俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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リザレクションを最初からプレイし直してますけど、適合試験て凄い痛そうだと思いました。特に2の奴。


第1話 新型ですよ新型!……え?俺がやるの!?主人公はどうした!

 場所はフェンリル極東支部の支部長室。

 

 

 そこに一人の男が机の上に手を組んで座していた。

 彼の名は名はヨハネス・フォン・シックザール。この極東支部の支部長である。

 

 

 彼は手を組んだまま、じっと前方を見つめていた。まるで何かを待っているかのように。身動き一つしないでじっと。

 

 

 と、そこで手元に置いてあるノートパソコンから通信があり、『新型神機の適合候補者』が見つかったと報告があった。

 

 

「ふむ、名前は何という?」

「えぇと、それが……」

 

 

 言い淀むオペレーターにシックザールは訝しみ、ノートパソコンのキーを軽快に叩き、モニターに映し出されたその『適合候補者』のデータをざっと眺めた。

 

 

「ふむ……、む? この候補者、()()()()()()()()()?」

 

 

 シックザールはやや眉を顰めた。

 候補者は数多くいる。中には孤児や後ろ暗い過去を持つ者も少なくないが、それでもみな偽名であれ自らで付けた名であれ、名前を持っていた。

 

 

 そんな中で名すら持っていない者がいたとすれば、それはすなわち暗闇のさらに奥、深淵とすらいえる暗黒の中に身を置く闇の住人に外ならない。

 

 

「面白い」

 

 

 シックザールは口の端をわずかに上げてほくそ笑んだ。

 

 

「よろしいのですか? このような得体の知れない者に適合試験を、ましてや『第二世代神機』の適合試験を受けさせるなどと」

「良い。彼には早速適合試験を受けてもらう。これは命令だ」

「かしこまりました」

 

 

 オペレーターの疑問の声をシックザールは払いのけ、この()()()()()()に適合試験を受けさせるように命じた。

 

 

「極東支部初の新型神機の初の適合試験が名無しとは……ふっ、『ペイラー』じゃないが、なんだかロマンチックじゃないか」

 

 

 ノートパソコンを消し、再び静寂が戻った支部長室に、しばしの間シックザールの静かな笑い声が響いた。

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 月日は流れ、2071年。俺は(推定)19歳になった。

 

 

 そう2071年。ゴッドイーターの本編が開始される年である。

 いやぁ月日が経つのは早いね。ここまでの間ひたすら素材稼ぎと金稼ぎと人助けに奔走して、気が付いたらこの年代になってたんだもの。

 

 

正直勘弁してほしい。ここから怒涛の様に糞みたいなイベントのオンパレードだ。気を引き締めていかねば! と俺は決意を新たに、さっそくゴッドイーターになるための適合試験を受けに行くべく、我、極東支部二突撃ス! (# ゚Д゚)

 

 

 手続きは意外なほどあっさり済んだ。

 まあ適合候補者=ありふれたモルモットみたいなもんだから、それも当然か。

 

 

 それから何か待合室みたいなとこに連れてこられ、俺は何時間も待たされることになった。

 まだかなまだかなとそわそわしながら、果たして俺に適合する神機は何型だろうかと、不安で不安で今にも卒倒しそうな時間だった。

 

 

 まあまず間違いなく旧世代型神機だろう。だって『新型神機』神薙ユウ君(ちゃん)の物だもん。

 あぁ神薙ユウ君(ちゃん)は原作の主人公のデフォルト名ね。彼(彼女)が適合試験で『新型神機』(近距離神機と遠距離神機の両方が使える凄い奴)に適合してから物語は始まる。

 

 

 神薙ユウさんの事は置いておこう。今は自分の適合神機の事が心配だ。

 神機というものは自らに適合する『偏食因子』によって選ばれるから、俺の得意な『アサルト』や『ロング』の神機が選ばれるかどうかは本当に自分次第なのだ。

 

 

 うぅ……これで苦手な『バスター』や『スナイパー』に当たったらどうしよう。

 お願いロングかアサルトでお願いします最悪『ショート』か『ブラスト』でもいいです『コウタ』や『リンドウ』さんとキャラ被ってもいいんでお願いします元から目立つ気とか無いんです遠くから彼らを尊い出来ればいいんですお願いしますアルダノーヴァ様ツクヨミ様アマテラス様スサノオ様オオグルマは死ねアリウス・ノーヴァ様世界を拓く者様世界を閉ざす者様紅蓮のオロチ様! 

 

 

「準備が完了しました。速やかに適合試験会場まで行ってください」

「──―はっ!?」

 

 

 

 ひたすら祈祷していたら、ついにその時がやって来たようだ。

 俺は立ち上がると、ドキドキと緊張で高鳴る胸を押さえつけながら、ゆっくりと指定された部屋まで向かった。

 

 

 適合試験の行われる部屋は殺風景かつ物々しい雰囲気に満ちていた。部屋には大小さまざまな傷がついており、適合に失敗した者の末路を感じさせるようで、俺はひそかに震えた。

 

 

 しかしムービーで見ていた場所に自分がいるなんて、なんだか感慨深いものがあるなぁ。

 俺は自分が適合に失敗するかもしれないという不安を頭の隅に押しやり、湧き上がる恐怖をごまかすように部屋の中をきょろきょろと見まわしていた。

 

 

『長く待たせてすまない』

 

 

 と、そこでスピーカーから声が聞こえた。

 

 

 こ、このイケボは……!? 

 

 

 その声を聴いた瞬間、それまで感じていた不安が頭から吹き飛んだ。俺は満面の笑みを浮かべながら、上にあるガラス窓に映る人を見た。

 

 

(お、黒幕さんちっすちっすwww)

 

 

 そこにはフェンリル創設者兼この物語の黒幕『ヨハネス・フォン・シックザール』支部長が、胡散臭さ満点の顔で俺を見下ろしていた。

 

 

 彼、ヨハネス・フォン・シックザールは主要キャラである『ソーマ・シックザール』の父親であり、このフェンリルの創設者の一人で、同時にこのゴッドイーターの物語の黒幕の一人である。

 

 

 彼は表では『エイジス計画』という人工島に残った人類を移住させる計画をやってたんだけど、それは『アーク計画』という本来の計画を隠すための隠れ蓑だったのだ。

 

 

『アーク計画』の詳細は省くが、とりあえず計画が遂行されると今の人類は滅ぶよ! って事だけ覚えとけばええ。

 

 

 彼の事は好きだよ。『アーク計画』だって彼なりに人類を思っての事だし。正直あの計画はこれから先の事を思うと最適解だと思う事さえある。

 だからか俺はシックザール支部長の事を嫌いになれないのだ。

 

 

「心の準備が出来たら、中央のケースの前に立ってくれ」

 

 

 なんてことを考えていたら、話はすでに終わってしまっていた。

 しまった! あれこれ考えていたらシックザール支部長のお話を聞き逃してしまっていた! 

 

 

 勿体ない事をしてしまった。あ~あ。

 

 

 ま、過ぎたるは及ばざるがごとし。まだまだ彼のイケボは聞けるんだし、そう気を落とすことも無い。俺は気持ちを切り替え、きびきびした動作で中央のケースの前まで進んだ。

 

 

 そしてケースにおいてある、()()()()()()()()()()()を新鮮な面持ちで見……てぇ!? 

 

 

「へぇっ!?」

 

 

 俺は驚きのあまり目を剥いた。

 

 

 そこには新品ぴかぴかの第二世代型神機が鎮座していた。

 いやちょっと待て! 待て待て待て! 何で!? 

 

 

 新型ですよ新型! ……え? 俺がやるの!? 主人公はどうした! 

 

 

 と、そこで俺の記憶の中に、いつだったかアラガミから逃げている親子をスタグレを投げまくって助けたことがあったのを思い出した。

 その時助けた幼い少女、やけに印象に残る子だった。

 

 

 え? もしかしてその子? 神薙ユウだったんか!? 他とは隔絶した雰囲気を纏っていたのもそういう事!? 

 

 

 マジ? 君がゴッドイーターになった動機は復讐だったんかい!? 

 俺もしかして計らずしも主人公になる筈だった子の動機潰しちゃったの!? 

 

 

 え、俺がやるの!? 

 

 

 いや待て早まるな! 

 俺は混乱の極みにあった脳味噌に残った僅かな冷静さをフル動員し、何とか落ち着きを取り戻した。

 

 

 そう俺は噛ませ犬。俺が主人公の役割なんてするわけないじゃん。

 きっと俺が失敗して、その後に本命の神薙ユウちゃんが颯爽と出てきて、見事新型神機に適合するに違いない。

 

 

 そうだそうに決まってる。まさか俺がそんな……。

 

 

 俺は恐る恐る装置に腕を突っ込む。

 あれ、でも失敗したら俺死ぬんじゃ。

 

 

 そう思った刹那、ガシャーンという音と共に装置が作動して、プレス機めいて俺の腕を挟んだ。

 

 

「おぉう!?」

 

 

 心の準備が出来てなかった俺は、はらはらしながら展開を窺った。しかしどこか冷静な自分がいた。

 多分心のどこかでは分っていたのだと思う。でも、やっぱり納得がいかねぇー! 

 

 

 沈黙が、場を支配する。俺だけじゃなくシックザール支部長も固唾をのんで見守っていた。

 

 

 そしてプシューッという音と共に、装置が開き、俺の腕にはゴッドイーターである証、赤い腕輪がはめられていた。

 

 

 えぇ……。

 

 

 俺は自分如きがこんなもんに適合してしまった申し訳なさと、自分に主人公の代役が務まるのかという不安がないまぜとなった複雑な心境で、はめられた腕輪と神機を見上げていた。

 

 

「おめでとう。君がこの支部初の新型ゴッドイーターだ」

 

 

 

 俺の心境をよそに、シックザール支部長は嬉しそうに言った。

 

 

 

 えぇんか俺で? いいんですかワタクシで? 

 

 

「適性試験はこれで終了だ」

 

 

 複雑な心境のまま見上げている俺に、特に気にした様子も無くシックザール支部長は続ける。

 

 

「次は適合試験後のメディカルチェックが予定されている。始まるまでその向こう側の部屋で待機してくれたまえ。気分が悪いなどの症状があったらすぐに申し出るように。良いかね?」

 

 

 こうなりゃやるっきゃないか。

 

 

「…………はい」

 

 

 俺は支部長の言葉にしぶしぶ了承すると、とぼとぼとした足取りで出口へと向かった。

 

 

 あーあ、後方支援者面したかったなぁ。

 でも主人公になれば、もっと間近で彼らを尊い出来るじゃん? そもそもゴッドイーターでの主人公の役割なんて都合の良いデウスエクスマキナで良いんだ上等だろ。

 

 

 やってやろうじゃねぇか! なってやろうじゃねぇか! 

 自慢じゃないがロングとアサルトに掛けちゃ俺はなかなかやるぜ! 

 

 

 うおーっと決意を新たに、俺はゴッドイーターとしての一歩を踏みしめるのであった。

 

 

 

 

 




2061年 主人公がゴッドイーター世界に転生

 ≀←10年の間主人公各地を放浪。その際に原作主人公『神薙ユウ』を助け、
                 結果的にゴッドイーターになるための動機、
                 家族の復讐が消え、
                 世界の修正力が働き、役割が主人公に移る。 

2071年 主人公が第二世代型神器の適合者となる←今ここ

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