俺は遠くから尊いを眺めていたいんだよ!組み込むんじゃねぇ!~ゴッドイーター世界に転生したからゴッドイーターになって遠くから極東支部尊いしたかったのにみんな率先して関わってきて困る~ 作:三流二式
友の慟哭が、風に乗って耳に届く。
ドクンと、心臓が一際大きく音を立てる。
今すぐ背中にめり込んだ鉄骨を引き抜き、彼の下に跪き、全てを懺悔したい衝動に駆られる。
しかし、だめなのだ。
奥歯を噛みしめ、衝動を堪える。
筋書きは変えられない。彼女は月に行ってもらわねばならない。この星にいてはならない。君たちは引き裂かれねばならない。真の平和を実現するためには、彼女には消えてもらわなくちゃならない。
何を悲しむ必要がある? すべては計画通り。順調に事は進んでいる。寧ろ時期が早まって良い事尽くめじゃないか。それに、お前はこれを望んでいたのだろう? なにが不満なのだ? まさかこれ以上を望むのか? 裏切り者の分際で?
心の内から湧き上がる声に嘲笑われながら、震えそうになる体を渾身の力でもって抑える。悟られてはならない。あの状況をどうにかできたと、悟られてはならない。
満天の星空の下、友の慟哭が、潮風に乗って、耳に届く。
心の中に空いた穴に、嘆き悲しむ声が吸い込まれてゆく。
永劫にも続くかと思われる嘆きの声に呼応するように、とっくに割れて、砕けた心の芯に、また一つ罅の入る音が聞こえた気がした。
■
はいはい、テステス。こちらフェンリル極東支部のアナグラ。極東支部のアナグラより中継いたします。
現在アナグラは混沌状態にあり。大変な混沌状態であります。
特異点を手に入れた支部長は今まで封じ込めていた情報を解放。エイジス計画改め、アーク計画の情報が解き放たれ、アナグラの構成員たちは賛成派、否定派、中立派の3つに分かれ、混沌を極めていた!
その余波を受けて我が第一部隊も多大な影響を受けました。
コウタ君は支部長に◇家族が大事*1◇な心につけこまれて実家へ帰省。サクヤさんとアリサさんは支部長を問い詰めにエイジスへ潜入。ソーマ君は父親である支部長への怒りで猛り狂って手が付けられない状態であります。
つまり、第一部隊でまともに機能するのは私だけという状態です。第一部隊は事実上まともに機能しない状態にあります。
そして現在わたくし、名無之カカシはカレル君とシュン君とブレンダンさんが消えて人手が足りなくなった防衛班の穴埋めとして、残った皆さまと任務へと駆り出されているのであります。
以上、極東支部アナグラより、名無之カカシでした~。
「ちょっと隊長さん、手が止まってるわよ!」
おっと、現状確認のために立ち止まっていたらジーナさんに怒られてしまったの巻。
俺は背後から飛び掛かってきたオウガテイルの頭を立ち割りながら振り返り、すかさず神機を銃形態に変えた。
それから攻撃をよけそこなって地面を転がっていくタツミさんに、追撃をかけようとしたコンゴウの顔面にないぞうはかいだんをぶち込んでやった。
着弾したないぞいはかいだんはコンゴウの体内に残留し、効果が消える直前までレーザーを放ち続けた。
「アババババーッ!?」
コンゴウは腕を振りかぶったままの姿勢で痙攣。そしてレーザーが放たれなくなったと同時に爆発四散した。
「うわっ!?」
何分警告とかしている間が無かったから、タツミさんは至近距離で爆発四散したコンゴウの組織片をもろにかぶってしまった。
「すまねえカカシ! 助かったぜ!」
それなのに文句ひとつ言わないで、挙句お礼すらいえる貴方は神様かなんかですか?
流石問題児だらけの防衛班を束ねるだけあって、懐がお太い!
今のコンゴウが最後の一匹だったようで、本のつかの間だが息を整える間があった。
「あ、カカシさん、タツミさん! 次、次が来ましたよ~!」
ここで前方に目を凝らしていたカノンさんが第二波の接近に気づき、次の瞬間には倒壊した建物を飛び越えて、ヴァジュラテイル(赤)が現れた。
「はあ!」
「当たってください~!」
一番乗りでやって来たヴァジュラテイルはジーナさんの射撃で体勢を崩し、その一瞬遅れて叩き込まれたカノンさんのブラストの一撃であっという間に屠られた。
が、当然こいつ一体だけではなく、後続がぞろぞろと俺たちの前に現れた。
たった今倒したヴァジュラテイル(赤)に加え、ヴァジュラテイル(黄)、ザイゴート堕天(青、赤)、シユウ3体にグボロ・グボロが6体の大所帯だ。
「おいおい何て数だよ!?」
「待ってタツミ、まだ奥から何か……」
わらわらと目の前で蠢くアラガミ達に思わず呻いたタツミさんに、ジーナさんは更に追い打ちをかけるかのように奥を指さした。
倒壊した建物で姿は一部分しか見えないが、かなりの巨体であることは見て取れた。そしてそれは倒壊した建物を刎ね飛ばしながら、俺たちの前に姿を現した……って。
「何だこいつ!?」
目を剥いて驚愕するタツミさんと同様に、俺もびっくり仰天して現れたそいつを凝視した。
見てくれはテスカトリポカそのものだが、そいつは通常種よりも暗緑色が目立つ色合いをしていた。
(ポセイドンじゃねぇか!)
心の中で俺は叫んだ。
説明しよう! ポセイドンとは、無印ゴッドイーターのダウンロードコンテンツのみで出会うことが出来る、手抜きアラガミの一種である!
そう一種と言ったように、他にも色を変えただけの手抜きアラガミは存在しているのだ! シユウの上位種『セクメト』の色違い版『ヘラ』、サリエル種の接触禁忌種であるスカートはいたキモイおっさんこと『アイテール』の色違い版『ゼウス』。
こいつらは先ほど言ったように無印のダウンロードコンテンツでしか会えないので、影が薄い薄い。作られる武器も盾も大したものじゃないので、戦ったことがある人すら少ないのではなかろうか? *2正直俺も記憶がだいぶ朧気だぞ!
「ピガガーッ!!!」
ポセイドンは俺らを見るや、壊れた機械めいたノイズ交じりの咆哮を上げた。
「ちょちょちょ! この量のアラガミを相手にしながらあんな大物なんて戦えませんよ!」
「チィッなんだって接触禁忌種なんか出てくんだよ」
ヒュンカッカとショートブレードを振り回して群がる小型アラガミを処理しながら、タツミさんが歯噛みする。
あーそれなら俺があれ処理するから、皆さんは雑魚の相手してもらっていいですか?
「……正気? あれ、接触禁忌種のテスカトリポカの変異種でしょ? 一人で戦うなんて無茶よ」
ジーナさんがポセイドンに顔を向けたまま、こちらに目だけを向けて言った。
まーまーダイジョブダッテ! 少し前にテスカトリポカはぶっ飛ばしたし、今回も平気平気、平気だから。
「……そう、分かったわ。でも無茶はしないでね。あなたが死んでしまったら、私達、第一部隊の子たちに恨まれちゃうわ」
……ハハァ。
「……こういう時くらい何か言ったって、罰なんか当たらないわよ?」
「すまねぇカカシ! 俺らも手を貸してやりたいが、こいつら相手で精一杯だ!」
「こいつらは私たちが何とかします! だからカカシさんはあいつを!」
お任せあれー!
意気揚々と返事をした俺はポセイドンへ向き直り、ゲームでクアドリガ神属がこちらを発見時にする上半身を上げる動作をしているポセイドンに切り込んだ。
地面に前足が着地した瞬間に合わせて、俺は呪刀をポセイドンの前面装甲に叩きつけた。
「ピガガーッ!?」
「えぇ!?」
「おいおいマジかよ!?」
「ヒュウ♪ お見事、綺麗な花火ね」
鉄球が壁に炸裂する音を何倍にも増幅した様な派手な音を立てて前面装甲は結合崩壊を起こし、破片をまき散らしながらポセイドンは後退った。
なに悠長に威嚇なんざしてやがんだコラッ。ナメッコラ―! ナンオラ―!
ゲームじゃロングブレードでクアドリガ神属にダメージを与える手段なんて前面装甲が開いた体内以外存在しなかったもんだが、生憎これは現実で、良いトコに攻撃が当てられれば一発で結合崩壊させられるんだよォ!
後退るポセイドンに俺は神機を銃形態へと変形させながら更に踏み込み、剥き出しになった体内へと銃口をねじ込んだ。
そして引き金を引き、ないぞうはかいだんを撃ち込みまくった。
「ピガガガガガガーッ!?」
たちまち内部から神属性レーザーが無茶苦茶に体外へと放出され、ポセイドンはおんぼろの洗濯機みたいにガタガタと震えた。
「ピガガーッ!?」
そしてポセイドンは先ほどのコンゴウと同じように爆殺四散した。肉片がまるで花火のようにあたりに四散し、タツミさんたちと戦っていた小型アラガミが吸い寄せられるように肉片に群がり始めた。
力あるアラガミの肉片。大型種ならともかく、大した力も知性も無い小型アラガミは本能に忠実だからそうなるのもさもありなん。
後は消化試合じゃー! 小型と中型の群れなんざなんぼのもんじゃーい!
戦いそっちのけで肉片を貪る小型アラガミを倒すタツミさんたちを、背後から襲おうとする中型アラガミを請け負うこと数分。どっからやって来たのか、グボロ・グボロ堕天(青)の砲塔を叩き割り、動揺している隙に銃形態でハチの巣にしてやった。
倒れ伏すグボロ・グボロから目を離し、残心する。だが視界にも感覚のセンサーにも動く者の気配はない。どうやら殺しきったみたいだ。
増援の反応が無い事はヒバリさんに確認済み。ミッション完了だ。
俺が肩の力を抜いたのに気づいた防衛班の皆さんは、安堵のため息を吐きながら体の力を抜いた。
「ふい―……終わったみたいだな……」
「つ、疲れましたぁ~……」
「スコープ越しに撃ち抜く楽しみと言っても限度があるわ……」
流石に連戦続きでみんなお疲れの様子だ。
そりゃそうか。日が経つごとに戦いに出る人が減っていくから、残る事を決意した人の負担が増すのもしようがない事だ。
それから各々が迎えのヘリを待っている中で、ジーナさんは無言で俺をじっと見つめてきた。しかもじりじりと距離を詰めてくる物だから、なんだか気まずくなって、つい顔を逸らした。
顔を戻すと、息のかかる距離にジーナさんの顔があった。
前に顔を出すだけでキスできるような距離で、俺とジーナさんは見つめ合う。
間近で見たジーナさんの瞳は、とても綺麗だった。
彼女は我の強く、あまり協調性の無い防衛班のメンバーの中で大人の余裕を感じさせ、包容力があり、ストイックで、とても素晴らしい女性だ。
ジーナさんの顔には連日の出撃で疲れが色濃く浮かんでいるけれど、その瞳に宿る優しさと強さには何一つ揺らぎが無かった。
彼女のすばらしさを改めて思い知っていると、黙っていたジーナさんはおずおずと、やや重々しい表情で口を開いた。
「正直な話ね、私は貴方が支部長の『あの』話に賛成していると思っていたの。……ほら、あなたって基本何も喋らないから、勝手な憶測だけどね」
そう言ってジーナさんは俺の頬に手をやり、感情の機敏を見逃すまいと覗き込んだ。
まあそうですね。本当に人類の事を考えるなら、支部長の話は大賛成ですね。
「ならどうしてあなたはここにいるの? 賛成なら、シュンやカレルみたいにエイジスへ行けばいいじゃない」
気が付けばタツミさんとカノンさんも話の内容が気になるのか、近くまで寄ってきて俺たちの会話に聞き耳を立てていた。
そうですね、ジーナさん。確かに俺はあの人の話に賛成してはいます。でもど────────ーしても彼のもとに行けない理由があるんです。
「それは……何?」
ジーナさんの顔は更に近づき、ついには額がこつんと当たり、俺と彼女との距離はゼロとなった。
別になんてことはありません。ただかなえたい夢があるってだけですよ。で、彼について行ったらそれが叶わなくなるってんで。
「だから行かないの? あなたのその願いは助かる道を捨ててまでしてかなえる価値がある事なの?」
勿論です! そうでなきゃ困る……いや、そうに決まっています。
「そう……それがあなたがここに残った理由なのね」
ジーナさんは俺の答えを理解するために何度か頭で反芻するかのようにこくりこくりと頷き、それから呑み込めたのか、ふと笑みを浮かべ、俺を解放した。
「……カカシさんはすごいです。自分の叶えたい夢のために助かる道を捨てられるだなんて……私は、私はまだ答えを出せません。助かりたいと思う心もありますし、でもみんなを置いて一人逃げるなんて許せない自分もいるんです。心が二つあるんです……」
「あ、俺? 俺は悪いがパスさせてもらうわ! 俺はこれしかできない不器用な奴だからな! 他の助かりたい奴の枠は多い方が良いし……そんなのカッコよくねーだろ? ヒバリちゃんに嫌われるようなことはしたくねーからな!」
うんうん、どっちの考えもいいと思うよ。自分で悩み、考え、思い煩い苦しもうとも、その末に出した答えはきっと尊い事だ。残る事も、行くことも、どっちも俺は賛成だ。
そう答える俺にタツミさんとカノンさんは顔を見合わせ、それからジーナさんのようにどこか安堵した様な安心した様な、そんな笑みを浮かべた。
こちらに向き直ったカノンさんが口を開きかけたその時、無粋なローター音が彼女の機先を制し、それに伴い、俺たちの会話は終わりを告げた。
タイミングがいいのか悪いのか分からないけど、それでも俺の考えで多少は楽になったのか、カノンさんは先ほどよりもずいぶんマシな顔つきになっている気がする。
ヘリに乗り込んだ俺たちは、アナグラにつくまでの短い間に、この際腹を割って話し合った。好きな食べ物、苦手な人について、アラガミについて、この先の未来について。
俺はもっぱら聞き役に徹していたけれど、それでも俺たち4人の繋がりは、任務を行う前よりもよほど強くなっているはずだ。
たとえそれが俺の傲慢な妄想だったとしても、そう思わせるだけの温かさが、そこには確かにあったんだ。
ヘリがアナグラへと到着し、任務完了の報告をしようとエントランスへ向かっていると、前からソーマ君が大股でこちらに近づいてきた。
「すまねぇ、あれだけ時間を貰っておいて情けない話だが、博士は見つけられなかった……クソ!」
俺の前で止まると、ソーマ君は苦い顔でそう言った。
ソーマ君は無言で俺を見ている。
……する事は分かっている。でもどうしてもそのための一歩を、俺は踏み出せないでいた。
理由は分っている。この一歩を踏み出せば、もう後戻りが効かない。
彼を始末してしまえば、俺の計画が始まってしまう。否応なしに。賽が投げられてしまう。
頭の中で思い描いていた計画が、この事件を境に始まってしまう。それが堪らなく恐かった。
覚悟はしていたはずなのに、どうしても足が動かない。
そうやって一歩踏み出せずにいると。背中に温もりが三つ。
俺が目を見開いていると、三つの温もりが軽く俺の背を押した。
あ、と。
か細い声が漏れると同時に、足が前に出る。
振り返る。そこにあったのは3つの柔らかな笑み。
言葉は無くとも、思いは十分に伝わった。
迷いは未だ胸にあり。しかし、前に進むことへの躊躇いは、消えた。
心の中で感謝の思いを伝えながら、正面に向き直り、ソーマ君へ頷きかける。
待ってましたと言わんばかりに、ソーマ君も頷き、俺たちは歩き出した。
振り返らなかったけど、彼らはきっと、あの笑みのまま、俺を見送っているに違いない事は、突き刺さる視線から十分に伝わった。
彼らの思いを胸に、俺は歩を進める足に力を籠めた。
……一つの物語が、節目を迎えようとしていた。
あああああああああああ仕事がー!疲れが―!
最近碌に執筆に手を出せなくてやばいぜ!年内に終わらないよー!
早く2部に行きたいのおおおおおおおおおおおおおおお!!!