俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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一ヶ月以上も間が開いたので、実質初投稿です。
後だいぶ端折りました。ゴメンネ。


塩、またはsalt

 ハイ、本日も皆さんお元気そうで何よりです! 名無之カカシです! 訳あって愚者の空母から離れた海上からお送りいたします(半ギレ)!!! 

 

 

 何でそんなところにいるのかだって? それはだね。

 

 

 海上すれすれでオラクルをゴォオオオと吹かしながら、俺は眼前を飛んでいる『シユウ堕天』の尻を睨みつけた。

 

 

 そうシユウ堕天。とある理由からこいつを求めて俺、ソーマ君、コウタ君、()()の4人で愚者の空母にやって来たんだ。

 それで4人でシユウ堕天をタコ殴りにしていたのだが、こんにゃろう一丁前に群れのリーダーだったらしく通常種のシユウをけしかけてきやがった。

 

 

 腹立ったから、スタングレネード投げて目が眩んでいる隙に増援で来たシユウの首全部飛ばしてやったら糞ったれ、シユウ堕天の奴一目散に逃げだしたんだ。

 当然逃がしてやる道理なんてないから、わたくしオラクル吹かして奴のお尻を追いかけているんですの。うふ。

 

 

『か、カカシさん!? どこ飛んでいるんですか!?』

 

 

 耳元で取り乱したヒバリさんの声が聞こえるが、まあもうちょっと待ってくれや。すぐに捕まえて戻ってくるからさ。

 

 

 俺は更にオラクルの勢いを強めると、一気にシユウ堕天との距離を縮める。

 

 

「ゲェーッ!?」

 

 

 後方を振り向き、驚愕したかのように叫ぶシユウ堕天。その叫びはまるで「そんなのありかよ!?」とでも言っているかのようで。

 シユウ堕天は何としても追いつかれまいと激しく蛇行飛行するも、ワンパターンすぎて近づくのにそれほど苦労はしなかった。

 

 

「はいガブリンチョ」

「グオオオオ!!?」

 

 

 易々と追いついた俺は彼の下半身をそのまま神機に噛みつかせた。それで何度か噛みつかせ、おとなしくなったら俺はUターンし、愚者の空母へと戻っていった。

 

 

「あ、やっと帰って……うおっ!? おま!」

 

 

 戻ってきた俺に気づいたコウタ君は、こっちに駆け寄ってくる途中で俺が神機に咥えさせているシユウ堕天に気づき、ぎょっとして目を見開いた。ソーマ君は何も言わなかったが眉間に皺が寄ってるから、恐らくコウタ君と似たようなことを思っているのかもしれない。

 

 

 俺は彼らにひらひらと手を振って見せると、まだ弱弱しくも抵抗を続けるシユウ堕天が動かなくなるまで地面に叩きつけた。ヒバリさんからシユウ堕天のオラクル反応が消えた事を教えられると、俺はシユウ堕天を神機から放して地面に横たえた。

 

 

「ゴハン!」

 

 

 途端に嬉々とした様子でやって来た『彼女』は、見ているこっちまで幸せになれそうな笑顔を浮かべ、とっても元気よく高らかに叫んだ。

 

 

「それじゃー、イタダキマス!!」

 

 

 イタダキマス。確かにそう言った。何を? 決まっている。アラガミを。彼女はあろうことかそれを口にしようとしているのだ。

 当然だがアラガミは食用に適していない。そもそもオラクル細胞を人体にいれること自体本来なら無茶な事なのだ。P53偏食因子のような低強度のオラクル細胞でようやく一握りの人間が適合できるか否かなのだから、どうやったって人間に合うようなもんじゃない。

 

 

 それにもかかわらず彼女はそれを取り込むどころか食べようとしている。でもそれを止める者は俺を含めて誰もいない。

 何故なら。

 

 

「あ、そーだ」

 

 

 と彼女は思い出したかのようにソーマ君へと振り返り、さも当然とばかりに言い放った。

 

 

「そーま、いっしょにたべよ!」

 

 

 初めはそれが自分に言われたことだと彼は認識できなかったようで、その意味を理解するまでしばらくラグが開いた。

 

 

「……おいおい『シオ』、俺たち人間はアラガミを食べたりしないんだよ」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、まるで子供に言い聞かせるような声色でコウタ君は言った。

 その言い方はまるで彼女が人間じゃないような言い方だったが、事実彼女は人間ではない。

 

 

 彼女の正体はしゃべるアラガミ。この無印ゴッドイーターのストーリーのキーパーソン。『特異点』なのである。

 シオちゃんと出会ったのは数日前。榊博士がシックザール支部長を首尾よく国外へとおいやり、その隙に俺たちを使って確保したのだ。

 

 

 で、色々あってシオちゃん用のご飯を調達するために本任務が発行されたのである。

 

 

「えー、でもー」

 

 

 彼女は、シオはゆらゆら揺れ、それから覗き込むようにソーマ君を見ながら言った。

 

 

「そーまのあらがみはたべたいっていってるよ?」

「……え?」

 

 

 彼女の言葉に、コウタ君は思わずソーマ君を見る。瞬間、我を取り戻したソーマ君は爆発した。

 

 

「ふざけるな!」

 

 

 ソーマ君は腕を振った。まるで自らに流れる忌まわしいものを振り払おうとするかのように。

 

 

「テメェみたいな……バケモノと一緒にするんじゃねぇ!!!」

 

 

 声を荒げて吐き捨てると彼は背中を向け、そのまま去って行った。

 

 

「お、おい……」

「いいからもう、俺に……関わるな……」

 

 

 コウタ君の気遣うような言葉に、ソーマ君はそれまでの荒々しい言動から一転してとても弱弱しく、消え入るような声色で拒絶した。

 そんな状態の彼にかける言葉はなかったようで、コウタ君は口をつぐみ、悲し気に首を振った。

 

 

「……」

 

 

 俺は遠ざかるソーマ君の背をしばらく見つめ、それからシオちゃんの方に顔を向けた。

 シオちゃんはほんのちょっとだけ考えるそぶりを見せた後、おもむろに駈け出し、ソーマ君の背に語り掛けた。

 

 

「シオ、ずっとひとりだったよ……」

 

 

 それは彼女の心情の吐露だった。混じり気の無い純粋な彼女の、混じり気の無い純粋な言葉に、さすがの彼も足を止めた。

 

 

 

「だれもいなかった……」

 

 

 純粋故に、彼女の言葉は人の心によく染みる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「うーんと……だから、だから……そーまをみつけて、うれしかった。みんなをみつけて、うれしかった」

「……」

 

 

 ソーマ君はこちらに背を向けたまま、何も言わない。うぅん。きっと言えないんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()。頭では否定しているけど、きっと心は同じ気持ちなんだと思う。だから彼は何も言わないのだ。

 

 

「うーんと……だから、だから」

 

 

 言葉を探すシオちゃんを待つことなく、ソーマ君は再び歩き出した。その歩みは普段からすればだいぶ遅く、力無いものだったけど、その背中からは止まるつもりはないと感じさせるものがあった。

 

 

「あ、おい待てよソーマ!」

 

 

 呼び止めるべく駆け寄ろうとするコウタ君に、俺は手で制した。彼にも思う事があるだろうから、今は一人にしておいてあげて欲しい。そういう思いを込めて俺はコウタ君を見た。

 

 

「……分かったよ。お前がそうしろってんのなら、俺は何もしないよ。隊長命令だしな」

 

 

 分かってくれて何よりだ。ついでになぜ彼がああもアラガミを憎むのかも教えてあげちゃうぜ! 

 

 

「そっか……あいつが、要はゴッドイーターや神機の技術のオリジナルってことなんだよね。そんで、自分が生まれた事で母親まで殺しちまったって思ってんのか」

 

 

 そうなるねぇ……。そんな事無いし、あれはどう見ても不幸な事故だったんだなぁ。悲しいねぇ~……。

 

 

「そんなもん、ずっと一人で背負って、カッコつけてんじゃねぇよ……」

 

 

 コウタ君はソーマ君に対して今まで自分がどれだけ心無い事を言ってきたか思い返しているようで、口を真一文字に結んで、項垂れながら吐き捨てる様に言った。

 

 

 気休めにもならないだろうけど、俺はコウタ君の肩に手を置いてあまり気にする必要は無い事を伝えると、彼に背を向け、シオちゃんの方に歩を進めた。

 

 

「ねー、そーまおこっちゃった?」

 

 

 俺に気づいた彼女は座ったまま悲しそうに眉を落とした顔をこちらに向けた。

 

 

「大丈夫、彼は怒ってなんかいないよ」

「え~、でも、そーますっごくおっきなこえだしてたよ?」

 

 

 驚いたように目を見開く彼女に、俺はその頭を撫でながら言った。

 

 

「ソーマ君にも色々あるんだ。でも、彼ならその色々と()()()()()()()()()()()()()()()。そう遠くない未来でね」

()()()()?」

「そう折り合い。だから君も、そこまで思いつめることは無いよ。だってソーマ君はとびっきりいい人なんだからね!」

 

 

 俺の言葉は果たして彼女の心に響いたのかは分からない。ただ彼女なりに何かしらの答えは出せたようで、それまでの悲しげな顔は鳴りを潜め、普段通りの天真爛漫な表情に戻っていた。

 

 

「う~ん、よくわかんない!」

「うん、今はそれでいいよ。そのうち分かればいいさ」

「うん! そのうちー! そのうちー!」

 

 

 彼女は立ち上がり、そのうち―そのうち―と言いながら駆け出していった。

 

 

「うおおお!? ちょ!? シオ待ってくれよ~!」

 

 

 コウタ君は慌てた様子でシオちゃんの背を追いかけて駈け出していった。

 

 

 俺は彼らの姿をしばらく見つめ、それから地平線の彼方へと沈みゆく夕日の方へ目を向けた。ざざぁざざぁと潮騒の音を友に、俺はこれから先の事に思いを馳せた。

 

 

 特異点である彼女の登場により、ここから物語は加速的に進んでいく。目下の懸念事項は混沌の怪物なのだが……はてさて、俺に奴の相手が務まるのであろうか……? 

 

 

 そしてその後に、黒き帝王様の相手をしないといけないのだが、果たしてどちらの帝王様が来るのやら。

 問題は山積み。課題は腐るほどあり、計画の筋道はでこぼこ道も良い所。

 

 

 こんな有り様で俺は計画を無事遂行できるのかしら? 

 眼前の海は黙して語らず、太陽は何も言うまいとそそくさと海の底へと沈んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はシオちゃん捕獲作戦とカカシ君VSウロヴォロスを予定しています。

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