点と第三者視点のバランスが難しー!


極東支部第一部隊隊長『名無之カカシ』

「はい……ええ、まさか意識を取り戻すとは……」

 

 

 大車ダイゴはトイレの便器に腰かけ、息を顰めながら捲し立てるように通話相手へ報告を続ける。

 心臓の音がうるさい。こめかみの辺りがずきずきと痛み、否応なしに荒くなる息を止められない。

 

 

『────―?』

「詳しくは分りませんが……ええ、『例の狂犬』が……」

 

 

 額から流れ落ちる汗を払いながら、大車は自分の考えを告げる。

 

 

『────―』

「そうです……私の考えでは、新型同士の感応現象が起きたのではないかと……」

 

 

『感応現象』

 新型神機の適合者同士の間で稀に意識や記憶の交差が起きる現象である。現在発生条件などの研究が進められてはいるが、詳細は今も分かっていない。

 

 

 今回はそれが作用して、本来は目覚めるはずも無かったアリサが目を覚ましてしまった。これは彼と『あの男』にとっては想定外の事だった。

 本来ならこのまま意識不明のままにしておき、時が来たら証拠隠滅のために処分するつもりだったのだ。

 

 

「はい、どうしましょう。隔離しますか?」

 

 

 自分で言った言葉に、大車は何を馬鹿な事をと突っ込まずにはいられなかった。

 

 

(あの狂犬の前でそんな事をしてみろ。いったいどうなる事か……)

 

 

 思い起こされるのはあの黄金のパルスが走る悍ましき一対の瞳。逸らされる事無く見開かれた目は、ほんの少ししか見ていないのにもかかわらず大車の心に深い傷跡を残した。

 

 

 アレに再び晒されるなぞまっぴらごめんだった。

 

 

「うっ!?」

 

 

 せっかく吐いたばかりで嘔吐感の波が引いたばかりだというのに、あの瞬間を思い出してしまったせいで、また吐き気が込み上げてきた。

 大車は通話中に吐かない様に、どうにか込み上げてくる物を飲み込みながら通話を続ける。

 

 

「ウッ……え? いえいえいえ何でも……うぶありません……そうですかしばらくこのまま……このまま!?」

 

 

 しばらくこのまま。その言葉を聞いた時、大車は手足を縛られたまま狼の前に差し出されたかのような錯覚を覚えた。あの冷酷な男の事だから、おそらくその思いは間違いではあるまい。

 

 

(あの男……まさか奴の怒りの矛先を私に向けさせる気か!!?)

 

 

 大車は何とかしてこの場から消えられるように通話相手にあれこれと喚きたてんとするが、その時にはすでに通話は切られていた。

 

 

 怒りを向ける矛先を失った大車はしばらくの間放心し、それからブチギレてトイレのドアを蹴っ飛ばしながら喚き散らした。

 

 

「ぐ……くそ! 畜生! 畜生あの野郎! ちく……うぶ!?」

 

 

 だがそれも、憎悪に満ちた金の瞳がフラッシュバックした事により込み上げてきた吐き気によって中断された。

 大車は便座を上げ、無様に膝をつきながら嘔吐した。

 

 

 彼はゲーゲー吐いた。ついに胃液しか出る物が無くなっても吐き出そうとした。まるでつい今しがたの光景を吐き出そうとするかのように。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 アリサさん復活ッッッ!!!! アリサさん復活ッッッ!!!! アリサさん復活ッッッ!!!! アリサさん復活ッッッ!!!!!! アリサさん復活ッッッ!!!! 

 

 

 アリサさんが戦線に復帰したナウ! 

 

 

 現場復帰できるほど回復したのも喜ばしいが、何より別人かというほど彼女は変化した。

 

 

 何て言うかもう態度が、身に纏う雰囲気が明らかに違う。

 以前はとげとげしく、ソーマ君と似た様に他者との繋がりを拒絶していたのだ。自分の中に閉じこもっていた。

 

 

 しかし綺麗なアリサさんはぎこちないながらも、でも明確に、我々に対して少しずつではあるが自分をさらけ出し始めたのである! 

 

 

 す、す、す、スバラシー! 

 これはもうただアリサさんと呼ぶのは失礼である。これからはアリサさん改善と呼ばせてもらおう! 

 

 

 後そのお祝いがてら彼女から『ティア―ストーン』っていう青いバックラーを貰ったんだけど……ごめんねアリサさん。私バックラーよりもシールド派なの。

 

 

 ……つーか復帰祝いはこっちがするもんであって、どーして君がぴんぴんしているおいらに復帰祝いを渡すのか、コレガワカラナイ! 

 

 

 いやーでも綺麗になったアリサさんは本当に尊い。

 今もコウタ君と夫婦漫才めいた口論を遠巻きに見てるのだけど、ずっと見たかった光景を見れて、僕、満足! 尊いに体が押しつぶされそうだぁ……。

 

 

 終末捕食とかもうどうでもいい。この光景をずっと見ていたい。(恍惚)

 

 

 ……冷静になって考えると終末捕食完了させて平和にしなきゃこれずっと見られないじゃん! ダメじゃん! 

 

 これはなおさら終末捕食を完遂させ無くてはならないな! 

 

 

 俺はやるぜ! 

 

 

 とか何とか考えていると、ようやくツバキさんが姿を現した。

 

 

 現在俺、サクヤさん、アリサさん、コウタ君、ソーマ君の5人はエントランス上部の出撃ゲート前で待機していた。どうもブリーフィング前に何か話があるそうなので、おいらは興味津々でツバキさんの言葉を待った。

 

 

「どうやら全員いるようだな」

 

 

 ツバキさんは一人一人の顔を確認するように見ると、咳ばらいを一つした。それからまるで未練を断ち切るかのように目を閉じた。

 そして目を開けると、もう未練なんて物は欠片も見受けられず、いつもの様なきびきびとした口調で話を始めた。

 

 

「本日、執行部より正式な辞令が降りた。今回の任務完了をもって、名無之カカシをフェンリル極東支部、保守局第一部隊隊長に任命する」

「「──────!」」

 

 

 その場に集められた全員(俺を含めた)が、ツバキさんの言葉に大小関わらず驚いた顔をした。

 

 

 

 あー……もうそんな時期ですかー……。

 

 

 膨らんでいた興味の風船が、あからさまに不満そうな音を立てて萎んでいく感覚があった。

 だって俺の事とかどーでも良くねぇ? 

 

 

 俺よりソーマ君とかサクヤさんの方がよほど適任だと思うんですけど? 

 ……あーそうか。支部長の犬の役目があったわ。じゃあ俺じゃなきゃダメか―マジかー。

 

 

「これからはお前がリーダーだ。よろしく頼むぞ」

 

 

 うん、まあよろしく頼まれるよ。どーせその内コウタ君に丸投げするんだし。

 コウタ君が育ちきるまでの間の仮初のリーダーとしてなら、まあやってやらん事も無いな? (糞上から目線)

 

 

 俺は了承の意味を込めてツバキさんに頷き返した。

 

 

「す……すげぇ! 大出世じゃん! うひょー! こういうのなんて言うんだっけ? ゲコクジョー?」

「それ裏切りですよ? 馬鹿なんじゃないですか?」

 

 

 まるで自分の事のようにはしゃぐコウタ君に、すかさずアリサさんが突っ込みを入れる。

 ふ……夫婦じゃ、夫婦がおる……! 二人のあまりに息の合ったコンビネーションに、全世界の俺が泣いた! 

 

 

「……」

 

 

 嬉しそうにしている二人とは反対に、サクヤさんは複雑そうな顔をしていた。

 そりゃそうだ。だってそれはリンドウさんがもういない事を公式に認められたような物なのだから。

 

 

 あぁ、今すぐ彼女の前でリンドウさんはまだ生きているよってことを言いたい。そんで皆で探しに行きたい。

 でもそれはダメ。それはいけない。大筋から外れてはならない。流れを変えるときは今ではないのだ。

 

 

「改めて……よろしくお願いします。ね、サクヤさん!」

「え、えぇ……そうね……おめでとうカカシ君……」

 

 

 だから俺はいつものように胸の内に蓋をして、笑顔の仮面を被る。

 悲しみを抑え込み、精一杯の明るい笑みで上書きするサクヤさんに、無責任な笑みを送る。

 

 

「リーダーとなれば相応の権限も与えられる。しかし同時に相応の義務も負ってもらう。チーム全員を無事に生還させるという義務を、だ」

 

 

 ツバキさんはつかつかと歩み寄り、弟そっくりな動作で俺の肩をばしばしと叩いた。

 

 

「お前は強い……死ぬなよ。全員生きて戻れ。これは命令だ」

 

 

 これまた弟と同じような命令を、弟と同じような優しさたっぷりに含んだ言葉を俺たち全員に言った。

 その時の声音の柔らかさは、リンドウさんとの血の繋がりをしかと俺たちに感じさせた。

 

 

「さあ何をボサッとしている。任務に向かえ!」

 

 

 ツバキさんのお話はそれで終わりのようで、彼女に促されるまま俺たちは出撃ゲートを潜った。

 

 

(全てはより強く愛ある世界のために)

 

 

 俺は目の前でやいのやいの言い合うコウタ君とアリサさんを見つめながら、心の中でいつものように欺瞞の言葉を吐いた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 ところ変わって、俺たちは鉄塔の森へとやって来た。

 本日の任務、工場地帯に現れた『サリエル』の討伐をもって俺は隊長になれる訳だから、優しいアリサさんとコウタ君は普段より二割り増しくらいのやる気で任務に挑んでいた。

 

 

 俺はというと、皆とは離れた場所でふよふよ浮いていたザイゴートを神機に食わせてバーストしてヌンヌンしてた。

 

 

『カカシさん! 他の方たちはすでにサリエルを発見、交戦しています! 急いで合流してください!』

「はいは~い」

 

 

 何と皆もうサリエルの奴を発見して戦っているらしい。

 

 

 こうしちゃおれねー! 

 俺は飛び上がり、オラクルを吹かして合流するために急いだ。

 

 

 空を駆ける事10秒くらい。サクヤさん、アリサさん、コウタ君たちが、青銅色の蝶を思わせる奇妙な女性型アラガミ『サリエル』を相手に激しい銃撃戦を繰り広げていた。

 

 

「宅配ピザでぇ──────す!!!!!」

 

 

 俺はサリエルが彼らに夢中になっているのを良い事に、その無防備な胴体に思い切り神機を噛みつかせた。

 

 

「La!!?」

 

 

 当然サリエルは俺の強襲なんて想定もしていないから、これをまともに食らった。(文字通り)

 

 

「来た! カカシ来た!」

「ちょ!? 早くないですか!? 私たちと別れてからまだ2分くらいしか経ってないですよ!?」

「また大概訳の分からない事を……」

 

 

 サクヤさんたちは三者三様の感想を口にしているらしいけど、生憎それを聞き取っているだけの余裕は今の俺にはない。

 

 

「La!」

 

 意外にもサリエルの振り払うパワーは強く、空中だからあまり踏ん張りの利かない俺はちょっとしか肉をかじり取らせてもらえなかった。

 

 

「むむむ、ならこれを食らえい!」

 

 

 俺は神機を銃形態のまま捕食形態に変え、そのまま特製のオラクル弾を発射しながら空中を直進! 

 発射されたオラクルの玉は俺の周りをぐるぐる回りながら追尾レーザーをばら撒いた! 

 

 

「La!!」

 

 

 奴はそれを嫌って空中をジグザグに駆けた。

 

 

「逃がすか!」

 

 

 俺はオラクルを吹かして空を駆けるサリエルの背を追う。

 

 

 うおー人力ドッグファイトじゃー!!! 

 俺とサリエルは空中で激しく上下を奪い合いながらオラクル弾をばら撒きあった。

 

 

 奴が一発レーザーを打てば、俺は負けじと十発のオラクル弾をぶっ放した。さらに俺の周りを飛び回る光球が追尾レーザーをばら撒くから、つまり俺はあいつの百倍撃っているという事だ。わかるか? この算数が。エエッ? 

 

 

 が、さすがに空中戦はサリエルの方に分があったみたいで、俺は一発の追尾レーザーを避け損ねて肩を撃ち抜かれてしまった。

 

 

「ぬわー!」

 

 

 バランスを失った俺はきりもみ回転しながら墜落し、地面を二転三転した。

 

 

「痛てー!」

 

 

 すぐさま立ち上がって俺は再び空に飛び立とうとしたけど、駆け付けたコウタ君たちの一斉砲撃を受けてサリエルは地面に叩き落とされてた。

 

 

「みんなナイス!」

 

 

 俺は近接形態に神機を変えると再び捕食形態をとらせ、オラクルを吹かして前進! 

 叩き落されてジタバタしているサリエルの頭にあるぎょろっとしたキモイ目ん玉をかじり取った! 

 

 

「アバッ―!?」

 

 

 サリエルが絶叫の悲鳴を上げた。

 

 

「まだだぜー!」

 

 

 俺はサリエルのマウントポジションを取ると、胴体に向けて神機を、黒紫の刀身『呪刀』を振り下ろした。どうもこの呪刀、凄く不安定らしく、これを俺の装備にすると支部長がリッカさんに言ったら猛然と抗議したらしいが、その話はまた別の機会にでも。

 

 

「La……!? La……!?」

 

 

 逃れようとサリエルは一層手をばたつかせているが、下半身はアリサさんが神機を捕食形態に変えてがぶがぶと齧り、脚を欠損させた。

 

 

 更にサクヤさんが封神弾で弱体化させ、コウタ君がホールドトラップを仕掛けて動きを阻害するから逃れる事は不可能である。

 

 

 皆がサリエルを飛び立たせないようにしていたから、俺は安心してこいつを解体出来た。

 サリエルが腕で払ってきたが、俺は片手でこれをつかみ取り、もう片方の空いた手で何度も何度も呪刀を叩きつけた。

 

 

「……ッ!? ……ッ!?」

 

 

 次第にサリエルの動きが鈍くなり、俺は止めとばかりに神機を捕食形態に変えて奴さんの胴体に噛みつかせ、思い切り引きちぎった! 

 

 

「ムシャムシャ!」

 

 

 神機はサリエルの上半身をうまそうに咀嚼し、呑み込んだ後にでかいゲップを一つした。

 

 

(行儀悪ぃーなー)

 

 

 神機の捕食形態を解除しながら、俺はそんな事を思った。

 

 

「うへぇ―ゴア」

 

 

 コウタ君がサリエルの死骸の上にいる俺に向かってのんきに呟いた。

 

 

「流石ですね」

 

 

 一息ついたアリサさんがにっこりと微笑んだ。

 

 

「……もう、無茶しすぎよ」

 

 

 サリエルの死骸から降りた俺の頭に拳をこつんと当てながら、サクヤさんは聞き分けの無い子供に言い聞かせるみたいにそう言った。

 

 

 俺は軽く頬を掻きながら、曖昧に笑った。

 

 

 帰投準備にはいる皆を横目に、俺は空を見上げた。

 相変わらず雲はどんよりとした曇り空。途切れの見えない雲は見ているだけで心が憂鬱になってゆくのを止められない。

 

 

 この空模様がこれから先の人生を表すものでないと、俺は願わずにいられなかった。

 

 

 何にせよ、これからはカカシ隊長である。気を引き締めないとね! 

 

 

 

 

 




何でこいつは一人でエースコンバットごっこなんかやってるんでしかね?

それはそれとして結構重要なアンケートがあります。

三人称視点とカカシ君視点を同じ話でまとめた方が良いのか、それとも話ごとに分けた方が良いのかアンケートを取ります。

期間は二週間以上?三週間以下?くらいやります。


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