俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~   作:三流二式

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年内に話を終わらせたかったのに、まだ一部の半分も終わってねー!


悪い子

 神様 神様

 

 

 

 

 私はどうなっても構いません

 

 

 

 

 きっと地獄へ逝きます

 

 

 

 

 ですので どうか 私の願いを聞き届けてください

 

 

 

 

 彼らを 彼女たちを お救い下さい

 

 

 

 

 彼らは十分苦しみました

 

 

 

 

 彼女たちは艱難辛苦を撥ね退けて前へ進み続けております

 

 

 

 

 もう十分でしょう

 

 

 

 

 どうかお救い下さい

 

 

 

 

 偽りの神では無く 人と人とが争うだけの世界へ

 

 

 

 

どうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                             はやくしなせて

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 いやーディアウス・ピタ―は強敵でしたね。(他人事)

 ……ていうか何なのアイツ? 何でオラクル反応が消えたのに復活してんだよ! しかも捏造ピターなんぞになりやがって!!! 

 

 

 俺の怒りはそこだ! 復活したことはまあいい。何でよりによって捏造ピターなんかになっちゃうんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題

 

 

 

 まあ倒せたから問題なし! 現実逃避は終わりだ! さあ行くぞ! さあやるぞ! さあ見るぞ! 

 

 

 俺は意を決して明後日の方へ向いていた目を正面へと向ける。とたんに視界の下半分ほどが白い帽子で埋まった。

 

 

「ふんふ~ん♪」

 

 

 こんな野郎の膝の上で何が楽しいのか、彼女は鼻歌なんか歌っちゃりして上機嫌に体を揺らしていた。

 彼女が揺れる度にお尻が膝が擦れるから、こそばゆいったらありゃしない。

 

 

 そう、そうなのです。どういう訳かワタクシの膝の上に『裕福な少女』ちゃんがおわしますのですたい。(博多弁)

 

 

 いやなんで!? 何故に俺の上に? 意味が分からない。

 ディアウス・ピタ―を討伐してから数日、特にその日は何もやる事が無かったからエントランスのベンチで座ってボーっと行き交う人を眺めていた。

 

 

 あ、ジーナさんオッスオッス! やあブレンダンさん、いい体してんねぇ! 通りでねぇ! とか言いながら、今頃サクヤさんが支部長についてこそこそやっているんだろうな。怪我とかしないで欲しいなとか考えていたら、気が付いたら俺の膝の上にちょこんと乗っていたのだ。

 

 

 思わず目が点になりましたね。えぇ。

 

 

 いったいいつの間に!? 混乱して目を白黒させている俺なんか気にも留めずに『裕福な少女』ちゃんは完全に脱力して俺の腹に身をもたれさせてくる。

 

 

 や、止めなさい『裕福な少女』ちゃん! 離れなさい! 俺なんかに触ってると馬鹿が移っちゃうぞ! 俺のとこに来ちゃダメだよ! いくならせめてソーマ君やコータ君の方へ行きなさい! *1早く離れ……はな………………え、『エリナ』ぁあああああああああ!!! 『エリナ』ぁああああああああ!!! はやく離れなさぁ~い! 隊長命令! 隊長命令ですよ! いい加減にしないと先輩って呼ばせたうえで凄いことしちゃうぞ! 凄い事になる事になるぞ~! 

 

 

 うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、おっさんがお呼びだ」

 

 

 あ、うん。

 

 

 ソーマ君に話しかけられて我に返った俺はそういう訳なのでどいてね、とエリナちゃんに伝えた。

 途端に露骨に不機嫌そうに唇を尖らせて無言で抗議してきたものの、腕を組んで威圧的に佇むソーマ君に屈した彼女は渋々といった感じで俺の膝の上から腰を上げた。

 

 

 その時丁度エリックさんがエリナちゃんを迎えに来て、俺の顔を見るや嬉々として近寄って来て再会の挨拶と共に言葉の洪水をワっと浴びせかけてきた。

 やれ最近調子どうだの、次期当主としての勉強は着々と進んでいるだの、エリナが最近冷たいだのなんだのかんだの。

 

 

 

 このまま彼のマシンガントークを延々聞いていたかったけど、いよいよソーマ君の忍耐が限界に達しそうだったのを見て、俺は戦々恐々しながらぺらぺら食っちゃべっているエリックさんにアイコンタクトを送った。

 それで察してくれたエリックさんは苦笑いを浮かべながら会話を切りやめ、エリナちゃんの手を取って去って行った。

 

 

 それと去り際に「君には本当に感謝している。何かあったら言ってくれ。いつだって力になるよ」と肩をバシバシ叩きながら言ってくれたんだけど、そういう事は俺みたいなしょぼくれた奴なんかよりもソーマ君とかに言ってあげて欲しい。

 

 

「もう良いか? なら行くぞ」

 

 

 去りゆくフォーゲルヴァイデ兄妹の背中を見つめていたら、額に青筋を浮かべたソーマ君が間髪入れずに首根っこを引っ掴んで榊博士の下へ俺を引き摺って行った。

 彼の声音には有無を言わさぬ迫力があったから、俺は何も言わずに黙ってされるがままに引きずられた。

 

 

「おや、来たね。早速で悪いんだけど、シオを連れて空母まで行って来てくれないかい? 食事が必要でね」

 

 

 そう言って書類をひらひらさせている榊博士。

 

 

「ハガンコンゴウが出現したようでね。栄養価も高そうだし、彼女の口にも合うだろう。他のアラガミもいるが、無視して構わないよ。全部は大変だろう?」

 

 

 という訳で、俺、シオちゃん、サクヤさん、アリサさんの4人でハガンコンゴウを粉々にするべく愚者の空母までやって来たのだ。

 

 

「いやシオちゃんに食べさせるために来たんですから、粉々にしちゃだめですよ?」

 

 

 ……ウン、ソウデスネ。コトバノアヤデス。ホントダヨー。

 

 

「……」

 

 

 無言の呆れ顔が染みるぜ……。

 

 

「バカやってないで指示を頂戴隊長さん。ヒバリちゃん、敵との距離はどれくらい?」

「ア、ハイ」

『はいサクヤさん、敵エネミーハガンコンゴウの距離前方500。小型のアラガミの反応が5体周りにあります』

 

 

 ハガン一体に小型5ね。確かこのミッションに出てくる小型ってザイゴート堕天とコクーンメイデン堕天だっけ? うわ、メンドクサ! 

 

 

「う~んハガンコンゴウは耳が良いから小型を先に片付けるのも難しいわね。どうしましょうか……」

 

 

 うんうん唸って作戦を立てるサクヤさんに俺は手を上げて皆からの注目を集めると、提案を手短に伝えた。

 

 

「えっと、つまり先に耳のいいハガンコンゴウをおびき寄せて私たちが足止め。その間にカカシさんが小型を強襲、殲滅次第こちらに合流、と」

 

 

 アリサさんが確認を取るように俺が説明した作戦を口にした。

 

 

 そゆこと。

 

 

「そうね、カカシ君なら小型を片付けるのにそう時間はかからないでしょうし……いいわ、それでいきましょうか」

「はなしおわったか~? じゃあいこういこう!」

 

 

 俺らの作戦が固まったタイミングで、暇そうに道端に座り込んでいたシオちゃんが目を輝かせながら立ち上がった。

 

 

 そうだよ~。君もお腹すいてるだろうから、話し合いはここまでにして、行こっか。

 

 

「お~ゴハンゴハン!」

 

 

 キャッキャとはしゃぐシオちゃんを引き連れてサクヤさんとアリサさんはハガンコンゴウをおびき寄せるために俺から離れていった。

 

 

 3人が離れていくのを見届けると、俺の方も動き始めた。

 

 

 オラクルの噴射の音で感づかれては意味が無いので、ヒバリさんにナビゲートしてもらいながら瓦礫で身を隠しつつ、回り込んでハガンコンゴウの後方に待機している小型共の背後へと忍び寄った。

 

 

 丁度その時スナイパー特有の鋭い射撃音が鳴り響き、続いてハガンコンゴウと思わしき悲鳴とアリサさんの気合のこもった声が聞こえた。

 それに反応してぞろぞろと移動しようとした小型に、俺は神機を捕食形態にしてオラクルを噴射して間髪入れず襲い掛かった。

 

 

「ギエーッ!?」

 

 

 手始めに空中を飛んでいたザイゴート堕天(黄)の上半分を食い千切って殺す。

 神機がザイゴートを飲み込み、オラクルを肉体へ還元して活性化。それと同時に最早気にもならなくなったバキバキという馴染みの異音と共に口元を覆う黒いオラクルの『牙』が生成され、俺の戦闘準備は完了した。

 

 

 

 準備完了! 後は雑魚の処理をして皆にさっさと合流だ! 

 俺は頭部から花みたいな器官を生やしてこちらを撃ち抜こうとするコクーンメイデン堕天に接近して叩き割り、空中から突撃して来たザイゴート堕天を返す刀で真っ二つに切り裂いてやった。

 

 

「「シャーッ!」」

 

 

 残った2体のザイゴート堕天が左右に分かれ、挟み込むように突進してきた。

 俺は突進が当たるよりも早くその場から跳び上がり、丁度2体が重なるくらいのタイミングで銃形態へと変えた神機で特製の破砕属性バレットを撃ち込んでまとめて粉々にしてやった。

 

 

「「アバーッ!?」」

 

 

 これで雑魚の殲滅は完了である。

 

 

『小型種の反応は全て消失。カカシさん、そのままサクヤさんたちの援護を』

 

 

 勿論ですとも。

 

 

 俺は喧騒の方向へと駆け付け、サクヤさんたちが戦っている場所からやや離れた位置で立ち止まるとアリサさんとシオちゃんが『そいつ』から離れるタイミングを計っていた。

 

 

 金色の肌、紅い羽衣のような部位、その名の通り()()している頭部。

 コンゴウ種の上位個体『ハガンコンゴウ』が、アリサさんとシオちゃんのコンビネーションアタックに、煩わしそうに手足を振り回していた。

 

 

「ウキャーッ!」

 

 

 いい加減鬱陶しくなったのか、2人に体を切りつけられているにも拘らず、ハガンコンゴウは防ぎもしないでその場に身構え、ぐっと力を溜めるようなしぐさを取った。

 

 

「!? アリサ、シオちゃん!」

 

 

 サクヤさんの警告の声に二人はバッと後方へと跳んだ。その刹那、ハガンコンゴウを中心に稲妻がバリバリッと閃いた。もしあの場に居たら、二人は感電して、それからあの太い腕に刎ね飛ばされていただろう。

 

 

 それは二人が離れるタイミングを窺っていた俺からすれば実に良いタイミングである。丁度狙いであるハガンコンゴウの足も止まっているしね。

 という訳で景気づけにドーンと行きますよ~! 

 

 

 俺はころがるこうげきを繰り出そうとする汚いゴーリキーに向かって特製の破砕属性神属性のオラクルバレットをぶっ放した。ちなみにだがこのモジュールはとにかく破壊力だけを追求したもので、コストは当然度外視。ゲームで例えるならL弾丸直進、1が何かに衝突時LL爆発というシンプルな構造ながらコストは驚くなかれ159だコノヤロー!!! 

 

 

 普通はどうやっても連射出来ないが、俺にはオラクルが有り余っているのでバカバカ連射可能だぜー! 

 一護ォ! 敵は距離取って月牙擦ってれば勝てるぞォ! 月牙月牙月牙月牙月牙セロ月牙月牙月牙月牙月牙セロセロセロ月牙月牙月牙月牙月牙月牙月牙グランレイセロハイリッヒ・プファイル! 

 

 

「きゃー!?」

『か、カカシさん! ハガンコンゴウのオラクル反応は消失しています! もう撃たなくていいです!』

「ダメですヒバリさん! あの人完全にハイになっちゃってます! カカシさん! カカシさぁーん! シオちゃんが! シオちゃんが食べる分が無くなっちゃいます! 止めてくださーい!」

 

 

 あ。

 

 

 サクヤさんの悲鳴やアリサさんからの警告で我に返った俺は慌てて引き金から手を放し、おっかなびっくり前方へと目を凝らす。

 俺の視界は空爆でも撃ち込まれたのかってくらいの爆煙でさっぱり見えず、その中にいるハガンコンゴウがどういう状態なのかはそれが払われない限り認識する事は不可能だった。

 

 

 ひやひやしながら見守っていること数十秒。湾岸部だけあって風が強いからすぐに爆煙は吹き払われ、その中にいたハガンコンゴウの死骸が露になった。

 

 

 …………ふぅ。

 

 

 ハガンコンゴウの各部位は渋いという言葉が生温いほどカチカチ肉質なのだ。それが幸いしたのか、腕とか脚とかもげていたりしたものの概ね原型が残ったまま死に絶えていた。

 

 

「うわぁ……あの固いハガンコンゴウがあんなに破壊されてるわ……」

「ドン引きです……馬鹿なんじゃないですかあの人?」

「ゴハン~!」

 

 

 アリサさんとサクヤさんの言葉に心を抉られつつ、こんがり焼けたハガンコンゴウにむしゃぶりつくシオちゃんの食事を見ながら、俺は煙草に火をつけた。

 

 

 深々と吸い込んで肺に紫煙を充満させ、少しとどめてから、ため息に乗せて長く吐きだす。吐き出した紫煙は潮風に吹き流されてあっという間に消え去った。

 

 

「……」

 

 

 風に流されゆく紫煙を目で追っていると、ふと、初めて煙草を吸いだしたころの事を思い出した。

 

 

 あれはこの世界に転生して1年と少し。放浪の途中に立ち寄った『壁』も無く、神にも人にも見捨てられた集落で起きた抗争に巻き込まれた時の事だ。

 移動の際に積み込まれたトラックの中、自働小銃に身を預けていた時に、俺の前にいた名も知らぬ子どもが景気づけに一本、と手渡されたのを吸ったのが、俺の喫煙の始まりだった。

 

 

 差し出された煙草に目を向け、次いでそれを差し出してきた者の顔を見た。俺と同い年かそれより下の、髑髏の様にやせ細った子供だった。

 

 

 彼は二カッと笑った。口元から垣間見えた歯は煙草の吸いすぎで黄ばみ、ボロボロだった。

 

 

 初めての喫煙は散々な結果で終わった。むせる俺を見て、積み荷たちは、上は60過ぎの老人。下は5歳になったばかりの子供まで、はゲラゲラと笑った。

 その笑みときたら。みんな幸せそうで。数分後に迫る死への恐怖なんか欠片たりともなさそうで。

 

 

 さてその抗争だが、何の事は無い。古今東西、最下層に位置する者たちが徒党を組んで争う理由は食料の奪い以外ありはしない。

 尤もその抗争自体は10分程度で蹴りはついた。

 

 

 アラガミが現れたのだ。

 

 

 オウガテイル一匹。それだけで両陣営は瓦解。生き残りは一人も無し。

 

 

 そして肝心の食料はというと。

 

 

 缶詰一個。それだけ。それだけのために、両陣営含め合計28人の人が死んだ。

 オウガテイルから逃げおおせ、(おそらくオウガテイルに襲われて)人っ子一人いなくなった相手側の集落の食糧庫の真ん中に、それがポツンと鎮座していた。ふふ、今思い出しても笑える。実際大笑いしたのを覚えている。

 

 

 運転手がいなくなってしまったから、難儀しながらトラックを運転して自陣営側の集落へ戻ると、住人が消えていた。あたかも相手側陣営の集落と同じように。

 集落のあちこちに争った形跡や、血飛沫が飛び散っており、その時の人々の慌てようが目に見えるようだった。

 

 

 呆然とする俺を嘲笑うかのように、集落の中央に我が物顔で居座るコクーンメイデンの無機質な瞳は生涯忘れないだろう。

 

 

 隠し持っていたオウガテイルが射出した針を頭部にねじ込み、動かなくなったコクーンメイデンの傍らで、俺はトラックから出る際にもらった煙草の箱を懐から取り出した。

 よそ者なのに手を貸してくれた君へ、と名も知らぬ子どもが俺にくれたそれ。

 

 

 震える手で箱から煙草を取り出し、口に咥え、火をつけた。

 

 

 2度目に吸った煙草は、何の味もしなかった。

 

 

 嗚咽交じりに吐き出した紫煙は、風に吹き流されて消え去った。

 

 

 過去の情景が、紫煙とともに消えていく。

 

 

「……」

 

 

 こんな話は、この世界ではあまりにも日常茶飯の事だった。実際同じ様な事は何度もあった。あまりにもありすぎて、最早感慨すら湧きはしない。今もどこかで同じような話が、繰り広げられているのだろう。俺にそれを止める手立てはない。少なくとも今はまだ。

 

 

 過去を思い出すついでに、この世界に転生したばかりの頃の楽観的な自分の言動の数々も思い出し、自嘲気味に鼻で嗤う。

 

 

 何て下らない。

 

 

 頭を振って肺に残った紫煙を残らず吐き出し、吸殻を踏み消す。気が付けば横にサクヤさんとアリサさんが並んでおり、俺と同じようにシオちゃんを眺めていた。

 

 

 程なくシオちゃんの食事も終わり、俺たちは崖の近くへと移動し、遠くに見えるエイジス島を眺めていた。

 

 

「大きいよね」

 

 

 サクヤさんが俺たちの前に出ながら言った。

 

 

「エイジス計画の要、人類最後の望み……エイジス島…………シオ?」

 

 

 感慨深げにつぶやきながら、ふとサクヤさんはシオちゃんの方へ目を向けると……。

 

 

(あぁ、来たか……)

 

 

 シオちゃんの体に異変が起きていた。輪郭が薄っすらと輝いており、視線は定まらず、どこか虚ろだった。

 

 

「シオ!?」

 

 

 サクヤさんの呼びかけにも応じず、シオちゃんは夢遊病患者の様に切り立った崖の方へ、()()()()()()()()()()()()()()()()()歩いて行く。

 

 

「シオ、あなた!」

「シオちゃん!」

「ヨンデル……」

 

 

 シオちゃんは振り返り、譫言めいて言った。でもそれはサクヤさんたちの呼びかけに応じたわけじゃなくて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「タベタイ……タベタイッテ、ヨンデルヨ」

 

 

 シオちゃんは再び前を向く。

 

 

「オ イ シ ソ ウ 」

 

 

 それだけ言うと、シオちゃんは何のためらいも無く崖から身を投げ出した。

 

 

「「シオ(ちゃん)!?」」

「……」

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

「……で、そのまま海に飛び込んで姿を消した、と……」

 

 

 榊博士は俺からの報告を聞き、口に出して考えをまとめながら締めくくった。

 

 

「申し訳ありません……」

 

 

 サクヤさんが先んじて謝った。

 

 

「いやいや、まずは君たちが無事で何よりだよ。……サクヤ君、場所は空母北端、エイジス島近郊で間違いないんだね?」

「はい……あの子、一体何があったんでしょうか?」

「今の状況からでは何とも言えないね」

 

 

 榊博士は顎に手を当てて思案しながら、サクヤさんへ向けて言った。

 

 

「……そうですか、分かりました」

 

 

 思い悩んでいるサクヤさんに変わり、アリサさんが代わりに言った。

 

 

「ともかく、君たちにはシオの捜索をお願いする事になるかもしれない。何か判明したら連絡するよ」

 

 

 だから今はゆっくり悩んでほしいな、とサカキ博士は締めくくり、此度の報告会はお開きとなった。

 

 

「予想以上に早いね……実に不味いな」

 

 

 扉が閉まる瞬間に聞こえた榊博士の呟きを聞こえていないふりをしつつ、俺は一足早めに二人と別れて自室へと向かう。

 

 

 自室に着くと盗聴やその手の類の物が無い事を確認し、懐からデバイスを取り出してアプリを起動する。

 

 

 アプリが起動されると画面に地図が浮かび上がり、エイジス島付近のある一点に赤い点が灯っていた。

 それは俺がシオちゃんの服に秘密裏に仕込んでいた特製の発信機である。正直リッカさんにばれないかと冷や冷やしていたけど、存外何とかなるもんである。

 

 

「さてと、文章はどんな感じにしようかな」

 

 

 俺は支部長に向けて匿名のメールを送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
2での絡み的な意味で

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